お肉たっぷりの鍋を二人でつつきあって満足しながらダラダラと横になりながら現場の話や仕事の話、趣味の話やお互い少ない男友達の話なんかをしていると不意になる携帯にアクアがじっくりと目を通している。
あの様子はおそらくアイかルビー。
やや悩ましそうな顔をしているのでルビーのほうかもしれない。
アクアは(ルビーもであるが)アイのお願いには即答するところからがスタートなので、そもそもあんまり悩んだりしない。
まあ、アイ自身芸能界をよくわかっているので、休みは家族でご飯を食べるという家族ルールが有るようだったが、それも事情があれば別に強く縛っているようには見えない。
今日だってこの旅行にアイがいたとしても多分ルビーに付き合って遅くなるメンバーとは別に先に食べていいよ~くらいは言いそうである。
いやどうだろうか。一緒に食べたいから待っててよ―とか言うかもしれない。
となるとやっぱりアイだったりするだろうか。
だが、アクアは最終的にはやれやれという顔で短い返事を返しているようだから、これはルビーだな。
俺は詳しいんだ。
「さて、ちょっと散歩がてらぶらっと歩いてくる。もうルビーたちも宿に戻ってるらしいから顔出しもしてくる」
「ん? それなら俺も……」
「いや、あっちにはミヤコさんもいるしな。MEMはまだらしいし、会いに行くならMEMが戻ってからの方が良いんじゃないか?」
「ん、あ~、まあ、そうしようかな」
なんだ~? よくわからないが、なんだか妙な胸騒ぎを感じる。
だが、弟には嫌われたくないのでそれ以上強くは追求しないが。
まあ、なにか悩みなら後で相談してくれるに違いない。
しかし、食事を終え、部屋には布団が2人分引かれ、ダラダラゴロゴロテレビを見ていたが、アクアは帰ってこなかった。
その日、彼は結局戻らなかった。
来たのは、別の人物だったのである。
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PV撮影は最高の評価だったらしい。
心に浮かびこびりつきながらガーゼにしみていく血のように、じんわりと黒くてどす黒い気持ちが胸の奥へと登り続けていく時間だったけど、何が評価されるかわからないものである。
脳内でゴローせんせを殺した犯人をナイフで滅多刺しにして石を投げつけて、本人が味わったであろう苦しみ以上を与えてやると頭では考え続けていた。
でも、思った以上にその想像はチープで、時間が経つにつれ、強い憎しみは薄らいでもいく。
ゴローせんせはアクアとして生きているのを知っているからだ。
アクアが、生まれた瞬間からずっと一緒に生きていたお兄ちゃんが今苦しんでないからだ。
人生を謳歌して、目標に静かに燃えていて。
アイドルという夢を楽しむ私のように、楽しんであるからだ。
もしもそんな姿を知らなかったら、我慢できてなかっただろう。
ゴローせんせは優しく「さりなちゃんは心配しなくていいよ」と脳内で頭を撫でながら言ってくれたし、アクアは「俺の方でなんとかしておく」と言ってどこかに電話しに言ってしまった。
脳内なのにふたりとも全くこっちに任せる気がない。
「わかったよ、
大切な人を害されたという憎しみが薄れると、代わりに湧いてきたのはいつ同じように他の人が、自分の人生が失われるかもしれないという可能性だった。
アイドルとしての自分は、ファンに足跡を残し始めた。
たしかに今死んでも多くの、ほぼ99%の人には1月後には記憶に上らなくなる程度かもしれない。
でも、あの子は違う。
きっと一生想ってくれる。記憶に残してくれる。
私のように。
でも、彼にはどれだけ私が残るだろうか。
共演者。
後輩。
友達。
妹のような……?
いくつか二人の間に結べる関係を考えていくが、どれも、満足ができるだけのつながりじゃなかった。
今私が、彼が死んでしまったとして、自分は後悔しないですむだろうか。
「もう、後悔したくない……!」
脳内でママが「そうだよ! ルビー!」といつもの笑顔で語りかけてくくる。
『ヤろうと思ったときがすべきときだよ☆』
どこか【ヤ】のイントネーションが違って感じたが、気のせいだろう。
最高のアイドルで最高のママがそういうんだもん、間違いないよね!
15年近く生のアイと過ごしていたルビーのアイエミュは完璧だった。
胸の奥にガソリンが流し込まれていくのがわかる。
あえて言うなら本物に相談していたら『ヤろうと思ったときがすべきときだよ☆ 私もそれで行けた!』くらい言ったかもしれない。
脳内でアイの声援を受けたルビーは決意した!
「処女あげてくる!!」
偶然にも他のメンバーは先にお風呂に入りに行っていたので部屋にいるのはルビーだけだったからその言葉を聞いている人はだれもいなかった。
よし体をきれいにしてこよう!
ルビーは気合を入れて温泉に向かった。
来週は次話にプラスしてあっちも更新の予定です