ぼっちちゃんの彼氏はバスケ部エース   作:リーグロード

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完全な思い付きによる短編レベルの作品です。


噓は時には真実になる

 俺は俺以外の人間全てが猿に思える。

 そう思えたのが、俺が特別だからだ。

 

 俺は何も生まれが特別なわけでも、容姿が特別なわけでもない。

 ただ、その身体能力が他の人より優れている。いや、優れているなんて言葉ですら足りないぐらい俺の身体能力は飛びぬけて優秀だった。

 

 小学生ながらにその身長は高校生かと見間違う程にデカく、体付きにしたってプロのスポーツ選手並みに筋肉の発達したまるでゴリラのような体格だった。

 

 お陰でイジメなんて下らない問題には小学生だった6年間は縁がなかった。

 だが、中学ではそうではなかった。思春期になり、イジメが目に見える暴力や悪口だけではないと中途半端に知恵をつけた悪ガキが育ち、テストという小学生の頃よりも明確に他人との順位を理解させられ、部活動ではレギュラーと補欠という試合に出れる者と出れない者が分かれる環境が出来上がる。

 

 そんな中で目立つ存在がいればどうなるか?古来より日本の諺でこんな言葉がある『出る杭は打たれる』と、その言葉通り、俺は陰湿なイジメにあった。

 

 俺は中学の部活ではバスケに所属し、そこで新入生ながらに結果を出した。

 圧倒的な身体能力に加えて、動画で学んだプロの動きを見事に再現してみせて3年生だろうが圧倒して倒してみせた。

 

 そんな才能の原石である俺を見て部活の顧問や勝てないと悟った野郎共は即座に俺を褒めにかかった。

 だが、中にはそれが気に食わないという連中もそこそこ存在し、俺が正式に入部したと同時に物を隠す、捨てる、仲間はずれと自分が犯人だとバレないように証拠隠滅を図るといった古典的な手法を取り始めたのだ。

 

 当然、俺はそれに気付かないほど馬鹿じゃないし鈍感でもない。

 ずば抜けた身体能力で俺は犯人に目星をつけた。嗅覚で相手の臭いを、聴覚で自慢げに俺にしたイジメを喋る馬鹿を、視覚で鎌をかけた際に見せた相手の挙動で犯人を突き止めた。

 

 その後どうなったかだって?んなもん、あれから俺は平穏な日々を過ごしていると言えば結果がどうなったのかなんて語るまでもねえだろ。

 

 それから俺は1年ながらにバスケ部のレギュラーになった。俺の活躍はまさに無双ゲーと評されるように、俺がボールを持てば確実に点が入る。

 誰も俺を止められねえし、俺を抜かせねえ。そんな男がいるのに優勝できねえなんておかしな話があるわけでもなく、俺の学校はあっさりと全国大会で優勝してみせた。

 

「つまんねえな……」

 

 それがきっかけで、3年が卒業して次のキャプテンには誰がなるかで一時モメたが、俺は強くても猿共を纏める才はねえってことで辞退した。

 

 そうして、適当に練習に参加したり不参加だったりと自由気ままに過ごし、気が付けばもう3年になっていた。

 すでに俺はスポーツ特待生枠の推薦を貰っているので、よっぽどの事件でも起こさない限りは高校受験は問題はなかった。

 

「まあ、勉強なんざ授業を聞いてる分だけで事足りるしな」

 

 今日も練習をサボって自宅に帰り、暇つぶしにYouTubeで動画を見ているとオススメ動画の中に最新の曲を弾いてみたの動画が出てきた。

 サムネではピンク色の冴えないジャージ姿の女性がギターを持っていた。

 

 ちょっとした興味本位で覗いてみれば俺は度肝を抜かれた。その技量の高さに驚かされたのもそうだが、その演奏している女が俺と変わらない年齢だということだ。

 

「へぇ~、ギターヒーローねえ。……ん?」

 

「バスケ部エースの彼氏持ち」や「ラインの友達数は1000人超え」などの明らかにこんなピンクジャージが出来るとは思えない虚言の数々に眉をひそめる。

 特に最初のバスケ部エースの彼氏持ちに笑いすら起こしそうになった。

 

「おいおい、なんだこれは?」

 

 俺の学校には1人変人がいる。学校の制服ではなく、いつもピンクジャージを着ており、誰かとつるんでいるのも見かけないぼっちな女。

 

 その女が着ているピンクジャージがこの動画に出ているギターヒーローと全く同じものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side:後藤 ひとり

 

 最近、YouTubeにアップしているギターヒーローのアカウントのチャンネル登録者数が順調に増えていっている。

 ただなんとなくネット上で人気者になれると思って投稿していたのが、何時の間にか登録者10万人近い数に上がっている。

 

 まあ、でもリアルじゃ万どころか1人の友達すらいないですけれども。

 もしクラスの誰かがギターヒーローの動画を見て話題に出していたら……。

 

「ねえ知ってる?ギターヒーローって人の動画?」

 

「あー知ってる!あのイケてるギタリストの人のやつだよね!?」

 

「あのさ、ギターヒーローさんていつもピンクジャージじゃん。あの後藤さんもピンクジャージ着てるけど、もしかして……」

 

 ギュギュギュイーン!!!!

 

「……どうも後藤あらためギターヒーローです」

 

「「「キャ───!!!」」」

 

 なんて、そんな都合のいい展開なんて起きないよね。っていうか、もし仮にそんな会話が目の前で起きても多分私じゃギターを演奏するどころか話し掛けることすら出来ないと思うし。

 

「はぁ~」

 

 ひとりが勝手に自己嫌悪していると、教室がにわかに騒がしくなる。

 普段からぼっちであるひとりにとって教室でのイベントなど関わりなどはないが、興味が無いという訳ではないので、机に突っ伏していた顔を少しだけ上げて何があったのか確認しようとすると、目の前に熊かと見紛う程にデカイ男の人が立っていた。

 

「おっ、起きた」

 

「ひゃ、ひゃあぁぁぁ……」

 

 上から覗き込むように立つ男の人にか細い怯えた声を上げるひとり。

 そんな今のひとりの心情は「何この人!?怖い!私に用?もしかしてカツアゲ!?」と内心でパニックを起こしまくっていた。

 

 そんなひとりを無視して男は目の前の席に座って喋りかけてきた。

 

「なあ、この動画ってもしかしなくてもお前だよな、ギターヒーロー?」

 

 そう言って見せてきたのは私がつい最近アップした動画だった。

 もしかして私のファン!?と驚きと嬉しさが同時に湧いたが、相手の顔を見た瞬間にその気持ちはすぐさま消え去った。

 何故なら、相手の顔がとても怖いから。

 

 具体的に言えば、平気でDVして金を巻き上げるクズ男の風貌をしている。

 これ絶対に悪い目的で近づいてきたやつだ。

 

「あ、は……いえ……ちがっ……」

 

 恐怖と緊張ではっきりと否定の言葉が出せない私を見てしびれを切らしたのか、急に私の手を取って握りしめてきた。

 

「この動画に映っているピンクのジャージに加えて、この手の傷や形からして本人なのは間違いねえ。もしかして、俺に噓つく気だった?」

 

「あっ、いえ……」

 

 決して怒ってはいないのだろうが、その声色はまるで借金取りのヤクザのようで、冷静なのが逆に怖いと感じてしまう。

 

「それじゃあさ、このバスケ部エースの彼氏持ちってなに?」

 

「あびゃばばばば!!?」

 

 いきなり現れた爆弾発言に思わず奇声を上げてしまった。

 まさか私が書いていた虚言が書き綴られていたコメント欄のところも見られていただなんて!?

 

 しかも、今のショックで思い出したが、今話している彼って確かウチの学校のバスケ部エース!?

 そういえばこの前のバスケ部優勝の時に壇上で表彰されていたのを思い出した。

 

「こ……これは、その……!?あべしっ!!」

 

「っっっ!!?」

 

 咄嵯の言い訳を考えようとしたが、恐怖と焦りのあまり自爆みたいに爆散してしまった。

 不幸中の幸いか、目の前に座っていた男の人は運動部だからなのか反射的に椅子を蹴飛ばして後ろに跳びのいたお陰で無傷ではあった。

 

 このまま申し訳なさで固まりかけたが、早く謝罪しないとと思い爆散した体の破片をメンダコに変身させて本体に戻るように集合させる。

 全ての破片が集まって元の姿に戻って恐る恐る目を開けて男の人を見てみると、驚愕した表情でニヤリといった感じで笑っていた。

 

「んだよ今のは……。っは、面白れぇ女じゃねえか」

 

「あ、あの、すみませんでした!!」

 

 それは今の爆散したこと謝っているのか、それとも勝手に彼氏だと噓をついた事を謝ったのか、どちらにしろ関係ない。

 俺は離れた距離を詰めて再び目の前に立つ。

 

「なあ、俺の彼女になれよ」

 

「え?いや、なんでですか?」

 

 突然の告白に素で返してしまう。だって意味わかんないし。

 こんな見た目も中身も陰キャの私なんかより可愛くて性格も良い女の子良い女の子なんて沢山いるのに?

 

 本気で訳が分からなくて困惑していると、男の人がまるで逃がさないとばかしに肩を掴んできた。

 別に強く掴んできてはいないので痛くはないのだが、そんな獲物を狩る肉食獣みたいな顔で近づかれると普通に怖いんですが。

 

「ああ、理由か……。んじゃ、噓から出た実ってことで」

 

「え、ええ……」

 

 あまりに適当な理由に、もうちょっとちゃんとした理由でも用意しているのかと思ったので、呆れた声で返事をしてしまう。

 でも、こんな状況でどこか冷静になってきた私の脳内でバスケ部エースと付き合えるなんてこの先の未来で一生ないぞと囁く悪魔がいた。

 その一方で私の中の天使がこんなの絶対に噓!きっと都合のいい女にされて終わりだよと抵抗する天使もいる。

 

 「まあ、とりあえず今日からよろしくな、俺の彼女さん」

 

「あ、はい……」

 

 結局私は悪魔の誘惑に負けて了承してしまった。

 

「そういえば、まだ互いに自己紹介もしてなかったな。っといっても、俺の名前は知ってるだろうが」

 

「あ、えっと、その……」

 

「マジかよ。これでも結構な有名人だと自負してたんだがな」

 

「ごめんなさい……」

 

「まあ、別に気にすんなって。ほら、俺の名前は鬼龍院 零士だ」

 

「わ、私は後藤 ひとりです!」

 

 こうして私と彼は付き合い始めたのだ。

 それと同時にキーンコーンカーンコーン!と昼休みが終わることを告げるチャイムが鳴り、零士君は自分の教室に戻っていった。

 

 私も急な展開に頭を整理しようと机に突っ伏して寝るフリをしようとしたが、零士君が去った直後に今のやり取りを目撃していたクラスメイトの女子達から質問攻めにあって顔面崩壊して騒がれた。

 

 




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