ぼっちちゃんの彼氏はバスケ部エース   作:リーグロード

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なんか今日急に閲覧数が増えたなと思ってランキングを覗いてみたら、ランキング入りしていてファッ!?ってなった。


参上!マンゴー戦士

 時間という概念は人間が生み出したエゴのようなもの、この世界には本来は時間などというものは存在せず、我らはただこの生に感謝しながらただ流れのままに生きていけばよい。

 

「よって、今日という日は存在せず、登校時間という概念は存在し得ない。よって、私は今日を休みたい所存でして……」

「はいはい、馬鹿なこと言ってないでさっさと学校に行く準備しなさい」

「い~や~!」

 

 抵抗虚しく布団を引き剝がされた私は渋々朝食を済まして歯を磨く。

 櫛を梳いても直らないアホ毛に苦戦しながら、登校時間が本当にギリギリになった為に家を出る。

 

 学校に行くのももう手慣れたもので、最初は片道数時間かけての道のりに苦労したものだが、今はもう電車の乗り換えもスムーズだ。

 電車に揺られて、目的の駅で下車して徒歩数分もすればもう学校が見えてくる。

 

「おはよ~」

「昨日のテレビ見た?」

「今日も朝練だりぃ~」

「あ~、宿題やってくるの忘れた~!!」

 

 朝から元気な皆の声が聞こえてくる。

 そんな陽気な輪から外れた位置から私はこっそりと学校に入ろうとする。

 だけど、そんな私の肩を優しく叩く者が一人。

 

「おはよう! 後藤さん」

「うひゃっ! あっ、喜多ちゃん。お、おはようございます」

 

 昨日電話で話した時は不安そうな声だったけれど、今日の様子を見る限りは大丈夫そうだ。

 問題なのは自分の方。寝る前はなんとかできそうな気がしてたけど、起きてからいざ学校へ行こうとした瞬間に襲い来る不安という姿無き魔物が憑りついている。

 

 放課後に行われる下北沢でのライブという一大イベントが控えて待っているためか、今日の学校の授業があっという間に終わってしまったように感じる。

 みんなが下校の準備を進めるなか、私は動けないでいた。

 

 コミュ症にとっての人前に出るということは死刑にされるという事と同義であり、このままSTARRYに行って人前でライブするというのは自ら処刑台に登るということに他ならない。

 いっそのこと、このまま逃げ出してしまいたいが、同じ学校に喜多ちゃんがいるからには、逃げ出したとしても後日、「逃げたギター!」と呼ばれてリンチの刑に処される可能性も!? 

 

「あわわわ……」

「後藤さ~ん! 早くSTARRYに行きましょう!!」

 

 私を地獄へ誘う天使のような悪魔の声が聞こえてきた。

 ど……どうしよう、このまま断って逃げ出してしまおうか。でも、そうなったらもう二度とバンドなんて組んでもらえないだろうし、当日にドタキャンしたなんて噂が学校中に広がりでもしたら……。

 

「ねえ見て、あれが喜多ちゃんの組んでるバンドから逃げだした後藤さんよ」

「う~わっ、最低じゃん」

「喜多ちゃん可哀想~」

 

 周りの人の見る目がどんどん冷たくなっていって終いには……。

 

「被告人、後藤ひとりをバンド逃げだした罪で死刑に処す!」

 

 だ……だ……駄目だ!? もし逃げ出そうものなら私の学校生活終了どころか人生終了しちゃう!! 

 けど、人前でライブしても私なんかじゃお客さんを満足させれずにみんなの足を引っ張っちゃうだろうし……。

 

「あ、あの、やっぱり私まだ人前で演奏は……」

「さあ、もう先輩達はSTARRYに着いてるでしょうし、私達も早く行きましょう!!」

 

 ああ……、全然話し聞いてくれない。

 結局、そのまま喜多ちゃんにズルズルと手を引っ張られて下北沢へ連れて行かれる。

 

「あ~、その後藤さん。そんな背中に引っ付かれたら歩きづらいんだけれども」

「ご……ご……ごめんなさい。でも、もうすぐ人前でギターを弾くって考えたら腰が抜けちゃって……」

 

 産まれたての小鹿のようにプルプルとへっぴり腰で歩くひとりにしがみつかれながらも、STARRYへなんとか到着する。

 既にそこにはリョウと虹夏がライブ前の最後の練習に取り掛かっていた。

 

「あっ、2人共もう来たんだ。ちょっと待っててね……」

 

 もうそろそろお店が開店する時刻が迫っている為、練習に使用していた自分達の機材を片付けている。

 ベースのリョウはすぐに片付けを終えているが、虹夏はドラムを担当している為に片付けに時間が掛かっている。

 

「はぁ~、仕方ない。1人でやってると時間掛かるでしょ。私も手伝うから、ちょっとは頼りなよ」

「えっ!? あのグータラなリョウが手伝いを率先して言い出すとか、もしかして熱でもある?」

「むう、失礼な。もたもたしてたらライブ前のミーティングが出来ないからしょうがなく手伝いにきただけ」

「はいはい、ツンデレ乙!」

 

 あーだこーだと言い争いしながらもテキパキとドラムを片付ける2人を尻目に、後藤と喜多の2人も後から片付けの手伝いに加わる。

 そうして、ステージ上の機材を全て片付け終えると、控え室で雑談を交えつつミーティングを始める。

 すると、ちょうどSTARRYが開店したようで、お客さんが続々と入ってくるのを壁越しに感じる。ライブが始まるまでは、後30分も無い。

 それまでに虹夏からひとりと喜多に演奏中の注意事項やアドバイスを一通り説明が終えると、前座を担当するバンドマン達がステージに立つ。

 それと同時に、店内にフロアにいる客の歓声が響き渡り、控え室にいた自分達の耳にまで届いてきた。

 

「いや~、あっちは随分と盛り上がってるね」

「まだ始まったばかりだから、これからもっと増えるだろうね」

「すごいですね、先輩たち。私なんかもう緊張してノドがカラカラになってきましたよ。ねえ、後藤さん! って、あれ? 後藤さん?」

 

 まるで緊張した様子を見せない先輩ら2人に羨望の眼差しを向けながら喜多は同意を求めるも、隣にいたはずのひとりがいつの間にか消えていた。

 どこにいったのかと辺りを見渡すと控え室の隅に置いてあるゴミ箱の中でガタガタと震えて閉じこもってしまっていた。

 

 昨日の寝る直前まであった自分でも出来るという謎の自信は一度寝ることでリセットされ、学校で過ごすうちに不安でテンションが下がってゆき、つい今しがたの歓声でとうとう限界を超えてしまった。

 

「ちょっ!? 出てきてぼっちちゃん!! もうすぐ本番始まっちゃうよ!」

「ご……ご……ごめんなさい! ややややっぱり私には出来ません~……」

「そこをなんとか~~~!!」

「きょっ今日のところはお帰りください────っ!!」

「ここ、あたしの家なんだけど!?」

 

 茶番劇のようなコントを繰り広げていると、2人の会話に参加してこなかったリョウと喜多がなにやらダンボールで出来た作品のような物を運んできた。

 

「初の私達のライブだし、後藤さんの性格からいって直前でモメるかなって思って」

「私が作りました!」

 

 それは完熟マンゴーと書かれたダンボールの甲冑であり、サイズ的に私が着れる物だった。

 その所々(ところどころ)に♡や☆のシールが貼られてあるのは喜多ちゃんの仕業だろう。

 

 虹夏ちゃんはこれを持ってきたリョウさんに「変な物作ってる暇があるなら練習しなさい!」と怒っているが、折角2人が作ってくれたのだからと、2人が持ってきたダンボールの甲冑を着込むと、その暗さと狭さから実家のような安心感を得る。

 それに、器用なことにこのダンボールの甲冑は可動域が多く、指先も露出しているお陰でギターを演奏するのに全くもって問題がない。

 

「えっ、え~っと、みんなで下北沢を盛り上げていきましょう!」

 

(((なんか急に気が大きくなったな……)))

 

 とはいえ、ライブに出演してくれる気になってくれたのなら結果オーライだろう。

 本当ならばこんな馬鹿な被り物は脱がせるべきなのだろうが、ひとりが人前に素直に出られない性格なのは全員が周知の上で、もうすぐ自分達の出番も迫ってきている。

 

「あっ、もう私達の前のバンドの演奏が終わっちゃったみたいですよ」

「えっ、じゃあもうすぐで私達の出番じゃん!!」

 

 先程まで控え室にまで微かに聞こえてきていた音楽が鳴りやみ、パチパチと拍手の音を喜多ちゃんの耳がキャッチする。

 それに釣られるように、私達もSTARRYのステージに上がる準備を急ピッチでし始める。

 

 そこでふと、大事なことを聞くのを忘れていた。

 

「あの、そういえば私達のバンド名って聞いてません」

「あっ、私もそういえば聞いてませんでした」

「うっ!」

 

 私と喜多ちゃんの疑問の声に、虹夏ちゃんが苦悶の声が入り混じった声を漏らして固まる。

 その間に、リョウさんがちょっとドヤ顔混じりに「結束バンド」とバンド名を発表する。

 その際に虹夏ちゃんが悲鳴のような声を上げるが、そんなことを気にすることなくリョウさんは「傑作……」と笑っていた。

 その後、絶対に名前を変えると言い張る虹夏ちゃんだったが、私も喜多ちゃんも普段朗らかで慌てふためく様子を滅多に見せない虹夏ちゃんの可愛いらしい反応を見て結束バンドという名前も仲がよさそうでいいんじゃないかといいかもなんて考えていた。

 そうこうしているうちにスタッフさんから出演の呼び出しを掛けられる。

 

 ピロン♪ 

 

「あっ」

 

 出番前にスマホの電源を切っておこうとポケットに手を伸ばした瞬間、1通のLINEのメッセージが届いた。

 その差出人は、今日部活の練習でライブに来れないと言っていた零士君で、内容はシンプルに『精々、お前が楽しんで演奏してこい』とだけ書かれてあった。

 

「……ふ、っふふふ」

「お~い、どうしたのぼっちちゃん? そんな急に笑い出して」

「リョウ先輩、あれってきっと……」

「直前でLINEの通知音に加えて、画面を見てからに急な笑い。これは十中八九、ぼっちの彼氏からのメッセージ!」

 

 キャー! とアオハル展開に盛り上がる喜多ちゃんに、ヒュ~ヒュ~♪ とはやしたてるリョウ先輩と、それを黙らせる虹夏ちゃん。

 本番前だけれども、こういう仲間内のノリみたいな雰囲気と直前での零士君からの応援メッセージにお客さんが居るステージ上に立つ勇気が湧いた。(ダンボールの甲冑を着ているけれども)

 そして、私、虹夏ちゃん、リョウさん、喜多ちゃんの4人による結束バンドの初のライブが幕を開けた。

 

 




前回の最後の台詞で薄々感づいている人もいたでしょうが、ひとりちゃんは彼氏が出来てもメンタルは基本的にリセット機能常備のクソ雑魚仕様です!!!
ですので、ひとりちゃんを見捨てたり呆れたりする系のオリ主ではなく、優しいながらも強引系の王子様タイプのオリ主を作成してあげましょう。
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