ぼっちちゃんの彼氏はバスケ部エース   作:リーグロード

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更新速度亀でスマヌ!


風邪ひいちゃった

 あれから数日、平凡で変わりない日常生活を送っていると、ひとりからLINEで風邪をひいたという内容のメッセージが送られてきた。

 

「ってわけで、今日の練習は休むって伝えといてくれ」

「了解。ってか、やっぱりお前他校に彼女いたんだな」

「ったりめぇだろ、じゃなきゃマネージャーに速攻で手出してるっての」

 

 ひとりの看病の為に、放課後あいつの家に寄る為に今日の練習は休むとクラス内の同じ部活のメンバーに言伝を頼んでおいた。

 

 一応、風邪によく効く薬とスポドリ、それからゼリーを3種類買って行く。これで一般的な見舞いの品物は買い込めたな。

 

 LINEでも見舞いに行くと送ったら風邪をうつしちゃ悪いといって拒否されたが、電話越しに説得(非常に顔が赤くなるような告白染みたこと)を続けたことで渋々といった様子で家の住所を聞き出せた。

 

「ここがひとりの家か」

 

 他の住宅と変わらない一般的な家だ。まあ、当然といえば当然なんだがな。

 今はこの家にひとりの親と妹がいるらしいし、ついでにそっちにも顔合わせはしておくとするか。

 

 ピンポーン♪

 

 チャイムを鳴らしてから少し待つと、奥の方からパタパタとこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。

 

「はい、誰ですか?」

 

 玄関ドアから少し顔を出してこちらを覗き込んできたのはひとりと同じピンク色の髪をした若い女の人だ。

 見知らぬ男性である俺を警戒しているのか、その顔には不安の色が見える。

 

「ああ、どうも。ひとりとお付き合いさせてもらってます、鬼龍院零士っていいます」

「まあ、ひとりちゃんの彼氏君!」

 

 俺の自己紹介を聞いて、先程とは打って変わって嬉しそうな満面の笑みで出迎えてくれる。

 っていうか、ひとりの奴、案外ちゃんと俺のこと家族に報告してたんだな。

 なんだかんだ恥ずかしがって家族とかには黙ってるもんだと思ってたが違ってたようだ。

 

 それにしても、彼氏と聞いて物凄く嬉しそうな顔をしているが、他の家族も似たような反応しているのか?

 特に、こういう場合、娘は絶対に渡さん!みたいな父親がいたりするってのが相場らしいが、ひとりの家は大丈夫か?

 いざとなりゃ、サシで決着(けり)つけるつもりだったが、荒事にならないなら面倒がなくて助かる。

 

「お母さ~ん、誰が来たの?」

「あら、ふたりちゃん。ほら、例のお姉ちゃんの彼氏さんだよ」

「ええぇ~~、お姉ちゃんの彼氏!?」

 

 部屋の扉の陰から隠れながらこっちを伺っていたひとりにそっくりなちっこい子供が母親の言葉に反応する。

 そして、ドタドタと大きな足音を鳴らしてこっちに走ってくる。

 

「わ~、でっか~い!!」

「おお、ひとりと違って随分と人懐っこいというか、元気一杯だな」

 

 俺の足にしがみついてくるひとりの妹であるふたりの頭を優しく撫でてやると嬉しそうな顔でキャッキャッとはしゃぐ。

 とはいえ、このまま絡まれてたらひとりの見舞いも出来ねえし、ここは貢物として買ってあったゼリーを1個プレゼントすることで解放してもらう。

 

「ひとりちゃんの部屋は2階だから、ごゆっくり~~♪」

 

 あらあらうふふ♪とばかしにスキップしながら母親はひとりの妹と一緒に奥へと引っ込んでいく。

 その謎のテンションの高さには時々おかしくなるひとりの血を感じるな。

 

 そんな母親からの言葉を頼りに2階へ上がると、ゴホゴホと咳き込む音が聞こえてくる。

 俺は無遠慮にその咳き込んだ声が聞こえてきた部屋の扉を開けて中へと入っていた。

 

「よ~っす!見舞いに来てやったぞ、ひとり」

「あっ!れ……零士君!?もう来てたんだ」

「結構下の方で騒がしくしてたんだが気づいてなかったのか?」

 

 かなり熱でまいってたのか、あの騒ぎに気がついてなかったみたいだ。

 顔を赤くしたひとりが布団からフラフラとした足取りで起き上がろうとしているのを制止する。

 

「いいから大人しく寝とけ。あっ、ゼリー買ってきたけど、モモとみかんどっちが食いたい?ブドウ味は妹の方にやったからそっちは勘弁な」

「そんな悪いよ。あっ!ゼリーの代金払うから!」

 

 また立ち上がろうとするひとりの頭を掴んで無理矢理に枕へ押し戻しながら、俺は持って来たみかんゼリーを袋から取り出して蓋を開ける。

 それに反応したひとりが物欲しそうな顔でこっちを見てくるので、スプーンで掬ったそれをひとりへと差し出してやる。

 

「ほれ、あ~ん」

「あっ、あっ、あっ、あ~ん」

 

 最初は恥ずかしがっていたが、最後には観念して満更でもない顔をしながらひとりがゆっくりとスプーンを口に含むと、ゼリーの甘さを堪能するように口をモゴモゴさせ始める。

 残りのモモは夕食後のデザートとして冷蔵庫にでも置いておくか。

 

「それにしても、お前症状は熱と咳だけか?」

「うん、熱の方もだいぶ下がって、後は咳がちょっと辛いぐらい……」

「そっか、ならほれ、水分補給はしっかりしとけ」

 

 ひとりの頬に少しぬるくなったスポドリを押し付ける。

 ひとりは冷たさに若干驚きながらも、その冷たい感触を味わいながらスポドリのキャップを開けてゴクゴクと飲み始める。

 その様子を見ていたら俺も喉が渇いてきたな。

 

「なあ、俺も喉乾いたし、それくれよ」

「えっ、あっ、はい……」

 

 熱で思考が鈍っているのか、顔を真っ赤にしながらペットボトルを差し出してくるひとり。

 それを受け取った俺は一口分だけスポドリを口に含んで飲む。

 

「ゴクッ、ふぅ〜、これで間接キスだな」

「っふぇ!?!?」

 

 イタズラっぽく舌を出してそう言ってやると、風邪でほんのり赤くなっている顔を更に赤くして口に手を当てて意識する。

 そんなひとりの反応を見て俺はニヤニヤと楽しむ。

 

「照れんなよ。こんなの中学生レベルのままごとみたいなもんだろ?」

「そ……そ……そんなことないよ!!か……間接でもキ……キスはキスだよ!!」

 

 くくく……と笑う零士に対して、ひとりは汗を垂れ流しにしながらギャグ漫画のキャラみたく慌てて取り乱している。

 

 そんな完全に零士の掌の上で踊らされる愉快なひとりを見つめる影が現れる。

 

「お姉ちゃん、彼氏くんとキスしたの?」

「ふ、ふたり!?いつの間に……!?」

 

 部屋に入ってきたふたりはちゅ〜う!ちゅ〜う!と姉の色恋沙汰を面白がって騒ぎ立てる。

 途中、飼い犬のジミヘンまで部屋に入ってきてひとりの周りを走り回るふたりの後ろをついて走るものだから、かなりの大騒ぎになったが、流石に病人の周りをはしゃぎ回る幼児を放っておくことは出来ず、零士ははしゃぐふたりの首根っこを引っ掴んで自身の膝の上に座らせる。

 

「こら、病人の目の前ではしゃいでんじゃねえぞ」

「は〜い!」

 

 素直に言うことを聞くふたりの頭を撫でながら、俺はふたりの顔を覗き込む。

 

「ねえ、お兄ちゃんはなんでお姉ちゃんと付き合ったの?」

「ちょっ、ふたり!?」

「ん~、なんでだと思う?」

 

 ひとりが慌てる中、俺は余裕の表情でふたりからの質問に質問で返す。

 

「えっと……お姉ちゃんのことが好きだから?」

「まあ、そうだな。でも残念、ひとりのことを好きになったのは付き合った後のことだから不正解だな」

「え~、でも付き合うって好きな人同士がするって幼稚園の先生が言ってたよ!」

「おう、そうだな。でも世の中それだけが正解じゃねえぞ」

「あっ、ちょっ、もうその辺で!?」

「ダ~メ~!ふたりももう少し俺の話し聞きたいよな?」

「うん!!」

 

 ふたりからの追求に淀みなく答える零士。

 ふたりの純粋な好奇心からくる質問に対して、ひとりは止めようと手を伸ばすが、零士がくるりと反対に向くことで、その手は空を切った。

 

「俺がひとりの奴と付き合ったのはな、俺がひとりの噓に引っ掛かったのがきっかけだ」

「え~、お姉ちゃん噓ついたの?」

「あわわわ……!!?」

 

 ジトー!と零士の脇から顔を出して姉を目で睨むふたり。

 そんなふたりからの非難めいた眼差しにひとりはアワアワと慌てふためくが、零士はそんなふたりを宥めながら話を続ける。

 

「いいか、ふたり。女にとって男を誑かすのはドレスを着飾るようなもんだ。そんで、俺はそのドレスに釣られた哀れな被害者ってことだ」

「なんか噓っぽ~い。お姉ちゃんがそんな器用なこと出来る筈ないもん!」

 

 むむっと疑いの眼差しを向けるふたり。

 まあ、こいつらから見て普段のひとりがそんなに器用なタイプには見えないだろうしな。

 実際、ひとりは噓をつくのは下手だし、他人を騙すなんて逆立ちしても出来そうにないし、噓をつこうとすると途端に挙動不審になるからな。

 

 俺は幼児特有の柔らかい肌の感触を楽しみながら、噓ではないことをふたりの頭を撫でることで伝えてやる。

 すると、ふたりは気持ちよさそうに目を細めながら聞き入る。

 

「確かにひとりは噓をつくなんざ下手くそだ。けどな、そんな奴でもネット上じゃペッラペラに虚言を吐いて自己承認欲求を満たす、それが女って生き物なんだ。勿論、ひとりも例外じゃねえ」

「へ~、じゃあお姉ちゃんはお兄ちゃんを本当に騙してたの?」

「まあ、正確には俺じゃなくて不特定多数のファンを騙して悦に浸ってたのさ」

「あうぅ~~~」

 

 中学の頃の黒歴史を妹に晒されてひとりが顔を赤くする。

 まあ、これも自業自得の因果応報って奴だ。甘んじて受け取りな。

 

「でも、それじゃあなんでお兄ちゃんはお姉ちゃんと付き合ったの?」

「まあ当然の疑問だな。でもな、ふたり。興味や好奇心から付き合う男女もいるってことだ。だから、お前ももっと大人になって色々経験していけば良いさ」

「ふ~~ん……」

 

 そう言うとふたりは少し考え込むような素振りを見せて黙ってしまう。

 そんなふたりに対して零士は苦笑いを浮かべながらふたりの頭を強めにガシガシと撫でつける。

 

「まっ、そうは言ってもまだまだお前には早い話だ。それに、俺達の交際は特殊ケースだからあんまり参考にしない方がいい」

「う~ん、わかった!」

 

 考えても分らないのなら考えなくてもよい。そんな幼子らしい結論に至ったふたりは深く考えずに零士の言葉に頷く。

 

「さて、お喋りはこの辺にしてそろそろお暇するわ。流石に病人の前で騒ぐのも悪りぃしな」

「お兄ちゃんもう帰っちゃうの?」

 

 首を傾げて寂しそうな表情をするふたり。

 もう少しいてやりたくなる気持ちになるが、窓の外を覗くとそろそろ日が暮れて夕方になりそうになっている。

 これ以上居座ってもひとりに気を遣わせちまうし、帰り支度をしようとするとふたりが不意に俺の服の裾を掴んでくる。

 

「また来てくれる?」

「おう、勿論だ」

 

 裾を掴むふたりの頭を優しく撫でてやるとふたりも気持ちよさそうに目を閉じてはにかむ。

 それを見てひとりも羨ましそうに布団の隙間から覗いてくる。

 っていうか、さっきから俺の膝の上に乗っかっている実の妹に対してジェラってる感情が時折チクチク刺さってる。

 これは感覚の鋭い俺だからこそわかることだが、ふたりはそんな姉の視線に気付く様子をみせることなく俺に抱き着いてくる。

 

「ほら、これ以上ここに居てお姉ちゃんの風邪がうつったら不味いし、ふたりはもう下に降りておけ」

「はーい!いくよジミヘン!」

「ワン!!」

 

 我儘も言わずに素直に飼い犬と一緒に下へ降りるふたりに今時珍しい聞き分けの良い子だと感心していた。

 ふたりとジミヘンが出て行ったお陰で、さっきまで賑やかだった部屋に静けさが戻ってくる。

 

「それじゃ俺は帰るとするわ。ってか、そういやひとり、お前なんで風邪なんてひいたんだ?」

「そ……それは……、ほら、季節の変わり目とかで体を崩しちゃって」

 

 ひとりの目が分かりやすく泳いでいる。これは噓だな。

 まあ、どうせいつものくだらないひとりの暴走によるトンチキ行動によって生じた結果だろう。

 

「お姉ちゃんがお風邪をひいたのはね、お風呂上がりに下着のままギターを弾いてたからなんだよ」

「ひゃぁっ~~~!!こ、こら、ふたり!!?」

「キャハハハハッ!!!」

 

 いつの間に戻ってきていたのか、こっそりと話を聞いていたふたりが隠していた秘密をあっさりと暴露してひとりが慌てふためく。

 そのまま顔を真っ赤にして叫びながらギャグ漫画みたく顔を崩して怒るひとりだが、ふたりは笑いながら去っていった。

 

「ふ~ん、今の話ってマジ?」

「…………」

 

 無言で明後日の方向を向くひとりの反応を見て本当なのだと確信する。

 

「そっか、惜しかったな。ひとりのエッチな下着姿は男として興味があったんだがな♡」

「うぇひっ!?」

 

 恥ずかしさから枕に顔を埋めて隠れるひとりの耳元で自身の本心を囁く。

 すると、顔を跳ね上げて可愛らしい顔でこっちを見つめるひとりと目が合う。

 

「冗談だよ、安心しろ。風邪っぴきの女の子に手なんて出すほど落ちぶれちゃいねえから」

「ほ……ほんと……?あっ、じゃなくて……」

「ああ、だから安心して寝てろ。何なら添い寝してやろうか?」

 

 俺がふざけた感じでそう提案すると、ひとりはモジモジとしながらも首を横に振る。

 

「い……いや……、零士君の気持ちは嬉しいけど……風邪うつしたくないから……」

「……そっか。まあ、ひとりのそういうサービスシーンはクリスマスの夜の楽しみにしてるから♡」

「ぴゃあっ!?」

 

 別れの挨拶としてひとりのおでこに軽くキスだけして俺はひとりの部屋を後にする。その後、ひとりの熱は上がったかもしれないが、見舞いに来たんだこういう役得があっても文句はないだろう。

 下へ降りて玄関へ向かおうとすると、台所で料理をしてたであろうひとりの母親が顔を出す。

 

「あら、もう帰るの?もうすぐ晩御飯も出来るし、今日は食べて帰ったらどうかしら?」

「あ~、申し訳ねえ。既に家に晩飯が用意されてるんで、今日は遠慮しときます」

 

 そう言って俺は頭を下げると、ひとりの母親も納得してくれたのか笑顔で頷いてくれた。

 

「いつでも来てくれて構わないのよ。我が家は君のこといつでも大歓迎だから」

「うっす、ありがとうございます。お義母さん」

「あらまあ、ウフフ♪」

 

 お義母さんと呼ばれてまんざらでもない様子のひとりの母親と少し話してから、俺は帰路に着いた。

 帰宅途中、ひとりにラインを送るが、既読のマークは付かない。

 こりゃ本格的に寝込んでるな。まあ、寝てりゃ治るだろ。

 

 




やっぱり、ぼっちちゃんくらいのエロい身体の子の下着姿を見たいのは男として当然だよな?
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