「大変よ!出演バンドがトラブルに巻き込まれて出れないって!」
「文化祭の目玉だぞ!代わりは……、代わりはいないのか!?」
突如として発生する最悪のトラブルに頭を抱えて悩んでいると、そこへ颯爽とピンクジャージの女生徒が現れる。
「私が弾きましょうか?」
「あっ、あなたは……!名前は思い出せないけど、確か2組の人……!」
「後藤です……」
そして愛用のギターを携えてライブ公演並みの舞台と大観衆の中、黄色声援を受けながら、いざっ……!!
「では2組の出し物はメイド執事喫茶に決まりました」
「んはっ!」
いつの間にか、寝落ちならぬ気絶していたようだ。
そして、知らぬ間にクラスの出し物が決定してしまっていた。
メイド喫茶なんて自分が似合う筈もなく、どう考えても戦力外だ。
けどまあ、零士君なら喜んでくれそうだけれども……。
「ひとり、そのメイド服随分と似合っているな。なんなら、俺ん家までお持ち帰りしてやろうか?」
「かひゃっ!」
な、なんてハレンチな想像を!!?思わず自分の想像で吐血しそうになってしまった。
一体いつから自分はこんな頭ピンクな子になってしまったのだろうか?
まあ、ここ最近の零士君の猛アタックを喰らい過ぎたせいで色々と精神的に成長?したせいだろう。
変な妄想をしている間に、クラス委員長が2日目の出し物の説明をしていた。
文化祭ライブか……。中学の頃は憧れてたけど、結局メンバーとか揃えるのが無理で妄想で400回くらいしてたっけ。
そういえば、中学3年の時は文化祭は零士君と一緒に出し物を見て回ってたっけ。まだあの頃は零士君に慣れてなかったから、ほとんど逃げるように見て回ってたっけか……。
「クラスの誰かがライブしてくれたら、わたし惚れちゃうな~」
「………………」
っは!なんで私、生徒会室前にいるの!?さっきまで中学の思い出を振り返っていただけなのに!?
ザ・ワールド!?キングクリムゾン!?しかも何この手に持っている用紙は……!?
「えっと、バンド出演希望……、結束バンド!?」
一体いつの間に!?誰がこんなものを?って、私の名前が書いてある。
ど、ど、どうしよう?これを出すべきだろうか?でも、勝手に出演しちゃいましたなんて急に言ったら普通に迷惑だろうし、ここはやめておこう。
精神的に成長した私は取り乱して床に頭を打ちつけるなんて奇行は晒さないのだ。
ふふふ……、成長したな、私も。
そう自分に言い聞かせてひとまず今日はバイトに行こうと応募箱に背を向けて去ろうとすると、廊下の曲がり角に何やら見覚えのある赤髪の女の子の姿がチラリと見え隠れする。
「あの、そんなとこで何してるんですか、喜多ちゃん?」
「っ!?き、奇遇ね、後藤さん。私も今ちょうどここを通りがかって。その……、あっ!その紙もしかして!!」
何やら言い淀んでいた喜多ちゃんは、私の握る紙の存在に気がつくと、嬉しそうな顔をしてこっちに近づいてくる。
「やっぱり、後藤さんも文化祭ライブに興味あったのよね!」
「あっ、いや、これは……」
気づいたら無意識で書いてましたなんて言えない。
「いや、出そうとは思ったんですけれども、皆さんの確認も取らずに勝手に出すのは悪いかなと思いまして」
「そんな遠慮することないのに、先輩達もきっと喜んでOKしてくれるわよ!」
キターン!と陰キャには眩し過ぎる笑顔で無自覚にひとりを崖へと追い込もうする喜多ちゃんにたじたじになりながら、手に持った用紙を持ってSTARRYに直行する。
「いいんじゃん!出てみようよ!」
「私も賛成!ぼっちの学校でマイナーな曲を弾いて会場お通夜してやんぜ」
「あっ、それは勘弁してください」
やっぱり、喜多ちゃんの言う通り2人共文化祭ライブに参加する気満々のようだ。
「あ、あの、すみません。まだ私心の準備がががが……!!!」
「あ〜、ぼっちちゃんが壊れちゃった」
てい!とひとりの頭を虹夏ちゃんがポムって叩いてあげると、はっ!と正気に戻る。
壊れたテレビの直し方かよと離れた席で店の帳簿をつけていた店長さんがその光景に思わずツッコミを入れてしまう。
「にしても、ぼっちちゃん。私が言うのもなんだけども、それ書いたってことは迷ってるって事じゃない?だったら、一生に一度の青春の舞台だし出てみてもいいと思うよ」
「て、店長さん……」
確かに、店長さんの言う通りだ!折角の文化祭ライブ、一度くらいは出演するぐらいしてもいいのかもしれない。
「やっぱし、学生の青春つったらロックだろ!色恋なんざ大学からで十分!!」
「店長さん、最後に本音が漏れてますよ〜」
やっぱり相談するじゃなかったかな……。というか、PAさんはいつの間に居たんだろうか?
「まあ、店長の最後の言葉はともかく、言ってることは正しい。けど、ぼっちが迷うのも理解できる。下手したらハコよりも多い人数の前で演奏するわけだし、そんなに焦って決めることはない」
「リョウさん。あ、ありがとうございます」
「まあ、ぼっちには困った時のスパダリがいるし、あまり心配する事じゃないね」
色々とアドバイスしたがこの一言に尽きる。っというより、もうぼっち以外はライブの出演には賛成してんだし、LINEで電話を掛けるなりして背を押してもらえというのが本音だ。
虹夏も喜多も後ろで連絡しちゃえと騒いでいる。まあ、店長は嫌そうな顔をしているが止めてこようとはしないみたいだし、放っておいてもいいだろう。
「さあ、ハリー!ハリー!」
「あっ、や、でも零士君も部活中だろうし、多分出ないんじゃ……」
たらたらと言い訳を並べながら遠慮がちにLINEのトーク画面の一番上にある零士と書かれているアイコンをタップして電話を掛ける。
今の時間帯は部活中で出ないだろうなと油断していると、なんと3コール目で繋がった。
「なんだ?珍しいな、こんな時間にお前から連絡を寄越すなんざ」
「あっ、いや、その……」
文化祭ライブの件を相談すると、休憩時間も終わるから手短にと断って話し始める。
「あ〜、色々と言いたいことはあるが、ぶっちゃけて言えば今回はアドバイスなんかは送らねえ。ただなんだ、お前が活躍するライブを俺は観てえ。ただそれだけだな……」
「あっ、うっ、じゃ、じゃあ、私頑張るから!だから、その……、文化祭ライブ絶対に観に来てね!」
ど直球の火の球ストレートな言葉に、ひとりはたじたじになりながら赤面させつつ文化祭ライブ出演の意思を示した。
そんな熱々カップルのやり取りに後ろで見ていた面々は胸焼けしたような様子でヒソヒソと騒いでいる。
「やっぱり、スパダリが最強だったか……」
「いや〜、一瞬で終わっちゃったね」
「流石は後藤さんの彼氏さんですね!」
「っけ!リア充爆発しろ……」
「ほら、店長さん。そう拗ねないでください」
その次の日、最後の最後で勇気が出ないと喜多ちゃんに付き添いしてもらう形で結束バンドで文化祭二日目の個人ステージに申し込んだ。
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