ぼっちちゃんの彼氏はバスケ部エース   作:リーグロード

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俺はこの話を最後に小説家として終ろうと思います。
これまで私の作品を愛読してくれた皆様に感謝のお礼を申し上げます。

ありがとう……。


服がパツパツの執事って皆好きだろ?

 昨日はメイド服姿のひとりを見れて満足な1日であった。

 デートでは普段のジャージじゃない可愛らしい服を着ているところはよく見るが、メイド服という特殊な服装を着ているのはなかなか見れない。

 

 ひとりのクラスの出し物は初日がメイドで2日目が執事がコンセプトの喫茶らしい。なので今日はメイド喫茶ではなく執事喫茶の日らしいので、ひとりの教室に寄ることはせず、ブラブラしてひとりたち結束バンドのライブが始まるまで時間でも潰そうかと他のクラスの出し物でも見て回っていくかと考えもなく散歩していると、不意に背中を誰かに叩かれる。

 

「あっ、やっぱり、昨日の後藤さんの彼氏さんだ。背がデカイから後ろ姿でも分かっちゃった」

「え~っと、お前は……?」

 

 何となく見覚えのある顔に思い出そうと頭を捻って記憶を探る。

 

「あっ、昨日ひとりと一緒にメイドをやってたな……!」

「そうそう、覚えてくれて嬉しいよ。あっ、私の名前は一色このはっていいます!よろしく、後藤さんの彼氏さん」

「おう、よろしく。あと、彼氏さんじゃなくて零士って呼んでくれ」

 

 あざとい仕草で手を差し出して握手を求めてくるので、俺も手を出してそれに応える。

 

 茶色の髪を巻いて毛先はふわふわとした感じで巻かれており、肌も白く顔も幼く見えて高校生というよりかは中学生に見える。

 それに加えて先程の小悪魔的な仕草が合わさって、何人もの男子の恋心を鷲掴みにしてきたことであろう。

 現に、チラチラと俺の方を見てくる男が周りに何人もいる。

 

「それにしても、君って結構体大きいよね」

「ん?そりゃまあ、バスケやってるからな、それなりにはでかいぞ」

「ふ~ん、そうなんだ」

 

 そう言いながら一色はこのはは俺の身体をジロジロと見てくる。

 人の視線には慣れているとはいえ、こんなにも無遠慮に見られる経験はあまりないから、少し気まずく感じる。

 

「なんだよ……?」

「う~ん、ねえ、もし暇だったらさ、ウチのクラスの執事喫茶を手伝ってくれない?」

「はぁ?」

 

 いきなりの発言に素で困惑した声を上げる。

 

「なんでもまたいきなり?」

「う~ん、正直に言っちゃうとね。初日のメイド喫茶じゃ売上は良かったんだけど、ウチのクラスの男子じゃ華がなくてね。執事喫茶での売上は酷いものなんですよ」

 

 こっちこっちと手を引っ張られて昨日のクラスへと連れられると、昨日と違って閑古鳥が鳴いている。

 メイド服と違ってクオリティの低い執事服を着た男子らが暇そうにダベっていた。

 

「ね、酷いもんでしょ」

「ああ、けどそれで俺にどうしろってんだ?」

「そ・こ・で!!」

 

 教室の奥から一着の執事服を持ってきた。その大きさからして、俺ならなんとか着れそうな程に大きなサイズだった。

 

「これね、発注ミスでクラスの誰も着れないやつなの。だから、これを着て宣伝してくれればいいだけ!それにほら~、後藤さんにも執事服のカッコイイ姿を見せたくない?」

 

 確かに、それは心惹かれるものはある。

 

「ねえ~、お願い!」

 

 なかなかにあざといお願いの仕方をしてくるが、俺としてもひとりに執事服姿を見せたい気持ちもあるので、少しの思案の後に了承を告げる。

 

「まあ、いいぜ。どうせ結束バンドのライブが始まるまでは暇つぶししようと思ってたとこだしな」

「やったー!じゃあ、早速これに着替えてね」

「おう、了解っと!」

 

 俺は執事服を受け取ると、教室の奥でカーテンに隠れて執事服に着替える。

 

「着替え終わった~?」

「終わったぞ」

 

 執事服に袖を通し終えた俺はカーテンを開いて前に出る。

 

「っな!?」

 

 俺の執事服姿を見た瞬間、このはは目を見開いて驚愕に染まった顔で立ち尽くす。

 まあ、それも仕方がないかと俺も呆れている。

 何故なら、執事服のサイズは俺にとってダボダボにならない程度のサイズではあったのだが、低予算で作ったからか設計ミスなのか、胸元の部分だけがキツく、ミチミチともムチムチとも聞こえそうな程に、服の上から大胸筋が主張しているような見た目になってしまっている。

 

「同人誌の世界の住人かよ!!?」

 

 魂からの叫びをこのはが上げる。

 その声に周りにいる他の連中も無言でうんうんと頷いていやがる。

 なかには、かけている眼鏡を曇らせるほど、はぁはぁと荒い息を吐いて興奮している腐女子っぽい奴までいやがる。

 

「っまあ、落ち着こう。ビー、クール!」

 

 ふぅ〜っ!と、このはは息を吐いて興奮を抑えて冷静さを取り戻す。

 加えて、頭を抑えて「私は冷静、変な世界の扉は開いていない」と自己暗示も掛けている。

 

「っで、俺はこのまま教室で働いてりゃいいのか?」

「う〜ん、このまま教室で接客してもらうのもアリだけど、今はお客さんが少ないし、看板持って校内を練り歩いといて!」

 

 はいこれと昨日ひとりが待たされていた看板を手渡される。

 

「了解っと、じゃあ俺は行くわ」

 

 看板を肩に担いで廊下を歩いていると、他の通行人の視線がこちらに集まる。

 そりゃ、見上げてしまうほどにデカイ男が胸元パツパツの執事服を着て看板を歩いているのだ。当然、目立つのは自明の理であり、通行人の一部には直接声を掛けてくる女性もいた。

 そういった相手には丁寧に執事喫茶を開いている教室まで案内する。

 

 零士君が看板を持って僅か数分で閑散としていた執事喫茶は人が集まりだし、10分もすれば満員となって暇をしていた男子達は突然の忙しさにてんてこ舞いしていた。

 

「後藤さんの彼氏って凄いね、正直舐めてた!」

 

 一色このはもまさかたったの10分でここまで客を呼び込めるとは思ってもおらず、驚きを隠せない様子で忙しそうにしているクラスメイト達を見ていた。

 

 その当の本人である零士は廊下を歩いていると、曲がり角で子供が急に飛び出してきてぶつかってしまう。

 幸い、相手の子供は少しよろめいた程度で怪我はなく、転ばないように肩を掴んで支える。

 

「えへへ……、ごめんなさい」

「気をつけろよ。って、ふたりか……」

「え?あ~、お兄ちゃん!」

 

 ぶつかったのはひとりの妹であるふたりだった。

 

「こら、ふたり!勝手に一人で走っちゃ危ないじゃないか!!」

 

 見知らぬ前髪で目元を隠した男性が慌てて走ってくる。

 その髪の色といい、前髪で目元を隠している姿といい、どことなくひとりと似たような雰囲気を感じる。

 

「あ~、その、うちの娘がすみません!怪我とかは大丈夫でしょうか?」

「大丈夫っすよ。お義父さん」

「いや~、それは良かった。はっはっはっ、……ん?」

 

 俺の外面の雰囲気にビビッていたが、こっちが怒っていないと分かると、目に見えて安堵していた。

 それと同時に、俺の発言に疑問を持ったのか、男性は首を傾げる。

 

「ん?今なんて言いました?」

「もしかして、お義父さんって呼んだことっすか?」

「いやいやいや、聞き間違いじゃなかった!あんた俺のことお義父さんって呼んでませんか!?」

 

 まさか、今の出会い方でふたりとのフラグが建ったとか!?などと目に見えて狼狽えている。

 やはり、そういうところはひとりに似ているな。

 

「あなた、こんな廊下で騒ぐのは他の人の迷惑になるでしょ」

 

 笑顔を浮かべているが、笑っていない雰囲気のお義母さんが現れ、お義父さんに圧力をかけている。

 

「あ、はい……申し訳ありません」

 

 お義母さんの一言で、お義父さんは縮こまり、おとなしくなった。

 しかし、それでも不安は消えていないのだろう。静かではあるが、動きはせわしなく、時折こちらにチラチラと視線を向けてきていた。

 そんなお義父の不安を察して、お義母が俺の紹介をしてくれる。

 

「ふふ、心配しないで。この方は零士くんで、ひとりちゃんの彼氏なのよ」

「……え?」

 

 状況が理解できていないのか、宇宙猫に変身したお義父さんはじっとこちらを見つめたまま動けなくなった。

 そんな動けないお義父さんを、ふたりは遊具のように使って登ったり遊んだりしていた。

 

「ふふ、ごめんなさいね。その人はひとりちゃんに彼氏がいることは知ってるけど、あなたの写真は見たことがないから……」

 

 それは言外に外見でショックを受けるということだろう。

 まあ、それは前々から分かっていたので、俺がショックを受けることは特にない。

 

「……っは!ま、ママ!この人がひとりの彼氏なの!?」

「ええ、そうよ。だから、落ち着きなさい。彼に迷惑掛けてひとりちゃんに嫌われたくないでしょ?」

 

 ゾクッ!と背筋が凍りそうな声で注意するお義母さんにお義父さんはズーン!と落ち込んで口を閉ざした。

 

「ふふ、それにしても……。随分と魅力的な格好ね」

「これっすか?ちょっとお手伝いでね。執事喫茶はひとりのクラスでやってるんで、よかったら寄って行ってくれ。……味は保障しないけどもな」

 

 俺の執事服に目を向けて、お義母さんはうっとりするような視線で胸元を見てくる。

 そりゃ、今の俺の格好は女性の目を引き寄せてしまう魅力があるのは知っているが、旦那が近くにいるのにそういった視線を飛ばしてくるのは止めて欲しい。

 

「ねえねえ、お兄ちゃん!ふたり、お兄ちゃんのやってるお店行ってみたい!!」

「そうかそうか、なら案内してやるよ」

 

 ふたりが行きたいと言ってくるので、俺が直接案内する運びになった。

 

「ここが執事喫茶をやってるひとりのクラスなんだが……」

 

 案内すると同時に驚いた。俺が看板を持って出た時と違って、席が全て埋まっており、順番待ちの看板を持つ者もいるほどに盛況な賑わいとなっていた。

 

「どうなってんだこりゃ?」

「あ~!!零士君やっと帰ってきた!!」

「やっと帰ってきたってなんだよ?まだ10分かそこらしか経ってないぞ?」

「いいから!今教室にいるお客さんの目当ては零士君なんだから」

 

 まあ、教室にいる執事の中で華がある人間はいやしないし、席に座っているお客さんも働いている執事なんか目にしておらず、手元のスマホをいじってる客が大半だ。

 仕方ない。一度手を貸したんだ。ここは最後まで付き合ってやるとするか。

 

「あ~っという訳で、ちとクラスの手伝いに行ってくるから。適当に客として入ってきてくれ」

 

 そう言い残して教室に入る。すると、こちらの存在に気が付いた女性の客は手元のスマホから目を離して、こちらに熱い視線を送ってきた。

 

「お待たせしました、お嬢様」

 

 そう言ってニヒルな笑みを浮かべると、目の前にいる女性はキャー!と黄色い声を上げて喜びをあらわにする。

 他の席にいる女性客も自分達もと期待した目でこっちを見ている。

 その期待に応えるように、順に席を回って挨拶を行う。

 それだけで、女性客はメニューを手に取り、先を争って注文した。

 

 そうなると、裏方で働いている男子が忙しくなっており、客の相手は全て零士が担当することになる。

 まあ、それは結果的にオーライだろう。元々、零士が来るまでは女性客は執事服を着た男子生徒に微塵も興味もなかったし、それを受けて男子生徒らもプライドへし折れてちょっと涙目になっている奴もいたし。

 

「ご注文のオムライスです。どうぞ、お嬢様」

「あ、あの、この紳士執事のご褒美ア~ンスペシャルってのをお願いしたいんですけれども」

 

 メニュー表の下の方に小さく書かれているおふざけメニューを指差す女性客に、零士は冷ややかな笑みで笑い飛ばすようにこう言い放つ。

 

「っは、まさか本気でそれを頼むつもりか?」

「うっきゅ~ん!し、失礼しました~!!」

 

 どうやら彼女は潜在的なドMを開花したみたいだ。

 そのまま彼女は興奮した状態でオムライスを頬張って綺麗に食べきった。

 

 他の客も同じ様な注文をしてきたので、同じ対応で処理をしてやったら、皆例外なくドMに目覚めてしまった。

 そういったことで、ドS系の紳士執事として高評価を受けたので、この対応を継続してもらってもOKとこのはから許可が下りた。

 

「零士く~ん!注文いいかしら~?」

 

 既に教室にいた客がいなくなり、席が空いてようやく後藤家も教室に入れるようになり、お義母さんが元気な声で呼んでくる。

 

「お待たせしました、お義母さん。ふたりも、待たせて悪かったな」

「うん、ふたり大人しくしてたよ」

「そうかそうか、いい子だな」

 

 ふたりの頭を撫でて褒めると、ふたりは気持ちよさそうに目を細める。

 そうやって俺がふたりと戯れていると、お義父さんが間男を見るような目でこちらを睨んでくる。

 まあ、目元が髪で隠れているのでちゃんとは見えないのだが……。

 

「どうしたんですか、お義父さん?」

「お、俺はまだ君をひとりの彼氏だなんて認めっぐはっっ!!?」

「あなた、そういうのはいいから。大人しくしてましょうね~?」

「こいつは……」

 

 恐ろしく早い手刀、俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 一般主婦の娘愛がなした早業といえよう。

 

「お父さんどうしたの?」

「どうやら、お義父さんは眠たいようだから、大人しく眠らせとけ……」

 

 死んだように机の上で突っ伏して眠っている(気絶)ので、お義母さんとふたりは気にせず注文を決めていった。

 まあ、メニュー表には名前以外の違いはないオムライスしかないので、注文はオムライスしかないのだけどもな。

 

「はいよ、ご注文のオムライスだ」

「わぁ~!!」

「ふふ、美味しそうね」

 

 見た目は普通のオムライスなので美味そうであるのだが、冷凍食品なので味はパサついた微妙なものだ。

 これを美味しく食えるのは絶食3日目の遭難者か、あるいは色気に惑わされた馬鹿な客ぐらいだろう。

 

「……美味しくない」

「だから言ったろ、味は保障しないって」

 

 一口食べた途端に顔をしかめて、ふたりがスプーンを置く。

 お義母さんも食べ残しするふたりに注意しようとするが、同じく一口食べた後に味の酷さに口を閉ざす。

 

「仕方ねえな。ほら、あ~ん」

「……あ~ん」

 

 不服そうな顔をしているが、スプーンを差し出されてしまえば仕方なしにと一口頬張る。

 また一口あ~んとしてやると、雛鳥のように差し出されたものをパクリと口にする。

 そうしている内に、オムライスはドンドンと減っていき最後には綺麗に無くなった。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末様」

 

 口元が汚れているので、ナプキンで拭いてやる。それは執事服を着ているのも相まって、お嬢様と執事さんの関係に見えてくる。

 

「ふふふ、いいもの見れてお母さんも嬉しいわ……」

「っは!ここは……?」

 

 食事を終えた瞬間、手刀で気絶していたお義父さんが目を覚ました。

 もう既に食事を終えた2人は今頃起きてきた父に対してご飯は食べ終わったと告げると、お義父さんは酷く困惑して「あれ?僕の分は……?」と呟いていた。

 

「さて、そろそろひとり達、結束バンドのライブが始まる時間だな」

「そうね。ほら、あなた。そろそろ体育館に移動しましょ」

「えっ、あ、うん……」

 

 起きた直後で状況をよく吞み込めていないまま、席を立って会計を済ます。

 俺も手伝いを終えて教室から出ると、そのまま体育館へと移動する。

 

 




な~んちって!エイプリルフールネタでした!!ビビッちゃった?
これからも執筆活動は続けるんでよろで~す!!
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