ぼっちちゃんの彼氏はバスケ部エース   作:リーグロード

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一か月以上待たせて申し訳ありませんでした。
新しい新規小説のストックを書いていたり、他のネタを考えたりとダラダラしながらやっていたので遅くなりました。


下北沢の大天使ニジカエル

 ぼっちちゃんが文化祭のライブでギターが壊れてしまったことをきっかけに2本目の新しいギターを購入したの!

 それをきっかけに、最近更新をサボっていたギターヒーローの動画をあげることにするらしいので、私も折角だから撮影の手伝いにぼっちちゃんの家にお邪魔することになった。

 

「お邪魔しま~す」

「あ、どうぞ……」

 

 前にライブの衣装デザインを考える為に一度来たことがあるけれど、今日は憧れのギターヒーローさんの手伝いに来ているので少し緊張してしまう。

 ぼっちちゃんの部屋は前来た時と変わらず、ギターやアンプ以外は普通の簡素な部屋といった感じだ。

 

「……」

「……あの」

「あっ、ご……ごめんね!動画を撮るっての初めてだから、緊張しちゃって!?」

 

 こうしてギターヒーローとしてぼっちちゃんを見ると、普段見ている筈のぼっちちゃんでも輝いて見えるようだ。

 っていうか、よくよく考えてみると、ぼっちちゃんってネット内で有名な弾いてみた動画の投稿者だし。それに加えて、バスケ部のカッコイイ彼氏持ち(しかもスパダリ)。

 あれ?ちゃんと考えてみると結束バンド内で一番のリア充って何気にぼっちちゃんなのでは?

 

「あの、すみません。この三脚組み立て……」

「あっ、はい!分かりました!」

「なんで敬語に……?」

 

 これがヒエラルキーの差というものか!?私とぼっちちゃんの間には、いつのまにか大きな壁が築かれていたようだ。

 

「あっ、ぼっちさん、お茶でもどうですか?」

「えっどっどうしたんですか?」

 

 普段と完全に立場が入れ替わっている2人は黙々と撮影準備を済まし、いよいよぼっちちゃんのギターヒーローとしての動画撮影が始まった。

 

 そこから先は圧巻だった。普段のライブとは違う、若干の緊張はあるものの、いつも画面越しに見ていたギターヒーローの生演奏に飲み込まれる。

 

(これがぼっちちゃんの本当の実力!?ライブでもこのくらい弾けるようになったら、私たちがお荷物になってしまう日がくるかも……)

 

 そんなことを考えながらも撮影は進んでいき、終盤に差し掛かった。

 ぼっちちゃんの演奏も終わり、いよいよ編集作業に入るようだ。

 

 カタカタと手慣れた手つきで今の撮った映像を見やすいように編集し、速攻で動画をアップし終える。

 

「これで投稿完了です……」

「お疲れ様~」

 

 憧れのギターヒーローの投稿を一緒に出来て嬉しい気持ちが湧いてくる。

 こうしてネットで活躍するぼっちちゃんの姿を見ると、ふとした疑問が出てくる。

 

「ねえ、ぼっちちゃんはトゥイッターとイソスタはしないの?」

「あっ、そんなに興味は……」

 

 実際はそんなものに手を出せば沼る自分未来が目に見えているので、怖くて手が出せないだけである。

 そうとは知らない虹夏はグイグイとオススメしてくる。

 

「えぇ~、手軽にあげられてすぐ人目につくのに!」

「あっ、いや私、皆がやっている事と同じことしたくないんで……。ロックて孤独なんで……」

「へぇ~……」

 

 普段めっちゃ流行りの曲を弾いてるクセにとは思っていても口には出さない。

 とはいえ、このままやらないままにしておくのは勿体無いので、他の人のトゥイッターやイソスタを見せてあげる。

 

「ほら、この人のトゥイッターとか見なよ!」

「?なにこれ、楽器の写真だけでたくさんの反応もらってる……。まいにゅー……げ……あ?」

 

 英語で書かれているため、何が書かれているのかよくわかっていないぼっちちゃん。

「マイニューギア」と教えても、なぜか「パプアニューギニア」と外国の名前と間違えられてしまう。

 まあ、ぼっちちゃんだしおバカなところも個性だと認めてあげて、トゥイッターのいいね!の稼ぎ方や、マイニューギアの怖い話をしてあげると、怯えながらも羨ましいという感情が中途半端に隠し切れていなかった。

 しかもトゥイッターを流し見していると山田のアカウントを発見し、物凄い見栄っ張りなのかそうではないのか意味不明な呟きを目撃してしまう。

 それでも何だかんだでフォロワーやいいね!は多くいるようで、それを見たぼっちちゃんがなんか急に悪魔憑きになったかのような意味不明な怖い挙動を晒す。

 

「そんなに気になるなら今日だけやってみたら?1枚写真アップすれば満足するでしょ」

 

 まるで手のかかる子供の世話を焼くお母さんの如く、ぼっちちゃんをトゥイッターに誘導する。

 パパッと素早くギターヒーローのアカウントを作成する。

 

「あっ、私生活が充実している設定なので、アイコンはタピオカでお願いします」

「なにそのタピオカに対する信頼感は……?」

「いやその、タピオカってリア充の必須アイテムじゃないですか?」

「違うよ!っていうか、タピオカブームって結構前に終わってるし、逆に知ったかぶり感が出るか、重度のタピオカ好きにしか思われないから!?」

 

 ガーン!!とショックを受けるぼっちちゃんだが、そもそもの話として、そんなに無理してリア充を演じなくてもいいと思う。

 

「ぼっちちゃんの場合は無理にリア充アピールをするよりも、零士君とのイチャイチャ画像をアップしとけば問題なくない?」

「いや……あの……それは、零士君に迷惑掛けちゃいそうなので……///」

 

 おいおい、可愛いかよ……。なにこのモジモジした女の子。

 普段は奇想天外というか、情緒不安定で危なっかしいイメージしかないけれど、零士君が絡むと途端に乙女になるな。

 

「イジらしいことですな~www」

「か、からかわないでください!」

 

 顔が幼稚園児の書いたぬり絵みたいに適当な顔に変化するが、そういうところが可愛らしい。

 ついついお節介というか、JKらしい恋バナにテンションが上がったりする。

 

「それで、最近はデートとかしてんの?」

「だ、だからもぉ~~!!」

 

 ぼっちちゃんの恋バナで盛り上がりながら、トゥイッターにギターと機材の写真をアップする。

 すぐに効果が出る訳もなく、全部あげてようやく60いいね!がやっとだ。

 ギターヒーローの撮影も出来たし、ぼっちちゃんの恋バナも盛り上がったしで、そろそろお暇したくなってきたけれど……。

 

「おおぉぉおおおぉぉ~~~ッッッ!!?」

 

 ちょっと目を離した隙に、なんか床に転がって苦悩に満ちた表情で20万円を握りしめるぼっちちゃんを放って帰ったらよくないことになると、私の直感が囁いている。

 仕方ないので、面倒だと分かり切ってはいるが、転がるぼっちちゃんに声を掛ける。

 

「どうしたの、ぼっちちゃん?ほれほれ、話してみなさい」

「うぐぐぐ……、いえ、別に、虹夏ちゃんに話す程のことでは……」

 

 自分の中の承認欲求モンスターが暴れていることを素直に認められず、恥ずかしさと見栄っ張りな性格が邪魔をして、なかなか口に出せないでいるひとり。

 この手の中に握られた20万を使ってマイニューギアをしていいね!を稼ぎたい。けど、これはノルマ代にあてる他にも零士君とのデート代や新しい服を買うのに必要になる。

 そんな葛藤の中、虹夏ちゃんが優しい手つきで私の頭を撫でる。

 

「う~ん、別にぼっちちゃんが話したくないって言うなら、無理に話さなくてもいいよ。でもね、困ってたら素直に相談して欲しいな~って。私も一応は結束バンドのリーダーなんだし、バンドメンバーの相談事くらいはいつでも乗るからさ!」

「に、虹夏ちゃん……」

 

 下北沢の大天使ニジカエルの優しさに触れたひとりは、脳内で暴れる承認欲求モンスターがその後光によって浄化されてゆくのを感じ、自然と口が開く。

 

「あ、ありがとうございます……。あの……実は……」

 

 ぼっちちゃんは素直に自分の心情の詳細を話した。

 もっとMy new gearをしたいが、手元の20万はデート代やバンドのノルマ代の為に残しておきたい葛藤があると正直に白状する。

 それを聞いた私は、苦笑いを浮かべながらも、自らの情けなさで縮こまってしまっているぼっちちゃんを優しく抱きしめながら頭を撫でてあげる。

 

「はぁ~、まったくもう、ぼっちちゃんは仕方ないな~」

「あっ、あっ、あぁ~~~~!!」

 

 頑張るダメな子程可愛く思えてしまう伊地知姉妹の本能的な感情に心を奪われた虹夏が、ひとりの耳元で(ささや)く。

 まるで聖母のような優しい声色で、ひとりは安心して身を任せる。

 

「いい、ぼっちちゃん。さっきも言ったように、一時のいいね!欲しさで無暗矢鱈にお金を使っちゃダメなの!どうせ使っちゃうなら、顔も知らない誰かのいいね!よりも、ぼっちちゃんが大好きな零士君からのいいね!の方が嬉しいでしょ!!」

「……うん」

 

 私の胸の中で恥ずかし気に頷くぼっちちゃん。

 

(さて、この後どうしよう……)

 

 冷静になって今の自分の現状を客観的に見れば、一つ年下のバンドメンバーを抱きしめ、顔を真っ赤にしている女の子を諭しているのだ。

 周囲から見れば、何となく百合ってるような状況に見えてしまい、問題があるように感じられる。

 

「あっ、あぁ~っと!もう落ち着いた、ぼっちちゃん?」

「あっ……、はい……」

 

 気恥ずかしさから半ば強引にぼっちちゃんを引き離すと、なんか一瞬寂しそうな顔で残念そうにこっちを見てきたことに罪悪感みたいなものを感じる。

 ここでもう一度ギュッと抱きしめたくなるが、それをグッと我慢して耐える。

 

「ぼっちちゃんもさ、自分が良くないことをしているって自覚が出来れば、もう同じことは繰り返さないでしょ?」

「は、はい。なんかスッキリしました。ありがとうございます」

 

 そう言って顔を上げるぼっちちゃんの表情は晴れやかで、見違えるように明るいものになっていた。

 

 こうして、憧れていたギターヒーローとの撮影は終わり、後日ぼっちちゃんからお礼の返事と新しいデート用の服を着た画像が送られてきた。

 

 




下北沢の大天使ニジカエルの威光によって、承認欲求モンスターが浄化された。ぼっち福音書―第14節―



ぼっちちゃんに幼馴染がいて、零士君によってBSSされる展開のIF小説を書こうかなと考えています。
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