既にひとりと付き合い始めて数ヶ月が経過した。
別に俺とひとりは好きだ愛してるだなんて甘ったるい恋愛感情で付き合った訳じゃなく、なんとなくの流れで始まった恋人関係だ。
だが、俺がひとりに興味があるのは確かだし、特別な恋愛感情があるという訳でもないが、ちゃんと女として見てるし、あいつに好意があるのも否定はしない。
だから、時たま感覚で俺からあいつにデートの誘いをかけている。
まあ、基本的にあいつは超が付くレベルのひきこもり体質だから連れ出すのに苦労はするが、家に直接迎えに行くぞと脅せば渋々来るんだがな。
デートプランは基本的にネット頼りのプランになるが、ひとりに合うようなものを提案している。
大体は映画やライブハウス巡りなど、ひとりがなるべく緊張しない場所や興味のあるモノばかりを選んでる。
たまに俺のワガママを聞きたいとひとりが提案することもあるので、遠慮なくバスケ部らしくスポーツが出来る場所をデート先にしたりもする。
そうしてひとりとは今も破談せず、恋人同士としての日常を送っている。
「とはいえ、そろそろ俺達も中学を卒業する時期が迫ってきてるし、俺はスポーツ推薦で進学する学校は決まってるけど、ひとりの方はどうなんだ?お前の取り柄ってギターくらいだし、音楽学校に進学するって感じか?」
「え、えっと、そういうのは考えてなくて……。一応、親と相談して考えた結果、ここから遠くの高校に行こうかなって……」
「あぁん?なんで遠くなんだ?別に近場でも探せば入学費積めば通えるような高校はあるだろう?」
「いや、その……。高校はみんなが通わないようなところがいいな~、なんて……」
いつもの空き教室で昼飯を食べながら学生らしく将来の進路について話していたのだが、ふと気になった疑問をぶつけてみたら、ひとりの答えは意外なものだった。
まあ、その理由を聞いてみればひとりらしい納得の内容だったのだがな。
「ったく、まだお前人付き合いが苦手なんだな。いや、だとしても別に遠くの学校じゃなくてもよくないか?別にお前、クラスの奴らと喧嘩したとかイジメを受けているって訳でもないだろう?」
「それ、零士君が言いますか」
「は?もしかして、お前が遠くに行きたい理由って俺が原因か?」
「そ、そうですよ!わ、私なんかが零士君と付き合ってるって噂話が広がりまくって、すっごい目でみんなが私を見ているんですからね!!」
「マジか……、いや変な視線が飛んできてたのは知ってたが、そういう話は全然知らなかったぞ」
「そりゃ、零士君って高嶺の花っていうか、なんか近寄りがたい雰囲気ですし、みんな零士君にはそういう話はしないんじゃないでしょうか?」
なるほどな、俺は猿共と仲良くする気もねえし、クラスでは浮いていたから気付かなかったが、確かに結構俺達の交際の噂話が広がっていたし、ひとりはそれを気にしているのか。
とはいえ、俺もスポーツ推薦でここから遠くの方へ行くし、ひとりの学力じゃ同じ学校に通うことも出来ないから別に問題はないしいいか。
「まあなんだ。休みの日はいつも通りデートする。学校で会えない時間分はそれで埋めるってことでいいだろ」
「ウェヒッ!でも、零士君の行く学校って部活動が厳しいんじゃ?休みの日なんかウチとは違って練習漬けだったり……?」
「んなの、ウチの学校も休みの日は普通に練習あんぞ」
「ええ!?でも、いつも零士君って休みの日は部活動行ってないんじゃ?」
「ああ、それはあれだ。俺が頑張って特別に休みを勝ち取ってんだよ」
事実、俺が1年の頃は休日の練習をサボりまくってた事を顧問の教師が注意してきたが、しょうがなしに休日に俺が参加して力の差を分らせた。
他の部員が校庭を10周している間に50周したり、筋トレメニューを他の奴らの5倍はこなしたり、バスケの練習じゃ全ての動きを完璧にこなしてみせた。
それを他の部員にも強制させると、案の定リタイアする連中が多く現れ、そいつらの懇願もあって俺は特別に休日の練習は自由参加となっている。
「え、エゲツないです……」
「まあ、ほかの連中には悪いことしたかもしれねえがよ。ああしなきゃ、ただでさえ少ない俺とひとりのデートの回数はもっと減ってたぞ」
「ううぅ……、その方が良かったかも。な、なんて、噓ですよ!零士君とのデートは楽しかったですから、そんな顔してこっち見ないでぇぇぇ!!」
そんな怖い顔してたか?まあ、無理矢理デートに連れ出したとはいえ、結構楽しんでくれてたと思ってたから、回数が減ってくれて嬉しい発言はかなり心に刺さったが……。
ガラにもなく俺が一人落ち込んでいると、場の空気を読んだように昼休みの終わりを告げるチャイムの音が響いた。
それをきっかけに、俺とひとりは弁当を片付けて、各々の教室へと別れていった。
次回からついに原作に突入します。
これから結束バンドとオリ主のやり取りを乞うご期待!!