ぼっちちゃんの彼氏はバスケ部エース   作:リーグロード

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他にも小説書いてたら遅くなった(メンゴ!)

よくよく読み返してみたら、俺の小説ってラブコメとして緩急あるかな?って思うんだけど、いつも大体が零士が好きだの愛してるだの言ってるだけだしね。


彼氏のお家にお邪魔します!

 目覚めた朝、私は二度寝をすることなく早々に起き上がり、洗面台で顔を洗ってさっぱりする。

 今日は土曜日、それも3連休の初日という普段の土曜日とは違う少し特別な日だ。

 いつもなら3連休に感謝をしながら惰眠を貪り、起きたらギターの練習に明け暮れているのだが、今日の私はそんないつもとは違う行動に出る。

 

「さてと」

 

 私は部屋に戻り、クローゼットを開ける。そして、そこにかかっている服の中から、一着の服を取り出した。

 それは黒のシャツに謎言語の謎単語の謎フォントがプリントされた、俗に言う痛シャツと呼ばれるものだ。

 

「きょ、今日はちょっとオシャレし過ぎちゃったかな……?」

 

 鏡に映った自分の服装を見ながら、私はそんな風に独り言を呟いた。

 これで道行く人の視線を集めてしまうかもしれないが、それでも今日はこれを着て行かねばならない場所があった。

 それが何処なのか説明するためにはまず、今週の月曜日の夜中に時を遡る必要がある。

 

 そう、それはいつも通り寝る前の彼氏である零士君とのロインのやり取りの時だった。

 

『今週の土曜、俺の家に来いよ』

 

 そのメッセージの意味を理解するのに数分の時間を要してしまった。

 

「そ、それって……」

 

 ゴクリと唾を飲み込み、ロインに送られてきたメッセージを何度も読み返す。

 

 明日、零士君の家に行っても良いのかと、私は動揺を隠し切れなかった。

 私達が付き合い始めて1年以上もの月日が経った。しかし、その間私は一度も零士君の家に足を踏み入れたことがなかった。

 

 零士君は既にウチの両親と面会を済ませており、交際の件だって2人とも了承済みだ。

 ならば、今度は私が零士君の両親との顔合わせ!?

 

「あ、あわわ……!?ど、どうしよう……!!?」

 

 ムンクの叫びのようなポーズで、私は恐怖と混乱に陥った。

 返事をするべきだろうが、なんて返事を返すべきか?

 

 返答に迷っていると、ピコン!とロインにメッセージが届く音が鳴る。

 

『お前が家に来るかって言われれば困ることは分かってんだけど』

 

 まるで今の私の言動を見ていたかのように零士君はそんな風にメッセージを送ってきた。

 その数秒後、またメッセージが送られてくる。

 

『俺はひとりが俺の家に来てくれると嬉しい』

『いきます』

 

 思考する過程をすっ飛ばしてロインに返信をしてしまった。

 最初はそのことに気が付くと絶叫を上げながら転げまわっていたが、それでもさっきの返信した内容に後悔はない。

 

「私も零士君の……お、お嫁さんになるんだから、いつかは零士君のご両親に挨拶しなきゃだよね」

 

 ぐっとスマホを握りしめて覚悟を決める。

 その日は興奮と緊張で眠ることができなかった。

 

 それから来たる土曜日に向けて準備を行う。その為に私がするべきことをする!!

 そう気合いを入れて、この1週間の自由な時間は全て自分磨きに捧げた。

 

 普段は検索しないような髪型やファッションを調べ上げ、オーチューブの動画で閲覧するだけで私のSAN値が削られるような化粧動画にも目を通した。

 学校が終わり、ライブハウスでのバイトがない日は自分に合った服を探すため、市内に数多くあるアパレルショップを巡り渡った。

 そんなひとりにとっては苦行とも言える様々な試練を乗り越えた金曜日の夜。その努力の成果が今ここに!!!

 

「髪型を地雷系女子っぽくガーリーチックに仕上げて、大きなリボンでアレンジ!そして、目を引くようなオシャレな服装!!さらには、お化粧で好印象を与える!!」

 

 自分ひとりのファッションショーで、私は鏡を見ながら自分を思うがままにコーディネートしていき、その出来栄えに酔いしれる。

 

「う、うん……悪くないかも……」

 

 これは予想以上に完璧なものが仕上がったのではなかろうか?

 鏡に映るのはどこからどう見ても渋谷で活躍中の地雷系バンドガールだ。

 

「こ、これなら、零士君のご両親にもバンドで活躍しているナウでヤングなバンドマンって第一印象を与えられそう!」

 

 完全なひとりの独り善がりな妄想(暴走)だが、今この場にはひとりを止めてくれるようなママ的な存在はいないし、陰キャに優しい陽キャもいない。

 なにより、この勘違い暴走少女に優しく紳士的にブレーキをかけてくれるスパダリは、土曜を楽しみに自宅で鼻歌混じりに予定を組んでいる。

 つまり、今の鏡の前で独りぼっちでハイになった女にブレーキをかけられる存在はおらず、暴走列車のように止まることなく金曜の夜が過ぎていった。

 

 そうして目覚めた土曜日の朝に、こうして余裕を持って前日の夜に完成させた地雷系バンドガールに着替えている。

 髪型もセットして化粧もバッチリ!鏡に映る私の姿に満足していると、私の中のもうひとりの私が語り掛けてくる。

 

『こんなのまだ地雷系バンドガールとしちゃ地味過ぎるわよ!もっと腕にシルバー巻くとかさ!!』

「た、確かに……!?」

 

 私は大慌てで下に降りてお父さんを探す。

 

「お父さん、なんか腕に巻く用のカッコイイシルバーのアクセサリーってない!?」

「おお、ついにお前もロックバンドマンとしてのスタイルに興味を持ち始めたか!」

 

 感動の涙を流しながら、お父さんは昔のバンドマン時代にしまってあったアクセサリーを取り出してくれた。

 なんかジャラジャラして若干重いけど、それでも見た目は派手で文句はなかった。

 

「あらあら、騒がしいけどどうしたの?って、ひとりちゃん。どうしたのその格好は?結束バンドのお友達とお出掛けでもするの?」

「いや、今日はそうじゃなくて、零士君のお家にお呼ばれしたから気合いを入れてオシャレしてるの!」

「なっ!?っぐ、そうか、ひとりもついに相手さんの両親に挨拶しに行くんだな。よし!なら父さんが持ってる金のネックレスも貸し──「はぁっ──!!!」―っぐへ!!?」

「お、お父さん!?!?」

 

 私のオシャレに協力的だったお父さんの喉元にお母さんの気合の入った声と共に鋭いラリアットが炸裂し、お父さんはその場に倒れ伏(ダウン)した。

 私は慌てて駆け寄り、お父さんの安否を確かめる。

 

「おおっと!お母さん選手の喧嘩(クォーラル)ボンバー!!お父さん選手一撃でノックアウトだぁぁぁ────!!」

「ワンワン!!」

 

 騒ぎを聞きつけたふたりとジミヘンがやって来て、テレビのリモコンをマイク代わりにプロレスの実況を始めた。

 でもふたり、はしゃぐのはいいけど、少しはお父さんの心配をしてあげたほうがいいんじゃない?

 

「あの……お母さん、お父さんは大丈夫?」

「心配いらないわ。お父さんって昔から妙にタフだったし?」

 

 そう言いながら、お母さんは倒れているお父さんを肩に担ぎ、リビングへと運んでいった。

 私がそれを見て零士くんの家に行こうとした時、リビングから顔を出したお母さんに呼び止められた。

 

「そ・れ・で?ひとりちゃんはそんな格好で零士君の家にお邪魔するつもり?」

「え、えっと、売れてるバンドマンを意識してみた……というか……」

「ダメよ、ひとりちゃん」

 

 戻ってきたお母さんが微笑みながら近づいてくるが、なんだか物凄い圧を感じて尻込みしてしまう。

 私はお母さんから目を逸らし、オドオドとしながら答えると、お母さんは無言で私の両肩を掴み、ハイライトの消えた目を合わせて否定してくる。

 

「とりあえず、その髪型と服装とアクセサリーは全部外しましょうか?」

「えっ、でも、これ地雷系バンドマンの特徴っていうか、外したら無個性になっちゃうっていうか……」

「は・ず・し・ま・し・ょ・う・か!!」

「……ひゃい」

 

 必死の抵抗も虚しく、お母さんからの圧に耐えかねて渋々と折角のオシャレを外そうとする。

 でも、せっかくここまでしたんだから、お母さんにバレないようにこっそり髪型だけは後で元に戻しておこうかな?

 

「あっ、もしお母さんの言いつけを守らなかったら、今後ひとりちゃんのおかずを一品減らします」

「ひぃっ!?」

 

 こ、心を読まれた?お母さんは相変わらずニッコリしたままでこっちを見てくるので、大人しく言われた通りに元の姿に戻す。

 鏡に映るのはさっきまでのイケてるバンドガールではなく、どこにでもいるような普通の女子高生だ。

 いや、私みたいな若干流行に乗り遅れている女を普通のと称するのは世間一般のJKに申し訳ないのではないだろうか?

 

「お、お母さん!こんな格好じゃ零士君のお家に行けないよ!!」

「分かってるわ!だから、お母さんがひとりちゃんをメイクアップします!とにかく、さっきみたいな格好は絶対にNGなんだから!!」

 

 プンプン!と怒りながらお母さんは自分の部屋に私を連れてきて、様々なメイク道具を取り出しながら、化粧台の前に私を座らせる。

 前にも似たような事があったけど、今回はそれよりもさらに気合いが入っており、1時間くらいかな?それぐらいの時間をかけて私への化粧が完了する。

 

「はい完成!う~ん、わが娘ながらすっごい別嬪さんに仕上がったわ!!」

「わ、わぁ~!!これが私?」

 

 鏡に映る私は本当に自分なのだろうか?と、一瞬疑ってしまう程に美人さんになっていた。そして、鏡に映る別人みたいなのが自分なんだと理解すると嬉しさが込み上げてくる。

 なんかこう、いつもとは違った私になったような自分にドキドキする。

 さっきまでの私がカッコイイ系ならば、こっちは可愛い系だ。

 

 今の私の髪型はいつもより光沢のあるストレートロングヘアで、服装も変えられて、今は白いセーターに膝丈までの青いスカートだ。

 お母さんのコーディネートで自分でも驚くほど可愛くなった気がする!

 

 でもやっぱり、あのシルバーのアクセサリーまで取り上げるのはいらなかったんじゃ?せっかくカッコよかったのに……。

 

「それで、ひとりちゃん。時間の方は大丈夫なの?早めに起きたっぽいからお化粧に時間掛けちゃったけども……」

「えっ、あっ、まだ大丈夫だけど、そろそろ出かけないと!!」

「お姉ちゃん、零士君のとこに行くの?ふたりも行きた~い!」

「えっ、だ、ダメだよ!今日は特別っていうか、大事な用件があるから、ふたりは連れて行けないの」

「え~、ヤダぁ~!ふたりも零士君に会いたい!!」

「こら、ふたりちゃん。お姉ちゃんを困らせちゃいけません。今日はママと二人で遊びましょうね?」

「お父さんは……?」

「え~っと、あの人は多分今日はもう起き上がれないから、また明日になったら遊んでもらえるわよ。きっと……

 

 なんか今小声で凄く不安になるような事を呟いたような?いや、やめておこう。きっと私の聞き間違いか空耳だ。

 それよりも早く家を出よう。早起きして時間に余裕があったけれども、予想外の事で時間を取ってしまった。

 

「それじゃ、行ってきます!」

「お姉ちゃん、いってらっしゃい!」

「相手さんのご両親に迷惑掛けちゃダメよ!」

 

 家族に見送られ、私は待ち合わせの公園に辿り着くと、そこにはもう零士君が先に着いて待っていてくれた。

 零士君は私を見つけると、笑顔で小さく手を振ってくれた。

 私もそれに答えるように手を振り返し、小走りで零士君の元に向かう。

 

「ご、ごめんなさい!待たせちゃいましたか?」

「いや、そこまで待っちゃいねえよ。つうか、いつも俺の方が待たせてんだ。これくらい気にするな」

「は、はひぃっ!」

 

 ポンポンとイケメンにしか許されない仕草で頭を優しく叩かれ、顔が熱くなる。

 私は今更ながら、本当にこれから彼の家に行くのだとドキドキする胸を押さえつける。

 

 公園から出て普段は足を運ばない別の住宅街に入っていくと、胸の鼓動が段々と早くなっていき、緊張で体がカチコチしてきた。

 こ、これから零士君のご両親に挨拶……うぅ、凄く帰りたくなってきた。

 

「随分と緊張してんな。体がポリゴンみたくなってんぞ?」

「ソンナコトアリマセンヨ」

「今度はロボットか……」

 

 ギィギィピーガァーと音が鳴りそうなぎこちない動きで歩いていると、零士君は小さくため息を吐いた。

 そして、零士君は私の手を取って自分の腕に抱き寄せた。

 突然のことに私は目を白黒させてしまい、そんな私を気にも留めずに零士君は私の耳元に顔を近づけて囁く。

 

「今日のひとりはおめかしして可愛いな。とびっきりの美人さんで、公園で会った時は見惚れてしまって、思わず声を掛けるのが照れくさくなっちまった」

「ふへぇっ!?あっ、いや、そんな可愛くて美人さんだなんて……!!うへへへ……」

 

 不意打ちの言葉のボディーブローをお見舞いされて、私はノックアウト寸前まで追い込まれた。

 そんな私の事を知ってか知らずか、零士君は上機嫌で腕に抱き着く私を引っ張っていく。

 

 いつの間にか、零士君のご両親に会うという緊張は解けてなくなり、代わりに胸の中に溢れる幸せな気持ちでいっぱいだった。

 わ、我ながらチョロ陰キャ過ぎるのでは?まあでも、零士君に褒められるのは素直に嬉しいし、ここは素直に甘えちゃおう!

 

「お?やっと調子が出てきたみたいだな?」

「えへへ~、零士君!」

 

 ぎゅ~っと零士君の腕にくっついて体を密着させる。

 もうここまで来たらいっその事ヤケだ。恥ずかしいけども、腕を組んだまま私たちは目的の零士君のお家に到着した。

 

「ほら、ここが俺の家だ」

「ほ、ほへぇ~……」

 

 零士君がそう言って立ち止まった場所はデカイ庭付きの一軒家だった。

 ウチも一軒家だが、その規模はまるで違っていて、庭の中に私の家がすっぽり入るくらいデカイと言えばその大きさがどれ程のものか想像つくだろう。

 よく見れば、周りの住宅も大きいし、見た目からしてお金持ちの家って感じがする。

 

「あっ、あの、零士君のお家ってもしかしてお金持ちなんですか!?」

「うん?ああ、クソ親父が言うには、明治時代から続く名家らしいし、何社かの会社を持ってるから、金持ちって言えるかもな」

 

 零士くんがそんなことをさらりと言うのには驚かされる。

 明治時代からの名家と聞いてもピンとこないけれど、私みたいな一般人とは違う世界の人だということは感じ取れた。

 

「あ、えっと、今日はお家にご招待していただきありがとうございました。私はこれで失礼しますね」

「は?何言ってんだよ。これからが本番だろ?」

「えっ、で、でも、ご両親に挨拶なんて私なんかにはまだ早いっていうか……。せめて、国連でライブするまでお時間をいただけないでしょうか!!」

 

 私はそう言って、零士君から距離を取ろうとする。が、しかし、零士君はそんな私の腕を掴んで離さないようにした。

 な、なんで?どうして零士君が私を離してくれないの? 私が混乱していると、零士君は少しイジワルそうな顔で笑っていた。

 

「あ~、言い忘れてたが、今日はウチの家俺の他に誰もいねぇから」

「へ???」

 

 え、何それ?どういうこと??つまり今日この家に居るのが零士君だけってこと??? 私はさらに混乱して、目をグルグルさせながら思考停止してしまう。

 すると、そんな私の様子を見て零士君は笑いをこらえるように口元を隠しながら口を開いた。

 どうやら、これは最初から仕組まれていたことのようだ。

 

「ひとり、俺は一度でもお前を親に紹介するって言ったか?」

「あっ!」

 

 すっかり騙された!?確かに家に来るよう誘われたけど、家族に会わせるだなんて一言もいってない。

 私が騙されたことに気が付いて頬を膨らませると、零士君はご機嫌そうに微笑んだ。

 そして、そのまま私を家の中へと連れて行く。

 

 家の中に入ってみると、確かに他に人がいる気配はなく、今この家にいるのは私達2人だけのようだ。

 私がそのまま玄関で突っ立っていると、零士君は靴を脱いで奥へと行ってしまった。

 私も慌てて靴を脱いで家に上がり、零士君を追いかけるように廊下を進む。

 

「わぁ~……」

 

 外観から見て分かっていたが、零士君のお家は和風のお屋敷みたいな造りで、玄関からリビングへと続く廊下は学校のそれと見間違うほど長かった。

 この時点で、私の頭の中は「お金持ちの家は本当にすごい」という思いでいっぱいで、そんなことを考えながら歩いていると、長い廊下を抜けてリビングにたどり着いた。

 

「コーヒーでも淹れてやるから、そこのソファーにでも座ってろ。あっ、苦いのが苦手ならミルクコーヒーかココアにするけど、どっちがいいんだ?」

「えっ、あっ、じゃあココアでお願いします」

 

 了解とだけ答えて、零士君はリビングの隣にあるキッチンに向かっていく。

 ひとりはソファーに腰を掛けながら、初めて来る零士君の家を見回す。

 本当に広い家だ。流石は明治時代からのお屋敷といった感じだろうか? などと観察していると、テーブルの上にあった写真立てが目に入る。それはこの家を背景にして綺麗な2人の女性と零士君が映っているものだった。

 

「ほれ、ココアだ。ん?どうした、ひとり?」

「あの、ここに写ってる2人って?」

「ああ、そいつらは俺の妹だ」

「い、妹さんがいたんですか!?」

 

 確かに、よく見ればどことなく似ているような気がしないでもない。

 写真に写る2人は可愛いらしいというよりも、凛々しいという形容詞が似合う顔立ちをしている。

 

「なぁ、ひとり。せっかく今こうして家で2人きりだってのに、写真の妹達にばっかり気を取られるのはどうなんだ?」

「ふ、ふぇっ!?そ、そんなつもりじゃ……!?」

「じゃあ、どういうつもりだ?」

 

 隣に座られて耳元でそう囁かれ、私は思わず変な声が出てしまう。

 そして、そのままソファーに押し倒されて零士君に覆い被さられるような体勢になった。

 

「れ、零士君……?」

「本当ならもっと早く家にお前を連れてきたかったんだがな、中々俺1人だけの状況にならなくてな……」

「あっ、その、私のせいで気を使わせちゃいましたか?」

 

 確かに陰キャな自分じゃ零士君の家族と面会するのなんか恐れ多いというか、写真で見た感じ零士君の家族って絶対に全員美形だろうし、直接対面なんかしたらミジンコメンタルな私じゃ緊張で倒れてしまいそうだ。

 

「っと、まあ、冗談はこれくらいにして、本音を言えば俺はクソ親父や喧しい妹にお前を会わせたくないだけだ」

「えっと、それって私なんかじゃ認めて貰えないってことでしょうか?」

 

 私に覆いかぶさっていた状態から起き上がり、零士君は真剣な顔で私を見つめる。

 

「まあ、あのクソ親父は認めねえだろうが、それが会わせない理由じゃねえ。俺はひとりが好きだから、俺の大切な彼女としてあのクソ親父に会わせたくないだけだ。妹らの方は……絶対にからかってくるだろうから、面倒って意味で会わせたくないだけだな」

「あの……、もしかして零士君ってお父さんと仲が悪いんですか?」

「文字通りクソ程な!クソ親父の奴はやれ名家の血筋だなんだのとうるせぇからな。俺の結婚相手なんて自分が勝手に選んでやがって、見合い話なんて持ってきやがるから、一度マジで殴ってやった!」

 

 シュッ!っと、虚空に向かって右ストレートを放つ零士君。

 多分、零士君のことだから、お父さんに対して今の勢いで殴ったんだろうな。

 

「だから、もしクソ親父にひとりを彼女として紹介したら絶対に若いうちの過ちだ。なんて言い出して別れさせようとしやがるに決まってやがるからな」

「そ、それは嫌です!!」

「っ!?そっか……」

 

 普段はあまり声を張り上げない私が、零士君の言葉に強く反応したことに驚いたのか、彼は一瞬目を大きく見開いてから嬉しそうに微笑んだ。

 私も思わず大きな声を出してしまったことに少し恥ずかしくなり、頬を赤く染める。

 そんな私に零士君はそっと手を伸ばしてきて私の手を握ると、そのまま私を起き上がらせた。

 お互いに向き合ったとき、私は恥ずかしさで顔を伏せて「あうあう……」と小さな声を漏らした。

 

「なあ、急に関係ない話になるけどよ。この前、お前から俺に電話を掛けてきたことがあんじゃねえか」

「えっはい、その節はどうもすみません……」

「別に責めてんじゃねえよ。っていうのは言わないでも分かってるか。まあ、そん時に俺が話したことを覚えてるか?」

「そ、それは勿論!あ……愛してるって言ってくれたのを忘れるわけないじゃないですか!!」

 

 例え100年経とうとも忘れない自信がある。

 真実の愛の証明、大槻さんに発破をかけられて動いた結果の告白、その返事としての彼の言葉を私は絶対に忘れない。

 

「まあ、好きだの愛してるだのは結構言ってるんだがな。なにせ、俺の彼女はすぐに自分を卑下する捻くれ陰キャだからな」

「そ、それは、その……。だって、私なんかギターが出来る以外じゃ零士君にとても釣り合っていませんし……」

 

 それでも不安はある。自分が彼と釣り合っているわけがないなんて自分が一番よく理解しているのだから。

 そんな卑屈な私に零士君は優しく微笑んでくれる。まるで、私の不安や負の感情を包み込んでしまうかのように……。

 

「そういや、俺がひとりのことを好きになった理由は話したことなかったな」

「私を好きになった理由……?」

 

 急に零士君がそんなことを言い出したので、私は思わず首を傾げる。

 そんな私の様子を見て、零士君は少し恥ずかしそうに頬を掻くと、ゆっくりと語り出した。

 

「昔っつうほど昔じゃねえが、中学の頃、正確に言うならお前と出会う前の時期だな。あの頃の俺ってさ、他人に興味が待てなかったんだよ。周りの人間が猿にしか見えなかった。まあ、生まれた家格とかポテンシャルとかが周りの奴らと違ってたからな。つっても、当時はクソ親父に反抗してくだらねえ家だなんて考えてたけどな、いや、それは今もか……」

 

 零士君が遠い目で昔を思い出しながら、くだらなさそうに苦笑する。そんな零士君の様子を見て、私はただ黙って聞き続ける。

 そして、零士君は私の顔を覗き込むように見つめて、また続きを話しだす。

 

「ただなんとなく退屈な人生が続くだろうなって、割とマジで悲観してたんだぜ。んで見つけたのがお前だ!」

「わ、私ですか……!?」

 

 突然、ビシッ!と指さされて、私は思わずビクッと体が跳ねる。

 そんな私に零士君はさらに顔を近づけて話を続ける。

 

「誰かに興味を持つなんざあの頃の俺は全然なかったからな、だからお前に近付いた。んで、初対面でいきなりの爆発だ。初めてだったぜ、他人を純粋に面白いだなんて思ったのは」

「あばばばば……!!?」

 

 ニヤニヤと、それはもう面白い玩具を見つけたガキ大将みたいな笑顔で零士君は私を見る。

 確かに、自分と零士君の出会い方はそんな奇天烈なものだったと記憶している。

 

「そっからだな。俺が他人をちゃんと見るようになったのも。知らねえ奴が実は面白い奴かもしれねえって思って接してみれば、他人は猿じゃなくて人間だった」

 

 まるでつまらないB級映画の結末を知ったようなテンションで語る零士君は、また遠い目でどこかを見つめていた。

 

「ってか、今更ながら他人を猿扱いとか、当時の俺はどんだけ拗らせた中二病だよwww」

 

 本当にくだらなさそうに笑う零士君だったが、私はそんな零士君の事が()()()と思った。

 過去の自分を馬鹿にしながら、それでも彼は彼の過去を後悔せずに今へと進んでいっている。

 そのきっかけが私との出会いだと聞かされて嬉しく思わない女の子はいないだろう。

 

「だからさ、ひとり。俺はお前の事が好きになったし、これからも愛していけるって自信を持って言い切れるぜ」

「零士君……」

 

 お互いの前髪が触れ合う距離まで顔が近づく。私はそっと目を閉じて、零士君を受け入れる準備をする。

 そして、ゆっくりと彼の唇が私の唇に重なろうとした瞬間……、零士君は突然動きを止めた。

 

「な~んでこういうタイミングで邪魔が入るんだかな……」

「へっ?」

 

 目を開けて零士君が見ている方に視線を向けると、リビングの扉の隙間からこちらを観察している2人の女性の姿が見えた。

 

「あっ、おかまいなく!」

「別に邪魔なんかしないから、続きしちゃってもいいわよ!」

 

 あの写真に写っていた2人の姉妹が、こちらの様子をニヤニヤしながら眺めている。

 

「あびゃびゃびゃびゃ────!!!?」

「あっ、壊れた」

 

 恥ずかしさのあまりにノイズが走ったように奇声を上げて私は奇行に走り、それを見た零士君は冷静に私の様子を見てそう呟いた。




結構長くなったのでひと区切り入れます。
以前、誰かの感想で零士に妹がいるみたいなこと送ってくれたことがあったので、今回は急遽として零士に妹を作りました。

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