ぼっちちゃんの彼氏はバスケ部エース   作:リーグロード

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前話とかなり間があいて申し訳ない。
今回はひとりと虹夏ちゃんの恋バナを作るのに苦労したのが理由です。
あと、感想で読みにくいとの感想もあったので、頑張ったのですが、やっぱりまだ読みにくいかな~と思いつつも、これ以上は遅らせられないという理由で投稿しました。

これからも未熟な文才の身ではありますが、投稿を頑張っていくので、是非とも応援をよろしくお願いいたします。


恋バナするでしょ!!

「も、申し訳ございませんでした!!!」

 

 いっそ清々しい程の土下座を決める喜多に虹夏と山田は何とも言えない表情で見下ろしていた。

 

「う~ん、まさか喜多ちゃんがギター初心者だったとはね……」

「どうりで郁代の指がギタリストにしては綺麗だと思った」

「あわわわ……!!」

 

 どうやら2人共怒ってはいないようだけど、気まずい雰囲気が漂っている。

 これってライブハウスでこっそりギターの勉強をしようって提案した私のせいなんじゃ!?

 こ……こうなったら、私が喜多ちゃんに助け舟を出すしかない!!勇気を出せ、後藤ひとり!!!

 

「そ、その、喜多ちゃんは初心者だけど……、ちゃんと成長しようと、頑張ろうとしてましたし!あの……、バンドメンバーから追放というのは──!!」

「ちょっ、大丈夫大丈夫!そんなことしないって、確かに喜多ちゃんが初心者なのには驚いたけど、まだライブするのもちゃんとは決まってないし、無理矢理追い出したりなんてしないよ!」

「虹夏の言う通り。それに、今はひとりもいるし、ギターがダメでもボーカルとしてなら参加は出来る」

 

 ひとりの必死すぎる説得にたじたじとなりながら、虹夏が喜多のバンドメンバー残留を告げる。

 それに加えて、山田も前向きな言葉を喜多にかけ、双方から許しにひとりと喜多は安堵の息を吐く。

 

「あ……ありがとうございます!私、精一杯ボーカルを頑張りますので!!!」

「お~、頑張れ喜多ちゃん!!」

「これからの活躍に期待する」

 

 号泣しながら感謝する喜多ちゃんに、虹夏ちゃんとリョウさんは激励して、これからの喜多ちゃんの成長に期待を込めていた。

 

 とりあえずは一段落ってことでいいのかな? でも、この場に入れない疎外感……。

 まるで自分が見えない幽霊になったような寂しさが私の胸を締め付けた。

 

「それじゃあ、後は練習の話だけど……。って、ひとりちゃんがちょっと目を離してる隙に口から出しちゃいけない半透明なモノ出してる!?」

「イリュージョン?」

「いやいや、そんなことよりも早く後藤さんの口にアレを戻さなくちゃ!?」

 

 下手をすれば目の前で今にも他界しそうになるひとりの魂っぽい何かを無理矢理に口に押し戻して蘇生させる。

 

「はっ!?ここは……?」

「よかったぁ~、ひとりちゃんの意識が無事に戻ってきて……」

「虹夏先輩が逃げようとする後藤さんの魂?を上手いことキャッチ出来たおかげですね!」

 

 和気あいあいと喜んでいる虹夏と喜多のテンションについていけずに呆然とするひとり。

 その後ろでは先程の面白風景をただ眺めていただけの山田が次の展開に話を持っていこうと声を掛ける。

 

「っで、練習はどうするの?」

 

 山田が尋ねると、虹夏も思い出したようにポンと手を叩いて、これからの予定を宣言する。

 

「それじゃあ、まずはひとりちゃんの実力を確かめる意味合いも込めて1曲演奏してみようか!」

「だね。私もひとりちゃんのギターの腕が気になるしね……」

 

 ギラリとした獲物を狙う鷹の目をしたような山田がひとりを睨む。

 

「あっ、はい……」

 

 や……やっぱり、リョウさん前に零士君が言ったこと気にしている!?

 どうしよう?手を抜いた方がいいのかな?あっ、でも、そんなことしちゃ下手くそは同じバンドに2人もいらない!って追い出されたりとか!?

 い……いや、虹夏ちゃんもリョウさんもそんな酷い人達じゃないし、ちゃんとギターとして役に立つ姿を見せないと!!

 

「それじゃ、ひとりちゃん。頭から演ってみようか!」

 

「は……はい!!」

 

 ギターを構えて、息を深く吸って、リズムにノッて演奏する。

 

 ジャラ~~ン

 

「……下手だ(君は最高のギタリストだ!)」

「虹夏、逆だよ逆」

「!?(ガ──ン)」

 

 人付き合いの下手なひとりにとってバンドでの演奏は目隠しと耳栓して演奏するようなものだ。

 とはいえ、この世界線のひとりは零士という彼氏がいることもあり、多少は人の視線や挙動を確認できるので、原作よりも腕は上ではある。

 

「え~っと、とりあえず、喜多ちゃんと一緒に頑張ろうか!」

「は、はい。期待させてなんかすみません……」

 

 かなり自信のあったギター演奏が下手だと言われて落ち込むひとりだが、逆に山田は自信を取り戻したようにグッと親指を立ててサムズアップしている。

 

「安心するといい、基本的な演奏は私と虹夏に任せて、2人はオケ流しとくからアテブリさえしとけばOK!」

「「了解です!!」」

「こ~ら、いきなり諦めさせようとすんな!それに、2人もリョウの言うこと真に受けて2つ返事しない!ライブする時には2人には頑張ってくれないと困るんだからね!!」

 

 も~!と怒りながら虹夏はそこでふと思い出したように、ひとりに向き直る。

 

「そういえば、ライブの際に本名で名乗って大丈夫?もしあれだったらあだ名とかでもいいんだけれど、ひとりちゃんってあだ名とかないの?」

「はぅっ!!」

 

 あだ名、それは友達間でのみ許されし友好の証のようなもの。

 長年ぼっちだったひとりにそのような物は存在せず、勝手にトラウマ的ショックを受けるが、虹夏はそれに気付かず会話を進める。

 

「喜多ちゃんは基本的にみんなからは喜多ちゃんって呼ばれてるらしいし、リョウも学校じゃ山田さんって呼ばれてるからね。かくいう私も基本は虹夏ちゃんって呼ばれてるよ。ひとりちゃんはなんて呼ばれてるの?」

「ええっと、ちゅっ中学では「あの~」とか「おい」とかで……」

「それあだ名じゃなくない!?」

 

 あまりにもな内容につい強めなツッコミを入れてしまう虹夏。

 だが、それを聞いてた山田と喜多は首を傾げて好奇心でひとりに問いただす。

 

「あれ、後藤さんって彼氏さんからは何かあだ名とかで呼ばれたりしないの?」

「へっ?」

「意外、てっきり砂糖吐くような甘々な呼び名で呼び合ってるものだとばかり」

「は?」

「いえ、零士君とはお互いに下の名前で呼び合ってたので、そういうあだ名とかで呼び合うのは特には……」

「ちよ、ちょ、ちょっと待って!!えっ、ひとりちゃんって彼氏いたの!?」

 

 突然のひとりに彼氏がいるという話に置いてきぼりを喰らった虹夏が慌てた様子で3人の会話に割り込んできた。

 それはまさに、鳩が豆鉄砲を食らったようだと表現するような顔だった。

 

「あっ、そういえばあの場には虹夏だけいなかったし、ひとりちゃんの彼氏の顔知らないの虹夏だけか……」

 

 それだけでよしておけばいいものを、「ぷ~くすくす!虹夏だけ仲間はずれ!!」と調子に乗っておちょくるものだから、ドラマーの握力でアイアンクローで締めつけ上げられている。

 

「ノォォォ──ー!!!ギブ!ギブアップ!!」

 

 涙目でタップするリョウ。

 ひとりはその光景を唖然と見つめていると、隣に立つ喜多の様子が可笑しいことに気付く。

 

「あぁ~、痛みで悲鳴を上げてる先輩も絵になるわ~」

「ええぇ~~」

 

 あんな光景を見ていて、なおも尊敬?したような目で見つめる喜多にドン引きするひとり。

 状況は簡潔に言ってカオスの一言だろう。

 

 リョウの3度目のギブアップの宣言に、ようやく虹夏も許すことにしたのか、アイアンクローを解いてリョウを解放する。

 その際、リョウは喜多に「頭へこんでない?」と問うも、「へこんでいる先輩もステキですよ!」と求めていない回答を返されて、どこかげっそりとしていた。

 

「そ・れ・で~?ひとりちゃんの彼氏ってどんな人なの!?」

「ひっ!」

 

 リョウへの制裁を終えた虹夏が、興味津々といった様子でひとりに詰め寄ってくる。

 人見知りなひとりがそんな勢いで攻め寄られたりすればどうなるか……。

 

「虹夏が急に近づくからひとりちゃんがゴミ箱に隠れちゃった……」

「あ~、ごめんね、ひとりちゃん!」

 

 つい恋バナ談議が出来ると興奮して突っ走ってしまった虹夏が、申し訳なさそうにゴミ箱に隠れたひとりに謝罪すると、ひとりの体がぴょこんと出てきてチラチラとこっちの様子を伺っている。

 どうしたものかと悩んでいると、喜多が小動物を相手するように背を屈めて近づいていく。

 

「大丈夫だよ~。怖くないからね~」

「きゅ~~~」

 

 プルプルと震えるその様はまさに小動物。というか、なんか実際に体が小さくなっているような?

 

「ほ〜ら、安心して。こっちおいで〜」

「…………」

 

 やがて、恐る恐るといった様子ながら、ゴミ箱から抜け出したひとりは小動物から元の状態へ戻り、3人に迷惑を掛けたことを謝罪する。

 

「あの、勝手にゴミ箱占領して申し訳ありません」

「いやいや、いいって別に。こっちこそ急に詰め寄ってごめんね!」

 

 ひとりの謝罪に虹夏が笑って謝り返す。

 これでこの話はお終い……としたいところだが、恋愛話に飢えている女子高生が、目の前の面白そうな話に興味を捨て切ることなど出来る筈もなく、我慢できずにひとりに聞いてみる。

 

「ねえ、ひとりちゃんの彼氏さんってさ、どんな人なの?」

「ふぇ、れ……零士君ですか?どんなって、そ、それは……その、優しくて、カッコよくて、頼りになるよ……うな……///」

 

 自分で言っていて急に恥ずかしくなったのだろう。

 顔を真っ赤にさせたひとりが頬を押さえて口をパクパクとさせている。

 

 その恥ずかしそうなひとりの様子に、虹夏たちはニヤニヤが止まらないといった様子で、にやけた顔を隠すことなく質問を続ける。

 正直言ってかなり面倒くさい状況だ。

 そして、そんな状況を黙って見ている山田ではないのは言うまでもないだろう。

 

「へいへい、you素直にゲロっちゃいなよ~♪」

「そうだよ、ひとりちゃん!あっ、ていうか、その彼氏さんの写真とかないの?」

 

 悪乗りする山田を味方にした虹夏のテンションはうなぎ登りだ。

 この場においてこの2人を止められる者は存在しない。2人のテンションに参加していない喜多ちゃんもキラキラした目で成り行きを見守っている。

 

「その、私も零士君もあまり写真を撮るタイプじゃなくて……。だから、そういうのは持ってなくて……」

「え~、そっか。残念だけどしょうがないな。それにしても、ひとりちゃんの彼氏か~?聞くかぎり、きっと放課後とかにノートを職員室に運んでたら後ろからそっと変わりに持ってあげたりするようなタイプかな?」

「「ええ~~~」」

 

 虹夏の妄想に山田と喜多が現実の彼との乖離に思わず声が漏れる。

 あの男がそんなことするタイプかと問われれば……ひとりちゃん限定ならしてそうである。

 なんなら、運んでいるノートごとひとりをお姫様抱っこしてそうだ。

 

「さてと、虹夏も恋バナはそこまでにして、そろそろひとりちゃんのあだ名をどうするか考えない?」

「ああ、そうだった。ついついひとりちゃんの恋バナに夢中になっちゃったよ」

 

(∀`*ゞ)テヘッと照れ笑いをして、虹夏は本題に入る。

 とは言ったものの、いきなりあだ名をつけるには後藤ひとりじゃ、縮めてひとちゃんかいっそ英語でワンちゃんくらいのものだが……。

 

「ひとり、……ぼっち。ぼっちちゃんは?」

「っ!?」

 

 こいつデリケートな所を……!?と驚愕する虹夏。

 だけども、悲しいことにそんなあだ名にも目を輝かせて喜ぶひとりの反応を見て不憫と心の中で涙を流す。

 

 何はともあれ、ひとりのあだ名も決定し、和気あいあいとしたムードになるなか、STARRYの入り口の扉が開いて誰かが入ってきた。

 

「随分と騒がしいな。なんの騒ぎ?」

 

 やって来たのは金髪のヤンキーっぽい虹夏が大人になった姿をしたような女性だった。

 

「あっ、お姉ちゃん!そうだ、2人には紹介しとくね。こちら、このSTARRYの店長をしていて、私のお姉ちゃんの伊地知星歌。んで、こっちの2人は私達のバンドに新しく入った後輩の喜多ちゃんとぼっちちゃんだよ!!」

「ふ~ん、バンドメンバーちゃんと集まったんだ」

「うん、そうなんだ。それで相談なんだけど……。このメンバーでバンドしたいからライブに出させてよお姉ちゃん」

 

 そうやってお願いと拝み倒していると、虹夏ちゃんのお姉さんはすんなりとライブの出演を許可してくれた。

 

「まあ、バンドメンバーがちゃんといるならそれなりの演奏は出来るんだろうし、出さんでやらないこともない」

 

 かなり捻くれた言い方ではあるが、ライブに出演させてはくれるようではあるらしい。

 虹夏ちゃんも嬉しそうにお姉さんに抱きついて喜びを表現している。

 

 でも、これで私も正式にバンドマンとしてライブに出演できる……あれ?けど、それって沢山の人前に出るってことになるんじゃ……。

 

「それじゃ、今日はここまでにして。解散しよっか」

 

 ひとりが内心ドキドキと不安で押し潰されそうになっているのを余所に、虹夏が解散を宣言し、メンバーが各々帰り支度を始める。

 ひとりもそれに倣い帰ろうとするのだが、その前に喜多ちゃんが近寄って来て話しかけてきた。

 

「ねえ、後藤さん。帰りに一緒にタピオカ飲んで行きましょう」

「タ……タピオカですか!?」

 

 タピオカ、それはリア充の必須アイテムとも呼べる流行スイーツ系のドリンクの1つだったもの。

 今はもうその流行は廃れていってはいるものの、それでも人気はあるのは確かであった。

 

 興味はある。中学の頃は零士君とデートでもタピオカなどは人気があって並んでいたので、人見知りな私を気遣ってそういうのを無理に勧めてはこなかった。

 だから、実はこっそりとタピオカに興味はある。

 あるのだが……。

 

「きょっ今日は人と話しすぎて疲れたので帰ります……」

「ええっ!?」

 

 スススッッと捕まらないように無駄に器用な動きで無駄なウォークを披露して喜多の横を通り抜けていく。

 

「そ……それじゃ、今日はお疲れ様でした……」

 

 帰宅部とは思えない速度で颯爽と帰るひとりの後ろ姿を全員が呆然として見送る。

 

「なんだアレは……?」

「え~っと、私達の新しいギター担当……」

 

 姉の疑問に虹夏が苦笑いでそう答える。

 どうやら、後藤ひとりは一筋縄ではいかないようだ。

 

「ふんふ~ん♪」

 

 その帰り道、ひとりは練習だけではあるが、初めてのバンドメンバーとの演奏に少々浮かれていた。

 鼻歌混じりにスキップするのが精々だが、それでも異様に浮かれているというのは道行く通行人でも理解できた。

 

「あっ、零士君にも今日のこと報告しとかないと……」

 

 今日あったことをそのままLINEに文章で打って送信する。

 即座に既読はつかないが、きっと家に帰る頃には既読と共に返信が返ってくるだろう。

 

「零士君も今頃部活で頑張ってるのかな?」

 

 頭の中で活躍する姿を想像して、ひとりは顔を綻ばせる。

 




次回は零士君の部活風景になります。
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