ねぽらぼのね   作:夢寺ゆう

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秘密結社holoX

 

 白衣を着た少女、博衣こよりに連れられて地下に繋がる階段を下るポルカ。あの開けた場所の地下には想像以上に近代的な施設が広がっていたらしい。

 

「……あんたらの目的は何なの?」

 

「んー? 世界征服……かな?」

 

 数歩前を歩くこよりに尋ねるが適当に話をはぐらかされてしまう。

 

「そういうのいいから。世界征服するやつが何でうちのレックスを連れ去るのさ」

 

「あーごめんね。確かに君のところの地龍くんを連れていったのは世界征服とは関係ないや」

 

「……じゃあ何で?」

 

「……気まぐれ?」

 

 その瞬間、空気が確実に凍りついた。

 本人は隠せていると思っているかもしれないが、紛れもなく怒髪天を衝く勢いでポルカの怒気が溢れ出していた。

 

「……気まぐれだと?」

 

「そ。うちの総帥の気まぐれ。ま、その辺は直接本人から聞いてよ。こよも詳しいことはよく分かってないから」

 

 ポルカの方を見向きもせず肩を竦めながら答えるこより。

 その態度にも腹を立てるポルカだが、この先に主犯がいるのならその者に直接言った方が早いだろう。

 

 この施設の最下層に着き、そこに現れた大袈裟なほどに大きく、重く、そして固く閉じられた扉の前に立つ。

 こよりが扉の横に設置されたタッチパネルを操作すると、その重く閉じられた扉がゆっくりと開く。

 

「ラプちゃん、ルイ姉、連れて来たよ。あちらのリーダー、尾丸ポルカさん」

 

「ようこそ、我がholoXのアジトへ。貴様の来訪を心よ、り……」

 

 部屋の最奥で大きな玉座に座っていた二本角の少女、ラプラス・ダークネスはポルカ達の登場に両手を広げて歓迎の言葉を伝えるが、その言葉が徐々に尻すぼみになっていく。

 その横に立っているholoXの女幹部鷹嶺ルイも何故か不思議そうな表情をしている。

 

「……おい博士、向こうのリーダーは獣人じゃなかったか?」

 

「んえ? 獣人でしょ? ほら獣耳がちゃんと……」

 

 そう言ってポルカの方を振り返ると、ちゃんと獣耳を生やした金髪の少女と人間の耳を生やした金髪の少女が立っていた。

 

「ん? んん!?」

 

「あ、どうもどうも。皆さんごきげんよう」

 

「ええ!? ねねちゃん!? どこから入ったの!?」

 

「え、お2人と一緒に」

 

「うそっ、全然気付かなかった!」

 

 こよりとポルカが地下施設に入る際に2人の後ろについていったねねだが、ここまで前を歩いていた2人にも気付かれずについて来れてしまったようだ。

 

「…………おい、貴様何者だ?」

 

「あ、桃鈴ねねでーす。逆にあなたのお名前は? 誘拐犯さん」

 

「…………」

 

「……? ラプ?」

 

 急に無言になったラプラスを不信に思ったのか、隣に立つルイがラプラスの様子を窺う。

 だが、ラプラスはそんなルイを無視し、本来用があったポルカも無視し、こっそり着いてきたねねをジッと見つめていた。

 

「……何か?」

 

「貴様、その力はなんだ? どこで手に入れた?」

 

「……はい?」

 

「ラプ、どうしたの? いきなり何言ってんのさ」

 

 肘かけに手を付き、身を乗り出すラプラス。

 いきなり態度が急変したラプラスにルイもこよりも驚きの表情を隠せない様子だ。

 

「お前達、見えてないのか!? あいつの回りに漂う光が!!」

 

「光?」

 

「おい、幹部。お前のホークアイで見ても分からないのか?」

 

 興奮して近付けて来るラプラスの顔を退かしながら、ルイは言われた通り瞳を黄金に輝かせ、ねねを確認する。

 しかし──、

 

「……別に、特に変わったものは見えないけど」

 

「何!?」

 

「おーい、一体何の話をしてるのか知らないけど、こっちの話も聞いてくんないかな?」

 

 先程から何となく見世物にされているようで気分の悪いねねは、若干不機嫌になりながらポルカの背中を押す。

 

「おお、そうだ。おい、うちのレックスを返してもらいに来たんだが、素直に返す気は?」

 

「……そんな気があったら、初めから盗むわけないだろ。馬鹿か貴様」

 

 そう言ってラプラスがパチンと指を鳴らすと、左右の壁が上に開いていく。

 何事かとポルカとねねがその様子を見守っていると、開いた壁の奥には珍しい種の生物が鎖に繋がれたまま静かに寝息を立てていた。

 

「レックス!」

 

 そしてその中でも一番奥、ラプラス達に最も近い場所には地龍であるレックスも同じように鎖に繋がれていた。

 

「こんなに色んな生き物が……ポルカさん、これって……ポルカさん?」

 

「……おかしい、レックスが私の声に反応しない」

 

「それはポルカさんがさっき今は半冬眠状態だって……」

 

「いや、半冬眠状態でも反応は見せていたんだ。私の声が聞こえなくなるまでの熟睡はレックスは基本しない。お前達、レックスに何をした?」

 

「別に、お前にそれを教えてやる義理はない」

 

「……てめぇ」

 

 彼女達がこの部屋に入ってきたときとは違い、明らかに今はポルカに興味を無くしているラプラス。

 先程からつまらなさそうに対応するラプラスの態度にポルカも眉間に皺を寄せて、小さく舌打ちをする。

 

「そんなことより、そこのお前。確かねねと言ったな。お前はそこの獣人の仲間なのか?」

 

「だったらどうなの?」

 

「初めはそこの獣人のサーカス団を我がholoXの傘下に加えようと思ってたんだが……どうでもよくなった」

 

「は?」

 

 

「おい、ねね。お前うちに入れ。お前がうちに入るのなら、この地龍は無傷で返してやってもいい」

 

 

 ラプラスの想定外な交渉にこの場にいる誰も理解が追いつかない。

 だが、ラプラスはそんなこともお構いなしにドンドンと話を進めていく。

 

「もし断るというのなら。あの地龍とそこの獣人を殺して無理矢理にでも従わせる。さあどうする? 今ここで選択しろ」

 

 急展開に追いつけないながらも、明らかな殺気を放ち出したラプラスにポルカも懐から小刀を取り出し臨戦態勢を取る。

 それを見たルイも一歩前に出てラプラスを守るように片手を横に広げ、こよりもポルカ達からすぐさま距離を取る。

 

 ただ1人話にも互いの臨戦態勢にも付いていけず、目をパチパチとさせていたねねは脳内処理をするにつれ次第に怪訝な表情を浮かべる。

 

「……今日初めましてでいきなり意味わかんないんだけど? え、何? ナンパ? ねね今ナンパされてる?」

 

「博士、上には何人いた?」

 

「ん? えーと確かこの2人を抜くと13人だったかな?」

 

「じゃあ、もしお前が拒否するのなら、上の13人も殺す」

 

 到底、冗談を言っているようには見えない。

 淡々と、さも当たり前かのように言ってのけるラプラス・ダークネス。

 

 今までも、同じように欲しいものを手に入れてきたのだろう。今初めて会ったにもかかわらず、それが容易に想像できた。

 

「仲間を見逃す代わりに従うか、仲間を殺され従うか。好きな方を選べ」

 

「……それで本当に従うと思ってるわけ?」

 

「……? この吾輩が選択肢を与えてやっているんだぞ? 悩む余地があるとは思えないが?」

 

 本気で言っている。

 自分の言っていることに一寸の疑問も抱かず、彼女は言ってのけている。

 

「ねねちゃん……こいつ、本気で言ってる。マジで頭のネジが外れてる……隙を見ていったん逃げよう。こいつは、危険だ……」

 

 小声でねねに耳打ちをするポルカ。

 だが、相手にも獣人がいる以上、ねねに聞こえる音量の耳打ちは筒抜けとなってしまう。

 

「悪いけど、逃がす気はないよ。それに、ここから出るにはうちのメンバーの誰かしらの声が必要だよ?」

 

 こよりの言葉に小さく舌打ちを打つ。

 上にいたいろはとクロヱの力は相当なものだった。この小さな少女の力がどれほどのものなのかは分からないが、あの2人を統べる彼女にも相応の力があると見た方がいい。

 

 そうなると、ここで戦闘になるのは絶対に避けるべきだ。

 

 だが、本来なら何の関係もないはずなのに、自分のせいで巻き込んでしまったねねをこんな危険な奴らに渡すわけにもいかない。

 

 自分の持つスキルを総動員させて、ありとあらゆる可能性をシミュレーションしていくポルカ。

 

 やはりこの状況を打破できるとしたら、1つしかないだろう。

 

 

「──おい、そこの小さいの」

 

 

 ねねにしか向けていなかった視線を、その声でギョロリとポルカに移動させるラプラス。

 不気味さ満点のラプラスに冷や汗が頬を伝うのを感じながら、ポルカは不敵に笑みを零す。

 

 

「特別も特別だ。これからお前らだけに贈る奇天烈イリュージョンショーを開催してやる。その不気味なでっかい目ぇかっ開きながら、よーく見てな」

 

 

 そう宣言したポルカが懐から取り出した大量の閃光玉によって部屋中がまばゆい光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

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