ねぽらぼのね   作:夢寺ゆう

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世界征服の幕開けだ

「おいおいおい、そうか……お前があの百鬼あやめか」

 

「ラプラス・ダークネス、鷹嶺ルイ。お前達2人は父上より排除対象として認定された。これより、お前らを駆逐する」

 

 この世で最も美しいとされている場所の上空で、その火蓋は切って落とされた。

 

 

 

        ×  ×  ×

 

 

 

「ラプ、準備出来たよ」

 

 何かを確認するように自分の右手を開閉させていたラプラスは、ルイの声に顔を上げる。

 

「……そうか。いろはの刀は?」

 

「何でも斬れる刀ではないでござるが、チャキ丸2世としてこんこよに打ってもらったでござる」

 

「こよは鍛冶師じゃないんだけどなぁ……」

 

 2人のやり取りを見てラプラスはフッと小さく微笑む。

 

「ラプちゃん、右腕の調子はどう?」

 

「悪くない。馴染んできてる」

 

 こよりに聞かれて再度にぎにぎと右拳を握るラプラス。その腕は以前までの色白な肌ではなく、肩から指先に掛けて黒で肌が覆われている。一見肌に密着したハードスーツに見えるが、そこに布などはなく、それはシリコンの肌に覆われた機械仕掛けの腕だった。

 

「さて……あれから半年以上か? 準備も整い、時は満ちた。行くぞ、これより我々holoXは、惑星ホロアースを征服する」

 

 ラプラスの言葉にルイは無表情で頷き、こよりといろははゴクリと喉を鳴らす。

 この星で仲間になった2人にとっては初めての世界征服となる。

 

 だが、この2人と同じく初めての世界征服になるはずのもう1人、沙花叉クロヱはどこかワクワクとした表情でラプラスに顔を近付ける。

 

「それでそれで? まずはどこから落としていくのさ、ラプラス」

 

「そりゃもちろん。この星で最も美しい場所からだ」

 

「うんうん」

 

「我々がまず狙う場所は、天使が住むと言われている水の都アトランティス。クロヱ、確かお前の故郷だったな」

 

「そーなんだよ! あそこにはもうホント、腹の立つ奴がいるの! 早く行こ! 早く行って、さっさとあの海上都市を火の海に沈めてやろ!」

 

「おい沙花叉、お前何か勘違いしてるな。別に吾輩達は都を平地にするつもりはないぞ。ただ、吾輩に絶対服従を誓ってもらうだけだ」

 

「それが聞けないって言われたら?」

 

「その時は……分からせるしか、ないわなぁ」

 

 くくくと揃って邪悪な笑みを浮かべるラプラスとクロヱを見て、気持ち悪ッと無表情のまま心の中でツッコむルイ・こより・いろはであった。

 

 そんなやり取りがあったのが数週間前。

 そして今、彼女達秘密結社holoXは、この星で最も美しいと言われている水の都が一望できる丘までやって来ていた。

 

「うわぁ……」

 

 誰かが熱の篭った溜め息を吐いた。

 透き通るような海の上に浮かぶ海上都市アトランティス。

 規則性のある形をした海上都市の美しさはまさに圧巻であった。

 

 だからこそ、そんなこの世の遺産を今からこの手に収めることができると思うと高揚が止まらない。

 

 ラプラスの身体がゆっくり浮かび上がっていく。

 丘の上からゆっくりとアトランティス上空へと空中を移動していくラプラス。

 

 そしてある一定の距離まで移動すると右腕の袖を捲り上げる。

 

 

「さあ、開幕だ──」

 

 

 ラプラスの呟きと同時に、一閃の赤い光がラプラスに肉薄する。

 

「へえ、よく止めたね」

 

「……何だぁ、テメェ?」

 

 袖を捲り上げ露わにした右腕で肉薄してきた2本の刀を受け止めるラプラス。

 いきなり興を削がれる形になったが、どこからともなく突如攻撃を仕掛けてきた和装少女を見てスッと目を細める。

 

 真っ白な肌に黒と赤を基調とした和装。銀色の髪についた鈴の髪飾りが風に髪が揺らされチリンと音を奏でる。そして何より特徴的なのは、額から生える大きな2本の角。

 

(鬼……? それもこの隙の無さ、只者じゃないぞ)

 

 ラプラスは機械仕掛けの右腕で2本の刀を受け止めながら、左手に魔力弾を構える。

 

「何者かは知らねぇが、吾輩の邪魔をした代償はデカいぞ」

 

「そうか、自己紹介がまだだったね。余の名前は百鬼あやめ。よろしく」

 

「そうかい! ただ、テメェとよろしくやるつもりはねぇよ!」

 

 魔力弾をあやめの顔面目掛けて放った瞬間、それを回避するように右腕に加えられていた力がフッと抜ける。しかしラプラスは逃がさないとばかりに十数個の魔力弾を連続で放つと、今度はその魔力弾達が空中で避け回るあやめを追尾していく。

 

 ラプラスの放った魔力弾が追尾式だと気付いたあやめは振り返るように動きを止めると、両手に握る2本の刀を構えなおす。

 

「よっと……!」

 

 気の抜けた掛け声とは裏腹に、まるで舞を舞うかのような華麗な動きで魔力弾を次々と切断していくあやめ。

 そして、最後の魔力弾を叩き切った後、あやめの視線は目の前のラプラスではなく、少し離れた丘の上に立つ鷹嶺ルイに向けられていた。

 

「……あそこか」

 

「……! 待て!!」

 

 ラプラスの制止に聞く耳を持たず、あやめは丘の上へ向けて急降下を始めた。

 

(あいつ、幹部を……!?)

 

 爆速で接近するあやめに初めに反応し、前に出たのはいろはだった。

 刀と刀がぶつかる甲高い音が響く。

 二刀流のあやめの連撃を1本の刀で受けきっていくいろは。その隙にクロヱは丘から海に向かって飛び込み、ルイは背中の翼を広げると空中へ羽ばたき2人から距離を取る。こよりは誰にも気付かれぬうちに草陰に隠れていた。

 

「邪魔だなぁ、用があるのは君じゃないんだけどなぁ」

 

 目にも止まらぬ連撃に超一流の刀使いであるいろはが徐々に押され始める。

 

「ぐ……っ」

 

 そしてついにそのスピードに追い付けずいろはの刀が弾き飛ばされた瞬間、まるで見計らっていたかのようなタイミングでいろはの前にラプラスが現れ、流れるような動きで2人が場所を入れ替わる。

 

 ラプラスは右手の拳を握りしめると、腰の入った拳をあやめに叩き込む。

 瞬時に反応したあやめは両腕をクロスにしてその拳を受け止めるが、想定していたよりも数倍の威力が襲い掛かり、あやめは目を見開く。

 

(これは……こいつの力じゃない、ぞ……!!)

 

 そのまま勢いで丘の上から吹き飛ばされるあやめ。

 その下は当然崖となっており、下に広がる大海原に落下する。

 

「……っ」

 

 背中から海に落下する直前に何とか体勢を立て直そうとするあやめだが、次の瞬間海の中から現れた黒い影に左手の小指を含む端五分の一程が噛み千切られた。

 

「ぐっ……!? 何だ!?」

 

 海から現れた黒い影は再び海の中へと戻っていく。

 あやめは足元を警戒しつつ、魔力を放出して海の上に足を付けて立つ。

 

(海の中に……何かがいる?)

 

 食い千切られた左手を抑えながら足元を気にしていると、今度は頭上から数十枚の鋭い高速の羽と多数の魔力弾、そして数本の試験管が降り注ぐ。

 

「ちぃっ……!」

 

 着弾した傍から爆発を起こす攻撃holoXの攻撃にあやめは一度その場から大きく距離を取る。

 

「それは悪手だぜ、鬼神の娘」

 

 ラプラスの声が聞こえたのかどうかは分からないが、一気に距離を取ったはずのあやめの背後には先程と同じ黒い影が忍び寄る。

 

 

「海はそいつの独壇場だ。距離を取るなら陸か空へ上がるべきだったな」

 

 

 次の瞬間、あやめの右脇腹が背後から飛び出した沙花叉クロヱの鋭い牙に再び食い千切られた。

 

 

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