夜に、町を彷徨う影が一つ。
「どうして… ユイ…」
自分に呼びかけてきた声の主たる存在に障ったために死ぬこととなったその影は、その縁によって、我が娘が自分と同じ末路を辿ったことを悟った。
-感情が渦巻く。
家族が巻き込まれないよう“理様”に縁を切ってもらったはずなのに。あの声が家族をも連れていくと言いだした時点で私が縁を切っても手遅れだったのか。いずれ妻もこうなってしまうのか。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
その影は、自分が唯一現世に残した、切り落とされた左腕の周りから離れられず、自由に動くことができない。藁にもすがる思いで叫んだ。自分の声が誰かに届くのか、誰かに自分が見えるのかもわからない。それでも叫んだ。
「誰か!! 誰か!!」
「どうしたんだい?こんな夜中から。」
声に反応する者が一人。前を見ると、30代くらいに見える細身でアロハシャツを着た男が立っていた。自分の声が届いたことに驚きと安堵が混じる。だが落ち着いてはいられない。相手に取り合ってもらえるかなど気にしてもいられない。ただ、自分の頼みを告げる。
「娘を、たすけて… どうか…」
「僕は助けませんよ。するとしても、力を貸すだけ。助かるときはそのコが勝手に助かるだけだ。」
「力を、貸してくれるんですか… ?」
男は静かに頷く。影は、男に簡潔に自分の持つ情報・状況を話した。生き返らせることが依頼ならば難しいとも伝えられたが、それでも。娘があの声の主に囚われているならば何とかしなければならない。
「報酬としてお金が必要なら必ず何とかして払います。」
出まかせだが、言うしかなかった。
聞き終え、男が返答する。
「良いでしょう。できる限り力は貸しますよ。
事象の規模もまだわからないので、お金については後で」
引き受けた、という口ぶりで男はその場をあとにする。その背中を見ながら、これ以上自分に出来ることは無いと察したその影は、音もなく消滅した。
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アロハシャツの男、忍野メメは夜に怪異が大量に発生しているという噂を聞いてこの町にやってきた。そこで出会った影に依頼を受けてしまったが、どうやらあの影の言っていたことはこの町全体の異変とも無関係では無さそうだ。
“声の主”、“理様”、神が狂えばバランスが狂う。そういう話は聞いたことがあった。
そして、その夜はやってくる
初の投稿です。
拙い文章になると思いますが更新頻度が低くなっても完結まで書くのを目標にしています。よろしくお願いします。