少女が一人、はぐれてしまった親友を探して夜を彷徨っていた。
「ハル…どこにいるの… ?」
その少女、ユイは親友のハルと一緒に花火を見たあと、ハルがヘンな声が聞こえたというので一人で様子を見に行ったところで、蜘蛛のようなお化けに襲われて彼女と離れ離れになってしまった。
ハルが心配だ。寂しがりのハルは、一人で動けなくなって泣いているかもしれない。早く見つけてあげなければ。
ここまでの道中、赤い鋏のお化けに襲われたり、鏡から出てきた顔のない自分と対面したりしたが、気を失って気づけば違う場所に移動していたりと、わけがわからない部分も多く、記憶もぶつ切りだ。今移動させられた場所は、“ゴミ捨て場”だ。ゴミ捨て場といっても、正式なゴミステーションなどではなく、森に人々がゴミを捨てるのが常態化した結果、ゴミの山となっているのだ。このような状況でも、ハルを見つけなければならないのだから、くじけていられない。
「… ?」
何だろう。
気づくと、自分の指に赤い糸のようなものが絡みついている。血のような、深い赤。
風が吹いた、と感じ、再び視線を戻すと、もうその糸はなかった。
アン!
そこで、ふと聞き覚えのある犬の声が聞こえた。
「チャコ…? チャコ!!」
そこにはユイが飼っている犬であるチャコがいた。
アン! アン!
チャコは、嬉しそうに吠えながら、ユイを誘導するようにゴミ捨て場の奥に進んでいく。
「チャコ!どこにいくの!!」
何故ここにチャコがいるのかわからないが、賢いチャコが自分にこっちに来いとでも言うように進んでいくことに、何か期待せずにはいられない。
「ハル!!」
チャコが進んだ先には、ハルがいた。チャコがハルのところへ案内してくれた。
喜び、安堵、様々な感情で頭がいっぱいになる。
やっと、 会えた
「わんちゃん!」
動揺。
ハルが発した一言目、当然自分に気づいて喜ぶはずだ。しかしハルは最初にチャコの方に反応した。自分と目も合わせない。
「わんちゃん、こっちにもユイはいなかったよ。ほんとに、どこにいっちゃったんだろう…」
「ハル、わたしはここにいるよ…?」
アン! アン!
チャコがこちらに顔を向けて吠える。
「…? そこに何かあるの?」
「…ハル? 冗談はやめてよ、、」
違う。
声に出しながらも気づく。ハルはそんな悪い冗談を言うような子ではないし、そんな自然な演技が出来る子でもない。
ハルには、自分が見えていない
「ユイ… どこにいるんだろう…」
・・・
ごめんね、ハル わたし…
わたしはたぶん、もう…
しんじゃったんだ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「わんちゃん!」
少女、ハルはゴミ捨て場で親友の飼い犬と合流した。
ここまで、お化けや“コトワリさま”と呼ばれるものから逃げながら図書館やゴミ捨て場を通ってユイを探してきた。
「ユイ…どこにいっちゃったんだろう…」
その時、誰かに触れられたような感覚があった。
「…?」
自分の手をまじまじと見つめたが、何ともない。お化けに触れられたような嫌な感覚ではなかった。
気のせいだろう。そう思い立ち上がると、目の前に紙飛行機が落ちた。
「手紙?」
この地域の子どもたちの間では、手紙を紙飛行機にして飛ばすのが流行っていた。ハルもいつもは条件反射で手紙を取るが、この状況ではためらいがある。
アン!
すると、ユイの子犬が手紙に向かって吠え始めた。警戒しているような感じではない。
恐る恐る手紙を取り、開く
『ハルへ』
その3文字を見た途端、涙が溢れた。
ユイの字だ。ユイが、近くにいるかもしれない。
「ユイ!わたしはここだよ!」
声を張り上げるが、反応は無い。
グルルルル
その時、子犬が草むらに向かって唸り声を上げ始めた。
「なにか、いる…?」
これは明らかにユイに対する反応ではない。何か大きな影が見える。コトワリさまに見つかったかもしれないと思い、身構える。
しかし、姿を現したのはコトワリさまとはまた違う、仮面のようなものを中心にたくさんのミミズのようなものが生え、3つの大きな灰色の袋を持っているお化けだった。
子犬に呼びかけ、逃げるために駆け出す。が、疲れも溜まっている体は満足に動かず、つまづき、転んでしまった。
「…あれ?」
転んだとき、手紙を落としてしまったことに気づいた。ユイの手紙、まだ読めていない。手放すわけにはいかない。
「わんちゃん、手紙をお願い!」
子犬に呼びかける。子犬は、アン! と一声上げて手紙を口に咥えて走っていく。
仮面のお化けは、転んだハルに容赦なく向かってくる。そのお化けがハルに触れるー
その瞬間、その手が一人の男によって遮られた。
「まったく、元気がいいなぁ、
何か良いことでもあったのかい?」
ハルが顔を上げると、自分とお化けの間に、火のついていないタバコを咥えたアロハシャツの男が立っていた。
ハルは驚いて声が出せない。
その男はハルの横に立ち、言い放つ。
「ぼくがこの子の保護者だから、君は心配する必要無いよ。」
それを聞いたお化けは、襲うのをやめ、姿を消した。
端折る部分や展開的に飛ぶ場面はありますが、基本的には原作のストーリーに沿って進めていきたいと思います。