小説の林堂 三次創作 小説 「ソードアート・オンライン ──The adventure persons of virtual world──」   作:イバ・ヨシアキ

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 イバ・ヨシアキです。
 今日は仕事が休みのため更新させていただきました。
 ただ、やはり手直しした方がいいと思い、改稿作業に追われております。
 何とか今日中に第2章を掲載しなくては!

 では、改稿の一章です。

平成27年2月5日、改稿の改稿をしました。
 
 読んでいただけたら幸いです。 
 


第一章 第25層 フィールド・ボス攻略戦  

 アインクラッド城・第25層 フィールド・ボス・エリア 『フレイズマル城の跡地』

 かつてそこは多くの王族や貴族が集まり、暇を持て余した日々を彩る為の趣向を巡らせた舞踏の宴が行われていただろうと思われる荘厳な大広間は、見るも無残に朽ち果てていた。

 豪華絢爛と見栄え良く、滑らかな乳白色に輝いていただろう白亜の大理石も黒く、澱み色あせ、天頂を見る者の心を奪わせていただろう、遥か彼方の世界に住まう神々の天界を泳ぐ戦乙女の壁画も見るも無残に砕け散り、わずかに射し込む日差しが薄暗くも、この廃墟を煌々と照らし、どこか暗頓した空気に染まっている。

かつてこの廃城は騎士の名城と謳われ、一つの美術品として人々の敬意の眼差しもすでになく、いまは畏怖の視線しかない魔城と化していた。

この場に立ち寄れば、生きて帰れるものは無し。

いわく、この廃城の主には決して触れず。

禁忌の文言がこの浮遊城に住まう民草達に語られていた。

 そんな忌避されたる魔城の大広間。

崩れた神界の壁画絵かがれたる天長から、薄く陽差しが差し込む中で、白刃の剣閃が幾度も混じり、ぶつかり合う閃光がかち合う度に火花がいくつも散り、殺意と敵意を向けた獣の咆哮と慟哭が響き、互いの命をせめぎ合う中で、

「っ!」

 振り落とされたる槌のような鈍重であるも、獲物を抑え込む圧力のある一撃が振り下ろされ、暗がりの中でも色栄える蒼穹の空を連想してしまう蒼の陣羽織を羽織る男は、紙一重にその一撃を避け、割れた小石が地面に飛び散る。

 降り注ぐ欠片を浴びながら身体を地面に数回転がらせた後、男性はすぐに体勢を直し、立ち上がる。

そして一振りの日本刀の柄を強く握り締め、

「キリトっ! アスナっ! 来るぞっ!」

 どこか威圧があるも、その声を聴けばその声に反応し、もしその声に名を呼ばれたら強く心を惹きつけるだろう男性の声量が熱く強く響き、

「承知っ!」

「うん、わかった」

 それに見合わせて返事を返す、一人の少年と一人の少女の声が、埃舞う朽ち果てた廃城の虚空に響く。

 一見すれば大人と二人の少年と少女。

それぞれ互いは現実にはありえないような格好をしていた。

 まず、キリトと呼ばれた子ども──否、背丈は声を上げた男性よりは少し低くも、歳相応の平均から見てみても少し高く、身体つきも青年へと移行する成長の中間期であっても、その質は逞しく、無駄なく鍛え上げられていた武術を嗜む者、独特の鍛えた身体つきをしていた。

 顔つきは一見すれば少女と見間違えてしまいそうなほどの美麗な中性的な面持ちで、首筋で切り揃えた黒髪の色は深く、その瞳も黒曜石のように黒く、その視線からは心内の見えない深い孤独に彩られているも、直もその孤独を受け入れていた、戦人の心意を持っていた。

 質も女性に近い背の高さもあってか、可憐と凛々しさが入り混じる美形で、それにふさわしい着込み方をすれば、さぞ周りの目を引く、中性的な少年だろう。

 その少年は第1層のフロアボス攻略の際に手にした黒色のコート《コート・オブ・ミッドナイト》をその身に纏い、背には黒鞘に納められた大剣《ロング・ソード──グラディウス》を提げている。

 その姿はおおよそ現実社会ではまずありえないような格好だったが、この世界では比較的控えめな装備ともいえる、ごく普通にありえた格好だった。

 最低限の防御に特化し、動きを重点に置いた装備。両手の肘に防御用の鋼らしき金属が縫い付けられ、容易に矢じりや槍先でも貫通できない素材で編まれている。そのコート下には幾つもの釘──否、《ピック》と呼ばれる投擲用の飛び道具が幾つも携行され、無駄な装飾を省いただろう小さな短剣も腰から下げられていた。

 そしてそのコートの下の服も黒一色ではあるが、簡易式の布地で編んだ防具を身につけ、ズボンにも膝を防御または攻撃に転じられる為の金属が縫い付けられていた。

履いていた具足にも攻守ともに優れた装備が堅く施され、その出で立ちはまるで魔法と魔物を題材にしたファンタジー小説に出てくるような少年主人公の格好と言っても差し支えは無いが、今この少年が居る世界には魔法はなく、されど魔物が存在する仮想世界──アインクラッド。

電子の情報を集積し創られたゲームの世界であるも、ここには絶対たる主人公は存在せず、キリトも所詮はただの一個人にしか過ぎず、もしこの仮想世界で死んでもゲームは終わらず続いていく。

そう、この世界にいる全てのプレイヤーが居なくなるまで。

主人公なんて便利なものはいない。

ついて行き、導いてくれる高尚な人物なんていやしない。

だが自分を殺そうとする確たる殺意は存在し、それは今、眼前に迫る。虚構の世界ではないと、現実感と質量のある重圧感のある戦慄。

じわりと脳内を興奮させる今から来るだろうせめぎ合いに、キリトはどこか興奮していた。一息を整え、キリトは背に下げた片手剣《グラディウス》の柄を握り、前方の殺意に身を構えた。

 薄く鍛えられた軽量式の片刃式のロング・ソード。

 柄の部分は握りやすくキリトの手に合わせた創りになり、斬撃と耐久度を限界値まで底上げた20層にて手に入れたキリトの愛剣。キリトは《グラディウス》の柄を握り、イベント・ボス[Jinba of degeneration──堕落の神馬]に構える。

「アスナ、準備は?」 

「大丈夫、いつでも行けるよ」

キリトの声に的確に反応し、返事を返す少女。

彼の隣に並ぶように付き添い、そして背中を守るように傍にいる、赤いケープ・マントを着こんだ、豊潤な色合いを魅せる陽の光に輝く栗色の髪に、魅せてしまうほどの美貌と、甘美な蜜の潤いがあるヘイゼルの瞳を持つ、細い顔立ちをした美少女がいた。

 美少女とは過大な物言いと彼女は謙遜するかもしれないが、その少女は誰が見ても見まごう事なき美少女と言っても差支えない程に、いまだ10代であるにも関わらず、いかような男の目を引く美の容姿を持っていた。

 その美の容姿はいまだに成熟していない未成熟の段階ではあるも、既に完成へと至り、これからもより洗練され練磨されていくだろう位置にその美しさはあった。

 男性、女性問わずに見れば魅了されてしまい、思わず視線を引いてしまうほどの魅惑を持っていたが、その美しいヘイゼルの瞳は常に隣にいる少年キリトに注がれ、内に秘めているだろう彼の想いが解る程に、今来る殺意に絶対な敵意を向けていた。

 彼を絶対に殺させないと、向けられたる殺意を受け入れ、それ以上の敵意を向ける彼女。

 白と赤を基本とした年頃の娘らしく美しい服を纏い、それでいて固いアーマープレートの軽装備を身につけ、細い手足には軽量であるも小手や具足を身につけていた。

そして腰に下げた細剣《レイピア──アニールブレード・セレ二ティ》を抜き、キリトと同じように前方の殺意に身構えた。

アスナが凛として抜いた《アニールブレード・セレニティ》は、剣と言うには絢爛たる美を形にした創りになっており、細い剣身は白銀に輝き、柄は長くアスナの細い掌に深く収まるほど馴染んでいる。

「キリト君……戦略は?」

 馴染む細剣をその細い掌の内に収めるように密着させながら、姿勢を即応できるように身構えさせ、後れを取らないようにと身構えていた。

「ああ、考えている」

 と、キリトは至極落ち着いた声音でアスナの問いを返し、その隣にいる大柄な男性に、

「キリュウさん。まず奴を広い所に誘き出してください」

 澱みも恐怖も無い声音で告げ、

「わかった……任せとけ」

 男性──キリュウは、冷静に言葉を返す。

歳の背は軽く30を超えているだろうも、その身体つきには衰えも弛みも無く、いまだに最盛期であろう強靭無比な体躯をしていた。

身長に合わせた頑強な筋肉の張りと、その無駄なくに整った身体は武に身を置く者の創りとなっていた。

それに今までの数多くの殺し合いに身を投じていただろう、歳付きにふさわしく戦い慣れた玄人の眼光を持ち、短く切りそろえたるも気に逆立つ髪は獅子を連想し、凛々したる面は丈夫たる表情を持ち、その存在は、どこか猛々しく昇る龍が如く存在だった。

 身にまとう服はキリトとアスナとは違い、洋装ではなく、どこか時代の掛かった、そうあえてたとえれば幕末を舞台にした時代劇に出てくるだろう、日本を代表する侍組織──新撰組の蒼い陣羽織をはおり、背には新撰組そのままに誠の一文字を背負い、頑強かつ強靭なまでに鍛え上げられた胸板には和甲冑を身につけ、手足は拳脚打撃に特化した小手、具足などつけ、腰には一振りの打刀《同田貫──隠神刑部》が提げられた。

 慣れ親しんだ刀を持ち、それを抜き、構え、怪物と斬り合う。

こんな世界をいつ想像したか、虚構であると否定はできずに、かつての現実はもう遠い事のように思えるくらいに、今はキリュウにとっての現実になっていた出で立ち。

 キリトの声の後、キリュウは抜いていた《隠神刑部》を構え直すように右手に強く握り締められていた。

「アスナ、キリュウさんの後に俺が続く。最後の一撃はアスナが決めてくれ」

「まかせて。必ず二人の後に続くから」

 信頼を寄せあう二人の声に、キリュウは心に張った緊張をほぐした。

 キリトとアスナには絆があった。まだその絆は未完成なものなのかもしれないが、二人の連携は信頼できるものだったことは、この半年で戦い抜いてきたキリュウがよく知っていた。

即応、反射、呼吸を合わせたキリトの斬撃の一閃に続く、アスナの細剣から繰り出される閃光が如くの光速の突きの連携には隙は無い。

 この二人と共にこの25層まで背を合わせながらに戦いあってきたそんな信頼のもとで、キリュウは、

「背中は任せたぜ。二人とも──」

 優しく微笑み、殺意の鈍重たる一撃が振り下ろされた闇へと入り込む。

視界を完全に闇へと落とす暗がりの中、キリュウは右手に持つ《隠神刑部》の柄を左手にも握り、両手に固く握りしめながら、呼吸を整え、神経を張り、自分へ向かう殺意に感覚を研ぎらせた。

刹那。

前方から振り下ろされる初撃を避け、点々と零れる陽射しの中におびき寄せていく。キリト、アスナが闇の中で動き、闇の殺意を囲んでいく。

 やがて瓦礫が少なくなり、立ち回りの利く広場へと出るとキリュウは前へと出た。

 振り下ろされたる鈍重な一撃を、

「ふんっ!」

 直突の刀閃で弾き、さらなる一撃を渾身の斬撃で応酬し返し、その鈍重な一撃を繰り出す暗がりに隠れた相手を刀閃の連打で追い詰めていく。

「せぃいっ!」

腰を低く下げ、左足で地面をけり上げ、闇から殺意を向けてくる相手の間合いへと傲然と飛び込み、横薙ぎに一閃を繰りだす。

【ヴァアアアアアア】 

 その一撃に悶えるように響くその咆哮の後、自分を睨みつけ迫る殺意に身を構えた。

 暗がりの虚空から殺意を向けていたのは一頭の馬だった。うすぼやけた陽の光に身を照らしながら、現れたる一頭の馬。キリュウの眼から映る空間に表示されているその馬の名は[Jinba of degeneration──堕落の神馬]と記されていた。

 これが馬かと、どこか呆れてしまう。

 本来馬は憶病であり繊細な生き物だと言うが、キリュウ達の対峙するその馬は、決して臆病などと軽い言葉でひとくくり出来ない、飢えた野獣の暴悪さがあった。

 かつて現実世界で飢えた二頭の虎や闘技を行う為に調教された獅子と対峙したことはあったが、その虎や獅子ですらまだまともだと思えるほどに、この馬は現実味のない凶悪さに彩られ過ぎていた。

 馬は激しいほどに飢えていた。

 キリュウやキリト、アスナを、その飢えを満たす獲物として認識していたのだ。

 どこか鮮血を被ったかのように赤黒い頑強な肌を持ち、草食を主とした生き物にも関わらず、口元には針山のような刺々しい牙を生やし、時折喉を唸らせ、こちらを見ながら唾液を垂らしていた。

 現実にこんな生き物がいるのかと、普通の人間なら目の前にすれば恐怖の錯乱と恐慌によって正しく見解を持てないだろうが、現実での認識、常識から照らし合わせてみても、こんな化物じみた馬など実在しはしない。

 だが、この仮想世界、浮遊城アインクラッドには、こんな怪物は当たり前の物だ。

 別にいまさら動揺する事も無い。

ここはあの慣れ親しんだ現実ではない。

たとえ今ここで自分の腕がこの化物に食いちぎられても、死ななければ時間経過で元に戻り、あの牙で腹を切り裂かれても血は流れず、赤いエフェクトが身体から流れ、いかなる傷を受けようとも痛み、苦痛は無く、体内を粘るように張り付く不快感だけしか存在しない世界。

この仮想世界では、ごく当たり前の事だ。

 眼前にいる怪物もModと呼ばれる、この世界に存在する数値化されたプログラムの塊でしかないが、その塊は今、明確な殺意をこちらに向けていた。

 これは、あいつが創った殺意なのかと、改めて思う。

 このゲーム内で死ねば確実に死ぬ。

 それがこの理不尽なる凶器に満ちたデスゲームの絶対なルール。

 Yes・Noの再挑戦は無い。10カウントダウンの死に戻りも、教会すらも無く、生き返ることはあり得ない。

 死ねば今のこの世界で身体を形成しているデーターが砕け散り、光の粒子になって跡形も無く消え去り、始まりの街の生命の碑に名前が消され、死亡した経緯が克明に記載され、それで終わり。

 現実世界に置かれたナーブギアを被り、横たわる自分の身体はアバターの死と共に脳を焼き切られ、電気椅子に括りつけられた囚人みたく最期を遂げるだろう、その残酷な死を無条件で受け入れるしかない。

 ここでの身体──アバターは言わば仮初の身体だが、今、アインクラッドで生きていく自分の生命を吹き込んだ身体た。

 じわじわとHP表示された命の消滅を知らせ、精神を削り殺されいく恐怖。

数置ゼロと共に着実に訪れる魂の死。

 確実なる消滅。

 だが、キリト、アスナ、キリュウは別にその殺意に動じはせずに、キリトもその殺意を正面から受け入れ、アスナもその恐怖を押し殺し、何よりその恐怖に屈するよりもキリトの側面を守ろうとする意志が、アスナのヘイゼルの瞳に込められ、必ずキリトに続く様にと、その殺意を向ける敵の悪意を受け入れていた。

 キリュウはそんな二人を死なせまいと《隠神刑部》を正眼に構え、飢えから撒き散らせる唾液を振りこぼしながら眼前の堕ちたる神馬に冷徹な敵意を向ける。

「……こいっ!」

 キリュウは冷徹な眼光を滾らせ、

「っ!」

 踏み出る。

 正眼に構えた両手構えの刀を振り上げ、堕ちたる神馬の首元に一閃を入れる──が、

【ガァァァアアアアアア!】

 迅雷の刃を荒々しく噛みあげ、キリュウの一刀を受け止めた。

「ぐぅ!」

 ガリリと鋼の削る音が全身に響き、力任せに首を振る神馬の押し込みに両腕の筋肉が軋み、より強く咥えた刃をさらに深く咥え込み、荒々しい噛み合う硬牙の捻じりにつば競り合うキリュウは、

「おおおおぉおおお!」

 息を荒々しく吐き、両上腕の筋力を這わせるように柄にさらに力を籠め、一歩と前に足を踏み込ませ、神馬に迫る。

【バォホホホホホホホホォォォ!】

 せめぎ合い押し合う刃と牙の斬撃の鍔競り合いに、身体から猛る熱がジワジワと込み上げていた。そして歯の根を砕くように、

「おおおぉぉぉおぉぉぉ!」 

握り締めた柄を左手に集中するように右手を手放す。キリュウの《隠神刑部》を噛み砕かんとした神馬は踏み押していた刀圧が無くなり、押しつぶそうとしていたその巨体の体制を崩し、キリュウの方へと身体を落とそうとしていた。

 寸前のところで神馬は前足で踏みとどまるも、間合いをキリュウに奪われてしまい、その崩れる体勢のゆるみを見逃さず、彼は手放した右手の拳を圧縮し、

「せぇいいぁあああああ!」

そのまま神馬の左こめかみに怒涛に突き刺す。

【ヴァアアアアアアアアアァ!】

左目が捉えた最後の視界には蒼白い光に包まれたキリュウの拳が迫り、やがて鈍痛と共にその視界は闇に落ちる。その視界を奪った抉り貪るような鈍痛に神馬は咥え込んだ刀身を離してしまい、その巨体を激しく左右に揺らす。

内に濃縮に圧縮した拳の衝撃にグシャリと弾けた頭蓋の軋みの感覚が響き、神馬の左目をパシャンと破裂させ、弾けた眼球の液体のエフェクトが大気に舞う。

「──いまだ、キリト!」

身をしゃがませ、神馬の側面へと転がるキリュウの合図の後に、

「引き受けた!」

キリュウの背後からキリトは駆けた。

【ヴァァアアアアアア!】 

 キリトの発しに反応したのか、馬とは思えないような雄叫びを上げ、巨大な蹄を地面に何度も打ち付け、駆けてくるキリトに殺意に満ちた獰猛な眼光を向ける。

キリュウの激烈な拳打に隻眼になるも、その殺意は消えず、鉄の兜すら──否、鉄の塊も簡単に噛み砕けてしまいそうな余りにも禍々しい牙で覆われた口内を大きく開き、疾走するキリトの全身を噛み砕こうと駆けだす。

 キリュウの一撃に憤然と意識を暴発させた神馬は、彼を追撃しようと牙を軋らせていたが、キリトの発する純粋な戦意を察したのか、自分の左目を潰したキリュウよりも向かってくる、この少年に次の標的を定めた。

 こいつを喰らった後は貴様だと、言わんばかりの殺気を発しながら、地面を砕きながら走り迫る神馬は咆哮(テイラー・ボォイス)を使い、キリトに(スタン)麻痺・気絶のステータス障害を付属させようとするも、キリトはその咆哮を異に解した様子も無く、神馬の懐に入り込む。

 竦み動けなくなる筈なのにと、神馬の思考が一瞬止まるが、本能的に入り込んだキリトの頭部にめがけて前足を下ろすも、前足はキリトの頭部を踏み砕く事は無く、簡単に避けられてしまう。

否、踏みつけ砕こうとしたその間と、キリトの駆けだす瞬発性に大きな差異が存在し、キリトの動きにはついていけなかった。

 ゲーム的戦闘レベルは神馬が上だった、しかし戦闘者としての経験はキリトの方に分があった。

 そして決定的な勝敗が決する。

「──っ!」

 キリトは背から抜いた《グラディウス》を降り抜き、抜刀と共に勢いのついた斬撃と共にキリトは軍馬の後ろ右脚を太股の付け根から、その豪胆な脚をいともたやすく斬り落とす。

【ヴァァアアアアア!】

「キリュウさん、もう一撃頼む!」 

交差した一撃の勝負に軍馬は身を崩しかけるも、両方の前足を踏み台にして体制を整え、滑り込む形で再度の獲物──キリュウに喰らい突こうと咆哮を上げ、襲いかかるも──

「はぁぁぁあああああああっ!」

 キリュウは左腰だめに構えていた刀を納刀し、肺の呼吸の全てを吐き出し、肺の縮小を感じ、そして新たに一呼吸を深く吸い込み、体内へと修めた。

 姿勢を低くし、両脚に力を籠め、俊足の跳躍へと反射を高めていく。

 数歩ほどの距離に怒り狂う神馬が狂騒の咆哮を上げながら、無数の刃の山を連想させる死相を刻み込む口内を開け、キリュウを噛み砕こうとする。

 だがキリュウは動かず、数歩、あと数歩と、神馬が迫るのを耐えていた。

やがて神馬の吐く吐息がキリュウの全身を撫でるも、まだ踏み出さずに、その瞬発を耐えていた。

 視界に神馬の潰れた左目の痕が強く引く刹那。

抜刀と共に右脚で地面を踏み、

「せぃいい──」

 込み上げ、瞬間の一点線を大気に刻み、抜刀する。

「──やあああぁぁぁっ!」

 神馬の咆哮よりも弾けるキリュウの一声の後に、その姿は既に無かった。動作を終え、神馬の後方へと抜刀し、再度納刀するキリュウの姿を視認した後、神馬は全身を前へと崩してしまう。

 いかなるものを踏み殺し、踏み潰してきた健脚である両前足が切断されていた事に、ようやくに神馬は認識する。

 斬られていたということを。

今しがたのキリュウの抜刀はこのゲーム内にあるソードスキルではなく、現実世界で得た技の一つだった。

『秘剣・暴れ牛』

 かつて剣豪、剣聖と世に謳われ、生涯を無敗無双と無敵無双と、後世の武を置く者すべてに讃えられる武人──宮本武蔵の剣技秘伝たる技。

 後の世に微かに伝えられ記された秘伝書に描かれたる絵よりの天啓の意味をキリュウは知り、一つの技としてその力を災事の当たるごとに、急場の争いのさなかにその技を使うことがあった。

 しかし、決してその技を日本刀で使用したことはなかった。

この世界に来るまでは。

 現実で使うことがあれど、木刀もしくは刃を落とした模造刀、もしくは安普請の刀でその技を使用し、いくつかの強敵や荒事をしのいできた。

 もし。

もしもだ。鍛え抜かれ白刃に磨かれた日本刀でこの技を行使すれば、間違いなく相手を死に至らせることのできる殺人剣である事は、使用者であるキリュウが身をもってその結末を知りえていた。

 一刀の抜刀のもと、相手の腰を両断し、赤黒い弧月を描くように舞う上半身を、容易に築くことのできる威力を秘めたる技。

 かの宮本武蔵が世に広めずに秘伝書に記した経緯を知り、戦慄を覚えたことは今も忘れてなどいない。

 例え、木刀や模造刀でこの技を使用しても、行使した相手に絶対な致命傷を与えかねない程、この技の威力は絶対だった。

それを証明するかのように、ソードスキルではない筈のこの技は、キリトとその仲間たちが持つ神霆流の技と同じように絶大な威力がある。

オリジナルソードスキルに分類され、使用にはソードスキル以上の制約があるとキリトから聞き及んでいる。

その制約のツケか、今の斬撃で《隠神刑部》の耐久力が著しく減り、鉈のように分厚い重厚な刃は強靭な馬脚を斬り裂いた代償なのか、軋みを感じる。されど刃は欠けた様子などは無く、このまま連撃の二撃目を繰り出すことも可能ではあるが、横薙ぎに払った刃を返し、身構えていたキリトに並ぶようにキリュウもアスナの方を見やる。

 巨体を支えていた自慢の両の脚を失い、左脚を残すだけの軍馬は当然のごとくに身を前に倒し、崩れるようにして地面に落ちていく先にいるアスナに、

「アスナっ! いまだっ!」

 キリトの合図の後。

「うんっ!」

最後に控えていたアスナは抜いていた愛用の《アニールブレード・セレニティ》を右手に構え、突き放つ姿勢を取り、ソードスキル発動のエフェクトが眩く。

しかし神馬は決して怯まず、せめてこの子娘だけでもと、捕食者たる本能的自尊心の為、自負する最強の口を開け、アスナを噛み砕こうと地面に落ちる最中にもその殺意を絶やすことは無かった。

 だが神馬が、獣性に満ちた脳裏に抱いた想像は結果とならず、アスナが構えた《アニールブレード・セレニティ》の斬先から、刺突系ソードスキル『シューティング・レイ』瞬きと輝きと共に発動させ、

「えぇぇいぃぃぃっ!」

 アスナの突き出す一閃がより高速化し、かつてキリトが流星のようだと例えたその剣技にはさらに磨きがかかり、神馬の頑強かつ硬質な筋の壁を破砕し、そのまま脳幹にまで細剣の剣身を送りこむ。

【ボォオオオオオッ!】

 決定的な敗北を抗うが如く神馬は、この結末を受け入れがたいかのように、抗うがごとくに断末魔を吐きあげ、幾多の獲物を食い破ってきた剛口から血のエフェクトを吐き出し絶命し、粒子の塊となり跡形も無く砕け散る。

「ふぅ……」

 アスナは手慣れたように《アニールブレード・セレニティ》を振り、自身の内心にあった緊張を解く。

「やったな、アスナ」

「ありがとうキリト君、キリュウさん」

 満面の笑顔をキリトに向け安堵するアスナに、キリトも同じように笑顔を返し、互いの無事に穏やかな笑顔を向け、

「これでやっとボスの部屋の鍵が揃ったな」

 キリュウは《隠神刑部》を鞘に戻し、二人の元に歩み寄る。

「ナイスアタック。アスナ」

「ふふ、おほめにあずかり光栄です♪ リーダー♪」

「だからリーダーじゃないって言っているだろう。それに黒衣衆はギルド登録してないんだから、リーダーなんて言わなくていいよ」

「いいえ、ちゃんとみんなも君をリーダーって認めているんだから、そこはしっかりしなきゃね」

「いつも通りで良いさ。ほかの皆も普通にキリトって呼んでいるし、アスナにも普通に呼ばれたいしな」

「じゃ、じゃあ、改めて、ありがとうキリト君♪」

「ふふ、やっぱり……アスナにそう呼ばれるのが一番だな」

「もうぅ……」

 キリトはすでに先にアスナの元により笑顔を向け、アスナもその笑顔に応えるように明るく微笑んでいた。

 そんな二人の弾む会話の中に入るのが悪い気がしたが、

「……で、邪魔して悪いんだが、アスナ……鍵はちゃんと手に入っているのか」

 キリュウは確認するかのように訊ね、

「え! あ、はい。ちゃんと私のアイテムストレージの中にありますよ。いま出しますね」

 慌てて照れながらいそいそとアスナはウィンドウ画面を操作し、アイテムを表示し、光の凝縮と共にぽんと、金色の装飾がされた鍵がアスナの掌に落ちる。

「また偉く豪勢な鍵だな」

 アスナが見せる鍵の絢爛たる装飾に呆れながらキリュウは言い、

「他の鍵も似たり寄ったりだけどな」

 キリトは自分のアイテムストレージに入っていた残りの銀と宝石の鍵を取りだす。

「売ればけっこう良い値のコル(ソードアート・オンライン内の通貨の呼び名)になりそうなんだけど……」

 と、キリトは何気に言い。

「これ使ったら消えちゃうんだよね」

 アスナも自分が取り出した鍵を見て言い、

「消費アイテムだからなぁ」 

 両手に鍵を弄びながら、ペン廻しみたくくるくると回すキリトに、

「あ、キリト君。アイテムで遊んじゃだめだよ。落としたらどうするの?」

「落としても取得アイテムとしてストレージに登録されているから大丈夫だよ」

「それは、そうだけど……」

 たしなめるようにアスナは言うも、

「アスナもやってみなよ」

「えーできないよ」 

「大丈夫だって、ほら♪」

「んー、一回だけだよ」

 自分が持っている鍵を、恐る恐るくるくると回してみると、

「お、うまいうまい♪」

「そ、そうかな」

 何やら歳相応な和やかな会話をしている二人に、キリュウはやれやれとむず痒く頭を掻く。

 最初の頃に比べたらアスナもだいぶ落ち着きを取り戻したなと、このデスゲーム開始からすでに半年が経過し、あと6ヶカ月も過ぎればちょうど一年。

 そう、ようやく1年かかるだろう時間を費やしてアインクラッドの25層まで攻略し、それでもなお後には、75層も存在しているのだ。

 こんな子どもにまで命を賭けさせなければ攻略の出来ないデスゲームに、キリュウはどこか気を重くしていたが、

「ほら、こうやって指の腹で腹でまわせば……こうなる」

「んーと、えい」

 キリトとアスナの雰囲気にそんな気持ちもどこか行ってしまい、とりあえず他のメンバー達にも連絡しないと、ウィンド画面を出し、フレンド登録しているギルドメンバーのマジマにメールを打つも、

「……うー、やっぱり無理……」 

「でも筋は大丈夫。ほら、もう一回やってみなよ」

「んー、やっぱりむずかしいよ」

 くるくると鍵をまわすアスナとキリトに、

「おまえら……攻略アイテムで遊ぶなよ」

 キリュウはどこかに呆れながらも、今のこのどこか安心できる空気に安堵し、やれやれと思いながらマジマにメールを送る。 

 

 

 キリト達から場所は離れて、この朽ちた居城の西側に位置する広間にて、

「お、キリュウちゃんたちやったみたいやでぇ」

 左目に白蛇の刺繍が施されたプレイヤーメイドの眼帯を付けたマジマが、戦闘中にもかかわらず、葡萄酒の瓶を片手にウィンド画面に届いたメールを呑気に眺めながら気楽に言い、

「じゃあこっちもはよぉ、片づけなきゃぁ……アカンなぁ」

 うっすらと笑い、自分に向かって全力に振り下ろされたメイスを小太刀で受け止め、弾き、

「おりゃあぁあ!」

 無表情な顔であるもどこか精巧な造りをした、パペット型モンスター[soldier・Marionette──マリオネット兵]の胸元を一撃で薙ぎ払う。

 鎧ごと胸元を一刀のもと両断一閃されたマリオネットは悲鳴も出さずにポリゴンの塵と化し四散していく中で、うっすらと笑いマジマは、

「気合入れていくでぇ、ハジメちゃ~ん♪」

 叫び地面を蹴り駆けだし、

「ひゃはははははははは!」

声を上げ笑いながらマジマはマリオネット兵4体と、せめぎ合い斬り合っていた黒衣の陣羽織を身につけた、朱色の髪を束ねた女性と見間違えてしまいそうなほどに美形の男性──ハジメの間に入るように、槍を振り被ったマリオネットの頭を、

「うぅりゃぁああああ!」

 蹴り飛ばし、そのまま踏みつけるように地面に押し倒しながら、

「ほおぉりゃあ!」

 力任せにマリオネット兵の無機質な喉元に小太刀を突き刺し、

「わきが甘いでぇ♪ ハジメちゃん♪」

 暴れるマリオネットの頭を踏み壊し、同時に刀身を喰い込ませ、HPをゼロにし、砕け散らせる。

のんびりとした動作で経験値の獲得と入手コルを確認する中で、

「……マジマさん、アンタも危ないぞ」

「ん?」

 ビュっと空を裂く白光の二閃がマジマの右頬と左頬をかすめ、次にと決めていたマリオネット二体の額を撃ち抜く矢が刺さっていた。

 そのまま後方にどさりと倒れ、矢もろとも砕け散ったマリオネット兵を後に、

「シノンちゃん。人の獲物とっちゃ駄目やろがい! マナー違反やでぇ!」

 眼鏡をかけ前髪に飾りを付けた髪形をし、どこか冷静であるもその瞳の先はハジメに注がれ、二階の踊り場から右手に弓《ロング・ボウ──ハーネスト》を構えた、軽装な胸あてに防具など、動きやすく整えた、スポウティーなショートパンツを身につけた、黒衣一色の装備。

腰からは矢をしまう筒状のケースを提げた少女──シノンにマジマはたしなめるように言うも、

「マナー違反なのはマジマさんでしょ! こっちが先に狙っていた獲物なのに! ハジメと連携取っていたんだから、そっちこそ邪魔しないでよ」

 と、クールにしれっとしながら三本目の矢を弦に掛け、ハジメの近くに身構えていた大盾と棍棒を持ったマリオネットに狙いを定めるシノンに、

「なんや。ほう、そうか。ならしゃあないな。すまんのぉシノンちゃん。じゃましてもぉて、ほんま堪忍な。それにしてもええのぉハジメちゃん、かわええ彼女に守ってもらってぇ、おっさんうらやましいわぁ」

「……来るぞ。マジマさん」

 と、マジマをあっさりと流す中も、シノンの驚異的な集中力は継続され、ハジメの装備する刀《打刀──白夜》から繰り出す斬撃に隙は無く、無呼吸における左右上下に繰り出される四連の刀撃に隙は無く、先程まで数で優位にあったマリオネット兵を追い詰めていく。

 その途絶えぬ刀撃の僅かにひらいた盾の隙間にシノンは精密に矢を射り、マリオネット兵の膝をあっさりと撃ち抜く。

「ハジメ!」

「!」

 矢を膝に受け、体勢を崩したマリオネット兵の大盾を蹴り上げ、そのまま大盾を弾き飛ばし、がらんどうになったマリオネットの胸を袈裟掛けに斬り込み、一閃する。

 斜めに斬り裂かれたマリオネット兵の胴体がずるりと、静かにずれた瞬間。

 マリオネット兵はそのままポリゴンの結晶となり四散し、そしてようやくにして戦闘を終えた。

 経験値、コルを確認し、ハジメは刀を払い、鞘に納める。

「おつかれさんやなぁ」

 ポンと肩を叩き、ねぎらうマジマの声に、

「加勢に感謝する、マジマさん」

 礼儀正しく頭を下げるハジメに、

「ええがなぁええがなぁ、わしとハジメちゃんのなかやろぉ」

 からからと笑うマジマの後に、

「ハジメ怪我は無い」

 二階の踊り場から飛び降り、心配そうにするシノンは足早に駆け付け、ポーションを手渡してくる。ハジメはそれを受け取り、

「心配かけたな……シノン」

 シノンの頭を優しくなで謝辞を返す。顔を真っ赤に照れるシノンに、優しく微笑むハジメ。

 その二人を見てマジマは、

「仲のええことやなぁ。おじさん、お邪魔したら悪いからどこかいっとこかぁ」

 と、茶化すように二人をからかう。

「べ、べつに……そんなんじゃ……ほら、マジマさんも!」

 と、ポーションを手渡し、シノンも何かを誤魔化すようにポーションを一気に飲む。

「恥ずかしがらんでもええのにぃ、ほんまシノンちゃんはテレやさんやのぉ」

 かかかと笑いながらマジマはポーションを飲み、フィールド・ボスがいるだろう集合地点である、この廃墟の中央へと向かう。

 少しむくれていたシノンのなだめながらハジメはやれやれとしながらもどこか微笑んでいた。

 

 

 南側。

 もう手入れすらされていないだろう花々が覆い茂る鬱蒼とした庭園にて、この屋敷を守護するマリオネット兵との戦闘を繰り広げていた一人の男は、届いたメールを確認し、

「おい、ルナリオ! リーファ! キリュウ達が手に入れたみたいや!」

 獅子のたて髪みたく威圧感のある金髪を靡かせ、相手を委縮させる野太い声を出し、誠一文字の蒼い陣羽織を着てもなおも、どこか野武士のような身なりをした大男が声をかけるも、剣や槍などの武器を持つマリオネット兵が取り囲み、男の良く手を遮る。

「邪魔や……去ねや!」

 古びたロングソードで斬りかかろうとしたマリオネット兵士三体を《野太刀──伏魔伝》で力任せに横薙ぎに斬り伏せ、腰元から一刀両断し、三体同時に消滅させる。

「ふん、ダボが! もっと鍛えてからこいや!」

 吐き捨てるように《伏魔伝》を払い、まだ向かってくるだろうマリオネット兵を睨みながら身を構える大男は、威嚇するように大男の身の丈と同様の長さがある《伏魔伝》の斬馬刀と言っても大して差し支えのない重厚な刀身を地面に力任せに叩き付け、そのまま刃を滑らせながら火花を散らし、

「はよぉ、こんな雑魚片づけていこかぁ!」

 共にマリオネット兵と戦う大男と同じであるも、綺麗な艶のある金髪をなびかせ、黒衣の武道衣を纏い、胸や手、脚に身動きを重視した装具を纏う赤色の瞳の中性的な少年──ルナリオは、

「キリトさん、もう手に入れたんっすか。さすがっすね!」

 両手装備のバトルアックスを構えた2体のマリオネット兵士を相手取り、装備した《槍──宝蔵院宗哉》で、降り下ろされる超重量な一撃を弾き、身体を回転させ遠心力を活かし、槍を回転させる独自の棍術と槍術の特性を応用した打撃と斬撃でマリオネット兵の脚、腰を十字の形に鍛え上げられた刃で裂き、空に弧円を描く槍の柄の一撃をトドメとしてマリオネットの頭部を砕き、四散させた。

「ええ、お兄ちゃんたち、もう手に入れちゃったの? もう、速いよ!」

 漆黒の黒髪を揃うように肩まで切りそろえた、どこか愛らしい顔立ちをし、何処はかとなく胸の大きい(本人は気にしている)少女──リーファは、全身を守る様な黒色に染まった軽量の乙女和甲冑を身につけ、まるで御伽草子の若武者みたく、ルナリオが鍛えてくれた刀《打刀──桜花》を降り、マリオネット兵の剣と楯を牽制し、

「えぇいい!」

 盾に一撃を加え弾いた隙間に、一刀の斬撃をマリオネットの頭部に与え、兜ごとマリオネットの頭部を両断する。

 砕け散るマリオネット兵士から次の敵に警戒するも、

「リーファは回復してっす!」

 守るようにルナリオが《宝蔵院宗哉》を正眼に構え、リーファの前に立ち、自分のアイテムストレージからポーションを手渡してくる。

「え、まだ大丈夫だよ。ルナ君」

「ええから素直に回復しとき」

 大男も《伏魔伝》を構え、リーファの前に立つ。マリオネット兵が草場から5体、10体と集まりだし、リーファ達を取り囲む。

「ワシの後ろはまかせたで、ルナリオ。しっかりきばれや!」

「リュウジさん了解っす! リーファはボクの後ろを守ってくれっす」

「うん、わかった」

 ルナリオから手渡されたポーションを飲みきり、HPを回復させ、殻になったビンの消滅と共に刀を構える。

「ほな、いくでぇ!」 

 大男──リュウジは《伏魔伝》を大きくかぶり振り、

「うぉおりぁあ!」

 マリオネット兵を脳天から股間まで一刀両断する強烈な斬撃を加え、四散させる。その猛攻は止まらずに、

「じゃまやゃあぁ!」

 隙を与えることなく、片手式の盾を構えたマリオネット兵を盾ごと貫き、

「おおぉりゃああぁぁぁ!」

 リュウジは盾を貫かれ手足をバタつかせる刺し込まれたマリオネット兵を筋力に任せ二周ほど振り回し、取り囲んでいたマリオネット兵を薙ぎ倒していく。

叩きつけられ吹き飛ばされるマリオネット兵や床に倒れ転がる一体のマリオネット兵の頭を、

「ふんっ!」

力任せに踏みつけ顔をそのまま踏み砕きながら、刃を滑らながら背負い投げの要領で突き刺したマリオネット兵を、周囲に取り囲む群れの中に叩き込む。

 その大立ち振る舞いを見て、

「リーファ、いくっすよ!」

「うん」 

 その後に続いて、ルナリオ、リーファがリュウジの後方から攻めてくるマリオネット兵を、

「せいぃ!」

 両手に弧を描く様に《宝蔵院宗哉》を振り被り、柄の部分でマリオネット兵の頭部を砕き散らせ

「えぇい!」

 ルナリオに意識を集中していたマリオネット兵の隙をつく様に、リーファはルナリオに向かってきたマリオネット兵の胴へと横薙ぎに斬り込み、そのまま両断し散らせ、敵の注意を交互に反らせながら確実に一体、一体と倒していく。

「リーファ危ないっす!」

 投げて来たマリオネット兵の斧を《宝蔵院宗哉》で叩き落とし、落とした勢いに乗りながら手の中でさらに回転させ更なる遠心力と攻撃力を生みつつ、リーファを狙ったマリオネット兵の胴を弾き、そのまま貫き四散させる。

「ルナリオ君……ごめん」

「いいっすよ。リーファはオレが守るッすから」

「……うん」

 微笑むリーファ。

そして自然と背中合わせに互いを守るように体勢を整える二人に、

「おいそこの二人、いちゃつくのは後にしいや」

 リュウジはあきれながらに言い、

「リュ、リュウジさん!」

「イ、イチャついてなんかいないっす!」

 あたふたと初心に照れる二人の姿を見て、何かむず痒さを覚えるが、

「ほうか……それにしては仲がええのぉ」

「もう、リュウジさん!」

 頬を膨らませ怒るリーファの姿に和むような気持ちを覚えて、

「まあ、後でゆっくりいちゃついたらええがな。ほな、他はまかしたでぇ!」

 解りやすい二人にリュウジは呆れながらも絶対な信頼を寄せながら、自分たちを取り囲むマリオネット兵達に姿勢を向け、

「おう……どうしたんやぁ……はよぉ、かかってこいやぁあ!」

 リュウジの威圧ある叫びに反応し、竦みの掛かったかのように動きが鈍るマリオネット兵にリュウジ、ルナリオ、リーファは連携を崩さずに攻め入り、そしてものの数分も経たないうちに、このエリア内のModは三人によって殲滅された。

 

 ──2013年6月10日。

 ソードアート・オンライン開始よりの攻略は現在25層まで進んでいた。

 

 

第2章へ続く。 

 

 




 改稿しました作品いかがでしたか。
 読み直してみると、後でいろいろと気になる点が見つかってしまい、直したい衝動に駆られますが、小生は直し続けてしまうとずっとそれにかかってしまう性分ゆえに、なるだけ気をつけてはいるのですが、やはり気になってしまい改稿をしてしまいました。
 何かこう卑怯な気がしますが、自分が書く作品をちゃんと手直しし、世に出すことも創作に大切なこと。
 がんばって書いていきます。

 何とか今日中に第二章へ。
 次回、龍が如くサイドよりあの男が登場します。
 
 作者の好きなあの男が。

 第二章も改稿しました、よろしくお願いいたします。
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