小説の林堂 三次創作 小説 「ソードアート・オンライン ──The adventure persons of virtual world──」   作:イバ・ヨシアキ

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 お久しぶりでございます。
 イバ・ヨシアキです。
 ご無沙汰しておりました。
 いやはや、色々と仕事が重なりなかなかアップできませんでしたが、今日は休み。
 何とか二章を完成させました。
 
 近況の報告など色々とありますが、とりあえずまずは第二章でございます。

 楽しんでいただけたのなら幸いです。 
 
 ではまたあとがきにて。

 平成27年2月5日改稿しました。

 大幅改稿ですので、よろしくお願いいたします。


第二章 贖罪の意味 

 

 ──俺は、償いたかった。

 

 自分の恥を掻き消したいが為に、このデスゲーム──ソードアート・オンラインに挑んだ。

 過去自分の行ってきた事や歩んでいた道がどれだけ現実の欲に翻弄され薄汚れ、望みをただ渇望し底のない汚泥にまみれていたかを知った時、俺は、どうしてもその汚れを拭い、犯してしまった罪を償いたかった。

 無論、死んで償う、それが間違っている事も知っている。命を捨て、救おうとした人に諭された言葉を押し込んで俺は、この世界に挑んだ。

 来たことに後悔はない。

 ただ、考えてしまう。

 いまこうして、現実世界とはあまりにも違い過ぎるこの仮想世界に来たことで、俺は罪を償えているのだろうかと、考えてしまうんだ。

 命を懸けてこの世界から大勢の人間を解放する為に戦う事。

 剣を持ち、怪物と戦うことで果たして償いになっているのか、そんなことをふと考えてしまう。

 別に死ぬ事が怖いとは思ってはいない。

 こんな死にそこなった俺の安い命を懸けたところで、この世界を終わらせることが出来るのか、最近そんなことを毎日考えている。

 怖気づいてしまったのか。

 そう思ってしまった事もある。

 だが違う。俺は、ちゃんと死ぬべき時に死ぬ事が出来るのだろうのかと、俺は、自分の死に様を考えるようになっていた。

 攻略組の戦略を任され、大勢の命を預かる立場になっても、俺は考えてしまう。

 俺の死に様ははたしてあっけなく、終えてしまうものなのだろうかと。

 自分の事を副長と呼び、慕ってくれる部下や、こんな俺を仲間として認めてくれているあの人達の為に、この命を投げ出し、果てる日を俺は考えてしまう。

 もし死にぞこなってしまい、俺だけが生き残ってしまうような無様な場など御免だ。だが、この世界では、それはあり得る。

 レベルがすべての強さを決め、HP表示されたバーが緑から黄色、そして赤になり透明になってしまえば、それで終わり。

 ここまでくる途中、全損し息絶え散ったプレイヤーを何人も見てきた。

 その度に、次は自分かと、もしかして俺の部下か、それともあの人か、仲間と呼んでくれるあいつらなのかと、俺は不安に駆られてしまう。

 もし、俺ではなく、他の誰かが死んでしまえば、俺はどうすればいいと、そんなことを考えてしまう。

 仲間を持つ、絆を持つ、その重さなのかと、俺は誰よりも今の仲間達の死を恐れている。

 思えばあの時。

 俺は命を拾い、生き延びてしまった。

 司法に身をゆだね、20年の懲役を言い渡され、長い刑期の中で偶然に降り与えられた、あの男の取引を受けた経緯は、半年が過ぎた今も昨日のように覚えている。

 あれは面会など許されるわけのない、誰もが寝静まっていた深夜だった。

 刑務官に叩き起こされ、いきなり個室へと連行され、案内された部屋にいたその男は、デスゲームに囚われた1万人を助ける為に、俺の命を欲しいと放免と出所の話を持ち掛けた。

 最初は半信半疑いや、まったく信じられることのできないその突拍子の無い内容に、俺はその男の言葉をまったく受け入れる事が出来ずに、何を話しているんだと、その現状を受け入れることが出来なかった。

 いきなり放免だ出所だと、刑務官でもないその男は、こちらの質問などを受ける間もなくに、話をつづけた。

 一万人を助けるには腕の立つ人間が必要だと。

 このゲームの中は、本当の殺し合いを知っている人間じゃないとクリア出来ないと、その男は淡々と説明しながら最後にこう付け加えた、その中で死ねば、現実の俺は脳を焼かれて死ぬと。

 そんな世迷言を真剣に、その男は話した。

 普通考えてみてもありえない話だと常識が俺に訴えるが、独房から個室と無理やりに連れてこられ、その話がふざけたものではない事は察しが付く。その男が、政府関係者で、これは何かの実験なのかとも思いもしたが、次に目の前に出された携帯端末の資料には、疑いようのない、塀の外で起きていた事件の詳細が載っていた。

 俺がまだ娑婆にいた頃。

 投資家の間で噂になっていた大企業アーガスが開発していた次世代型ゲーム機ナーブギアの詳細な説明が記載され、その第一開発者である今世紀最大の天才科学者と世間に知られている茅場明彦の経歴や事細かな情報や、話の発端となった一万人を閉じ込めたデスゲーム──ソードアート・オンラインの情報など、俺が信じるに値するに十分な情報の詳細が事細かに端末に記され、あの男が話していることの全てが虚構などではなく、事実だと知り得た時、あの男は、あの人の大切な家族がそのゲームに囚われたことを淡々と話し、あの人が、家族を助けるためにそのゲームに挑戦すると知り、そしてそれに関係しているいくつかの情報を俺に告げた。

 その情報──いや、その事実を聴いたとき、俺は再度出された端末情報から視線を逸らすことが出来なかった。

 あの人の過去ともう一つの事実が記載されていたその事実。

 俺は自分の命を差し出しても、そのデスゲームに参加しなければいけなかった。

 これから訪れるだろうあの人の苦難の道筋の手助けができればと、そしてあの人の家族を助ける事で償いが出来ればと、あの時の過ちを清算出来ると、淡い期待を俺は抱いていた。

 だが、この世界に来て、圧倒するほどのもう一つの現実の中に、俺は自分の命だけでは何もできはしないと、自分の命だけでは足りないと、その現実を嫌と言うほどに思い知らされた。

 そう、この世界は俺たちの考えうる全てが通用しない。

 あの人の力でも乗り切ることが出来るのか、もしかしたらあの人が自分の命を懸けて、攻略を成し遂げようとしていたら、俺が代わりにとは考えてはいたが、この拾った命なんかではたして足りるのかと、またその命を使った事で、あの人を救う事の手助けになるのか。

 そんなことをふと考える。

 たとえ俺が死んでも、それは中途半端に終わることでしかない。

 何もできないまま、何も成し得ないままに、俺は死ぬのかと、そんなことを考えるようになってしまった。

 命が惜しいと、思っているわけじゃない。

 ただ無駄死にはしたくはない。それは本音だ。

 命の捨て所を見極め、仲間の為に戦いたいと願っている自分がいた。

 俺は、自分を救ってくれた人を助けるために、そしてその人の大切な者を救うために、俺は、命を懸けたいと覚悟してこの世界に来たんだ。

 この世界に来て最初、自分が生まれ変わったかのような、どう言えばいいのか解らないが、別人になったような気がした。

 このまま過去の自分を消してしまえるかのような気持ちで毎日を過ごしている日々。仲間を得て、すでに半年を迎えようとしている。そんなときにいつも思ってしまう。このまま自分がしてしまった罪と過去を流せてしまえるんじゃないかと、俺はこの世界を受け入れようとしていた事に。

 でも、時折過去を夢見る。

 自分のしてきた事。

 行ってきた事。

 暗淡たる所業をより鮮明に思い出してしまう。

 その度に過去を忘れるなと、現実を忘れるなと、呼び止められているようにだ。 

 

 ──あの現実の世界で、俺は何を成し得ていたんだろうか。

 

 ──そして今いる俺は、何者なんだろうか。

 

 現実世界の俺はひたすらに金を稼ぎ、金を手に入れ、誰よりも金を求めていた。

 ただそれだけだ。それ以外の事は何もしていない。何も成し得ていない。金を儲け、金を稼ぎ、金を集める。ただそれだけをしていた。

 守銭奴。

 そう、俺は薄汚いただの守銭奴でしかない。

 金がすべてだと思い、金がこの世の結果を決め、金が優劣を選び、金に翻弄されていく事が、世の中の習わしだと思っていた。

 結果。

 俺は、誰よりも欲しいものは手に入れられた。

 欲情と劣情の全てを満たすことのできる、色香に身を染めきった極上の美女も。

 私信や自尊心を捨て、金の為にはどんな命令も屈辱も甘んじて受け、動く部下も。

 全て手に入ったが、でも、そんなものは一時的で、すぐにいなくなってしまう。金が欲しいからと、金をやり、与えたところで満たされれば、そいつらはすぐにどこかに行ってしまう。

 そいつが金を無くせばまた金をせびりに来る。

 

『何でも、やります金をください』

 

『お金をください』

 

『金』

 

 と、当たり前のように俺から金を集る連中。そいつらを引き留めるためにはまた金を与えなければいけない、所詮は悪食の金食い虫でしかないそんな連中。

 俺は金なら欲しかったものすべてが手に入ると思い込み、金で満たされると思い込んでいた。

 でも所詮俺はいつしかこの世で一番嫌いだった人間に成り下がり、そいつらと同類の生き物に成り下がっていただけだった。

 幼い頃。

 俺は、金に振り回される連中に人生を狂わせられてしまった。叔父が死に、新たに預けられた里親は、この世で一番醜い人間だった。

 自分を身の丈に合わない見栄に必死に固執する虚栄心に満ち、虚構の誠実さを見せては他人をまるで信じない猜疑心に満ち、強欲と貪欲に生きる最低な人間。小さな町工場を経営し、俺の事を無償の労働力としか見ずに、昼夜問わずに働かせられていた。

 大人でもうんざりする様な重労働をやらされ、学校が終わってもすぐに仕事に戻らなければ折檻を受けながら、飯もまともに食わせてもらえない、そんな毎日を俺は中学を卒業するまで甘んじて受けていた。

 ガキの俺が、どうやって生きていけばいい。従順に従うしかなかった。中学を卒業し、その親元をようやくに離れ、奨学金で高校に通っても、やはり金は必要で、また昼夜を問わずに働きながら、必死に金を貯めるしかなかった。

 周りなんて俺を助けてはくれない。

 楽しそうに毎日を過ごしている奴や、何の苦労もなくにモノを手に入れられる奴らが、うらやましくて仕方がなかった。

 そんな貧困の底を彷徨い、孤独と常にともにあったそんな惨めな俺の人生は、このまま続くのかと。未来に希望が持てないでいた。だが、それも金を見れば、拭うことができた。金があれば、餓えることはない。金があれば、生きていける。もっと金が要る。たくさんの金がと、必死に生きた。

 全ては金の為だ。

 金さえあれば何でもできる。金さえあればもう孤独じゃない。金さえあれば、世の中は俺の事を受け入れてくれる。

 そう信じていた。

 やがて俺は会社を持ち、株や証券の取り引きをしながらマネーゲームに打ち勝ち、使い切れない程の大金を手にすることができた。

 ようやく生きがいを満たすことができた。

 これで俺はと、やっと満たされた思いがあったが、俺が稼いだ金は、俺に幸福を運んではくれなかった。

 ある日、だ。

 俺を育てたと、その礼をしろと、かつての里親が俺を尋ねたことがあった。

 聞けば町工場は不渡りを出して潰れ、払えない多額の借金にまみれながら、その里親は俺に金をせびりに来ていた。

 奴は家族にも見捨てられ、仕事仲間や、かつての部下にも見下され、底辺に落ちたそいつを、俺はどうでもいいと思っていた。

 一回目。

 俺はそいつに手切れ金として借金を返済してやった。そしたらそいつは心のない感謝を述べながら、俺の事を本当の息子だと言い、聞くに堪えない心もない感謝と謝罪を余すことなく言いながら去って行った。もう来ないだろうと、俺はやっと過去から解放されたと安心しきってしまった。

 思えば愚かだ。

 二回目。

 そいつはまたやってきた。

 今度は仕事が見つからないから生活できないと金をせびりに来た。

 仕事が見つからない。いや、最初からそいつは仕事なんて探していなかった。毎日を遊びほうけ、身の丈に合わない生活を求め、俺に寄生することでそれを実現できると知ったそいつは、息子なら家族の俺を養うのが当たり前だと、俺に金を集るようになっていた。

 俺は、金をむしり取られるだけの存在でしかなかった。

 三回目。

 そいつはイカサマの違法カジノの的にされ、最初は仕組まれたにも関わらず自分は幸運だと信じさせられ大金をつぎ込み、途中から勝てなくなると次こそはと、ギャンブルに嵌まる愚か者の典型的な思考で大金を流し続け、結果また借金を作ってしまった。

 その借金を返済してくれとせびりに来て、俺は……そいつを見捨てた。

 もうかかわり合いたくなかった事と、どうでもいいと言う気持ちが、そいつを見捨てたる最後の理由だった。

 でも、心の中では俺は、どこかで変わってくれるものだと、淡い期待を抱いていた。

 だが、そんな期待を抱く価値なんかそいつにはなく、とっとと見捨てておけばよかった存在でしかない。俺が見捨てた途端、そいつは殊勝な考えを捨て、暴力で俺から金を奪おうとしていた。

 殴りかかるそいつを、俺は殴り棄ててしまった。

 緩慢な動き、弱い奴を甚振り、弱い奴だけを殴り続けただけの拳なんか避ける価値もなく、当たりもしない。こんな奴の拳を怖がっていたのかと、ガキの自分の無力さに心底嫌気がさしてしまうほど、そいつはただの弱者でしかなかった。

 掌に受けた、その弱者の拳を握り潰し、腕をへし折ってやった。悲鳴を上げ泣き出すそいつを見て、俺は、初めて殺意と言うものを覚えた。

 そのまま感情のままに相手を殴り、叩きのめすことを、生まれて初めて行った。

 いや感情なんてものはない。

 ただ叩きのめしたかった。

 何も考えずに、そいつの顔を砕き、歯を折り、骨を折り、皮を裂き、肉を叩く。

 ただ単純なその行為を繰り返し、脆く、弱いそいつを俺は執拗以上に殴ってしまい、結果、そいつは命乞いをした。

 

 ──「わ、悪かった」

 

 ──「た、頼む。こ、殺さないでくれ」

 

 そいつの心のない声にもう俺は、

 

「……もう、見たくない、聴きたくない……」

 

 ただ一言。

 俺はそう呟き、そいつは二度と俺の前から姿を消した。警察にでも駆け込むと思ってはいたが、奴もそこまで馬鹿じゃなかった。警察に行けば自分が何をしていたのかをばらす様なものだ。違法カジノで遊んでかつての息子に金をせびりに来ましたと、言うほどあいつも馬鹿じゃない。

 その後、そいつがどうなったかは知らない。

 知りたくもなかった。

 調べる気もおきなかった。

 だが、やっと、ようやく過去から解放されたと、俺は安堵することが出来た。

 そいつにはずっと奪われ続けていた。

 金。

 時間。

 人生。

 子どもだった俺が必死に貯めた金すらも、あいつはいつも奪い取っていた。おじさんが死んでから、たらい回しにされながら貰われ、ろくに飯もだべさせてもらえないひ弱なガキに、抵抗するすべなんかはなく、いつも奪われていただけだ。

 時間も自由にできる事なんかなく、いつも押し付けられる重労働をこなしながら、わずかに眠り落ちる時間しか与えられなかった。その時間ですら、必死に勉強に費やし、その家から早く出ていくために必死に頑張るしかなかった。

 このまま人生をそいつに奪われてしまうもんかと、俺は必死に知識を上げ、学力で評価され、特待生を奨励する中学に入り、そいつの家を出て、一時的な自由を得た。

 だがすぐにそんな自由は消えてなくなり、ただ必死に学生としての価値だけを上げ、成績を上げる事に俺は人生を費やした。

 世間に出て分かったことがある。暴力と金と知性があれば、この世の中で優位に立ち廻る事が出来る。

 金があれば、力を得ることが出来る、この世の中を縛る法律さえ知れば、多少の悪事は揉み消せ、相手を殺そうが、有能な弁護士と動かしやすい政治家を手ごまにすれば、俺を裁くことはできはしない。

 たとえ俺に手が及ぼうとも、俺の身代わりになる人間は金で手に入れることが出来る。

 そう金だ。

 金なら、どんなものだって手に入る。俺が一番に欲しいものだって、手に入れることが出来るはずだ。

 そう、俺は金を貯め続けたが、それでもどうしても確かめたかったものがあった。

 金の掛け値なくに、俺の事を一人の人間として認めてくれる人間がこの世にいるのかと、俺は確かめてみたかった。

 今まで奪われ続けていたせいなのかもしれない。

 俺をかつて育ててくれたおじさんが、もしかしては存在せずに、あの奪い続けた男が俺の人生の中にずっといたのかと、思うようになっていたからだ。

 時折夢に見てしまう。あいつと俺が同じ人間で、やがて同じ結末を迎えてしまうことに。

 死んだおじさんの顔を思い出せずに、真っ白な顔をしたおじさんの顔が時折浮かぶことがあった。

 金を集め、金に固執し、金に取りつかれていたせいかもしれない。

 俺は、おじさんの事を思い出せなくなってしまっていた。

 俺の事を一人の人間として認めて、貧しいながらも温もりを与えてくれた、恩人の存在を忘れてしまいそうになってしまっていた。

 写真もなく、記憶もおぼろげで、あの人の存在を覚えている俺が、もしあの人を忘れてしまえば、俺はどうなってしまう?

 俺は一人だ。

 孤独。

 そんなものは怖くないと思っていたが、金で集まる人間の薄情さは身に染みていた。

 俺は、ただ金を集めるだけの機械なのかと、問うようになっていた。

 だから確かめてみたかった。

 絶対の絆。

 それを求めるようになっていた。垣根なくに人を人として認められる人間を見つけたかった。があると言う極道の世界に身を置いた。

 そして世間に謳われる、あの伝説の男──桐生一馬のいる東城会になら、その絆が手に入ると思い、俺は東城会に関係のある極道を洗い、そして呈の良い輩を見つけた。

 神田剛。

 聞けば変わった性癖を持つ小悪党。力だけの単細胞の絵にかいたような極道の中でも格下。己の器を知らずに、身の丈も知らずに、間抜けを演じる愚か者。

 かつて俺を虐げていたあいつと同じだ。

 証拠に奴は恥じな懲役を喰らい、錦山組での立場も弱い底辺の男。だったら扱いは簡単だと、俺は奴に大金をチラつかせ、奴を錦山組での地位を上げさせ、シマ盗りの為に資金を与え、東条会の口利きを仲介してもらい、俺は極道となった。

 東城会若頭補佐。

 直系白峯会会長。

 俺は東城会での地位を得た。金でのし上がり権力を得ただけの男と、陰口を囁かれることもあったが、そんな言葉はたいして気にはしない。

 現に俺の資金力は東城会に求められていた。

 関西最大規模の組織──近江連合との抗争の後、東城会は疲弊していた。

 真島五郎の復帰とその手腕もあってか、かつての安定を取り戻しつつあった東城会に、俺の資金力が加わり、組織はより強固となり、立て直しの一役を担っていた。その功績があってか、俺は本部付き幹部としてその地位を固め、あの人に会うことが出来た。

 堂島大吾。

 東城会六代目。

 若くしてその地位を得た彼は、俺の事を一人の男として認めてくれた。金で得ただけの男としてではなく、一人の人間としてだ。

 彼には欲はなく、俺を金づるではなく、一人の人間として認めてくれた人間。

 最初俺は、この男を軽んじて見ていた。どうせ、生まれ持った恵まれた地位と家柄で約束された甘い人生を過ごした男だと、大吾さんの事を軽く見ていた。

 

 杯を交わす際、彼は俺に尋ねた。

 

 ──「何故、極道になろうと?」

 

 何故、俺は差しさわりのない答えを言い、

 

 ──「極道になる意味を解っているんですか?」

 

 ああ、解っている。あんたはなぜそんなことを聴くんだ?

 

 ──「あなたは社会的にも地位と名誉がある方だ……」

 

 地位。名誉。すべて金で得たものだ。極道になっても得ることのできるものだ。

 

 ──「極道になると言うことは、それをすべて失う危険があるんですよ」

 

 そうだ。そんな危険、百も承知だ。

 

 ──「あなたの家族……白峯さんに顔向けできない仕事に就くことになっても……ですか?」

 

 ……

 

 ──「俺は、貴方の過去を知っています。極道になる前もね……」

 

 知っているのか、俺の…過去を。

 

 ──「それでも極道になりたいと言うなら、絶対に……」

 

 彼は言う。

 

「あなたの恩人に恥じない人間になってはいけない」

 

 その言葉は重く。

 

「極道であろうとも、貴方が覚悟をもって、この世界に入るのなら……絶対に──」

 

 心に響く声だった。

 

「──あなたの恩人に顔向けできない人生を送らないでほしい……それが条件です」

 

 違っていた。

 本当に、違っていた。

 堂島大吾さんは、俺の事を一人の人間として見てくれていた。俺が過去に何を過ごし、何を思い、生きていたのかを、大吾さんは承知で俺を受け入れてくれた。

 こんな人間がいるのかと、俺は初めて隔たりのない人間に出会えたような気がした。

 これならやり直せるかもしれない。

 会長の言うとおりに、おじさんに恥じない生き方を。

 そう思って生きた結果は……あんな結末だった。

 

 ──だから俺は、あの時死んでいた筈だった。

 

 ──いや、死んだ筈だった。

 

 銃弾数発を撃ち込まれた時。

 これが当然の死に様と俺は受け入れていたんだ。

 自分の人生を賭けた、いや、全てを懸けたあの大勝負に俺は負け、自分なりのけじめをつける筈だった。

 信じたくは無かった。

 この世界に本当『義』と『絆』が存在している事に。

 

 ──人の義。

 

 ──人としての絆。

 

 そして一人の気高き男としての生き様を、所詮はただの色飾る錦のような軽いものでしかないと思っていた。

 任侠や極道の飾る『仁義』なんて、所詮は嘘っぱちだと思っていたんだ。

 大金ですぐに肉親や仲間を裏切り、他人を盾に己の保身に走り、弱者をいたぶり強者にこそ諂う存在。

 それがヤクザだ。

 それでも俺は、極道には、極道にこそ絶対の繋がりがある、絶対の絆があると、俺は、あの時、縋っていただけだった。

 誰にも必要とされずに、愛されもされず、ただ金だけを求め、たとえ使えきれない程の金を得ても、周りから求められるだけの自分の人生と、より多くの金を得なくてはいけない矛盾した望まぬ人生を送っていた俺は、たった一つの義を通して生き抜いた四代目──桐生さんの生き様が本当のものだったと、そんなことを信じたくは無かった。

 桐生さんを認めたくは無かった。

 対峙し、全てを撃ち潰して、自分の信じてきた全てを証明したく、四代目の存在を否定することが、あの時の俺の唯一の望みだった。

 桐生一馬。

 伝説の極道として名を残す男。

 俺は、その伝説を否定したかった。

 そんな甘いものが、この世に存在する事を認めたくは無かったからだ。

 なんでそんなものが存在するのなら、もっと早くに、俺の前に早く出てこなかったんだと、俺は、遅すぎた存在である、あの人を認めたくは無かった。

 同じ親も誰とも知れない孤児なのに、なんで、あの人は、あんなに強く人を信じて生きる事が出来る。

 いらつきを覚えていた。

 もしあの人の事を認めれば、俺の全てが間違いだったと、今まで生きた俺の人生の全てが失われてしまう。

 間違いを認めてしまえば、俺は自分を失いそうだった。

 金だけを信じて上に伸し上がり、金を得る為にどんなこともやってきた俺の人生が間違っている事を認めたくは無かった。

 それなのになぜ、あんな男が現実に居る。

 人に愛されず、人に必要とされない、俺と同じ孤児なのに、なんであの人は、人を信じられる。

 あの人だけは違うんだ。

 俺は──四代目……桐生さんを認めることができなかった。

 それに所詮それも、すぐに消えてしまう飾り立てた錦でしかないと、あの時の俺はそう思っていた。

 俺の事を金だけの男として見ずに、一人の男として認めてくれた会長が陰謀の最中に撃たれ、植物状態に追い込まれてしまった時、俺は虚しかった。

 信じたものが無くなってしまった。

 会長から掛けられた声を、忘れてしまうほどに、俺は見失ってしまった。

 俺の事を認めてくれた人が、権力と利権の果てに撃たれ、あっけなく消えようとしていた現実に、俺はどうしようもない無力感を感じた。

 

 所詮はこんなものだ。

 

 どんな望みを持っても、すぐに消えてしまう。

 

 生かす為に管につながれた状態のあの人を見て、俺は信じようとしたものの儚さに打ちしがれ感情に流されるまま、俺は東城会の七代目の座を求めた。

 裏社会の頂上に立てれば、俺は絶対の権力を手にする事が出来ると、人を思いのままに動かせる上に立てると、俺は唯一残った生きがいが欲しかった。

 蛇華。

 CIA。

 政治家。

 東城会。

 沖縄の利権、東城会の跡目に群がる欲望の中で、あの人だけは違っていた。

 桐生一馬は、ただ信じる者の為に自分の拳を振るっていた。

 いくら俺が金を積んで鍛えても、あの人が生きてきた全てを込めた、俺とは重みのまるで違う拳の一撃、一撃の重さに俺は成す術も無く打ちのめされ、俺が打ちこむ拳はまるで子どもの癇癪で起こしたような軽さしかなかった。

 なぜこんなにも差があるんだと、俺は解らなかった。

 今まで力で、こんなにも圧倒される事は無かった。

 しがみついてでも、這いつくばっても生きようとする、あの強い拳に俺は勝てなかった。

 同じ孤児なのに、なんでこんなにも違う。

 腹に打ちこもうと、顔面に叩きこもうと、桐生一馬に俺の拳がまるで響いていない。逆に繰り出される桐生一馬の拳はただ重く、ただ熱く、全てを撃ち砕くことのできる強さがあった。

 なんでこんなにも違う。

 若さも。

 力も。

 全て俺が上なのに、なぜこんなにも違う。

 戦いの果て、俺は四代目に勝つことはできなかった。

 唯一、この世で俺を打ちのめしたあの人の拳に、俺は敗北よりもどこか満たされた感覚があった。

 そう。

 俺は誰かに打ちのめされたかったんだ。

 金に負け、人の絆に怯え、自分に向かってくる障害を受け入れることが出来なかったことが、俺の弱さだった。

 その弱さを認めずに、ただ決めつけ、俺は弱くないと、強いと息巻いていただけの愚か者だった。

 自分の人生が間違いだったと、受け入れろと、打ちのめされる事を望んでいた。

 だからこそ、あの人には多くの人間が集まるんだ。

 六代目──大吾さんが命をかけて尊敬していたのも解った。

 

 でも遅すぎだ。

 

 すべてが遅すぎた。

 

 あの人はすべてをちゃんと守り通した、大吾さんが目覚めることを信じて、ひたむきに拳を振るえたからこそ、あの人は掴み取ることができたんだ。

 

 でも、俺は何も信じずに、力を振るっていただけだった。

 

 だから、何も得ることはできなかったんだ。

 

 どうしようもない失望と喪失を味わうことしかできなかった。

 

 俺を信頼している人間は居ない。何も残らない人生だったと、そんな喪失の中で、意識不明だった会長が目を覚まし、起きることはもう無い筈だと思っていた俺の絶望なんてすべて間違っていたと、散々と打ち負かされ、これで終わりだとすべてを受け入れている中でもあの人は、

 

「……人間生きてりゃあ、終わりなんて無い……」

 

 ……終わりがない……

 

「いつだって……やり直せるんだ……」

 

 ……やり直せる……

 

 差し出された四代目の手に、俺は忘れていた温もりを思い出すことができた。

 目を覚ました六代目にも、

 

「……峯、お前どうしたんだ……大丈夫か?」

 

 言葉をかけられ、俺は自分が掴もうとしていたものが違っていたことに気づいたんだ。

 

 ──幼いころの、俺を引き取ってくれたおじさんの手と同じ温もりを。

 そして思い出せた。

 最後の言葉の意味を。

 

 ……偉くなりなさい。偉くなって、沢山の人を助けられる人間になりなさい……

 

 そうか。

 そうかと、俺はようやくに納得できた。

 俺は、おじさんを、かつて俺を迎えてくれたおじさんみたいな人を探していたんだ──

 

 四代目の手を掴んだ中、車椅子に乗る六代目のもとにより、俺はようやくに自分が追い求めていたものの大切さに気づくことができた。

 だからこそ、俺はあの人を守るために、この命を張ったんだ。 

 

 アンドレ・リチャードソン。

 

 手傷を負っていた四代目に銃を向けたリチャードソンは、沖縄基地拡張計画の利権を使い、CⅠAのアンダーカンパニー(ブラックマンデー)の首領として暗躍していた黒幕。

 奴もまた四代目に負け、全てを失った男だ。

 手下の全てを四代目に打ち負かされ、連れて来た部下全てを失ってもなおも、奴は、奴の目には、相手を底まで引きずり込もうとする亡者の憎悪だけが存在し、憔悴し、意識を失いそうな奴の意思には殺意しか残らず、道連れにと四代目、六代目に銃を向けた。

 

 ……また、失うのか……

 

 ……恥じない人生か……

 

 ……今更、何を恥じればいいんだ……

 

 ……だったら!

 

 俺は四代目に向けられた銃弾を受けた。奴は必死になって、俺を殺そうと何発も、何発も撃ち込むが、こんな痛みは桐生さんの拳に比べたら何も感じはしなかった。

 死ぬのが怖くない。

 痛みを受けても何も感じない。

 

 ……そうか、これが殉ずるってことか……

 

 倒れない、死なない俺を奴は恐れていた。

 あの冷徹無常の顔を引き攣らせたと、最後の見栄に、どこか痛快だった。

 これが俺の最後なんだと、人生の幕切れをあっさりと受け止めていた。

 恥じない人生を送る為に約束し、極道として生きた、俺の最後。

 だったらせめてともっと華やかに散ってやるかと、あるかどうかは知らないが地獄までの道連れでも作るかと、俺はリチャードソンに向かった。

 一歩。

 奴に近づく度に、顔を引き攣らせる。たとえ弾丸が頭を撃ち抜いたとしても、俺は死なないような気がした。もう狙いすら定まっていない銃口を向け、撃ち損じて弾切れを起こしているにもかかわらずに、奴は必死に引き金を引く。

 また一歩近づくと、奴は銃で殴りかかるも、打ち付けられる銃把の痛みすら感じずに、俺は奴を追い詰めてやった。

 奴は最後のあがきか、軍用ナイフを抜き、俺の左脇腹に刺すも、これですら死ぬ事はなかった。

 なんだ、簡単に死なないもんなんだなと、脇腹に深く刺さるナイフの感触を冷たく感じていた。その冷やかさがどこか心地よかった。

 俺は笑い、それでもなおも刺しこもうとするナイフを握るリチャードソンの手を掴み、そのまま力任せに砕いてやった。

 痛みに叫び狂乱した奴を見て、俺は終わりが近づいていることを感じていた。最後のs松をつけるかと、リチャードソンの首根っこを掴み、そのまま力任せに圧し折り、奴を殺した。

 最後に、汚した手がこいつで良かったと、俺は奇妙な達成感を感じたまま、四代目とて六代目を守り通した事に、やっと終わったと感じることができた。

 全てが本当に終わった中で俺は、意識が混濁し、銃弾の熱さを感じるまもなくに、そのまま死ぬんだなと、瞼の重さを受け入れていた。

 遠く感じられる二人の居場所に俺は居られなかった。

 だったら、

 

「……生まれ変わったら……そっちにいられるかな……」

 

 そんな願いの中で俺は、死んだ。膝を突き、ヘリポートの冷たい床に倒れ、血が流れていく中で、俺は意識を落とした。

 ああ、これが死ぬ事なのかと、寝る事と大して変りがないんだなと、思いながら俺は死んだ。

 だが俺は、死ななかった。

 そこが東都大病院だったおかげか、何の皮肉か俺は一命を取り留めてしまった。

 目覚めた後に待っていたのは、六代目からの叱責だった。

 

「……死んで償える事なんて無い……その命、お前だけのものじゃないんだ……」

 

「……お前の命は俺が預かる。だから生きろ。絶対に逃げることは許さない……」

 

「……わかったな……」

 

 四代目──桐生さんからも、

 

「……峯、お前は大吾を助けてくれた……俺の命もな……」

 

「……俺たちの為にかけてくれたその命、もう二度と捨てないでくれ……」 

 

「……生きて……生き抜くんだ……なにがあってもな……」

 

 六代目や四代目は俺を生かしてくれた。

 ならこの命は、四代目のために使わせてもらう。

 それが俺の筋の通し方だ。

 だからこそ俺は、この世界に挑んだんだ。たとえこの世界の俺が、現実の世界の俺と違っていても、俺であることには変わりはない。

 過去の俺も現在の俺も共につながっている。

 例え恥じる過去を拭おうとしても、決して拭えはしない。だったら俺が死ぬまでの間は、俺が憧れた人間になってやろう。

 今の俺の中には、その気持ちしかない──

 

 

 それが、峯義孝の贖罪だった。

 

 

 庭園の剣撃の音が鳴り止む中。

 この朽ちたる居城の中央エリアに彼らは終結しつつあった。

「ミネ副長! キリュウさんからメールがきましたんか」

 流麗な顔立ちをし、どこか冷たく思わせるような視線を持つ、ウィンド画面に送られたキリュウからのメールを確認していた男に、誠一文字の青の陣羽織を着た和甲冑に身を固める、刺々しいほどの髪形をした小柄な男は、囲むマリオネット相手に懸命に刀を振るう中で訪ねてくる。

 その男にミネと呼ばれた、刺々しい髪形をした男と同じように、蒼の陣羽織に和甲冑を身にまとった男──ミネは、

「……どうやらキリュウさん達が最後の鍵を見つけたみたいだ。すぐに合流するとある。それまでに、ここのModをすべて排除するぞ」

「へい、まかしたってください。コーバッツいくでぇ!」

「わかりました。全員、キバオウ分隊長に続けぇ!」

 キバオウと呼ばれた刺々しい男は、誠一文字の青い陣羽織と武者が被りそうな兜を被った、まるで表情の解からない、だが忠実に命令を聞くコーバッツと同じような装備に身を固めた5名を引きつれ、マリオネットの群れへと飛び込んでいく。

「おおぉぉぉおぉ!」

 コーバッツの振り下ろした斬撃がマリオネット兵を斬り伏せ、部下達が二撃、三撃と怯んだマリオネット兵に波状の剣撃を決めていく。

 一体に5人がかりと、卑怯な手かもしれないが、被害を出さないように戦うには一番望ましい戦法だった。

 レベルにバラつきが生じているパーティーならなおさらだ。

 なるだけレベルの低い人間を最後に一撃を刻むことが出来るようにと、

「全員油断するなっ! 一撃を入れたら離脱、再度攻撃を行う事を忘れずにやれ!」  

『はい!』 

 全員が声をそろえてコーバッツに返答を返し、連携のとれた攻撃を加えていく部下達。最初の頃は足並みをそろえるまでに時間が掛かったが、コーバッツの面倒見の良さと部下を信じてやれる度量によって築かれた信頼関係は固いものがあった。

 かつて信じられないと吐き捨てていたものの重さが、今この場では重要となっていることに、ミネは複雑な思いを抱いてしまうが、その信頼は自分にも存在していた。

 だからこそともに戦えるのだと、ミネはその後に続くように、右手に持っていた≪打刀──空葉≫の柄に力を込め、上段に刃を構える。

 この世界に来てもう一年が経とうとしているせいか、最初のころに不自然だと思っていた身形と武器になじみが出はじめ、型もしっかりと取れるようになっていた動作を流す。

 腰に下げた刀の重さ、向かってくるModの殺意。

 すでに自然なものとしてどこか受け入れている自分が居る。

 それを証明するかのように、

「ふっ!」

 握り締めた空葉の刃にエフェクトが瞬き、流麗な動きに合わせて身体が動き、振り下ろすような単調な動きでも、全てを両断できそうな意思を持たせる一撃。

 刀系ソードスキル《斬覇》が発動し、自分に狙いを向けたメイスを握ったマリオネットを一刀両断し、消滅させ、そのまま流れ込むようにキバオウとコーバッツの背を預けるようにして、戦闘へと参加した。

 三人が互いの背を守りながら、

「お見事です。ミネ副長!」

「さすがミネ副長や! 技に隙は無いで」

 賛辞を飛ばしてくる二人に、

「……世事はいい、敵に集中するんだ」

 冷静に言葉を返すミネ。

 その声に

「へい! いくでコーバッツ!」

「はい、キバオウ分隊長!」

 忠実に二人は返事を返し、マリオネットに切り向かい、ミネと同じようにModを打ち倒していく。

 変な感覚だった。

 極道である自分が副長などと呼ばれて、新撰組の格好をし、刀を振るい怪物と戦うなんてと、あのころの自分が見たらいったいどう思うのか。

 変な笑いしか出なかったが、その笑いがどこか清々しく思えた。

 思えば、あの数奇な運命の巡り会わせで、あの時生かされたからこそ、今こうして戦うことができるのかと、不思議な自分の運命のめぐり合わせに笑みをこぼしながら、

「っ!」

 戦斧を構えたマリオネットに切り込み、戦斧が振り下ろされる前に胴を切り込み四散させ、そのまま流れ込むようにして、ロングソードや槍を構えたマリオネット兵を一体ずつ屠っていくが、数としてはまだあと数十体ほどのマリオネット兵が残っている。 

 別にどうと言う事は無いが、この数でも油断をすれば全滅する危うさはある。

 自分、キバオウ、コーバッツにはまだ余裕はあるが、他の5名の隊員は大丈夫なのか?

 ギルドメンバーのHP表示には余裕あるが、あの5名のレベルはまだここの敵に余裕で立ち向かえるほどのレベルに到着はしてはいない。

 安全な距離を保っていても、相手からの思いがけない一撃をもらえば……どうすると、一人思考をめぐらせていたとき、

「お──」

 5名の間に入るようにして、黒一色の鎧装備に身を固め、左手に盾を携えた少年は、

「っまたせっと♪」

≪ロング・ソード──センチュリオン≫を横薙ぎにマリオネットを一蹴し四散させ、それに続くように、残りの数体のマリオネットの額に苦無が刺さり四散していく。

「シャインさん、ティアさん」

「キリュウさんからメールをもらって駆けつけた」

 と、シャインは笑いながら、間髪入れずに向かってくるマリオネット兵の振り上げたロングソードの斬撃を避け、そのまま相手の喉元へとセンチュリオンの切っ先を突き刺し、一体を屠り散らす。

 シャインの隣の立ち並ぶようにして、黒の忍服に身を纏うティアが、

「加勢は必要ですか?」

 苦無をマリオネットに身構えながらミネに訪ねてくる。

「ええ、ちょうどほしかったところです。お願いできますか? シャインさん、ティアさん」

 信頼を抱くミネのその声に、 

「なら遠慮なく──」 

「──行かせてもらいます」

 攻撃へと出るためにマリオネット兵の群れに駈け出すシャインの動きに合わせて、ティアがシャインを斬り裂こうとしたマリオネット兵の額に苦無を撃ち込み、ひるんだその隙にシャインが、

「せぇええぇぇのぉぉぉっ!」

 全体攻撃系ソードスキル──《オールクラッシュ》を発動させ、横薙ぎの一閃の斬撃の衝撃波を飛ばし、群がった十数体のマリオネット兵を順に屠っていく。

 その攻撃に続くように、ミネはシャインとティアの背中を追った。

 

 第三章へ続く。

 




 最後まで読んでいただきありがとうございます。
 峯さんの登場でございます。
 小生は龍が如くのボスキャラでお気に入りなのが、1位が龍司。2位が峯。三位が亜門となっています。
 峯さんは公式な龍が如くではああなっておりますが、こちらでは色々とあって生き残り、キリュウさんと一緒にSAOに参加しております。
 できれば8月中に乗せたかったのですが、色々とありましてせめて9月までにはと思い、今回掲載いたしました。
 また修正などをしながら、第二章を完成させたいと思っております。
 
 ……がんばらねば。
 
 他の作品もなんと175を越えるお気に入りを残していただき感謝いたします。
 そして様々なお便りにも感謝いたします。
 感想などでもらえるご意見や感想など日々励みになります。
 本当にありがとうございました。

 今後もがんばっていきますのでなにとぞによろしくお願いいたします。
 では、また。

 追伸・9月中にもう一回更新を目指しております。
    何とかがんばりますので、よろしくお願いいたします。

 改稿しました。
 峯さんの心中をもっと深く書いてみたく、そして生き残った経緯ももっと深く書いてみたかったのですが、どうでしょう?
 感想をお待ちしております。
 
 
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