入る度に中の構造が大きく変化する「不思議のダンジョン」

これは墓守と呼ばれた男とトレジャーハンターの少女の物語。

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汐入那月と申します。
数年ぶりにパッと書いてみたものを投稿してみます。
思い付きで書き進めたものなので拙いところが多分にありますが
好みの方がいましたら評価、感想のほうをよろしくお願いします。
もし好評でしたらもう少し構想を練ってから連載投稿しようかと思いますのでよろしくお願いします。


入る度にレベル1になる不思議のダンジョンの話

 

「おや、嬢ちゃん新人か?ならこの話だけは聞いとけ」

酒場に入るなり酒片手に手招きをする強面の男が呼び止める。

 

「お前さんもここにある奇妙なダンジョンが目当てだろう?ちょいとここについて教えてやる」

男がまぁ座れよ、と向かいの椅子を足で押し退ける。

 

「ここは入る度に中の構造が変わるっつぅ不思議なとこで、更に入る度に今まで積んだ経験がなくなったように感じるんだ。なんというかマジで体が鈍るのさ。おかげで俺ぁここ2月は入ってねぇ」

普通に傭兵やってた方がよっぽど楽だぜ...と愚痴をこぼして酒を飲み干す。

 

「あとこいつは俺が初めてここに来た時に聞いた話で俺もまだ会ったことないんだが...ダンジョンの墓守って奴が居て、中で力尽きるとダンジョンの入り口まで運んでくれるって話だ。あと、生きて会えた場合は物々交換もできるらしいぜ。最初はきついだろうが頑張れよ!」

男が話を終えると少女は立ち上がりダンジョンへと足を進める。

 

..

....

......

........

 

 

「ふぅ、今日はここで野営だな、疲れた...」

ダンジョンの深奥にて適当な枝で火を熾し腰に括ったバッグを椅子代わりに腰かける。

 

「さて今日はここまで地図に起こしたから明日から引き返すか...」

バッグを枕代わりに寝息を立てる。

次の日起きて身支度を整え入り口へ引き返している途中で大きな悲鳴が響く。

フックショットのような物を巧みに操り悲鳴を辿るとトレントと呼ばれる樹木のようなモンスターの群れに追われる少女を見つけた。

 

「...準備を怠ったな」

ナイフをいくつか投げ数体のトレントを仕留め火属性魔法が込められたスクロールを使い後続に放つ。

先頭のトレントに放たれた火が後ろに続く群れに引火し徐々にその数を減らす。

 

「わっ、助かる...っ!?」

少女は一瞬で数体のトレントを倒した男を一瞥すると付近の岩陰に身を隠し様子を見る。

 

「もう終わるから負傷しているならこれを使って」

脚のホルスターから緑色の液体が入ったビンを少女に投げ渡す。

 

「あっ、あざっス!!」

焦るように栓を抜いて一息に飲み干し胸を撫で下ろす。

 

「残ったのは3体か...君、あれくらいなら今後の勉強に丁度いいだろ。付き合いな」

顎で前に出て来いと指示すると少女は腰の剣を抜き構える。

 

「その得物、奥のエリアならまだしもここだと長すぎだよ。天井に当たっちゃうじゃないか」

そう言うと短めの剣を手渡し、男はバッグに取り付けた短剣を引き抜く。

 

「まず俺が動きと攻撃に適した場所に傷をつけるからそこに合わせてみて」

突進に合わせ胴に一閃、動きの勢いをそのままに下から突き上げるように切り上げる。

最後の一匹には蹴りで仰け反らせてから短剣を突き刺す動きを見せて突き抜ける。

 

「さぁ、やってみて」

ふぅと一息をついて少し後ろに下がり少女に同じ動きをしろと促す。

 

「はい!やってみるっス!」

男と同じように突進に合わせ切りつけるが場所は大きく下にズレて切り込みも浅い。

その後の動きも拙く最後の一匹の突きのみ成功し仕留めることができた。

 

「ま、初めてのダンジョンにしては上々じゃない?とどめは俺がやっとくよ」

ナイフを切れ込み入った場所に的確に打ち込み素早く仕留める。

 

「あ、ありがとうございました!助かりましたっス!」

パッと見で金属製の鎧にロングソード、バッグ等の収納はなくベルトに括った革袋しかない。

 

「ダンジョンのことは多分酒場のハゲから聞いてるよね?装備は何も言われなかった?」

 

「えっ、はい...特には何も言われなかったっス...」

 

「だからあいつはこのダンジョンでまともに稼げないんだよなぁ...わかったとりあえず一度一緒に出よう。せっかく俺に会えたんだし少し鍛えていこう」

短剣を鞘に納めてダンジョンを抜けて町に出る。

 

「少し酒場に寄るよ、久しぶりに出たから顔出さないと怒られちゃうんだ」

めんどくさそうに酒場に入ると中の客からの視線が集まる。

 

「おぉ嬢ちゃん!無事だったか!!」

最初に会った強面の男はまだ酒を飲んでいるのか先ほどよりも赤い顔をして寄ってくる。

 

「近寄るな、酒臭いぞアンタ」

男は強面の男を押しのけて奥にあるカウンターの女性に話しかける。

 

「なんだぁあいつ...あいつも新顔じゃないか?見たことねぇ顔だけど...」

気を悪くしたのか男の背中を睨みつけながら酒を口に運ぶ。

 

「自分もさっき襲われてるところを助けてもらったばっかで、よくわかんないっス...」

 

「あら、半年ぶりですね墓守さん」

シャツとベスト、長い足を際立たせるスラックスを身に着けた赤毛の女性が積まれた書類から目を離して男を見る。

 

「その墓守って誰が言い出したんだよ...これ、前に渡したやつよりだいぶ進んだから置いていくよ」

雑に手書きの地図を机に置いて酒場を出るとそれを少女が追いかける。

 

 

「んで!鍛えるって一体何するんスか?」

 

「まずは武具の選択からだな。その恰好、腰を据えて戦うならまだしもダンジョンでやるには正直大げさすぎるし動きづらい」

町中の商店街の一角にある広場でもう一度少女の格好に目をやる。

 

「そして、奥に行くと森や砂漠など様子が大きく変わるが浅いところは基本洞窟や石造の迷路のような狭い空間で戦闘になる」

 

「あ、だからさっきショートソードを渡してくれたんスね!」

少女はなるほどと表情を明るくし、同時にダンジョンからずっと男の剣を抜身のまま持っていたことに気づき男に返却する。

 

「武器に関しては得手不得手もあるが、短剣程度であれば邪魔にもなりにくいから一本くらいは持っておくことをおすすめするよ」

 

「了解っス!ちなみに防具はやっぱ墓守さんみたいに皮鎧がいいんすかね...?」

 

「まぁそうだな。ダンジョンで発見した防具であれば素材にかかわらず適した物があるけど、それまでは皮が動きやすいし非常時でも邪魔にならないと思うよ」

 

「ちなみに墓守さんは長くダンジョンに潜ってるみたいっすけど、それでも皮鎧なんすか?」

 

「こいつは自作品なんだ。さっき言ったようにダンジョンには洞窟などフロアごとに内装が変わる。そのフロアごとにボスと呼ばれる強力なモンスターが居る訳だけど、深いフロアのボスの皮を使って作った防具なんだ。魔法も攻撃もまぁまぁ軽減してくれるし、ほかにも不思議な効果がつくのさ」

 

「へぇー!アタシも早くそういうの欲しいっス...!」

目を輝かせて男が身に着けている鎧をみて興奮する少女を抑えるように男が口を開く。

 

「まぁ落ち着いて。大半はこういうのを手に入れる前に死ぬか諦めて傭兵とか軍の兵士になっちゃうからまずは慣れることを重視するのがいいよ。入る度に経験がリセットされてしまうからね...」

 

「あっ...そういえば墓守さんアタシについてきて外出ちゃったスけど、よかったんすか?」

少女は重要なことを思い出し申し訳なさそうに見つめてくる。

 

「まぁ俺は慣れてるからね。それに実は何も完全にリセットってわけじゃないんだ」

 

「えっ、そうなんすか!?で、でもアタシ今まではそれなりのトレジャーハンターだったのに入った瞬間トレントなんかにいじめられちゃったスよ?」

 

「まず自力で習得した技や魔法なんかは忘れないよ、あと何も能力が初期値になるわけじゃないんだ」

 

「じゃあなんでこんなにアタシ弱くなっちゃったんすかぁ!」

 

「それは修行不足だね。つまり今までレベルで能力を上げていたかもしれないけど、素の能力を上げるように立ち回るのさ」

 

「それってどうやったら...」

 

「力をつけたいなら単純に筋トレ、素早くなるには走りこんだり体の使い方を覚えたりってとこかな。あとはダンジョン内には能力を上げてくれる物がたまに見つかるし、武具にもそういう効果がついてることがあるよ」

 

「じゃあダンジョンに潜りながら工夫してくのが一番の方法なんすね...」

 

「うん、そういうこと。教えることは大体これで全部だけど、何か気になることはある?」

 

「今は時に思いつかないんでまた今度気になることがあったらその時に聞くっス!」

 

「うんわかった。じゃあ今日は初めてで疲れただろうしまた明日、入り口で待ち合せようか」

 

「はいっす!!あ、アタシのことはメルルって呼んで欲しいっス!」

 

「うん、よろしくメルル。俺は墓守...いや、バッツと呼んでくれればいいよ」

 

「はい、バッツさん!じゃあアタシは装備とか色々準備してくるんで、また明日お願いします!!」

メルルは商店街に駆けていき、バッツはそれを見送り帰路に就く。

 

「久しぶりに...面白くなりそうだな」

はしゃぎたくなる気持ちを抑え自宅への足を速めるバッツだった。


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