一般人時々バーサーカー 作:黒カム
「──アル、次の服じゃ」
「へいへーい」
アルデバランとプリシラに挟まれタイヨウは姿見に映っていた。
ここは服屋。なぜここにいるのかと言うと、
『妾のドレスしかないでは無いか』
『そりゃそうでしょうよ』
『では、アルの服はどうじゃ?』
『俺?俺の服はサイズがデカすぎて合わねーですけど?』
以上の経緯からでは服屋にゆこうぞ!という流れになっていた。
ここへ来てからまさに着せ替え人形と化したタイヨウ。その目は既に死んでいた。
店員の方もプリシラを見て慌てふためき、遠巻きに苦笑いをうかべ手を揉み揉みしている。
タイヨウの胃は限界に近い。
「……ふむ、悪くは無いのじゃがしっくり来ないのう」
「まあ、アンタのセンスに合う服なんてそう置いてねーでしょうよ」
あーでもないこーでもないと頭を悩ます2人に着いていけず突っ立ってるのみのタイヨウ。
「領地に戻れば服なんぞ腐るほどあるのじゃがな」
「……良かったな兄弟。屋敷にある服は派手派手のもんだからお前さんの趣味とあってなかったと思うぜ?」
小声でそんなことを言うアルデバラン。
そんな言葉に少しだけ安心する。
「ふん、趣味の悪い服しか置いておらんな」
「アンタ程じゃないでしょ」
「なんぞ言うたか?」
「なんでも」
漫才のような掛け合いをする2人。
そんな中、プリシラが1つの服を手に取った。
「ふむ……どれ、ノラ坊よ。これを着てみるが良い」
「……え」
プリシラから渡された服。それを手に取りタイヨウは固まった。
普段着を買ってやろうと言われたのに、"これが"普段着なのかと。
まあ確かに、部屋でプリシラが、ドレスしかないのであればドレスを着ればいいじゃない、というような発言をした時よりだいぶマシではあるが。
ため息1つ。タイヨウは早速試着室へと消えていった。
さて、試着を終え、プリシラとアルデバランの前に戻ってきたタイヨウ。
そんな彼を見て、プリシラはニヤリと笑いアルデバランは驚いたように声を上げていた。
「はえー、案外様になるじゃねえか」
「やはりな。中身が粗悪でも顔には気品が溢れておった。こう言う纏まった装いは似合うと思っておったぞ」
そう言われるタイヨウの服装は"スーツ"である。
白いシャツに黒のジャケットとスラックス。
先程までのティーシャツに半ズボンとは違い、すっきりとした印象。
ここは貴族や王族も御用達の服屋。スーツも置いてあるのだ。
そんなタイヨウ。暑苦しそうに、堅苦しそうにシャツの襟元を仰ぐようにしていた。
「普段着できるもんじゃないだろ、これ」
「何を言うか。それでようやく妾の隣を歩くに相応しい、最低限じゃぞ」
その言葉にタイヨウはアルデバランへと顔を向けた。
フルフェイスの兜に町人風の服装。さらにサンダルを吐いた意味不明な格好。これでも一応騎士という肩書きである。
「え………え?」
「アルに関しては良い。これはただの道化ゆえな」
「どうも、ただの道化デース」
「……だったら俺もただの道化でいいんだけど」
「ダメじゃ。いくらノラ犬のノラ坊と言えど太陽の名を持つものとしてそこら辺のことはきっちりとしてもらわねばなるまい」
「……オレハタダノヤマモトダー」
この瞬間、彼は自分の名前を少し嫌いになった。
「よし、ではこの服を貰っていくとしよう。アル、金の方は貴様に任せる」
「あいあいさー」
そうしてタイヨウの来ていた服を勝手にゴミ箱へ投げ捨てるプリシラ。
もちろん、タイヨウの同意は得ていない。自分勝手ここに極まれりである。
さて、そんな中店主が慌てたように口を開いた。
「え、あ……プ、プリシラ様?そちらはなんと言いますかサンプルのようなものでして。この後採寸等終わらせ、後日届けるというような形に…」
「良い、これを貰っていく」
「え、あ、あの……」
「なにか不服があるか?」
「いえ、なんでもないです……」
睨みひとつに店主を黙らせるプリシラ。
タイヨウは心の中で店主に十字を切っていた。
「それにしてもサンプルとはな。まあ、今は急ごしらえじゃ。また後でちゃんとしたものを見繕うことにするしかあるまいな」
「いや、別に俺はいらねーんだけど」
「ノラ坊の意見など聞いておらん」
「え?俺の服じゃねーの?」
自分勝手な意見でタイヨウをバッサリ切り伏せるプリシラ。我が道を行くにも程がある。
そうして、会計を済ませ店を出た3人。
「……あ、俺病院に物置きっぱだった」
「捨ておけ、新しいものを買ってやろう」
「いやいや、流石に取りに行くわ」
荷物とはいえ量も少なく役に立たないものばかりだが、ロム爺から貰った……厳密に違うが、猟銃を置きっぱにするのは流石にと思うタイヨウ。
そんな彼の様子を見てプリシラはため息を吐いた。
「良い、分かった。早う取りに行け。あまり待たせるでないぞ」
「はいはい」
プリシラからの許可も出た。
タイヨウはその場から走り出し、病院へ向かった。
存外近くの場所でそれほど時間をかけずに戻ってきたタイヨウ。
しかし、
「遅い」
腕を組み、睨むプリシラ。
「いや、10分も経ってねーだろ」
「妾を10分も待たす愚図は貴様くらいじゃ。これは何か埋め合わせしてもらう必要があるな。どうじゃ?妾の下に着かんか?」
「黙れ」
ここぞとばかりに勧誘をしてくる。
そんなに彼女をジト目で見ながらタイヨウは強い言葉を吐いた。
「ははは!良いな!やはり貴様のような者は初めてじゃ!良い、許そう!」
「あっそ」
笑うプリシラに呆れるタイヨウ。
アルデバランはそんな2人を後ろから眺めていた。
なかよしだね。
ほのぼのしてるね。
※なお、スバルくんはこの時エミリア邸にて四苦八苦してる模様