一般人時々バーサーカー   作:黒カム

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バーサーカーと殺人鬼

 

 

 

「おい!どーいうことだよ!」

 

1歩前に踏み出し怒号を張り上げるフェルト。

徽章を取りだしエルザに向かって突き出すと、そのまま言葉を続けた。

 

「徽章を買い取るのがアンタの仕事だったはずだ。ここを血の海にしようってんなら、話が違うじゃねーか!」

「話が違うのはこちらの方よ。持ち主まで持ってこられては商談なんてとてもとても。だから予定を変更することにしたのよ──」

 

そこまで言ってエルザは手にした刃を構え不敵な笑みを浮かべた。

 

「この場にいる関係者は皆殺し。徽章はその上で血の海から回収することにするわ。あなたは仕事を全う出来なかった。切り捨てられても仕方が無いわ」

「───ッ」

 

フェルトの顔が苦しげに歪んだ。

それは恐怖と言うよりも別の何か。それが彼女の琴線の何に触れたは分からない。だが、

 

 

 

「ふざけんなッ!」

 

ナツキスバルの叫びとタイヨウの奇襲は奇しくも同じタイミングだった。

 

一瞬、ナツキスバルの叫びに反応しタイヨウの攻撃に反応が遅れたエルザは懐への侵入を許した。

 

ナイフが首元へ迫る。が、それを仰け反る形で回避。しかし、がら空きになった胴体。そこへタイヨウは拳を走らせた。

それと同時にエルザの手にした刃も横からタイヨウの腕を切り飛ばそうと迫ってる。

 

──反応が早すぎる

 

一瞬の驚きと焦り。

胴体への攻撃を中断、拳を開きエルザの手首をがっしり掴み防御した。

 

「……並外れた反射神経。強いわね、あなた」

「………」

 

不敵な笑みと無言の睨みがぶつかり合う。

 

「タイヨウッ!」

「っ」

 

ナツキスバルの叫び声。

タイヨウは咄嗟にエルザの体を蹴り飛ばし後ろへ跳躍、と同時に彼女の体に向けて氷柱の大群が一挙に襲った。

 

「ナイスパック!」

「お安い御用さ」

 

タイヨウの戦闘により時間を稼げたおかげで偽サテラの精霊、パックの渾身の攻撃がエルザに直撃した。

しかし、

 

「──備えはしておくものね」

 

土煙から現れたエルザ。

纏っていた外套を脱ぎ捨て身軽そうな姿でそこに立っていた。

 

「重くて嫌いだったけれど着てきて正解。おかげで命拾いしたわ」

「まさか!コート自体が重くてぬいだら身軽になる的な!?」

「……いや、魔法を無効化するとかそんなんだろ」

「その通りよ。まあ尤も、1度きりだけだけれどもね」

 

そんな答え合わせとかほぼ同時。エルザが低い態勢から真正面を突っ切ってくる。

狙いは1番前に出ているタイヨウ。

 

その胸元へ迫りくるエルザの刃。

それに対してタイヨウは近くにあった椅子を掴み、横なぎにぶん回した。

 

だがそんな単純な攻撃なら避けることは彼女にとって容易すぎる。しゃがみこみ、振り切った体勢の隙だらけのその腹に向けて刃を突き出した。が、これに対してタイヨウは身を捩り躱しつつ、椅子から手を離しエルザの伸びた腕を両手で掴む。

 

「───ッ」

 

直後、エルザの顔は驚愕の表情を浮かべた。

万力のごときパワー、腰を落としたタイヨウの重さ。それらが彼女の体を襲った。

その様子を見てタイヨウも口角を上げた。

 

 

 

「どうだ強いだろ?」

 

「……ええ、ほんとに強いわね」

 

それに対してエルザもまた不敵な笑みで舌なめずりをした。

 

──まずは1本

 

握る両手に力を込め、へし折ろうとするタイヨウ。それに即座に反応してもう片方の手に握る刃を腹へと走らせたエルザ。

咄嗟に手を離しそれを回避。

距離を取ると今度は氷柱が一挙にエルザへと襲いかかった。

 

「ボク達のこと、忘れないで欲しいな」

 

パックの声が響く。

それに応えたのは土煙から現れたエルザだった。

 

「あら、忘れてなんていないわよ」

「直撃は回避か……戦い慣れてるなぁ」

 

軽口を交わす精霊と殺人鬼。

次の瞬間、エルザの姿が掻き消えた。

スピードが一段階上がった。

でも、

 

「……どうせ、後ろ…!」

 

振り向きざまに手にしたイスを投げ飛ばす。

場所は偽サテラの背後。

 

飛んでくる椅子を一刀両断。しかし、その間に偽サテラもエルザから距離を置いていた。

 

「ありがとう」

「……おう」

「凄いわね目がいいのかしら。……いえ、予測力が並外れているわね。パワーも常人の数倍はある。ふふふ、もっと楽しみましょう?」

 

その言葉と共に向かってくるエルザ。

両手の刃がタイヨウを襲う。が、片方の攻撃を避け、もう片方を腕で弾く。

そのまま逸れた腕を片手で、もう片手は胸ぐらを掴む。

体を反転させ、上から振り下ろすように。所謂、一本背負いだ。

 

しかし、エルザもまた地面に叩きつけられる前に空中で体勢を立て直し、足から地面へと着地。直後、手にした刃をタイヨウへ走らせる。

 

それに対してタイヨウは距離を詰めた。刀身が当たらないゼロ距離。

距離を詰めた時の勢いそのままに頭突きをエルザの額にかました。

 

「……っ」

 

体勢が崩れるエルザの隙を見逃さず、即座にナイフを取り出し喉元へ向けて刃を走らせる。が、それを仰け反る形そのままにバック転で回避される。

 

「……っ、あら」

 

しかし、そこでエルザの動きは止まった。

足をパックの氷柱に固定されていたのだ。

 

「無目的にばらまいてた訳じゃにゃいんだよ?」

「してやられたってことかしら?」

 

直後に轟音が鳴り響きエルザを襲う特大の衝撃。

 

もはや氷では無い。しかし、冷気を感じるそれは、ただ破壊のためのエネルギー弾のようなもの。盗品蔵の地面をえぐり壁を一部破壊しながら外へと向けて射出された。

 

直撃すれば氷像程度では終わらないそれ。決着は着いたと、その場の誰もが思った。

だが、

 

「……嘘、だろ」

「嘘じゃないわよ。あぁ素敵。死んじゃうかと思ったわ」

 

足の裏から血を流し現れたエルザ。

自分で足裏の皮を剥ぎ、拘束を解き回避していたのだ。

 

地面に散りばめられている氷のひとつに切断面を押し当て乱暴な止血をする彼女。

 

「少し動きづらいけど、十分よ」

 

そんな様子を見てタイヨウはこの女は少し自分と似ているなと感じた。

殺しが好き、殺し合いが好き、というより安心感が欲しい。そんな感じがする。

腹を切ることに固執しているから、何かしら腹に関して……例えばそう、腸にたいして何かしらの思い入れがあるのか。

 

良くは分からない。ただ、殺られるくらいなら殺るを信条に生きるタイヨウとどことなく似通った何かを感じてはいた。

 

「パックいける?」

「ごめんスゴイ眠い。マナ切れで消えちゃう」

「あとはこっちでどうにかするから今は休んで。ありがとね」

「君になにかあればボクは盟約に従う。いざとなったらオドを絞り出してでもボクを呼び出すんだよ」

 

そう言って消えていくパック。

それを見てエルザは悲しげな様子を醸し出しながら口を開いた。

 

「ああ、いなくなってしまうの。それはひどく残念なことだわ」

 

そんな言葉と共に向かってくるエルザ。向かう先にはタイヨウ。

 

「アナタは、もっと楽しませてくれるわよね。……一緒に踊りましょう?」

「………ッ」

 

振るわれる刃にナイフで迎撃。

スピードは負けている、しかし、パワーではこちらが上。鍔迫り合いならタイヨウに分がある。……だが、それは武器の性能が同程度のものだった場合の話だ。

 

「……チッ」

 

舌打ちの直後にナイフはエルザの刃によって半ばからポッキリと折れてしまった。そのまま襲い来る攻撃を避けつつ、後ろへと下がる。

 

近くのテーブルへ足をかけ、そのままエルザに向けて蹴りだし、距離を取った。

事も無げに、それを叩き切るエルザ。

 

背後には盗品蔵の品々が並ぶ棚。

なにか武器は無いかと探すと、目に留まるひとつのもの。

 

「……爺さんこれ借りるぞっ!」

「む?」

 

手にしたのは猟銃のような木製の鉄砲。銃身のほうには銃剣が取り付けられた武器。

手に馴染む。リーチもある。近接になれば銃剣を取り外して戦える。いいものが手に入った。

 

「これで終わりなわけないわよね。もっともっと楽しみましょう?もっともっと、激しく踊りましょうよ」

 

狂気じみた様子のエルザ。

周りはその狂い様に恐怖したような面持ちだ。

しかし、

 

「分かった」

 

この男は違った。この男もまた"イカれてる"のだ。

 

「それじゃあ、とことん一緒に踊ろうか」

 

そう言ってタイヨウはおだやかな顔で微笑んだ。




今回は金カムネタ詰め込めるだけ詰め込んだよ。
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