一般人時々バーサーカー   作:黒カム

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腹が減っては落ち着けぬ

 

 

 

「───ぁ……」

 

目が覚めたら知らない天井が目に入った。

 

何かに包まれる温かい感覚。視線を下に向けてみるとタイヨウはベッドに寝ていた。

体に痛みはなく、所々に包帯やガーゼが貼られていて目立った外傷がない。

 

あれからどうなったか思い出そうと──

 

「やあ、起きたね」

「……ラインハルトか」

 

横からかかった声。

目線だけ写すとそこには赤髪のイケメンが椅子に腰かけていた。

 

「ナツキスバル達は?」

「君が倒れたあと、スバルはエミリア様の領地に向かったよ。君は怪我が酷くてすぐに治療が必要と判断したから王都の病院に運んだんだ」

 

なるほど、思い出した。

あの後エルザが立ち去ってからタイヨウはぶっ倒れたのだ。

血の流しすぎによる貧血。情けないなぁなんて自嘲気味に呟いた。

 

「フェルトと爺さんは?」

「彼女の方は今、こちらで保護してるよ。御老人の方は……すまない。今は姿をくらましてどこにいるかは……」

「ふーん」

 

ラインハルトの言葉を聞いて興味無さそうな反応。

 

「俺が寝てどれくらいになる?」

「3日、だね。エミリア様達はまた王都に来ることになるから近いうちにまたスバル達とは会えるよ」

 

そういえばエミリアとは。

少し考え理解する。あの偽サテラの事かと。

 

それにしても、"来ることになる"とはどいういうことか。本来ならば予定にない、みたいな言い方だ。

 

顎に手を当て考えるタイヨウ。しかし、答えは出ない。当然だ。ヒントが少なすぎる。

 

「なんかあんのか?」

「まあね、ただこれはあまり一般人に話すことは出来ないんだ。すまない」

 

それなら仕方ないかと身を引くタイヨウ。

そういえばとラインハルトは椅子の下から何科を取り出した。

 

「これ、タイヨウのだろ?」

 

取り出したのは、あの日盗品蔵で手にした猟銃だった。銃身には銃剣もついてる。

 

「それは………いや、俺のだ。ありがとう」

 

ロム爺からの借り物。だが、盗品蔵はもう吹き飛んで無くなっている。ロックも姿を消した。並ば貰っておいてもいいだろう。

そう思いタイヨウはラインハルトからそれを受け取った。

 

「じゃ、僕はそろそろ行くよ。何かあれば駐屯所まで来てくれ。改めて、あの日はエミリア様を守ってくれてありがとう」

「いいさ。別に。ちなみに外は出歩いてもいいのか?」

「ああ、大方傷は塞がった。跡も残ってない。気晴らしに散歩してみるといいよ。それじゃ」

 

そう言って出て行くラインハルト。直後、タイヨウの腹の虫が鳴った。

腹が減った。3日も寝ていたのであれば仕方ないだろう。

 

近くのテーブルに置かれた、血のシミの跡がついたTシャツとズボンを手に取り、病院着から着替えタイヨウはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、どこに行こうか。外に出たタイヨウは途方もなく歩いていた。

所持金は何時ぞやに不良から奪った硬貨数枚。これでどれだけ食べれるか。そもそも、お金の価値すらまだ分からない。

ここは慎重に──

 

 

 

「ハグハグハグハグ…!」

 

気がつけば、タイヨウは大通りの隅で種類豊富なパンと水を囲んで口の中に放り込んでいた。

汚い格好。汚い食べ方。

まさに注目の的。通りがかる通行人に避けられ、しかし、視線を一身に集めていた。

 

量が足りない。が、贅沢も言ってられない。

最低限の補給を済ませた彼の顔はどことなく清々しいものだ。

 

それにしたって異世界。そういえば、まだちゃんと見てなかったなと、観光がてらぶらつくのもいいかと。彼はこの状況を楽しむことにした。

 

さて、どこに行こうか。

そうしてゴミを片付け歩き出そうとしたその時、

 

「うお…!?」

「貧民街のガキか?」

「汚ねぇ…」

「……へっ」

 

通りがかった白い制服の一団。腰に差した剣から騎士なのだろうか?

タイヨウを見るや、見下したような反応。

それを受けタイヨウ。

 

──落ち着けそうだ落ち着け汚ったない俺が悪いからなそうだそうだ

 

心の中でそんなことを思いつつ気持ちを落ち着ける。

笑顔でにこやかにスマイル。

 

そうして、そのまま──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、こちらです!」

 

大通りの大乱闘。

そこに走り込んでくる騎士2人。

 

いや、1人は騎士なのだが、もう1人は騎士?というような感じだ。

フルフェイスの兜を被り、服は町人風のようなもので、草履を履いた意味不明な格好。

 

「ああ、あれ?」

 

アルデバランと呼ばれた男は視界に映った光景に少なからず驚いた。

一人の男が10人近くの近衛騎士をボコボコにしているのだ。

 

ヘッドロックを決めタコ殴り。止めに来ようとした騎士には蹴りや頭突き。

 

正しく一騎当千である。

 

「な、何だこのガキ!?」

「ぜ、全員で押さえ込め!!」

「上から体重かけろ!!」

「剣で足でも刺しとけ!」

 

数名の騎士が一人の男に翻弄。

何とか数人がかりで男を押さえ込めたが、それでも押し返してるのか騎士の何人かは吹っ飛ばされている。

 

「ぎゃあ!指一本でも攻撃してくるぞ!なんて凶暴なガキだ!」

 

近づくと中から聞こえてくる唸り声。

そんな彼らにアルデバランは声を上げた。

 

「ほら、やめろやめろ。近衛騎士ともあろう人達が公衆の面前でみっともねえぞ」

「あ、アルデバランッ……!」

 

出てきた男に騎士たちは驚いた。

とある女の騎士。名も実力も有名な男がそこにいた。

 

「ヴゥアゥッ!!」

「い、今離すと危険だ!」

「………」

 

顔だけ覗かせた暴れていた男、大量の顔を覗き込むアルデバラン。

そうして懐から握り飯をひとつ差し出した。

 

「ガァァ!ヴアァア!!…………モグモグモグモグ」

「よしよし、腹減ってたか」

 

素直に握り飯にかぶりつくタイヨウ。

そんな彼にアルデバランはフルフェイスの下に隠れた口元を綻ばせながら頭を撫でた。

 

「よし、こいつは俺が連れていく」

「え、は、はい」

「来い兄弟。飯を食わしてやるぞ」

「………ッ」

 

そんなアルデバランをタイヨウは目をぱちくりとさせ見つめていた。




ここから日常回。平和だねぇ〜。

エルザ編終わってから達成感からかモチベが下がってきたからみんなちょうだい(小声)
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