一般人時々バーサーカー 作:黒カム
「──それで?貴様があの騒ぎの元凶とな?」
タイヨウがアルデバランと呼ばれた男に連れてこられたのはとある豪勢な部屋。
そこにいたのは一人の少女。
赤いドレスに身を包み、オレンジの髪を一纏めにした、扇子で口元を隠している彼女は、タイヨウを値踏みするように見ていた。
「……誰?」
「何?妾を知らぬとな?」
「……プリシラ・バーミエル。聞いた事ないか?」
「知らん」
タイヨウは胸を張りそう言った。
そんな彼の様子に顔を背け、肩を震わすアルデバランと惚けた顔のプリシラ。
そんな2人にお構い無しとばかりにタイヨウは口を開いた。
「つか、飯食わせてくれるんじゃなかったのかよ」
「あ、ああ、ちょっと待ってろ。今持って来てやるから」
そう言って、吹き出しそうな口元をフルフェイスの兜の上から抑えながらアルデバランは部屋から出ていった。
「で?アンタだろ。あのアルデバランとか言うのに指示して俺をここに連れてきたの」
「……ほう?なぜそう言える」
タイヨウの言葉に興味深そうに片眉を上げ口元に微笑みを浮かべながらフルフェイスは聞いた。
「立場的にアンタ偉いんだろ?んでアルデバランってのはアンタの護衛的な立ち位置だ。勝手に傍を離れるってのは考えづらい。さらにだ。俺が暴れてた場所はここの窓から見える場所。理由は知らないが視界に映った騒ぎに興味を持ってアルデバランって他人を向かわせたって感じだろ」
「ふむ……」
プリシラはタイヨウの言葉に頷き、扇子を閉じた。
その表情はご機嫌な様子。
「大まかには合っておるな」
「……要件はなんだ?」
「何、いい暇つぶしになるかと思っただけじゃ。それ以上のでも以下でもない。望みは食だろう。たらふく食べるが良い」
その言葉と同時にドアが開きアルデバランが戻ってきていた。
手元には料理の乗ったカート。いい匂いが立ち込めた。
「とりあえず、これで足りるか?兄弟」
「ははははは!なんと、先に睨まれたから喧嘩になったと!愉快じゃな!ははははは!」
「…………」
料理をものすごい勢いで口の中へと運ぶタイヨウ。
そんな中での会話は、先程の騎士との乱闘について。
睨まれ、見下されたから喧嘩になったことを伝えた途端、プリシラはその口を大きく開け笑いだした。
「まるでノラ犬じゃな!」
「……あのまま連行されてたらシャレじゃ済まなかったぜ?」
「分かってる…」
笑うプリシラに心配するアルデバラン。
そんな2人にタイヨウは拗ねた様子で答えた。
「そうじゃなそうじゃな。妾が指示しておらなかったら貴様はあのまま連行され牢獄に入れられてたじゃろうな。感謝してもしきれんなあ、ノラ坊よ」
「……んだよ、ノラ坊って。これでも高校卒業したての18だぞ」
「残念じゃな、妾は19じゃ。年下なのじゃから"坊"でも良いじゃろう」
ドヤ顔、上から目線。
ぶん殴りたい顔である。手に力が入り、持っていた皿が割れた。
「また、カッとなりおって……やはりノラ犬じゃな」
「おい、アルデバラン。こいつ殴っていいか?もしくは蹴る」
「やめてくれ兄弟」
額に青筋が浮かぶタイヨウを手で制すアルデバラン。
そんなタイヨウを見てプリシラはさらにその笑みを深めた。
「それで?ノラ坊の名はなんというんじゃ?今は機嫌が良い。名乗ってみよ」
「あ?なんだそれ。………【ヤマモトタイヨウ】だ」
「……ッ。ほう……良い、良い名前をしておるな」
タイヨウが名乗るとプリシラの目は輝いていた。
そのまま、料理を食べるタイヨウのもとへ歩いていく。肩に手をおき、目線が会う高さまで顔を下げると喜びに満ちた顔でプリシラは口を開いた。
「タイヨウ、"太陽"……どうじゃ?貴様、妾の下につかぬか?」
「は?」
「これは運命と言っても良いものだと思わぬか?今なら妾の下につくことで貴様の身の安全も保障できようぞ」
そんな言葉に、手が止まるタイヨウ。目線だけをプリシラへ向け、
「断る」
「………」
「俺は俺の生きたいように生きる。誰の下につく気もない」
「誘いを断る、と?」
「そうだっつってんだ」
そう言って、手を動かし始める。
豪快に食べ進めていく料理。ハイスピードで消費されていく料理の数々。
そんな男を見てプリシラは……やはりその顔には笑みが浮かんでいた。
「良いな、すごく良いぞノラ坊よ。やはり、妾の手元に置いておきたい男じゃが、無理やりに縛るのも面白みがない」
さて、どうしようか。そんなにことを呟きながら自身が座っていた場所へと戻るプリシラ。
顎に手を当て考え事するその姿は1つの絵になるほどに様になっていた。
「ふぅー、ごっそさん。アルデバランだっけ?あんがとさん」
「おうよ、気にすんな。あと俺のことは気軽に"アル"って呼んでくれ」
そんな会話をしながらアルデバランは空になった食器を下げていく。
満腹になり満足そうなタイヨウ。
そんな彼を見ながらプリシラは口を開いた。
「……それにしても、汚い装いじゃな」
「着替えがないんだよ。つい最近もバトルジャンキーとケンカして血だらけなったし」
「ふむ………アルよ」
タイヨウの言葉を聞き、プリシラはアルデバランへ声をかけた。
「なんですかい?」
「いくらか服があったじゃろ。持ってこい」
「へいへい、分かりましたよーっと……」
軽い返事で部屋を出ていくアルデバラン。
何事かと首を傾げるタイヨウにプリシラは口を弧にした。
「服を見繕ってやろう」
「なんで?」
「妾がノラ坊を気に入ったからじゃ」
「……?」
気に入られる要素なんてどこにあったのか。
タイヨウはプリシラという女が分からなくなった。
太陽の加護持ちさんと太陽くんが出会いましたね。
やりました。