かいご・ざ・ロック 作:男の娘って良いよね
期末テストの点が悪かったので次回投稿は遅くなります。
12月中に二本は投稿したい……
「えー、諸君。お待ちかねの給料だぞ」
店長さんが五つの封筒を持ってきた。
封筒を使って扇いでいる。
みんなで並び、順番に給料を受け取っていく。
「はい理斗の分。いつもありがとな」
「ありがとうございます」
初給料かぁ。
いや僕はお金自体は稼いだことあるから初めてではないんだけどね。
でもひとりちゃんは初めての給料でとても嬉しそうだ。
舞い上がってる。
……あれ?
もしかして……ひとりちゃんバイトの目的忘れてない?
目が$になってるしひとりちゃんの背後に本とかケーキとか色々浮かんでる。
ケーキには『おかあさんおとうさんいつもありがとう』と書かれたチョコプレートが乗せられている。
これひとりちゃんが考えてるのが浮かんでるのか。
あのケーキは親に買ってあげようとしてるのかな。
ひとりちゃんすごいいい子じゃん。
偉すぎない?
「じゃあ、せっかくのところ悪いんだけど、ライブ代徴収するね」
「聴いてください、新曲、『さよなら諭吉』」
「ごめんねぇ! 私だって心苦しいんだよ〜」
やっぱり忘れてた。
「えぇ~! アルバム作るのってそんなにお金かかるんですか?」
「うーん。せっかくならライブの物販で置いてみたいし。それにミュージックビデオの撮影とかするのも結構お金かかるんだよぉー」
大変だねぇ。
音楽ってお金が凄いかかるんだね。
「じゃあ、夏休みは別のバイトも増やさないとですね」
「だね。みんなで海の家とかでバイトしちゃう?」
「いいですね海」
「海の家かぁ」
「理斗くんは嫌なの?」
「いやぁ、僕はいいけど……」
ひとりちゃんの方をちらりと見る。
血走った目でずっとスマホを触り続けている。
必死に何かを調べているようだ。
「あぁ〜、確かにぼっちちゃんに海はまだきついかぁ」
最近はかなり成長してるけどさすがにまだ海はきついと思うなあ。
多分耐えられずに爆発するだろうし。
「というかひとりちゃんは何してるんだろう」
「後藤さん何調べてるの?」
「ギターを担保にすれば借りれるはずなのでバイト増やすのだけはぁ! 海の家だけは遊園地だけはどうかなにとぞ」
なるほど……
ひとりちゃんはお金を借りられるところを調べていたんだね。
さっきのやり取りを聞いていたんだろう。
スマホを覗き込んでみるとそこにはうしうしファイナンスというどう考えても怪しいサイトが開かれていた。
「ひとりちゃん……」
「はっはい?」
「こんな明らかに怪しいサイトなんかで借りなくても、僕がお金貸してあげるから。だから落ち着いて、ね?」
なんなら何でもあげちゃうから。
全部僕がお金だすからさ。
「あ、ありがとうございます」
「それと虹夏ちゃん、僕の給料全額ノルマに当てていいから。喜多ちゃんたちも、何か欲しいものがあったら何でもいってね」
リョウちゃんも最近は満足したのか知らないけど全然お金借りなくなったし、余ってるんだよね。
「気持ちは嬉しいけど、理斗くんにそこまで甘えるわけにはいかないよ! ただでさえリョウのお世話までしてくれてるのに」
「お世話になってます」
「お世話してます」
いや、お世話させてもらってますかな?
「ズルい! 私もリョウ先輩のお世話したいです!」
僕はリョウちゃんだけじゃなくて君たちのお世話もしたいです。
「こいつら……ってああ! ちょっと! ポケットにお金ねじ込もうとしないで!」
「まあまあ、遠慮せずに」
そんなやり取りをしている僕たちをスルーしてリョウちゃんは、ひとりちゃんに話しかける。
「ぼっち」
「は、はい!」
「曲作ってきたんだけど」
横倒しにしたひとりちゃん専用ゴミ箱にスマホを置き、五人で囲み音楽を聴く。
「……すごい」
思わずポツリとつぶやいてしまった。
「えぇ、とっても!」
「ぼっちの書いた歌詞読んでたら、浮かんできた」
「やったじゃん! 頑張ったかいあったね」
「褒めて遣わす。よしよし」
あっ、リョウちゃんズルい!
「かっ。先輩! 私も頑張ってるんですよ! みてください! こんなに弾けるようになりましたよ」
「すごい」
「すごいですか! じゃあ私にもヨシヨシください!」
「よしよし」
くっ、やっぱり喜多ちゃんは僕よりリョウちゃんの方がいいのか……。
「あたしの夢、叶っちゃうかもな」
夢……?
確か武道館でライブすることだったっけ。
「よし! 来月ライブ出来るようお姉ちゃんに頼んでくる!」
「え? まだ言ってなかったんですか?」
「大丈夫、この前もすぐ出させてくれたもん。ね! お姉ちゃん!」
「いや、出す気ないけど」
「え?」
なんだか不穏な気配が……
「何で?オリジナル曲出来たのに」
「それはこっちには関係ない」
「あ、集客できなかった時のノルマなら払えるよ!」
「お金じゃなくて実力の問題」
「こ、この前は出させてくれたじゃん」
「あれは思い出づくりのために特別にな」
「思い出づくりって……」
「いつもデモ音源審査とかしてるの知ってるだろ」
「そう……だけど」
ああ、確かにそうだ。
ライブハウスなら審査を経ないとライブを出来ないだろう。
それに、実力が足りないっていうのも間違ってはない。
初ライブの時はお世辞にも上手いとは言えないレベルだった。
でも、それは初ライブの時の話だ。
今はみんな、格段に成長している。
「悪いけど五月のライブみたいなクオリティなら出せないから」
「出せないって……それじゃ私達は」
「一生仲間内で仲良しクラブでもやってろ」
なるほど、店長さんは『ちゃんと審査受けて実力で勝ち取れ』って言いたいんだね。
うん、これ絶対伝わらないよねぇ。
店長さんが口下手なのは知っている。
本心ではみんなのことを大事に思ってるって。
でも……もう少し言い方は無かったのだろうか。
これじゃあんまりだ。
「まだなんかあんの」
虹夏ちゃんはスカートを強く掴んでいる。
「未だにぬいぐるみ抱かないと寝れないくせにぃ〜!!!」
「伊地知先輩!」
とうとう我慢できなかったのか、捨て台詞を残して出ていってしまった。
「何だ今の捨て台詞は」
「ぬいぐるみって、このヨレヨレの兎とパンダのこと?」
リョウさんが見せてきたのは店長さんが2つのぬいぐるみに抱きついたままソファで寝ている写真だった。
ギャップが凄いな。
これがギャップ萌えってやつか、流石店長さんあざとい。
「あらかわいい」
「おっ、おまっ!? 消せ!」
「店長さんかわいいですね」
「何だその目は! あと写真見るんじゃねえ! 忘れろ!」
そっかぁ〜、店長さんぬいぐるみないと寝れないのかぁ〜
ほんとに可愛いなこの店長。
ってそうじゃない。
今は虹夏ちゃんだ。
「なにしてるんですか!? 追いかけますよ!」
「えぇ……」
「面倒そうにしないでぇ!」
「ほら後藤さんも! 行きましょ!」
「はっはい!」
「まってぼっちちゃん、理斗」
二人を追いかけようとすると、店長さんに呼び止められた。
「虹夏に伝えて、ライブに出たいならまずオーディション。一週間後の土曜にするから、それで判断するって」
「はぁ〜」
まったく、店長さんは素直じゃないんだから。
「な、何だよ」
「店長さん、もうちょっと言い方考えましょうね。ツンデレは可愛いけどあれじゃ誤解されますよ」
「そんなことないだろ」
そんなことあるから言ってるんですが。
「あの言い方だと『お前らみたいな下手なバンド出す気ねぇよ』って伝わりますね」
「そんなこと言ってねぇよ!」
「言ってましたねぇ」
「おい」
そうですよねPAさん。
いくら店長さんが不器用だからって限度があるよ。
本人に自覚が無いのも酷い。
「というかぼっちちゃんは何やってんの?」
「せ、精一杯服従心を表現しようと」
相変わらず店長さんのこと怖がってるなぁ。
店長さんいい人なのに。
というか店長さんひとりちゃんのこと盗撮するくらいには大好きだし怯えられてるって知ったらショック受けて立ち直れなさそうだよね。
「ワッ、ワンッ!」
犬の鳴き声まで出し始めた。
そこまで犬になりきらなくても……。
「ほ~らひとりちゃん、虹夏ちゃん達を追いかけるよ」
「ワンッ!?」
ひとりちゃんを抱きかかえ、外へ出る。
一応虹夏ちゃん達の気配は感じられるから見失う心配はないけど、早いほうがいいだろう。