かいご・ざ・ロック 作:男の娘って良いよね
あれから数日、僕と後藤さんは学校でも会話するようになった。
そんなある日のこと、僕は後藤さんに頼み事をされた。
「あっ、あのっ! 一緒にSTARRYまでついてきてくれませんか!?」
「別にいいけど、どうしたの?」
「今日、バンド活動について話し合うんです。で、でも……前は虹夏ちゃんと一緒だったから入れたけど、一人だと入りづらくて……」
虹夏ちゃん……ああ、あのドラムの子か。
確かにライブハウスはちょっと入りづらいよね。
少しだけ分かるよ。
「いいよ、ついて行ってあげる」
「ありがとうございます!」
僕の返事を聞き後藤さんは満面の笑みを浮かべる。
普段下向いてるから分からなかったけど、こうやって笑顔だとかわいいな。
STARRYに着き、後藤さんの手を引っ張り中に入る。
やっぱりあと五分とか言ってたけどもちろん無視した。
中では伊地知さんと山田さんが座って待っていた。
「あっ! ぼっちちゃーん! って、その子は?」
「後藤さんのクラスメイトでーす! 後藤さんの付き添いできました~。それじゃあ僕は帰るから、後藤さん頑張ってね!」
「えっ!?」
「ちょっと待って!」
「ヴッ!」
くっ首がっ!
僕が帰ろうとすると、シャツの襟をものすごい力で掴まれ引っ張られた。
「あっ、ごめん! この前のライブに来てた子だよね!」
「はい! 結束バンドのこと、応援してます!」
「ありがとー! ってそうじゃなくて、この前リョウにお金貸してたでしょ?」
「山田さんに? うーん……? あっ! あの時の雑草食べてた人!」
思い出した!
確かに雑草食べてた子に貸した気がする。
山田さんあの時の人だったんだ。
「やっぱり!」
「お陰で雑草生活から抜け出せた」
「ごめんね。すぐにお金返させるから」
「全然返さなくても大丈夫だよ〜」
道端でしゃがんでる子がいたから何かと思って近づいたら雑草食べてて驚いた記憶がある。
雑草生活から抜け出せてよかったよ。
「そういうわけにはいかないよ! 絶対返させるから! あーえっと、名前何ていうの?」
「あれ? まだ言ってなかったっけ。僕の名前は桃槍理斗。よく勘違いされるけど男でーす」
「男!? 理斗くん男なの!? こんなにかわいいのに……」
「理斗は男の娘……」
伊地知さんは驚いたような顔をし、山田さんはなぜか目がお金になっていた。
何を考えてるんだ?
というかやっぱり勘違いしてたんだね。
「あ、そうだ! 理斗くんも一緒に話そうよ!」
「えっ? バンド活動について話し合うんじゃないんですか?」
「そうなんだけどさ、付き添い頼まれるぐらいだしぼっちちゃんと仲いいでしょ? 理斗くんが一緒なら少しはぼっちちゃんも気が楽になると思うの。お願い!」
「まあそういうことなら……」
僕が頷くと伊地知さんに席まで引っ張られ座らせられる。
やっぱ力強くない?
ドラムやってるからかな。
「よーし! 第一回結束バンドミーティングを開催します! それじゃえっと、う~ん…………思えば全然仲良くないから何話せばいいか分かんないや」
「身も蓋もないね」
「そんなときのためにこんなものを」
「おっ、いいねぇ~」
山田さんが取り出したのは各面に文字が書かれた大きなサイコロだった。
これ振って話題を決めるんだろうけどこんな大きなサイコロどこから取り出した?
そしてなんでバンジージャンプなんて書かれてるの?
「何が出るかな♪ 何が出るかな♪」
「でででんでんでででんでん」
何処かで聞いたことあるな。
確か百獣の王のごきげんいかがみたいな名前の番組だったっけ。
「学校の話、略してガコバナー」
「ガコバナー」
「あっそっそういえば、おっお二人は同じ学校……」
「そう!下高」
「二人共下北沢に住んでるから近いところ選んだ」
へぇ~。
下高って進学校だよね。
そこそこ偏差値高かったはず。
ってことは二人共頭いいのかな?
「ぼっちちゃんたち秀華高ってことは家ここらへんなの?」
「あっいや、県外で片道2時間です」
「「片道2時間!?」」
「なんでそんな遠くから……」
片道2時間ってここから横浜ぐらいの距離を毎日往復してるのか。
そこまでして秀華高校に行きたかったの?
「あっ、高校は誰も自分の過去を知らない所に行きたくて」
「りっ、理斗くんは!?」
「僕は結構近くですね。ここから歩きで5分くらいかな? 家から近くて緩めの学校だったので秀花高にしました」
「おぉ、ホントに近いね~」
家が近いおかげで時間ギリギリで家出ても間に合うから助かってる。
「ぼっちちゃん、大丈夫! リョウもあんまり友達いないんだよ!」
「友達虹夏だけだから」
「休日は廃墟探索したり一人で古着屋さん巡ったり」
目を輝かせ仲間を見つけたかのような表情で山田さんを見る後藤さんだったが、すぐに絶望した表情になった。
後藤さん表情がコロコロ変わって面白いなぁ。
「ぼっちちゃん、会話を楽しもうよ……」
「後藤さん、基本ネガティブだから……褒めたらすぐ調子に乗るんだけどね……」
「つ、次は好きな音楽の話し、オトバナ〜!」
伊地知さんが話題を変える。
「あたしはメロコアとかジャパニーズパンクかな?」
「私はテクノ歌謡やサウジアラビアのヒットチャートを……」
「絶対嘘だ!」
「ほんとだもん」
「私は青春コンプレックスを発動しない曲ならなんでも……」
「青春コンプレックスってなに?」
何なんだろうね、本当に。
伊地知さんこっち見ないで。
僕が知りたいぐらいだから。
「あ、後藤さん一人の世界に入っちゃった」
「ぼっちちゃーん! 戻ってきてー!」
こういうときは頭を撫でれば……あっ。
爆発しちゃった。
「ぼっちちゃん!?」
人が爆発したら普通は驚くよね。
でもすぐになれると思うよ。
それにしても頭撫でても爆発しないときとするときの違いは何なんだろ。
「あー、こうなったら5分ぐらい戻ってこないからバケツに集めて放置しましょ」
「たまにあるの?」
「よくありますね。毎日のように爆発してます。ノルマみたいなものです」
たまになんてものじゃないよ。
後藤さん人間辞めてるから平気で爆発したり溶けたりするから。
「なるほど。ところで理斗はなんの音楽が好きなの?」
「僕はアニソンとか、ゲームのBGMとか聞いてばかりですね」
「もう! ぼっちちゃんを放置しないで! みんな結束してよ〜!」
「結束バンドだけに」
伊地知さんはかわいいなぁ。
「昨日はインストだったけど次はボーカルも入れたいんだよね。ホントは逃げた子が歌うはずだったんだけど……あの子どこ行ったんだろう……」
「ならまた探さないとですね」
「あたしは歌下手だし……ぼっちちゃんはどうなんだろう」
そこで後藤さんに聞くの?
聞く前から分かりきってると思うけど。
「流石に無理だと思いますよ、後藤さんは。歌が上手い下手以前の問題です。山田さんは?」
「フロントマンまでしたら私のワンマンライブになってバンドを潰してしまう。しくしく」
「その湧き出る自信の根拠の源はなに?」
その自信の一割でも後藤さんに分けてあげてほしいよ。
あとしくしくって自分で言うのね。
まあ、可愛いからヨシ!
「理斗は歌える?」
「まあ一応歌えないこともないですけど……。僕もボーカル出来そうな人探しておきますね」
「ボーカル見つかったら曲も作っていこうよ! 作曲はリョウが出来るし」
「なら歌詞は後藤さんが書けばいいんじゃない? 後藤さん禁句多いから」
青春コンプレックスとかも自分で書けば発動しないだろうし。
その代わり歌詞が暗くなりそうだけど。
「私にはバンドの潤滑油としての役割がありまして〜……!」
「就活生か」
「でも、それでいいと思うよ。ほら、後藤さんも山田さんも個性が強いから大変だろうし」
「理斗く~ん!」
「ちょっ!? 伊地知さん!?」
涙目になった伊地知さんは僕に抱きつこうとする。
僕が男だってこと忘れてる?
まあいいか。
「よしよし、伊地知さんは頑張ってて偉いね〜」
伊地知さんを抱きしめ頭を撫でる。
すると、伊地知さんは全身の力を抜いてリラックスしだした。
伊地知さん苦労してるんだね。
後藤さんはもちろん、山田さんのほうも結構アレだろうし。
「あっ! ごっ、ごめんね!」
伊地知さんは我に帰ったのか顔を真っ赤にして僕から離れた。
「もっと甘えてもいいんだよ?」
「つっ! 次っ! ノルマの話っ!」
伊地知さんは僕の言葉を無視し、ノルマについて説明し始める。
あ、顔から湯気が出てる。
かわいい。
「つまり売れるまでめちゃくちゃお金いる」
「ざっくりし過ぎ! まあでもそういうことだからさ、バイトしよー!」
「あっはい」
お?
普通に返事した。
後藤さん的にバイトは問題ないのかな?
「バッ! バイトォ!?」
「今日一声出たね」
あっ、一人の世界に入ってちゃんと話聞いてなかっただけか。
ちなみに理斗くんは宝具等が使えない分本家アストルフォより身体能力とか色々強化されてます
つまり天与呪縛フィジカルゴリラです
一ヶ月飲まず食わず睡眠なしでも生活できます
爆発する全身ピンクよりはまとも
理斗くんを結束バンドに入れる?
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入れない
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入れる(キーボード)