かいご・ざ・ロック   作:男の娘って良いよね

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第八話 バンドらしさと適正価格とベーシスト

「第二回結束バンドミーティング開催! 拍手!」

 

パチパチとまばらな拍手が響く。

 

虹夏ちゃんがどこかから取り出したスケッチブックを机に叩きつけるように置き、捲った。

 

「さて、本日のお題はこちらっ! ズバリ、より一層バンドらしくなるには?」

 

おお、ざっくりしている。

バンドらしくかぁ。

僕全然分かんないや。

他のバンドとかほとんど知らないし。

 

「せっかくメンバーも集まったんだし、まずは四人でより一層バンドらしくなっていきたいなと!」

「なっ、なるほど……」

「いや、練習あるのみなのは分かるよ? だけどそればっかりだとねえ。色々話したりするのも大事かなって」

 

そういって虹夏ちゃんは喜多ちゃんの方をちらりと見る。

 

なるほど、喜多ちゃんの息抜きか。

確かに喜多ちゃん頑張ってるもんね。

 

「まずは形から入ってみるのもありでしょ」

「ありですね。流行ってるメイクも真似してる内に様になってくるというか」

「そうそう」

 

うーん、全く話に入っていけない。

メイクなんてしたことないからなぁ。

 

「というわけで……とりあえずバンドグッズ作ってきた!」

「それ、ただ結束バンド巻いてるだけじゃ」

「え? 可愛くない? 色んな色あるよ!」

 

へぇ、こんな色のもあるんだ。

結束バンドって白か黒だけだと思ってたよ。

赤、青、黄、ピンク、それぞれの髪の色の結束バンドか。

いいね。

 

「物販で500円で売ろう。サイン付きは650円で」

「うわぁぼったくり適正価格だぁ」

 

結束バンドとか一本2円とかでしょ。

暴利にも程がある。

いやまあ買うよ?

バンドグッズは全種買うけどさ。

 

「安い! 買いますっ!」

 

喜多ちゃんは売る側でしょ。

リョウちゃんが関わるとすぐ壊れちゃうんだから。

 

「他にバンドらしくなるアイデアある?」

「もしイソスタとかするなら私やります!」

「いいねそれ! では喜多ちゃんをSNS大臣に任命します!」

「その時が来たら毎日更新しますね!」

 

イソスタかぁ。

喜多ちゃんが得意そうなやつだね。

 

「あとは……ファンクラブの設立とか?」

「年会費は一万円、ファンクラブ特典はメンバーとの握手会と年に一度のたこ焼きパーティ、材料はファン持ちで」

「安い! 入りますっ!」

「君もメンバーなんだけど」

 

僕は入るけど君は無理だよ?

バンド内でお金が循環するだけだから。

あとやっぱり価格設定おかしくない?

ファンクラブの値段の相場とか知らないけど高いと思う。

 

「後藤さんは? なにかアイデアある?」

「あぁ、ぼっちちゃんは大丈夫。ぼっちちゃんにはオリジナルソングの作詞という重要任務があるから」

「前に決めたじゃん。リョウが作曲、ぼっちちゃんが作詞って」

 

そういえばそうだっけ。

ひとりちゃんが作詞か、どんな歌詞になるんだろう。

やっぱり暗めの歌詞になるのかな。

 

一瞬、喜多ちゃんが『毎日一人呪っていくね』と歌う姿を想像をしてしまったが、そのイメージをすぐに振り払う。

流石にそこまでにはならないでしょ。

 

「リョウ先輩の曲楽しみです。もう作ってたりするんですか?」

「イメージ湧いたらその内」

「頼むよリョウ。それと作詞大臣」

「後藤さん凄い仕事任されてかっこいいわね」

「かっ、かっこいい!」

 

かっこいいと言う言葉に反応して、目をキラキラさせるひとりちゃん。

 

これは調子に乗るかな。

 

「うん! ひとりちゃんはとってもかっこいいよ」

「ま、まあ作詞なんてちょちょいのちょいですよ」

 

ひとりちゃんはニヤニヤしながら両手を上下二振っている。

やっぱり調子乗っちゃったかぁ。

 

「後藤さんすぐ調子に乗るのねぇ」

「でも調子乗ってる時のひとりちゃん可愛いんだよね」

 

凄い可愛いからつい褒めちゃうんだよね。

普段は猫背と二重顎だし下向いてて顔も見えにくいから分かりづらいけど、ひとりちゃんかなり可愛いんだよ。

この性格じゃなかったら間違いなくモテモテだっただろう。

 

「大ヒット間違い無しのバンドらしい歌詞書いちゃいますから。うへ、うへへへへ」

「らしい……」

 

ん?

リョウちゃんどうかしたのかな。

いつもより元気がない。

後で聞いてみよう。

 


 

「ねえリョウちゃん」

 

バンドミーティングが終わった後、リョウちゃんと二人きりになるのを見計らって話を切り出した。

 

「ん?」

「今日のリョウちゃん、いつもより変だったけど、どうかしたの? 悩みがあるなら聞くよ」

「…………欲しい楽器がお金足りなくて悩んでた」

「それは後で買ってあげるとして……ちゃんと目を見て話そうね」

 

そんなに目を逸したら誰だって分かるよ。

リョウちゃん意外とわかりやすいな。

お金が足りなくて悩んでるのも嘘ではないのだろう。

だけど、それだけじゃない。

他に何か悩みがあるのだろう。

 

「分かった」

 

それからリョウちゃんは語り始めた。

結束バンドに入る前のことを。

前のバンドが売れ線を意識して歌詞の路線を変えたこと。

そのことで揉めたことや、バンド自体嫌になっていたところを虹夏ちゃんに誘われ、結束バンドを結成したことも。

 

「……そっか。だから虹夏ちゃんがバンドらしさとか言った時に……」

「結束バンドには前いたバンドみたいにはなって欲しくない。個性を捨てたら死んでるのと一緒だから」

「結束バンドの方針や方向性とか、結束バンドのメンバーじゃない僕は役に立てないけど、そういうのは一度4人で話し合わないとダメだと思うよ。今後もそういうことがあるだろうし、早めに話し合っておいたほうが何かあっても傷が浅くて済む」

 

その何か、なんて起きてほしくないけどね。

方向性の違いで結束バンド解散なんてなって欲しくないし。

 

みんなが楽しくバンド活動するつもりなのか、それとも本気で上を目指すつもりか、僕は知らない。

でも、熱量に違いがあってもおかしくないんだ。

きっとそれは後ですれ違いが生じるだろう。

そうなれば大きな傷になるはずだ。

 

「ありがとう。みんなと話してみる」

「よし、じゃあ楽器買いに行こっか。どこのお店に行くの?」

 

いくつか楽器店は見かけた事あるけど、行ったことないんだよね。

 

「え、本当に買ってくれるつもりなんだ」

「もちろん!」

 

Of course.

リョウちゃんが欲しいものはいくらでも買ってあげるからね。

 

「楽器って安いのでも数万するよ」

「しってるよ? 数十万なら出せるから、遠慮せずに買ってね」

「えぇ……」

 

頭のおかしい人を見るかのような目で見られてしまった。

なんでさ。




シリアス書くの難しすぎて本気でエタるかと思った。
シリアス書くの向いてなさすぎる。

なのでこれからはシリアスができるだけ減らせるように物語を進めようと思います。
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