かいご・ざ・ロック 作:男の娘って良いよね
あれから一週間が経った。
虹夏ちゃんに呼ばれ、駅前に来ていた……のだが……
「ゆゆゆ、赦してください」
「後藤さん?」
「ひとりちゃんいきなり何やってるの!?」
ひとりちゃんはやって来た途端、なぜか「私は約束通りに歌詞をを書き上げられませんでした」と書かれたプラカードを首から下げ、土下座をしたのだ。
すごい目立ってる。
「調子乗ったくせに全然歌詞書き上げて来なかった私を吊るし上げる会では?」
「そんな外道なことしないよ!」
みんなのこと何だと思ってるの!?
そんなすぐに歌詞書けないって分かってるし、なによりみんな優しいからそんなことしないよ。
「ほら立ってひとりちゃん。こんなところで土下座したら服が汚れちゃうよ」
ひとりちゃんを持ち上げ、立ち上がらせる。
ひとりちゃん今日何するか知らされずに来てたのか。
まあ僕も何も聞いて無いんだけどさ。
でも喜多ちゃんとリョウちゃんは聞かされてるっぽいんだよね。
「じゃあ、今日集まったのは……」
「この前は思いつかなかったけどまだあったんだよ、バンドらしいこと!」
……一体なんだろう。
STARRY集合じゃないってことは外でなにかするんだろうけど。
「アー写を撮ろう!」
「アー写?」
「アーティスト写真のことだよ」
「ああ、なるほど」
確か広告とか宣伝に使う写真だっけ。
確かに必要だよね。
「今ある結束バンドのアー写にはぼっちちゃん写ってないしね」
「今ある……?」
「みる? この前ライブ出るために撮った」
リョウちゃんがスマホでアー写を表示する。
虹夏ちゃんは元気にポーズをとり、リョウちゃんは目をそらしている。
これだけなら普通のアー写だが、なんと喜多ちゃんだけ左上に合成されていた。
「なんていうか……卒業アルバムみたいだね」
「ほら喜多ちゃん逃げちゃったから」
「ごめんなさい!」
「そんなわけで今日は天気もいいしみんなの予定も空いてたから、アー写取っちゃおうかなって」
「そ、外でですか!?」
ひとりちゃんだいぶ嫌そうだね。
まあ仕方ないか、下北沢だもんね。
STARRYに行く為によく歩いてるけど未だに怯えてるからなぁ。
「スタジオで撮るのはお金がないから無理」
「お金なら僕がだすよ?」
「いや~流石にそこまでお世話になるのは申し訳ないから」
むー、遠慮なんてしなくていいのに。
結束バンドのためだったら何百万でも出してあげるんだけどなぁ。
「まあ、外じゃなくてSTARRYでもいいんだけどアー写ってバンドの方向性とかメンバーの特徴を一枚で伝える大切なものだからさ!」
「じゃあ気合入れて撮らないとですね!」
「その通り!ライブハウスのサイト告知やフライヤーや雑誌、どんなところで使われてもインパクトがある感じにしないと」
「だそうだ」
「僕に任せて! バッチリ撮ってあげるからね!」
結束バンドの活動を記録に残す為に買った一眼レフ、持ってきておいてよかった。
これで最高の写真を撮ってあげるよ。
「よぉーし! それじゃアー写撮影の旅にれっつらごー!」
「「おー!」」
「おー」
階段やフェンス、路地裏、落書きされたシャッター、古着屋前など、色々なところを見て回り、公園で一息つく。
「階段、フェンス、植物の前、そして公園。金欠バンドマンのアー写で定番どころはこんなところかな。あっ、後は良さげな壁」
あー、壁の前で並んでる写真たまに見るもんね。
「そういえば今日楽器もってこなくてよかったの? 楽器あったほうがいい感じになると思うけど」
「みんなはね」
みんなは?
ああ、なるほど。
そういうことね。
「確かにドラムは棒だけだしね。流石にドラム持ち歩く訳にはいかないし」
「そういうこと! 絵になるのはギターとベースだけなんだからね!」
僕はそれはそれで可愛いと思うけどね。
というかみんな可愛いから何したって絵になると思うけど。
でも虹夏ちゃんは嫌なんだろう。
「可愛いじゃん」
「じゃあ楽器交換しよ!」
「かっこ悪いからやだ」
「ぬ゛ゔゔゔゔゔゔゔん」
リョウちゃんをドラムスティックを持って虹夏ちゃんが追いかけ回す。
リョウちゃんは今日も絶好調だね。
一瞬で矛盾したじゃん。
というか、虹夏ちゃん持って来てたんだ。
「じゃあ一息ついたし、散策再開しよっか」
休憩を終え、再び下北沢を練り歩く。
「あっ、こことかどうです? よくないですか? 沢山ポスターとか貼ってあって、下北沢らしいというか」
喜多ちゃんが指を指した方を見ると、ポスターの貼られた壁があった。
あれ?
そういえばここって……
「そこ、前までよく行ってたCDショップだった」
ああ、やっぱり。
この店無くなってたのか。
「レコードショップもライブハウスもどんどんなくなるね〜」
「昔ながらの店が、どんどん消えていく」
ほんとにね。
この辺りよく通るけど、気づいたら別の店になってたとかあるし。
「リョウ、新しい本屋が出来て喜んでたじゃん」
「うん、B&C好き」
僕もたまに行ってる。
品揃えがいいよね。
「喜多ちゃん、リョウに振り回され過ぎないようにね〜。その場のノリで話してること9割だから」
「でも先輩になら、むしろ振り回されたい!」
うーんこれはもう末期だね。
虹夏ちゃんもドン引きしてるよ。
喜多ちゃんらしいけど。
「あれ? そういえばひとりちゃんどこ行ったんだろう」
「ホントだ、いつの間にかいなくなってる!」
周囲を見渡して見るがどこにも居なかった。
全身ピンクだからすぐに見つかると思ったけど、ホントにどこ行っちゃったんだろう。
どこかで自分の世界に入ってるのかな。
もしかして迷子?
いや、それだったらロインで連絡してくるか。
「うわっ、ってなんだぼっちちゃんか。どこ行ってたの?」
突如ひとりちゃんが虹夏ちゃんの背後に現れ肩に手を置く。
まるで幽霊みたいだった。
驚いた虹夏ちゃんも可愛いね。
天使みたい。
なんでみんなこんなに可愛いんだろう。
「あっ、あの、あっちにいい感じの場所が……」
パントマイムかな?
相変わらずひとりちゃんは面白いね。
「おぉ~! でかした!」
「流石ひとりちゃん! 偉いよ!」
すごく偉いぞひとりちゃん!
「偉い……! そ、そんなこと、あるかも。うへ、うへへ」
褒められてふにゃふにゃになったひとりちゃんの手を引っ張り出発する。
早速ひとりちゃんの見つけたいい感じの場所にレッツゴー!