ビビーッ!ビビーッ!
コックピットの耐熱制御が限界に近づいていることを報せるアラートがけたたましく鳴り響く。
コックピットの外では大気による摩擦によって機体が削られ、とてつもない轟音が轟いているのだ。
まるで巨大なハリケーンか、雪山の雪崩を思わせるかのような音だろうか。
しかし、今のアムロ・レイにはそんな騒音など無音にさえ思えてしまう。
『そうか...!しかし、この〘暖かさ〙をもった人間が地球さえ破壊するんだ!それを分かるんだよアムロッ!』
男の名は『シャア・アズナブル』
アムロ・レイにとって、シャアとはかつての敵であり、味方として共に戦った戦友でもあった。
あの時彼がいなければ、アムロは永遠に重力の檻の中で朽ち果てていただろう。
人類に絶望した彼はララァ・スンの亡霊に取り憑かれ、彼女を手にかけたアムロ・レイを克服するためだけにその命をも捧げる、究極のエゴイストとなって還ってきた。
「分かってるよ!だから、世界に人の心の光を見みせなけりゃならないんだろ!?」
シャアは己の行動を世直しではないと言った。
シャアは知っているはずだ。人間にも善し悪しがあって、必ず全てが悪ではないのだということを。
だが、エゥーゴにいたときからの彼の信条は大きく変わってしまった。目も当てられない、まるで大きな子供が母親を求めて彷徨っているように感じてしまう。
それがアムロには分からなかった。
政治事に興味を持たず、人類の革新を進めたいわけでもない。ではなぜ彼はこんな大それたことをしでかしたのか?
シャアはなにを求めているのか?一体なにがしたいのか?
『......ふん、そういう男にしてはクェスに冷たかったな.....えぇ!』
「俺はマシーンじゃない!クェスの父親代わりなど出来ない!....だからか?貴様はクェスをマシーンとして扱って....!」
アムロはクェスがなにを求めていたのかを薄々ながら感じていた。それが言葉となって咄嗟に口から出た。
『......そうか。クェスは父親を求めていたのか。それで、それを私は迷惑に感じて、クェスをマシーンにしたんだな』
結局のところ、シャアはクェスにララァを見たのだろう。
彼女が第二のララァ・スンになってくれることを身勝手に祈ったのだが、クェスは同時にシャアに対して理想の父親を見たのだった。
「貴様ほどの男が、なんて器量の小さい!」
アムロは怒鳴った。
クワトロの時のイメージがまだ頭に残っていたせいなのだろうか?なんの威厳もなく、ただのみっともない男になってしまったシャア・アズナブルに対して深く失望を覚えた。
しかし、その言葉を聞いた途端、先程まで魂が抜けたかのようだったシャア が声色を変えてアムロに思いきり怒鳴ったのだ。
『ララァ・スンは、私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!』
『そのララァを殺したお前に言えたことかッ!』
その時、シャアの『全て』がアムロの頭の中を駆け巡った。
「.......お母さん?ララァが....?」
光に包まれていくなかで、無意識にひねり出した言葉がそれだった。
しかし、次の瞬間______
「うわっ!」
パッ!と目の前が発光した。
目も開けていられないほどの眩い光、それに耐えきれずに目を閉じたと同時にアムロの意識は遠のいてゆく。
まるで、
アムロはその感覚に導かれるように意識を断った。