自らの生徒手帳を高く掲げるミオリネ
ミオリネ「この話に価値があると思った方は、『株式会社ガンダム』の設立に...」
ミオリネ「どうか...投資を!」
......ミオリネは考えていた。この提案には倫理観的な問題や高いリスクがついているため、会場の全員が全員の賛同は得られないだろう。
だが、全ての賛同を得る必要はない。目標金額にさえ到達してくれれば、こちらの勝ちなのだと.......
シャディク「でも....ダメなんだ、それだけじゃ」
スレッタ「あっ...」
スクリーンを見たスレッタが小さく声を漏らす
表示されていた目標投資額パーセントは、ゼロ
つまりは、この場の参列者が誰一人としてミオリネのプランに賛同していないことを示していた。
手元にある端末の投資ボタンには、誰も手をつけようとはせず、会場からは冷ややかな目線がミオリネらを貫いている。
ミオリネ「....なんで...?」
デリング『お前の提案には価値がない....皆そう言っているのだ』
ミオリネ「っ!」
デリング『どんな
特別席からデリングの声がマイクを通して、会場に響く
エラン「...当然だよねぇ」ボソ
デリング『出ていけ。子供の意地につきあうつもりはない』
ミオリネ「..........」
ミオリネは体を震わせる
それはデリングに対する怒りなどではない。この場の、ただの一人でさえ振り向かせることのできなかった自分への憤りなのだ
アムロ「...なぜこうまてして遠ざけるのです?デリング総裁」
デリングに対し、アムロは問いかける。
デリング『.....これはこの会場全体の総意だ。私情など関係ない』
アムロ(会場の総意...?なら......)
アムロ「本当は参列者の方々も、彼女のこの提案に“うまみ”を感じている節があるのではないですか?」
それを聞いた途端、参列者たちは互いに目を見合わせ始めた。内心、安全性という障壁があるものの、GUND-ARMはビジネスにおいて莫大な利益をもたらすであろうということは分かりきったことだった。
本来誰もが喉から手が出るほど欲しかった提案ではあるが、如何せん実績皆無のミオリネに金を預けようとする連中はいないのである
アムロ「彼女が優秀な人材であるという証明は、弊校の経営戦略科においてトップの成績を収めていることが何よりの証拠です」
アムロ(この場合、重要なのは“きっかけ”だろうか)
アムロ(彼らだってこの発案には非常に興味を抱いているはず...このジレンマをこちら側に持っていくには、この中の誰かが投資をすることが決定打になる筈だ。)
アムロは声を大にして訴える
アムロ「信用も信頼も実績も...全ては何も無い状態から生まれるものです」
アムロ「我々は必ず出資者のニーズに応え、そこからそれらを生み出してみせます。その自信があるのです!」
アムロ「どうか....株式会社ガンダムに、投資を....!」
その訴えに会場の参列者たちは僅かに反応を示し、少数ではあるが、手元の端末にある投資表示へと親指が伸び始めていた。
アムロ(誰でもいい....きっかけを作ってくれれば...)
デリング『....たかが子供の説得でどうこうできる程、ビジネスとは甘いものではない。』
デリングの声が再び響く
デリング『2400億という金額、それをお前たちはまるで小遣いをねだるように欲する』
デリング『信用や実績を生み出すと簡単には言うが、必ずそれらを生み出せる確証はあるのか?』
デリング『....お前たちが今、この場で必要なのは“100%の信用”だ。今から生み出すでは遅い、
それを聞いた参列者たちは、端末に伸ばし始めていた指を引っ込めてしまった。
アムロ(......くそっ...!)
アムロの細やかな反撃は、一瞬のうちに摘み取られる
デリング『持たざるものを、いったい誰が信用などするものか』
アムロ「...俺は信用していますよ、ミオリネのことを」
ミオリネ「!」
ミオリネの震えが止まる
デリング『...それは花婿としての意見だな』
アムロ「一人の人間としての意見です。...彼女は、勇気と行動力と創造性を兼ね備えた...素晴らしい人間ですよ、デリング総裁」
デリング『......くだらん』
そう吐き捨てて退席し始めるデリング
デリング「揃いも揃って、つまらん意地を....」
ミオリネ「....待ってください!」
デリングはその声に一旦足を止めて振り返る。
スレッタ「ミオリネさん...?」
ミオリネは履いていたヒールを脱ぎ捨てた
アムロ「......ミオリネ、一体なにを...」
ミオリネ「今度は、私があんたらを守るわよ」
そう言うとミオリネは裸足で参列者たちの合間を突っきって走る。
ミオリネ「.......っ!」
ミオリネの頭には、先程プロスペラに言われた台詞が浮かび上がっていた
『まずは、そのかわいい意地を捨てなくっちゃね』
ミオリネ「......意地じゃない...っ!」
そのまま特別席への階段を駆け上がる
ミオリネ「...ハァ...ハァ....」
デリング「........」
ミオリネは肩で息をしながら、自らの生徒手帳をデリングに向けた。
デリング「なんのまねだ?」
ミオリネ「...あなたに...投資してほしい」
ヴィム「ハッ....なにを馬鹿な...」
ミオリネ「あなたの言うとおり、今のままじゃ私の提案に乗る人なんて...いません」
ミオリネ「ですから...ベネリットグループの総裁である、あなたの『信用』をお借りしたいんです....っ!」
ミオリネはデリングに向って、精一杯頭を下げた。
アムロ「ミオリネ...!」
ミオリネ「お願いします!」
デリング「..........」
二人の合間にしばらくの無言が続く
その間ミオリネは瞼を強く瞑る
ミオリネは生まれて初めて、父に対して
勿論ここに私情などは存在してはいないだろうが、そうだとしても忌み嫌う父に頭を下げたのは、ミオリネが『他人のために自分のプライドを投げ捨てた』という、人としての殻を一つ破ってみせた証明になるだろう。
ミオリネの手は緊張によりプルプルと震えている
デリング「........」
ミオリネ「........っ...」
デリング「.......逃げるなよ」
ミオリネ「.....え」
デリング「お前が考えている以上にガンダムの呪いは重い」
そう言い残してデリングは去っていった。
ミオリネ「....あっ...」
スレッタ「アムロさん、見てください!」
スレッタに言われるままスクリーンに目を向けると、先程までゼロだったパーセンテージが『03%』に変わっていた。
ミオリネ「....あ...あぁ...っ!」
ミオリネは目を輝かせていた。
その3%はデリングからの紛れもない、『信頼』の証であった。
会場は次々と通知音が鳴る。デリングの投資が起爆剤となり、03のパーセントは、08、15、50、61、と上がって行き.......
『75%』
目標金額到達を知らせるアナウンスと共にステージからは祝福の紙吹雪が舞い上がる。
エラン「....へぇ」
シャディク「お見事」パチパチ
ヴィム「ぐ....くうっ.....ッ!」バン!
ゴルネリ「風向きが...変わりそうね」
ニューゲン「ええ....」
サリウス「....やはり、認めたな.....ガンダムを」
それぞれの思惑が渦巻く中、会場は先程と一転してミオリネに対する大きな拍手に包まれていた。
ミオリネ「あ....ありがとうございますっ!」
スレッタ「やりましたよアムロさん!」
アムロ「...ああ」
アムロ「やはり彼女は...すごい人だよ」
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会場外にて
プロスペラ「___株式会社ガンダムは、なんだか賑やかね」
テム「...そのようですね」
プロスペラ「それで?お話、まだ続きます?」
ラウダ「......くっ」
〜
マルタン「まったく....何もかも急すぎるよ!いきなり会社なんて...」
アムロ「おかげでスレッタと俺は助かったよ」
マルタン「それでも....!」
プロスペラ「スレッタ」
スレッタ「お母さん!.....と、アムロさんのお父さん?」
プロスペラ「ごめんね、ちょっと用事で離れてて」
アムロ「父さんまで、どこに行ってたんだよ」
テム「私もちょつとした用事だ。気にすることではない」
プロスペラ「テム代表?ミオリネさんにお礼申し上げたらどうです?」
ミオリネ「えっ....?」
プロスペラ「彼女のおかげで、エアリアルもあなたのMSも、廃棄されずに済んだんですもの」
テム「そう...ですね」
テムはミオリネに握手を求める
テム「ありがとうございます、ミオリネ様。おかげで息子も機体も救われました」
ミオリネ「い、いえ...そんな」
ミオリネはその握手に応える
プロスペラ「もう、堅苦しすぎますよ?代表」
次はプロスペラが手を差し出す
プロスペラ「私も良いかしら?ミオリネ・レンブランさん」
プロスペラ「あなたがスレッタのお友達でいてくれて、本当に助かりました」
ミオリネ「.....はい」
それにミオリネも応えた。
プロスペラ「あなた達になら、うちの娘
アムロ(ん....?娘
スレッタ「ね、ねぇ!お母さん」
プロスペラ「ん?」
スレッタは焦った様子で問いかける
スレッタ「エアリアル...ガンダムじゃないよね...?」
プロスペラ「......」
スレッタ「だって!お母さんはガンダムじゃないって...「いいえ、ガンダムよ」.......え?」
プロスペラは、ふんわりと微笑む
プロスペラ「ごめんねぇ....とうとうバレちゃった」
スレッタ「........ぇ」
プロスペラ「エアリアルはね、『ガンダム』...なのよ。」
8話へ続く。
少しだけアムロとミオリネの仲を縮めてもいいかな....と