水星の魔女と地球の悪魔   作:yomiyomi

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第9話「交錯 ~その1~」

 

 

オジェロ「ひっでぇな...」

 

地球寮の面々が見つめる先には、無惨な姿に変わり果ててしまった株式会社ガンダムのロゴマークを記した板があった。

 

ティル「.......」

 

その製作者であるティルが悲しげな表情で板に手を伸ばす

 

マルタン「おかしいよ....いきなり校則が変わって起業できないなんて!」

 

アリヤ「アーシアンだから気に入らない....のかな」

 

チュチュ「校則なんて無視してやっちゃおうぜ」

 

リリッケ「そんなことしたら私たち退学処分になっちゃうよ...!」

 

ヌーノ「.....あいつら、何話してんだろ...」

 

ヌーノは会社のオフィス(仮)に灯る明かりを見つめる。

 

 

シャディク「......美味いね」

 

ティーカップに入った紅茶を啜って言う

 

スレッタ「アリヤさんの故郷の茶葉...だそうです」

 

シャディク「へぇ、地球産か。納得だ」

 

ミオリネ「....で?話しってなに?」

 

シャディクはカチャリと小さな音を立てて、カップをソーサーに戻す。

 

シャディク「...前に二人で話したこと、真剣に考えてみないか?」

 

スレッタ「ふ...二人で...!?」

 

ミオリネ「あんたと手を組むって話?」

 

アムロ「そんなことを話してたのか?」

 

ミオリネ「違うわよ。こいつが勝手に言ってるだけ」

 

サビーナがタブレット端末をミオリネに差し出す

 

シャディク「これは、その事業譲渡契約書だ。」

 

シャディク「会社の代表ほ替わらずミオリネのまま、経営も実務も君たちに任せる」

 

サビーナ「校則の違反はあくまで起業に関してだ。既存の会社を使う分には問題ない。」

 

ミオリネ「........」

 

シャディク「ミオリネは総裁の信頼を失わずに済むし、アムロも水星ちゃんもガンダムを守れる」

 

シャディク「俺はガンダムの事業に一枚噛めればそれでいい......悪い話じゃないだろ?」

 

 

ミオリネ「....1つ確認」

シャディク「どうぞ」

 

ミオリネ「校則を書き換えたのはあんた?」

 

シャディクはその問いかけに対して、ミオリネを見つめながら薄っすらと微笑む

 

アムロ(そう...だろうな)

 

シャディク「どうしてそう思う?」

 

ミオリネ「都合が良すぎるのよ、あんたにも 私にも」

 

ミオリネ「シャディク・ゼネリって男がそういうやり方を好むのも知ってる」

 

シャディク「....それで?ほかに何かいい案でも?」

 

シャディク「俺以外に誰が君を救えるんだ?」

 

 

一瞬の沈黙の後、アムロが口を開く

 

アムロ「.....要するにシャディク、君は彼女が欲しいわけだ」

 

シャディク「.....」

 

スレッタ「アムロさん!?」

 

サビーナ「口を挟むな。アムロ・レイ」

 

アムロ「ならこんなことをせずとも、さっさと告白でもなんでもすれば良かっただろうに。」

 

シャディク「.....ふっ」

 

顔をそらすシャディク、それを見てアムロはポツリと呟いた。

 

アムロ「.....意外と小さいんだな、君は____」

 

 

バシャッ!

 

 

スレッタ「あっ...!」

 

サビーナ「....口を挟むなと、そう言ったぞ?」

 

アムロ「.......」ポタポタ

 

サビーナがティーカップに入った紅茶をアムロにぶちまける

 

アムロは熱い紅茶を頭から被ってしまったが、平然とサビーナの方を見つめ返した。

 

サビーナ「....チッ!」

 

シャディク「サビーナ、止せよ」

 

ミオリネ「.....あるわよ、一ついい案が」

 

シャディク「なんだい?その案って」

 

ミオリネ「この学園ならではのシンプルな解決策が....」

 

アムロ「ミオリネ...まさか」

 

 

ミオリネ「シャディク・ゼネリ....あんたに決闘を申し込む」

 

 

________________________________________

 

 

決闘委員会 ラウンジ

 

ラウダ「___双方、魂の代償をリーブラに」

 

ミオリネ「......」

シャディク「.......」

 

ラウダ「決闘者はミオリネ・レンブランとシャディク・ゼネリ、場所は戦術試験区域4番」

 

ラウダ「決闘方法は6対6の集団戦とする。」

 

リリッケ「集団戦...?」

 

マルタン「そんな数のMS...うちにはないですよ!」

 

サビーナ「...根回しも決闘準備の一つだ」

 

ラウダ「兄さんはどんな不利な条件でも決闘を拒まなかった」

 

ラウダ「ガンダムがあるなら、どうにかできるだろ」

 

ロウジ「私情入ってますね、ラウダさん」

セセリア「兄弟愛重すぎ〜」

 

マルタン「うう...胃が痛いよ...」

 

ミオリネ「条件があるわ」

 

ラウダ「条件?」

 

ミオリネ「今回の決闘、ベネリットグループの外部にも中継で配信させて」

 

ラウダ「外部だと...?」

 

ミオリネ「御三家を全員潰したパイロットとMSのいる会社なんて、最高の『宣伝』になるでしょ?」

 

ミオリネがラウダを見てニヤリと微笑む

 

ラウダ「チッ........シャディク、どうかな?」

 

シャディク「問題ない」

 

ラウダ「...条件をみとめよう。」

 

 

ラウダ「ではミオリネ・レンブラン。あなたはこの決闘に何を懸ける?」

 

ミオリネ「校則を元に戻してもらう」

 

ラウダ「シャディク・ゼネリ。あなたはこの決闘に何を懸ける?」

 

シャディク「株式会社ガンダムの譲渡」

 

ラウダ「....Alea jacta est(アーレア ヤクタ エスト)、決闘を承認する。」

 

 

マルタン・リリッケ「「はぁ.....」」

 

レネ「リリッケ・カドカ・リパティ」

 

リリッケ「はい?」

 

レネ「あなたも決闘に出てね」

 

レネはリリッケと鼻と鼻がくっつくほどの距離まで近づく 

 

レネ「どっちが上か、分からせてあげるから」  

 

それだけ言うとシャディクらと共にラウンジを後にする。

 

リリッケ「は...はぁ」

 

マルタン「リリッケ、君なにしたの?」

 

リリッケ「...さぁ?」

 

 

オジェロ「まさか...俺らが賭けの対象になるとはな」

 

ヌーノ「集団戦じゃ無敗のグラスレー寮...俺でも全額向こうにベットするね」

 

チュチュ「チッ...」

 

スレッタ「どうするんですか?MS足りないですよ」

 

アムロ「....あと3つか。なにか策はあるのか?」

 

ミオリネ「ベルメリアさんに掛け合ってみるわ。ファラクトなりなんなり貸してもらう」

 

アリヤ「パイロットはどうするんだ?うちにはアムロとスレッタとチュチュしかいないぞ」

 

 

全員「「・・・・・」」シーン...

 

 

ヌーノ「....マルタン乗れよ、寮長だろ」

 

全員の視線がマルタンに向く

 

マルタン「や、やだよ!ガンダムに乗ったら死ぬんだろっ!?」

 

スレッタ「し...死にません!」

 

リリッケ「私は出ろって言われたので出ま〜す!」

 

マルタン「っ君は、いつも躊躇がないな!」

リリッケ「えへへ、ありがとうございます!」

 

ミオリネ「はぁ....」

 

アムロ「俺は別に6対4でも十分行けると思うけどな」

 

オジェロ「いや無理だろ」

 

ヌーノ「集団戦最強の相手だぜ?お前がいくら強かろうとさぁ...」

 

アリヤ「大体、1対多数でどう立ち回るつもりなんだい?」

 

アムロ「....後ろにも目をつければいい。大抵はそれでどうにかなるモンさ」

 

マルタン「無茶苦茶だよ...」

 

リリッケ「あはは...アムロ先輩には出来ても私たちには無理ですよぉ....」

 

ミオリネ「相手はシャディクよ。どんな手を使ってくるか分からないわ」

 

ミオリネ「いったん解散しましょ。私は戦略を練る」

 

ミオリネ「皆は助っ人引き受けてくれそうなヤツがいたら声かけといて。」

 

全員『は〜い』

 

チュチュ「...んなときにニカねえはどこ行ったんだよ」

 

 

 

 

シャディク「.......」

 

ニカ「......ひどいですよ。皆で会社頑張ろうってなってたところなのに...」

 

シャディク「俺だって決闘は望んじゃいないよ」

 

ニカ「ならどうして!」

シャディク「連絡係の君には関係ない」

 

ニカ「....っ」

 

シャディク「....悪い。俺ももう少し粘ってみるよ」

 

シャディクに肩を叩かれたニカの表情は暗く哀しいものだった。

 

________________________________________

 

 

その日の夜

 

 

スレッタ「助っ人...助っ人...助っ人...助っ人...」

 

本校舎から地球寮に帰るまでの通り道をスレッタは歩いていた。

 

ミオリネの言いつけどおり、助っ人となってくれそうな人物を考える

 

スレッタ「助っ人....あっ、エランさんは!.....まだ来てないよね...」

 

スレッタ「でも...あと誰がいたかなぁ...」

 

下を向いて歩いていると、自分よりも随分と大きなシューズがスレッタの視線に入ってくる。

 

スレッタ「......え?」

 

グエル「....前を向いて歩け、田舎者」

 

スレッタの目前にはドンと佇むグエルの姿があった

 

スレッタ「わああっ!?」

 

驚いた拍子に街灯の陰へと身を隠すスレッタ

 

グエル「.....ハァ」

 

スレッタ「ご...ごめんなさい。その、考え事してて...」

 

グエル「フン、シャディクとの決闘か?」

 

スレッタ「あ...なんで...?」

 

グエル「この学園はウワサ話が好きだからな」

 

スレッタ「はあ...」

 

この半日の間にどうやらグラスレー寮との決闘の話は学園中が知ることとなってしまったらしい。

 

スレッタ(そうだ....グエルさんなら...!)

 

スレッタ「....あっ、あの!」

 

グエル「...なんだ」

 

スレッタ「よかったら...その、決闘...手伝ってくれませんか?」

 

グエル「.....」

 

スレッタ「私たち、その...決闘のパイロット足りなくて」

 

スレッタ「だから...助っ人、探してて...ですね」

 

スレッタはグエルの顔色を伺いながら助っ人を頼みこむが、そんな彼女に背を向けてしまう。

 

グエル「....ダメだ。決闘は父親に止められている」

 

スレッタからはグエルの表情は見えない。だが、ポケットに突っ込んだその拳がわなないているのは分かった。

 

スレッタ「お父さんは大事...ですよね」

 

スレッタ「分かります。お父さんが好き....なんですよね」

 

スレッタ「私もお母さんが好きですから。」

 

グエル「......っ」

 

うつむくグエルにスレッタは笑顔を返す

 

スレッタ「決闘は私たちでなんとか頑張ります。お騒がせしました」

 

一礼するとスレッタは地球寮にむかって走っていった。

 

グエル「........俺は...」

 

 

*  *  *

 

 

シャディク「___今ならまだ決闘を取り下げられる」

 

シャディクはミオリネの温室を訪ねていた。

 

シャディク「君にとってガンダムはそこまで重要じゃないはずだ」

 

ミオリネ「....気に食わないのよ、あんたの言いぐさが」

 

収穫したトマトを眺めつつ、温室の外に居座るシャディクに自らの心情を吐露する。

 

ミオリネ「会社を譲る...社長は私...さもいいことみたいに語って笑う...」

 

ミオリネ「私を会社のシンボルにしておきたいんでしょ?」

 

ミオリネ「そのほうがグループ内の邪魔が入らないから」

 

赤く、丸々としたトマトを、その透き通るような白い指でコロンと転がす

 

ミオリネ「あんたもクソ親父たちと同じ....私を飾りとしか見てないのよ。」

 

転がった拍子に机から落ちるトマトをミオリネは優しく両手で包み込んで撫でる。

 

言動は彼を否定するものであったが、その行動からはどこか哀愁さを感じさせていた。

 

シャディク「____違うよ!」

 

シャディクはミオリネの言葉を訂正するように温室の入り口に立つ

 

その姿や行動からはいつもの冷静さは感じられず、まるで大切なものを否定された一青少年のような振る舞いであった。

 

ミオリネ「入るな!」

 

...しかし、入り口に立った彼をミオリネは否定した。

 

シャディク「え.....」

 

ミオリネ「あんたは...信用できない」

 

その一言でシャディクの中の何かが崩れてしまった気がした

 

シャディクは呆然と立ち尽くすしかなかった。

目を潤ませ、放心的になり、ただ一人作業を続けるミオリネの.... 思いきり抱きしめれば壊れてしまいそうな ....その小さな背中を遠くから眺めることしかできなかった。

 

 

シャディク「.........」

 

今自分はものすごく嫌な顔をしているだろう...そんなことを考えながら、らしくもなく俯いてグラスレー寮への帰路につく

 

その姿は『恋心を抱いた娘からふられてしまった男』そのものである。

 

アムロ「.....ミオリネに会ったのか?」

 

(嫌な声だ。....いまこの声だけは聞きたくなかった) 

 

そんな思いで顔を上げる

 

シャディク「アムロ...レイ」

 

アムロ「ひどい顔をしている....なにかあったな?」

 

シャディク「花嫁の暴走を止めてやれ」

 

アムロ「暴走だと?」

 

シャディク「今、ミオリネを守れるのは花婿の君だけだ...」

 

視線を合わせることなくアムロの横を通り過ぎる。

 

アムロ「俺は...ミオリネを信じる。それだけだ」

 

その一言に(苛立ちのようなもの)を感じたか...

シャディクは立ち止まると、振り向いてアムロを睨む

 

シャディク「ほんと、自己過信だよ君は。...哀れだね」

 

アムロ「その言葉は今のお前に一番当てはまるんじゃないのか?シャディク」

 

アムロを見下すようにその目前へと立ったシャディク

 

シャディク「この決闘...俺も躊躇はしない」

 

ギロッ!

 

シャディク「アムロ・レイ....君からガンダムと花嫁を奪い取る。」

 

 




後ろにも目をつけろ!ってスレッタとチュチュに指導してるアムロが見たい
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