水星の魔女と地球の悪魔   作:yomiyomi

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第10話「近付く想い、離れる心 ~その2~」

 

 

スレッタ『もしもし、アムロさん。いま大丈夫ですか?』

 

アムロ「ああ、大丈夫だよ」

 

アムロは現在、ミオリネやティルと共に『プラント・クエタ』という所へ来ている

 

MSの修理、生産。物流の拠点など、様々な施設が集積している場所なのだ。

 

スレッタ『ゼムリアの改修、どうだったんですか?』

 

アムロ「おおかた注文通りにしてもらった。機能テストはまだだが、計算上は理想スペックになっているはずだ」

 

アムロ「エアリアルの方も改修はほぼ完了しているよ」

 

スレッタ『本当てすか!?よかったぁ....』

 

内心スレッタもエアリアルのことを大変気にかけていたようで、元通りになりつつあることを知って安堵しているようだ。

 

アムロ「そっちは?なにも変わりないかい?」

 

スレッタ『はい!いまGUNDを使った義足の運用試験をしているところなんですよ!』

 

アムロ「すまないな、僕も参加すべきなのに....」

 

株式会社ガンダムによる医療プロジェクトに参加出来ていないことをスレッタへ詫びる

 

スレッタ『そんな、アムロさんだって予定があっての事じゃないですか。』

 

アムロ「それでもだよ。もともとは一週間で戻る予定だったところを、親父が『パイロットの操縦データが取りたい』なんて言ってこなけりゃ....」

 

改修ドックの中で作業員に指示を出すテムの姿を見て、ため息が漏れる

 

アムロ「結局ここでもう一週間つぶす羽目になっちまったよ」

 

スレッタ『でもお父さんと仲がいいんですね』

 

アムロ「......どうだかね」

 

不意に声のトーンが落ちたのを感じたスレッタは慌てて話題を変える。

 

スレッタ『そ...そういえば!ミオリネさんに渡したい物があって』

 

アムロ「渡したいもの?」

 

スレッタ『はい!お揃いのキーホルダー...なんですけど』

 

アムロ「やりたいことリストかい?」

 

スレッタ『えへへ...そうです!』

 

液晶の画面の先で照れくさそうに笑うスレッタの表情が、端末を挟んだアムロ側にも容易に想像できる

 

スレッタ『でも、ミオリネさんが貰ってくれるのか少し不安で.....』

 

アムロ「大丈夫さ。ミオリネだって年頃の女の子なんだから、親友にプレゼントされて嬉しくない訳はないよ」

 

電話口、アムロの優しい声がスレッタの耳を擽った。

 

スレッタ『.....そう、ですかね。えへへ....』

 

ミオリネ「....アムロ、終わったからドックに行くわよ」

 

アムロの背後から用事を済ませたミオリネが声をかける

 

 

スレッタ『で、では私はこれで!』

 

その声を聞いたスレッタはそそくさとアムロとの通信を切ってしまった。

 

ミオリネ「またスレッタ?あんたらこの期間中に何回電話してんのよ」

 

ミオリネは少々悋気(りんき)を含んだ目線でアムロを睨む

 

アムロ「なんだよ、『会社の近況報告と温室の様子を聞け』ってスレッタ達との通信を僕に押し付けたのはミオリネだろ」

 

ミオリネ「明らかに関係ないことまで話してるように聞こえたんだけど?」

 

アムロ「そりゃあ...多少のよもやま話くらいはするさ」

 

ミオリネ「私が聞けって言ったことだけ聞きなさいよ。遊びに来てる訳じゃないんだから」

 

ミオリネ「少しは緊張感持ちなさいよね...」

 

アムロ「そういう割には、君の表情も和らいで見えぞ?」

 

ミオリネのデリングに対する業務連絡の前と後で、その表情の強張りがとれていることを指摘する。

 

アムロ「その様子だと、うまく事が運んだんだな」

 

ミオリネ「.......まぁ、ね」

 

ミオリネはふわりと微笑む

 

 

アムロ「親父さんは君が思ってる以上に優しい人なのかもしれないぞ」

 

ミオリネ「あれは.....あくまて上司としてよ。他意なんてあるはず無いわ」

 

緩んだ表情を一瞬で引き締めたミオリネは、アムロと共にティルの待つドックへと急いだ。

 

 

*  *  *

 

 

時を同じくして、地球

 

日本、某所にて________

 

 

静まりかえった廃校舎。割れた窓と壁の所々に空いた穴から、蝉たちの声と共に心地よい風が流れ込む

 

「.........」

 

その中を一人の少女が歩く

 

歩く度に『パリン....』と靴の裏で飛び散ったガラス片が音を立てる。

 

『〜♪』

 

そんなとき、彼女にとっては聞き覚えのない音楽にその足を止めた

 

♪ガ〜ンダム ♪希望の光〜

 

それは一つの教室(だった場所)から聞こえてくるようだ

 

 

「......ソフィ」

 

ソフィ「......ん?」

 

自分を呼ぶ声に気付いた茶髪の少女は体育マットと学生机を組み合わせて作ったベッドから飛び起きた。

 

ソフィ「ノレア、ねぇ見てよコイツ!」

 

ソフィは己が見ていたその映像をノレアに見せる

 

ノレア「アスティカシア.....モビルスーツ?」

 

ソフィ「ガンダムだよ...そいつ」

 

『飛べる!踊れる!エアリアル〜♪』

 

ノレア「....これが魔女...」

 

ソフィ「株式会社ガンダムだって、ナメてるよね〜」

 

ソフィはPV中のスレッタの不格好なダンスを真似る。

 

ソフィ「飛べる〜踊れる〜エアリアル〜...って」

 

そんなソフィを横目にノレアは自らの目的を告げる

 

ノレア「ねぇ、ナジ知らない?」

 

ソフィ「ナジ?畑じゃないの?」

 

この廃校舎の校庭やらグラウンドやらは畑になっている。

 

ノレアはソフィの部屋にぽっかりと空いた穴からグラウンドの方を見ると、筋肉隆々とした男が一人いるのを確認した。

 

目的の人物を発見したノレアはグラウンドまで足を運ぶと、その男に向かって声を上げる

 

ノレア「ナジ!アスティカシア学園から、『プリンス』が直接話したいと」

 

男、ナジ・ゲオル・ヒジャはその声に作業の手を止めて振り返る。

 

ナジ「........直接?」

 

 

もともと校長室だったであろう部屋に腰をかけると、通信機を起動させた

 

ナジ「...連絡役を通さないとは、慎重なあんたらしくないな」

 

画面の先に映った相手は、シャディク

 

シャディク『それだけ重要な案件だと思ってください。』

 

ナジ「......で、要件は?」

 

画面上のシャディクは瞬きを一つして要件を告げる。

 

シャディク『デリング・レンブランを襲撃してもらいたい』

 

ナジ「お前さんのところのトップを殺せってのか」

 

シャディク『5日後、デリングはプラント・クエタに入る予定です』

 

ナジ「宇宙(そら)に上がってベネリット有数の開発拠点を襲え....とは」

 

ナジはチェアの背にもたれたながら話を切り出す。チェアも幾分年季がはいっており、可動部のいたる所から金切り声が聞こえる

 

ナジ「アーシアンにはきつすぎないかい?」

 

その応えにシャディクは薄ら笑って言う。

 

シャディク『拠点防衛の巡回艦隊はジェターク社の管轄です。手薄にするよう話しはついています。』

 

一瞬の沈黙が両者の間を流れた後、ナジがその口を開く

 

ナジ「.....そっちで用意してもらいたいものがある。航行ルートと、その足だ」

 

ナジ「そいつを確認してから追って連絡しよう。」

 

ナジはそのゴツゴツとした手のひらで通信機を閉じて、シャディクとの会話を終わらせる。

 

ノレア「.....やるんだね?ナジ」

 

ナジ「ソフィを呼べ、二人とも『訓練』を行っておくんだ」

 

ノレア「うん。」

 

......ガヤガヤ

 

その時、二人はなにやら外が賑やかになってることに気付く

 

ノレア「外から.....なにかあったの?」

 

ナジ「.........やつらが戻って来たようだな」

 

校門に屯う人だかりの真ん中には、一人の男がいた。

 

 

男性「....なぁ、あれ本当たったのかよ?」

 

男性「動画を見た感じ、デマじゃないっぽいぞ。空港にMSが運び込まれてるって聞いたし....」

 

男性「マジかよ?後で見に行こうぜ!」

 

 

少年「少佐!動画見たよっ!」

 

?「本当かい?よく映っていたかな?」

 

少年「うん!スペーシアンのモビルスーツをたくさん倒すところ、皆で見たんだ!」

 

少年たちが男の手を握る

 

女性「あの....あの後街の人達はどうなったんですか?」

 

?「あの街にはジオンの隊員を少数残しているのです。鎮圧隊は殲滅しましたが、まだ隠れている可能性もあるのでね」

 

ナジ「...よぉ、お早いお帰りで」

 

?「ナジ。空港の格納庫を勝手に使わせてもらうぞ」 

 

ナジ「構わんよ。それで、何機分捕って来たんだ?」

 

男の横をピッタリとくっついて歩いていた少女、ルナ・シェーラが答える。

 

ルナ「ディランザ・ソルを含む、計16機の鹵獲に成功しました。」

 

ナジ「16か....」

 

?「少なすぎたか?」

 

ナジ「いや、十分すぎる」

 

ソフィ「ねぇノレア!」

 

ノレア「...ソフィ」

 

ソフィは北米の戦闘の様子をノレアに見せる

 

ソフィ「やっぱり少佐はすごいよ!こんな戦闘見たことないもん!」

 

ノレア「でもアイツはスペーシアンなんだよ?それなのに皆アイツに近付いて.....」

 

ソフィ「スペーシアンが嫌いなスペーシアンが好き勝手にやってくれるんだから、これ以上いいことってなくない?」

 

ソフィ「それに少佐のおかげで私達、もっと()()()()()んだもん」

 

ノレア「......そう、だよね」

 

 

?「.....今から北米の件でベネリット・グループに声明を出す。部屋を一室貸してもらっても構わんかな?」

 

ナジ「その前に、だ.....もうヨーロッパには帰っちまうのか?」

 

?「いや、しばらくは日本に留まるつもりだ。ここでヴィクトルたちを待って、日本国首相と会談を開きたい」

 

ナジは男に耳打ちする

 

ナジ「....では一つ、俺達に協力しちゃくれないか?」

 

?「....協力か。内容は?」

 

ナジ「今から5日後、デリングがプラント・クエタに来る。そこを叩きたい」

 

?「デリング・レンブランをか?また随分と急なのだな」

 

ナジ「プリンスからの依頼さ」

 

?「プリンス?......そうか、彼が」

 

 

男は少々考えた後、首を縦にふった

 

?「分かった、私も行こう。デリングが来るのなら護衛の艦隊やMSも出るだろうからな」

 

ナジ「そうか...これで百人力だ。少佐殿」

 

?「はは、買いかぶり過ぎだよナジ」

 

男はナジの肩を優しく叩くと、ふたたび車に向かう。

 

 

ルナ「....デリングの暗殺...力添えするのですね」

 

?「追々デリングは殺す予定ではあったのだ。計画が早まっただけと考えればいい」

 

部下が車の扉を開けて待っている。

 

?「プラント・クエタには私とお前の二人で随伴するが....来てくれるか?」

 

ルナは目を輝かせて大きく頷く

 

ルナ「もちろん、私が少佐をお守りいたします...!」

 

ルナの頬を優しく撫でる

 

?「宇宙(そら)は寒い....君がいてくれれば私は凍えることはないよ」

 

サングラスを外してルナの頬にキスをした。

 

?「私はゲラノスの調整に向かう、ルナは()()()()()()に付き合ってやってくれ」

 

ルナ「了解いたしました。少佐」

 

男は後部座席に乗ったあと、その車は空港へと向かうのであった。

 

 

 

 




地球と宇宙、2組のカップル(?)の様子を書いてみました。
ようやくノレアとソフィを登場させることが出来て、嬉しいです。
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