ダンジョンに黒い沈黙を向かわせたのは間違いではないはず   作:ピグリツィア

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図書館の!戦力増強!司書魔改造大作戦!

 俺の名前はローラン、しがない外郭にある図書館の司書だ。

 

「いやあ、最初はどうなるかと思ってたけど案外なんとかなるもんだな」

「そうだな、ここのメンバーは大半が外郭で長期間活動したことがあるからな。多少の問題は各々でどうにか出来る」

「ビナーもそうか、って事は一番外郭での活動経験が浅いのは俺か?」

「だらだら歩いてないで早く行くわよ。ここ最近指定司書を全員集めるなんて無かったんだから、緊急事態かも知れないでしょ」

 

 今はゲブラーと駄弁っていたらティファレトに呼び出されたから、ここの館長で俺の友達のアンジェラの元に向かっているところだ。

 

「とは言っても急げ~とかそんなニュアンスじゃなかったんだろ?ちょっとゆっくり行っても問題ないって」

「真剣な表情をしていたから気になってるのよ。緊急ではないけど重要ではあるって感じかしら」

 

 そうか、それなら真面目に行くか。

 

「皆集まったわね。今回呼んだのは余裕が出来たから少し重要な事をやってもらうためよ」

 

 本当に真剣な顔だな。そこまでの用事なのか。

 

「皆は、いえ、ローラン以外の皆は外郭がどの様なものかわかっているでしょう。私も情報だけとは言えよく知っているわ」

「そうだね、研究所があったのも外郭だったから。あの頃のことはよく覚えているよ」

「良いことも悪いことも、ですね」

 

 みんなの表情は硬い。いやビナーはそうでもないな。まぁ潰した側だから文字通り我関せずと言ったところなんだろう。

 

「ええ、分かっているわ。単刀直入に言うと、みんなの戦力増強を図ろうと思っているわ。具体的には私の補助なしで爪を一人一体は相手できる程度にまでよ」

 

 みんな難しい顔になったな。そう言えば少しだけ聞いたことがあるな。L社の前身となった組織時代のことか?

 

「次にいつ頭から刺客が送られてきても良い様にね。武力を一人に頼るのは良く無いって事は皆、身をもって知っているでしょう?」

 

 確か研究所は赤い霧が不在の時を狙って事を起こされたんだったな。

 

「私も図書館から離れる気は無いが、まああの頃だって必要だったから離れていたわけで、いつ離れることになるかわからない以上必要かもな」

 

 軽く聞いた程度ではあるがあの状況じゃどんな組織も詰んでいると思うんだが。それはそれとして戦力増強は悪くはないと思う。

 

「ねえ、ローランは爪を倒せるの?」

「万全の状態で一対一ならいけるかもな。あの時は流石にボロボロだったしな…」

 

 ティファレトの質問で図書館が外郭に放逐される直前の、調律者と爪との戦いを思い出すが…あれが全力だったなら何とかなるかもしれないな。

 

「図書館の大きな戦力としては私を含めて4人。ローランとゲブラーとビナーね、全員がいないなんて事は流石に無いはずだけど、逆に何らかの理由で単独行動することになった時のために力をつけておく事は無駄にはならないはずよ」

「そうですね、自分の身を守れなければ味方の足を引っ張ることになりますから」

「あー、ホド?大丈夫?」

「…ちょっとキツいかも」

 

 ホドが随分としんどそうにしているが…ガッツリトラウマを抉られている最中だから無理もないか。

 

「でも聞かなきゃ、前は私のせいだったけど…今回はそんなことも関係なしに来るかもしれないから」

「そうね、どれだけ辛くとも聞いてもらわなければ困るわ」

 

 確かに、それはそれ、これはこれだ。しかし一人の元フィクサーとして思うことが無いわけではない。

 

「ローラン、どうしてそんな微妙な顔をしているのかしら?」

「そりゃ友達がアホなこと言い始めたらこんな顔にもなるさ」

 

 アンジェラは世間知らずだ。そして図書館内に限るとはいえすごく強い。伊達に自分のEGOを持っているわけではないのだ。

 

「アホなことってなんの事かしら」

「あのな?爪ってむちゃくちゃ強いんだ。それは知ってるだろ?それを一対一で倒せるようにって…ちょっと無茶振りが過ぎるぞ」

「ゲブラー、いえこの場合はカーリーね。カーリーは爪二体と幻想体を複数体同時に相手取って満身創痍とはいえ勝ってるわよ?その後に調律者と相打ちになっているし」

 

 比較対象が絶望的に悪すぎる…知り合いとはいえなんでそれを出しちゃうんだ。

 

「なんでそこで特色随一の武闘派を出しちゃうかな…流石にそれは規格外過ぎるって」

「まあ今のは半分冗談だとしても、ローランだって爪複数体なら倒せるでしょう?」

 

 冗談で出していい名前じゃ無さすぎる…伝説のフィクサーだぞ。ついでに言えば全然冗談に聞こえない。

 

「無理とは言わないけど一応俺もそこそこ強い方だからな?もうちょっとハードル下げろって。そう思うよなゲブラー?」

「そうだな…複数人でしばらく足止めできる程度でもフィクサーとしては上澄だと思うぞ」

 

 ゲブラーの後押しがあってもアンジェラは納得できないようだ 。

 

「アンジェラ、言いたいことはわかる。しかしあの時逃げ延びた身で言っても説得力は無いだろうが、今は焦るべき場面でも無いし、我々よりこの手の事について詳しい者がいるのならばそれに従うべきだろう。ゲブラーもこう言っているしな」

「…わかったわ、取り敢えずローラン、ゲブラー、ビナー以外の皆の目標は考え直すわ」

 

 ホクマーの後押しで渋々と言った感じではあるが引き下がってくれた。

 

 …待て、すごく嫌な予感がする。

 

「あの~、その言い方だと俺たちは別で何かあるみたいなんだけど…」

「あなたたち三人はすごく強いでしょう?だから私の考えた最強の敵を倒せるくらいの強さを手に入れてもらうわ」

 

 なんだなんだ、アンジェラの考えた最強の敵って。

 

「え~っと、どんな奴か聞いても?」

「ローランも赤い霧の最後の戦いは知っているでしょう?」

 

 ああ、これはクソみたいな戦いを強いられそうだ。赤い霧は前置きで出てきていい名前じゃないんだって。

 

「そんな顔しないで、その時の赤い霧を少し強化するだけよ」

「嘘だろ!?あれを更に強化って何するつもりだよ!」

「ロボトミーにいた時にゲブラーが使ったEGOを装備させるだけよ」

 

 

「ダメダメダメ!流石にローランの心が折れちゃいますって!」

「館長は司書に自殺行為を強要しないという規則を追加した方がよいのでは?」

「ごめんなさいローラン、私からはなにも言えない…」

「あのゲブラーの装備を?肉体や技術が万全なカーリーに?ご冥福をお祈りしますローラン。お墓にはあなたの好きなお酒を供えてあげますからね」

「コーヒーも供えてあげましょう。どうか安らかに眠れる様に祈りましょう」

「ゲブラーの時点でも施設が崩壊しかけていたじゃない。正気?」

「ローランに恨みでもあるのかねアンジェラ。流石にそのような手段で恨みを晴らすのは感心しないぞ」

 

 

 みんな俺が負ける前提で好き勝手言ってくる。とりあえずこいつらは置いといてわからないことを聞いておくか。

 

「L社時代の装備ってどんな物をどうやって使ってたんだ?少なくともまともな使い方じゃなさそうだけどな」

「黄金狂や天国は便利だったな。あの時は黄昏も使っていたし、ミミックとダ・カーポも使い勝手が良かったぞ」

「はっはっはっ、いいねすごく強そうだ…アンジェラ、遺書を書くための紙をくれ」

 

 そんな化け物に勝てるわけがない、ただの処刑装置だ。俺そんなにアンジェラを怒らせる様なことした?

 

「最初から死ぬ気でどうするのよ。もっと特色らしく最後まで抵抗する気概を見せなさい」

「まだ終末鳥を一人で倒しに行った方が勝算あるぞ…アンジェラのそれは人間一人で何とかできる様な物じゃないんだ」

「分かっているわよそれくらい。だから三人で協力して倒せば良いじゃない。もともとそれが目的だし」

 

 どうやら俺の早とちりだった様だ…いや流石にそれでも無理じゃないか?ゲブラーもビナーも全盛期には程遠いんだろ?

 

「どう思います?ゲブラーさん」

「勝率はゼロって訳じゃないが…ビナーが手を抜かなければ現実的な勝算が見えてくるって感じだな。つまりほぼ無理だ」

「ビナー様!この哀れな仔羊を救ってください!」

「宗教の階の担当はホクマーだぞ。其れに貴様は只喰われるのを待つばかりの仔羊では無く、敵を突き殺さんとする大角を持った山羊だろう」

「山羊が空を駆る龍に勝てる訳ないだろ。蟻から見たら獅子も象も人も同じ様な物なんだよ」

 

 角が生えたところで届かない場所から焼かれて喰われるだけだ。羊だろうが山羊だろうが関係ない。

 

「盛り上がっているところ悪いけれど今から準備するから手伝ってちょうだい」

 

 無情にも処刑者から声をかけられてしまう。どうやら腹を括るしかない様だ。

 

「ゲブラーもビナーも何とか言ってくれよ…無意味に死にたくはないだろ?」

「自分とは言えここまでの相手と戦う機会なんてないしな。一回死んだところで蘇生されるだろうから私は試してみようと思っているぞ」

「傷ついた山羊達が空を駆る龍を撃ち墜とすのも一興だとは思わないか?」

 

 なんてこった、退路を塞がれてしまった。二人とも狂戦士か?何でこんなにノリノリなんだ。

 

「くそっ!こうなったら当たって砕けた後にアンジェラの前でミートシチューを食ってやる!それはそれは旨そうにな!」

「随分な仕返しね、人の心が無いのかしら?」

「アンジェラ、君が言えた事じゃ無いと思うよ」

 

「まあ一応だな?戦う理由は解る。何が相手に来るかわからないから最悪を想定した時に俺たちが協力して倒せる様にって理由だろ?」

 

 だから嫌々でも戦うのは吝かではなかったりする。それはそれとしてミートシチューの刑は執行するが。

 

「そうね、正直貴方達三人掛で倒せない様な存在がいるのかは怪しいと思っているけど、念のためにね」

「せめて準備は他の奴らにやらせてくれ…何が悲しくて自分で自分の絞首刑用の縄を編む様なことをしなくちゃいけないんだ…」

 

 これでは自ら死にたい奴の様では無いか。流石にまだそこまで人生に絶望していないぞ。

 

「皆他の作業で手いっぱいなのよ。当時の幻想体の本を用意したり、出来るだけ完璧な状態のシミュレーション用に必要な本を集めたりって」

「分かってるけど文句も言いたくなるんだって」

「それよりも私は集中しているから素直に作業していてちょうだい。ゲブラーとビナーから戦いの記憶をトレースしているんだから」

 

 直接対象を本にせずに副書を作るのはアンジェラでも骨の折れる作業らしい。大人しく準備するか。

 

 3時間後

 

「出来たわ、シミュレーション用の偽書よ」

「偽書って何だ?」

「前に赤い霧と戦った時は赤い霧の本が欲しかったから彼女を呼ぶために赤い霧の欲しがる本が必要だったの。今回は完全にシミュレーション用、つまり本を得られない代わりにこちら側から本を用意する必要がない形にしたの。形式としては幻想体戦が近いかしら」

「随分と便利になったもんだな。それが偽書って奴か」

「ええ、これを使えば直ぐに戦闘が始まるはずよ。かなり制限が厳しいから他の偽書を作れる可能性はかなり低いと思うけれどね」

 

 つまりそろそろ死ぬ時間がやってきたという訳だな。やだなぁ。

 

「じゃあ準備してもらえる?」

 

「ゲブラー、ビナー。準備できたか?」

「私は問題ない」

「問題ないな」

 

 あの時以来ではあるがこの二人がいるとマジで負ける気がしないな。流石に今回の相手はヤバいが…

 

「じゃあ使うわよ」

 

 アンジェラの持っている偽書が光り輝き…

 

「…消えたな」

「警戒しておけ、どこから来るかわからないからな」

「…宙に指で描いた絵を見ようとしている様だな」

 

 アンジェラの方を横目で見ると…アンジェラさん?

 

「…失敗?いえ、何か違う…確かに本はどこかにあるはず…」

「アンジェラ!今どんな状況だ!?」

「多分失敗した…いえ、少なくとも近くには居ないから警戒を解いて良いわ」

 

 失敗かよ!緊張して損したなぁ。とは言え随分と歯切れが悪いから何かしらの問題は起きてそうだ。

 

「で、何がどうしてどうなったんだ?」

「多分召喚自体は成功しているはずよ、感覚でわかるから。問題は場所だけど…」

「何処か判らないって所か、気になっていたんだがな」

「ええ、多分この世界じゃ無いところに行ってしまった様ね。そんな感覚としか言えないわ」

 

 とりあえず死ななくて済んだのは良いが新たな問題が出てきてしまったな…

 

「おそらく存在しない物…矛盾する存在を召喚しようとしたのが問題だったのかも、しばらく調べてみるから今日の所は解散にしましょう」

 

 なんともまぁ残念な結果というかなんと言うか…厄介ごとの気配しかしないなぁ。




あの赤い霧さんはこんな経緯であっちへ行った訳ですね。なんであの世界かはふわっとしてるけどなんで別世界へ行ったかはなんとなく設定があります!その情報が出るかは別問題ですけどね!

あと行間とかも試験的にいじるぞ!どうこうしたら読みやすいかも〜とかも受け付けてるぞ!ウェルカム!
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