ダンジョンに黒い沈黙を向かわせたのは間違いではないはず   作:ピグリツィア

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ろーらんくん、はじめてのだんじょんたんさく

 モンスターの情報や習性を確認しつつ、とりあえずベルの最高到達深度である7階層に到着したけど...もうちょっと深くても余裕はありそうだな。ステイタスで強引に進んでるわけでもないだろうしここに来るまでに敵の攻撃を受ける事もないだろう。

「まあ技術はステイタスじゃ確認出来ないだろうし、エイナって子の心配も無理はないのかなぁ?」

 ベルはついこの間まで戦ったことすら無いような少年だ。それがこの短期間で単独行動に十分な技術を手に入れられるとは考えにくいだろう。

 

 さて、そろそろやってみるか。魔石はここに来るまでに十分貯まっている。手をかざして力を吸い取るイメージ...何処かと繋がる筒が広がる感覚を感じ取れる。

「...あら、また来たわね。今回は十分な力を集められたみたいよ」

「それは興味深いな。恩恵と呼ばれる物の力か、若しくは他の特異点でも見つけたか」

 ああ、慣れ親しんだ友達と紅茶好きの同僚の声だ。

「アンジェラ?聞こえてるのか?」

「ええ、しっかりとね。タイミング的に恩恵の効果かしら」

「その捉え方で問題ない。詳細は後で紙に書き起こして送るよ」

 自分のステイタスと一緒に発動条件とかも記しておこう。

「わかったわ、それで赤い霧は?」

「調査中だよ、とは言えまだこの世界の事を調べるので手一杯だけどな」

「そう…もし余裕があったら私が人間になれる方法もないか探しておいて貰える?」

「あ〜、ありそうっちゃありそうだけど…実際にできるかは微妙そうだなぁ」

 ヘスティア曰く、神々がこの世界に降りる時にはその力を封印して下界の人々と同じ程度の能力しか持たない只人として生きていくことを強いられるらしい。例外は幾つかあるらしいが...

 もしかしたらその封印された神々の力を利用すればアンジェラが人になる可能性も無くは無いが…

「そこまで期待している訳でも無いから気に負わなくてもいいわよ。幸い、私は時間が有り余るほどあるし」

「でも出来れば一緒に食事とかもしたいしな、それも探しておくよ」

「無理はしないでちょうだい…どうしたのかしらネツァク」

「ローランと連絡がついたと聞いたので…聞こえてます?」

 緑髪の飲んだくれの声が聞こえて来た。これってアンジェラとビナー限定じゃ無いのな。

「ああ、聞こえてるぞ」

「これってローランの方からこっちに物を送ることって出来そうですかね」

「…多分出来なくは無いと思うけれど」

 あ〜あ、もうなんとなく予想がついたぞ。

「じゃあローラン!異世界の酒を送ってくれ!高級な奴!」

「あ、じゃあ私も異世界のタバコ吸ってみたいな。頼んだぞローラン」

「俺は珈琲が欲しいな〜」

「幾つか良さそうな茶葉を見繕っておくれ」

 あいつら好き勝手言いやがって…仕方ない、後で調べておくか。

「私は適当なお菓子でいいわ」

「えっと、じゃあ私は…おいしいご飯で!」

「本をお願いします、そっちの世界が知れそうな本です」

「ああもう!後でみんなが欲しい物を紙でまとめて送ってくれ!」

 そんな同時に言われても対応しきれないぞ。金もないしな!

 

「でだ、アンジェラ。そっちと連絡が取れるようになったのは能力の副産物で、本来は図書館の力を使えるやつらしいんだけどどうすれば良いかわかるか?」

「そうね、もっとエネルギーがあれば幻想体のEGOを使うことも不可能ではないはずよ」

 おお、EGOを使えるようになるのは大きいけど…

「どんくらい必要そう?」

「低ランクでも今の五倍ほどかしら」

 結構骨の折れる作業になりそうだなぁ…下層に行けば魔石の質も上がるはずだから効率は良くなるとは言っても、弱い奴で五倍かぁ。

「ミミックは?」

「今の状態だと数百倍ね、でももっと効率化できそうだから将来的にはもっと少ないリソースで強力な装備を使えるはずよ」

 魔石が主な収入源で、図書館の力を使うのにも魔石が必要か…このスキルは金食い虫だな。

「ミミックを出すよりも下層の指定司書を呼ぶ方がコストは少ないわね」

「そんな事出来んの!?」

「ええ、ビナーだけは諸事情でコストがかなり大きいけど…そっちのリソースが十分あれば理論上は指定司書全員呼び出せるわ」

 ちょっと待て、コストが大きいのはビナーだけ?って事は…

「天下のゲブラー様は?」

「ティファレトやケセドと変わらないわね、上層に行くほどコストは重くなるわ」

 勝った!これでいざって時の戦力は十分だな!

「私を頼らないのは腹立たしいけどゲブラーと比べられたらぐうの音も出せないわね」

「ははは、そうだね…俺だって荒事だったら俺かゲブラーのどっちを助太刀に呼ぶかって言われたら迷わずゲブラーを選ぶよ」

「流石に仕方ないですよ、私たちの本業は研究者でしたから」

 本業で特色フィクサーやってたやつとただの天才研究者じゃ戦闘力には天と地程の差があるからな。まあこれがそこらの一級フィクサーだったら指定司書を選んでたけど...

「そういえば、神聖文字の解読は?」

「粗方出来ているわ、でもまだ見たことのない文字もあるはずだから辞書のようなものがあると良いわね」

 こいつら天才か?天才だったわ…まだベルのステイタスを送って一週間も経ってないぞ?

 

 とりあえず必要な事は把握できたかな。物資に関してはできる限りこっちでやりくりしよう。

「この状態なら視覚や聴覚も共有できるから上手く使ってちょうだい」

「随分と便利だなこのスキル、上手く使ってみせるよ」

「頑張ってね」

 図書館との繋がりを意識して弱める。自分から流れ出す力も少なくなったからこれで大丈夫だと思う...多分。

「後で魔力のストックも溜めておくかぁ、会話だけでも結構消耗するっぽいし」

 この先都市最強と敵対する可能性だってゼロじゃないしな!二重の意味で。

「オラリオ最強の冒険者、オッタルって言ってたっけ。こいつに関して調べられてないな」

 憶測だけど流石に手も足も出ない程度には身体能力に差があるかもな。EGOを使えばある程度はカバーできるか?

「そういえばこっちの赤い霧は自由にEGO武器を使えるんだったか、黄金狂とか黄昏とか…戦いたくねえ〜!」

 絶対オッタルよりも厄介だろ!EGOの真の力を扱えるってEGO一つにつき一つ以上の魔法を使えるようなもんじゃん!黄金狂の悪質ワープタックルとか、黄昏は一回認識されたら逃げきれなかったはずだし。あとEGOを投げるな。

「全く、厄介なことになったもんだな…っと、そろそろか」

 さっきの検証で俺には魔石が大量に必要だということはわかった。なので今回の探索の目的をリヴィラではなく、魔石の大量入手に切り替える。ダンジョンにはモンスターが多く集結する場所がある。食糧庫だ。

「もう少し下層に行ってもいいけど…ドロップアイテムで金を稼ぐとなるとここらで狩るのがいいか」

 気配を殺して食糧庫の中を確認する。7階層のレアモンスター『ブルー・パピリオ』はいなさそうか。

「居たらちょっと嬉しかったんだけどな…まあいいや、すこし働くとしますかね」

 周りに人がいないことを確認して手袋から『クリスタルアトリエ』を取り出す。『デュランダル』は少し大きすぎるからな、この階層で乱獲するならこっちの方が都合がいい。パープルモスの鱗粉対策に仮面もつけておこう。

「いちいち出向くのも手間だな…」

 準備を整えたら一度『ロジックアトリエ』を取り出し手近な所にいたパープルモスに発砲する。ダメージは与えられたけど落とせてないな…火力不足か。

「よーし、頑張るぞー」

 食糧庫内に轟く銃声で周囲のモンスターが一斉に俺に向かって突撃してくる。とりあえずは殲滅でいいかな。

 

 

 

「ふい〜、思ったより長引いたな」

 次から次へと押し寄せてくるモンスターの群れをかれこれ6時間は捌き続けたか、食糧庫内は灰まみれだ。

「…解体しないとかぁ、面倒くさいな」

 百を超える死体の山。コレを一人で解体するのか…終わる頃には深夜かもなぁ。

「うっかりしてたな、戦利品回収のことをすっかり忘れてた」

 うだうだ言ってないで作業するか、がんばるぞ〜。

 

「次からは絶対にサポーターを雇おう。いや雇ってもついて来れないか」

 戦闘より時間かかったぞ全く。ブルーパピリオの羽は一枚だけか…やっぱりレアモンスターと呼ばれるだけあるな。魔石は換金する分のドロップアイテムと比較して不自然にならない程度に残して残りは吸収するか。持ちきれないドロップアイテムは手袋に突っ込んでおこう。

「よ〜し、帰るかぁ」

 明日はいい物食べれるかもな。

 

 ダンジョンから出ると時間帯もあってかギルド内は人気が少なくなっていた。

「すいませ〜ん、換金お願いしま〜す」

「おお新顔だな。こんな遅くまで潜って無理すんじゃねえぞ」

「キリがつかなくてちょっとね…多いけど頼める?」

「おう、任せとけ」

 用意していた大きめのバックパックを渡して椅子に座る。時計を見ると既に12時を回っているみたいだ。流石にヘスティアも心配してるかもなぁ…

「終わったぞ、随分とドロップアイテムが多かったな。ほれ」

「おお流石本職、仕事が早いね」

「へへ、おだてたってなんも出ねえぞ?ほれ、18400ヴァリスだ」

 まあまあいい稼ぎかな、提出したのは今回のドロップアイテムの3分の1程度だし。

「明細書とか貰える?」

「ん?珍しいな、そういうのを持っていくやつは大手以外だと滅多にいないんだが…待ってろ、今写しを書いてくる」

 今後の参考にするためにどの素材がどの程度の値段なのかも把握しておきたいし明細書を貰っておこう。

「ほれ、明細書だ」

「ありがとな〜」

 

 帰還!そっと教会の隠し扉を開ける。ヘスティア怒ってないといいけど…

「ただいま〜」

「あ!ローランさん帰って来ました!」

「遅いぞローラン君!何かあったのかと思ってボクは気が気じゃなかったぞ!」

 やっぱり御冠だ、見積もりが甘かったのは認める。

「ごめんごめん、初めてのダンジョンでちょっとはしゃいじゃって」

「まったく!初日で何かトラブルがあったのかと思ったよ!怪我はないかい?」

「見ての通り、かすり傷ひとつありませんよっと」

 荷物を下ろして今回の収入の入った袋を机の上に置くとジャリッと大量の硬貨が擦れる音が鳴る。

「…ローラン君、コレは?」

「今日の収入」

「…これいくら入ってますか?」

「18400」

 二人が口を大きく開けて黙り込んでしまう。

「もしかしてもうちょっとあった方が良かったか?それなら明日適当に魔石を回収して残ってるドロップアイテムと一緒に換金してくるぞ」

「いやいやいやいや!十分だって!一人でどれだけ深く潜ったんだい!」

「7階層の食糧庫で乱獲して来た」

 ヘスティアがう〜んと言ってベルの方に倒れ込む。コレで少ないとか言われたらちょっとへこんでたな。

「ろ、ローラン君が強いのは知ってたけどここまでだとは思わなかったよ…」

「コレだけあったらしばらくは余裕を持って暮らせますね…」

「明日は深く潜る予定だから同じくらい稼げると思うぞ」

 明日こそリヴィラに行ってみたいな。地下深くにある冒険者の街…とても気になるな。

「ベル君、これが『規格外』って奴だぜ。これでレベル1名乗ってるの多方面に失礼だよね」

「僕に謝ってください、『レベル1のハードルを跳ね上げてすみません』って」

 ベルの目が怖い、まあベルはベルのペースで頑張ってくれ。

「明日はどこまで潜るんだい?」

「『迷宮の楽園』まで行きたいかな。もしかしたら1日そこで過ごすかも」

「18階層か…ソロだとレベル2でも厳しくなかったっけ?」

「僕は僕のペースで進みますね!命が百個あっても絶対に無理だってわかるので!」

 それで良い、あんまり無茶しすぎて死んだら元も子もないからな。

「ま、これが経験の差って奴だ。焦らずに少しずつ成長していけば良いさ」

「そうします…」

 まあベルだって既に成ろうと思えば7級フィクサー程度には成れそうな能力ではあるんだけどな!身体能力がポンポン上がるのがずるいよホント。

「じゃあもう夜も遅いし寝るか」

「そうだねぇ、安心したら一気に眠たくなって来ちゃった」

「僕も今日は疲れたので寝ますね…おやすみなさい」




〜ローランの異世界見聞録〜
モンスターの素材か、オラリオでは主に武具の素材として利用されているけど物によっては建材や馬車の部品としても使われているらしい。
いくつかの魔石と一緒に図書館に送るとしよう、もしかしたらとんでもない発見があるかもしれない。

ハロウィンだしなんか書くかぁ...時系列どうする?

  • ベルとヘスティアの三人で!
  • ちょっと未来の5人だな!
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