ゴブリン騎士と農民姫   作:照喜名 是空

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新人研修その①準備

◎新人達

 

「それでテイマー殿、戦闘指南とはどのようなものなのだ?」

「えーっとですね、拘束時間は10日間、街道ぞいの討伐依頼をしつつ、戦闘指南をするというものなんですよ」

「なるほど実践的だ」

「お給料がよくってですね。一人当たり1日2金貨でさらに討伐依頼と討伐した獲物の換金もあるので……まあおおむね100金貨ほどになりますね」

 

テイマーはうれしそうに語る。だんだんがめつくなっていっていないだろうか?

いや、パーティーのリーダーとして採算というものを考え始めたのだろう。

 

「う、うむ……それだけいただくからにはしっかりと指導せねばな」

「しかも経費はギルドもちですから、純粋に100金貨以上もらえます。もちろん安全には配慮しつつになりますが」

「むろんだ」

 

三人はギルドの廊下を歩きつつ新人達が集まっているという講習室に向かう。

 

「しかし、我々はこういった指南をうけなかった気がするが……」

「ああそれはねえ、僕らはテイマーさんの従魔からいきなり鉄級になったでしょ?実績があったからだよー」

「では錫級から始めた者はこういったことを?」

「ええ、私もやりましたよ。だいたいは準備から始めるんです。まあ今日は顔合わせと準備くらいですね」

「うむ、何事も初めがかんじんだ」

 

そして、講習室のドアをノックする。

そこそこ広い講習室には20人ばかりの若者達が集まっていた。

長いす長テーブルに腰掛け、先輩冒険者たちと話している者もいる。

 

「ええと、術士のリズさんに、猟師のサムさん。それから魔法剣士のエレナさん、ですね。私たちの班は」

「むう、全員ではないのか」

 

そこに自分たちの班員を纏めていた狐人巫女が話しかける。

 

「おっ、ゴブリン騎士じゃな!そうじゃよ。ほれこんだけいるからのう。とりあえず臨時でパーティーを組ませてパーティーごとにわしら先輩がつくんじゃよ。これは双方にとってお得なボーナス依頼というものなのじゃ」

「なるほど……」

 

ここで狐人巫女は隣にいた重装騎士の脇腹を肘で小突き、続きをうながす。

重装騎士は班員の方を向いて堂々たる声で言った。

 

「う、うむ。さらに課題である街道沿いの討伐依頼だが、これも冬眠を終えて凶暴化した魔物から市井の民を守るという大義名分があるのだ。それもこのように依頼のついででやってしまえば安価で済む!領主様も市井の民も助かるというわけだな。どこにも損がないのだよ。ワッハハハ……というわけだ我が友よ」

「なるほど、よくできているな……感謝するぞ我が友。そして狐人巫女殿も」

「うむ、ではがんばるのじゃよ。いやー若者と触れあうのは癒やされるのう!」

「ではな!よしいくぞ皆の者!」

 

そう言いつつ狐人巫女たちのパーティーは陽気に講習室を出て行った。

 

「ああ……それで、貴公らがわれわれの受け持ちか」

「おう」

「うげっ、コボルト術士のパーティー!?うう……」

「リズ、私も見ていたが、多少過激だがコボルト術士は腕が立つ。これは正解なのだが」

 

見れば、先ほどの少年猟師と少女術士が不満そうな顔で、そして森人(エルフ)の少女がそれをなだめていた。

全員胸当てや関節部に少々の装甲をつけた程度の軽装である。おそらくいずれは壁役(タンク)が必要になるだろう。

そして全員見目がよく、身なりが良い。

おそらくいいとこの子女なのだろう。

 

「えー、ではこの場はお互いに自己紹介をして、その後準備として買い物に行って、最後に歓迎会ですね」

 

そこで一息吸って、今や堂々たる威厳を持って話し始める。

 

「私からいきます!牧人(テイマー)のマリーです。テイマーとしてはこの二人をテイムしていますが、ネクロマンサーも囓ってて、さらに以前使役していた水妖馬(ケルピー)妖精狼(ガルム)、三つ足鴉(ヤタガラス)を使えます。他には牧場を経営してたりしますよ。では次コボルト術士さんとゴブリン騎士さんで行きましょうね」

 

コボルト術士が一歩前に出て全く気負った様子なく軽い調子でしゃべる。

 

「あっ、ぼく?ぼくは術士だよ。種族はコボルトで名前はコロ。魔法はまあいろいろだねー。一応魔力結晶術と竜の咆哮魔術がとくいでー、祈祷もまあまあかな。よろしくねー」

「絶対それだけじゃないでしょ!?黒や赤系統も使えるじゃない!」

「『おぞましき虫たかり』とかは黒系統だけど、妖精級だから背信にはならないんだよねー。じゃなきゃ白の神級祈祷は使えないし」

「ウッソでしょ!?なんであんたが白系統つかえるのよ!」

 

少女術士がいらだたしそうにキャンキャンと技術的な文句を言う。

 

「白の騎士神は契約の神だからねー。律法と契約をよく読んで灰色のラインだったらまあ大丈夫なんだよね」

「不敬だわ……」

「自己紹介の途中なのだが」

 

森人少女がこつんと少女術士の頭を小突く。

 

「う、うん……しょうがないわね。どうぞ!」

 

この空気で自己紹介をしろというのか、とゴブリン騎士は思うがこの身はテイマーの騎士。

騎士ならば名乗りを上げる時こそしゃんとせねば、と気を取り直す。

 

「うむ……私はゴブリン騎士。名をアランという。この通りこの身はゴブリンだが、それ故誰よりも騎士たらんとしている。剣を振るしか能がない男だが、よろしくたのむ」

 

そうして、今や優雅とすら言えるほどの洗練された仕草で騎士の一礼をしてみせる。

少しだけ新人達からの目つきが変わった。

彼らはいいところの子女だ。ゆえにその礼の価値がわかるのだ。

 

「じゃあ最初は私ね!リズ、術士よ!得意系統はたった一つだけ、爆発魔術よ。でもその一つにかけては負けるつもりはないわ!それに杖術だってできるんだから!……まあ、その、よろしくね」

 

リズは魔女帽(ウィッチハット)に丈の長いローブ、制服のような小綺麗な服だった。

魔法使いの少女、というのがぴったりくるだろう。

ゴブリン騎士の一礼に対抗してか、スカートをちょんと上げて丁寧な貴族の一礼(カーテシー)をする。

少年猟師は困ったような顔をした。おそらく貴族の子女だというのはあまりバレたくないのだろう。

 

「えっ、俺?俺はサム。猟師の息子だけど、剣士になりたい。あー、リズとは幼なじみで……その、ふたりとも家を出てきたんだ。いろいろあってさ。迷惑かけてるかもだけど……こいつ、本当はいいやつなんだよ。よろしくたのむ。あっ!俺のできることは剣術と狩りだ」

 

サムは短髪にした黒髪に胸当て、手甲や足甲、関節部のアーマーなどこの中では一番の重武装だ。腰には長めの鉈が下げられている。

今時の若者冒険者という感じだ。

ぺこりと頭を下げる仕草にも小市民的な感じがする。

 

「最後はわたしだな。エレナ。北方森人(スノーエルフ)だ。役割(ロール)は魔法剣士だな。使える魔法は……うん、氷系統だ。氷で武器を作ったり、敵を凍らせたりできる。あとは、北方の出なので猟も多少はたしなんでいるぞ……以上だ」

 

エレナは北方の民らしい毛皮と文様の入った服と言ったいでたちだ。

顔はエルフらしく美しい。髪も綺麗な銀髪で、まさしく雪の妖精とでも形容できるだろう。

ただ、背が高く思ったよりがっしりしているのは北方の民らしいところだ。

テイマーはうむうむとうなずくとリーダーシップを発揮し始める。

 

「では、臨時の合同パーティーではありますが、リーダーは私です。依頼は準備から家に帰るまでです!気を抜かずに行きましょうね!」

『おう!』

 

それぞれが返事をして、教室を出て、ギルドを出る。

向かうは市場と武器屋だ。

 

◎はじめてのおかいもの

 

着替えや食糧を買い、お待ちかねの武器屋だ。

 

「ふむ……冒険者の食糧というのはこんな感じなのか……」

 

森人のエレナがどことなくしょぼんとした様子で耳を下げながら言った。

なお、これらの大量の買い物は少女術士が持っていた魔法のバッグに入れることとなった。

 

「保存食というのはそういうものだ。魔法剣士よ。こってりしたもの、乾き物がほとんどになる。だがそこに狩りで肉をいれればどうだ?」

「なるほど……それはうまそうだ。いかん、腹がへってきたのだが?」

「なに、あと武器屋だけだ。それが終わればギルドで呑める」

「私は『洗礼』は普通にいやなのだが?」

「う、うむ……斥候殿とて依頼中はそこまではしないはずだ……おそらくはな。それに、臨時とはいえパーティーだ。私も庇おう」

「頼りになるのだが!?」

 

寡黙そうに見えた森人は喋れば独特な言葉使いの意外に気さくな少女だった。

 

「今ヒマだから言うけど、きみの『癇癪玉』って強いよね。それたぶん分類的には闘技だし」

「…ええ、そうよ。がっかりしたかしら」

「いや普通に強いよあれ。手加減なしだったら斥候さん死んでたよね。あれ内部から爆破できるでしょ」

「そうね、それが本当の使い方。……見抜けるのね。さすがは知識が広いって言えばいいかしら」

「おまけにあれ、射出するんじゃなくって認識したポイントを爆破するよね。打ち消し以外に防ぐ方法ないんだよねー」

「そうよ、だから手加減するくらいでちょうどよかったのに……」

「ちなみに同時展開はいくつまでで、最大威力は?」

「5つまでくらいかしら。連射すればいいからそこまで意識してなかったけど。最大はそうね……一つに絞れば家一軒くらいいけるわ」

「普通に強いよねそれ」

「そうでしょう!強いのよ!だから自慢の魔法よ。戦いでならこれさえあれば私は勝ってみせるわ!」

 

ゴブリン騎士はそれを横で聞いていたが冷や汗が出た。

この少女、いやこの少女の使う爆破魔法は正直に言って強い。

おそらく対決すれば自分が先手を取って何もさせずに切り伏せるしかない。

その最初の一手を逃せば死ぬだろう。

もしその時が来たらその機を逃すつもりは決してないが。

 

「あはは、なんだか思ったよりみなさん打ち解けられてよかったです」

「ほんとすいません……あいつちょっと『こう』だから……」

 

少年猟師は顔の側面に両手で壁をつくって『視野が狭い』とジェスチャーをする。

魔法使いは魔法使い同士、戦士は戦士同士で、いつの間にか専門的な話で打ち解けていた。

さしずめこちらは苦労人同士といったところか。

 

「つきましたよ!『太陽の武器屋』さんです。私たちもいつもお世話になってるんですよ」

 

レンガ造りの狭い路地。そこに武器屋の看板が下がる工房がある。

いつものドワーフの親父さんによる武器屋だ。

 

「武器屋か!いやーわくわくするな。えっと、やっぱり頑固なドワーフが店長だったりする……んですかね?」

 

少年猟師がゴブリン騎士に話を振る。

 

「おおむねそうだ。だが、間違いなくよい御仁だぞ。無礼の無いようにな」

「あっはい……」

「店主どの!久しぶりだな。私だ、ゴブリン騎士だ」

 

ゴブリン騎士は少し背伸びしてドアを開けると、いつものようにドワーフの店主がカウンターに座って刃物の手入れをしていた。

 

「おう、おめえか。まだくたばってなかったようで何よりだ。今日は新米どものお守りか?」

「ああ、そのようなものだ」

「ふん、春だからな。おい新米ども。武器はまだお前らの稼ぎじゃ手がとどかん。今日は装備を買っていきな」

 

新人達は店内を見渡し、値段を見るとぎょっとした顔をする。

手が届くのは鈍器類かよほどのなまくらくらいだとわかったのだ。

 

「確かに……刃物は高いわね。今買えるのは鈍器か……そこのお値打ち品だけみたいね」

「わかってんじゃねえかお嬢ちゃん。ああ、そこのは予備(サブ)程度にしかならねえなまくらだ」

 

お値打ち品はまとめてタルに突っ込まれているが、どれも薄っぺらく安そうだ。強度に不安が残る。

 

「マジかー。渋い感じの剣なのになあ。けっこうするなあ」

 

少年猟師は陳列棚のほうにあるそこそこ良い剣をまぶしそうに見ている。やはり男とはいくつになっても剣が好きな物なのだ。

 

「それより早く野営道具(サバイバルグッズ)を買うのだが?早く飯が食いたいのだが?」

 

魔法剣士はさっさと道具類を見ようとする。

 

「テイマーの嬢ちゃんとコボルト術士は面倒見てやんな。残りはこっち来い。武器を見てやる」

「えっと、金かかるのか?」

「フン、半人前がしょっぱなから剣が折れて死にました、なんて寝覚めが悪いからな。ガタがきてねえかだけ見てやる。ゴブリン騎士、おめえはいつもの額だ」

「うむ、お頼みする」

 

そうしてカウンターにそれぞれの武器が置かれる。

店主がまず見たのはお得意であるゴブリン騎士の剣からだ。

鞘から抜かれた淡く蛍色に輝く刀身を見て少年騎士が息を呑む。

 

「どれ……手入れはちゃんとしてるみてえだな。だが……ちょいと鈍ったな。しょうがねえか、ゴブリン騎士のお前でも赤子にゃ勝てまいて」

「ああ、鍛錬をおろそかにした自覚はある。これから勘を取り戻さねばな」

「頑張んな。今日はちょいと研ぐくらいで済むぜ」

「かたじけない」

 

ゴブリン騎士と店主との会話が終わると、すかさず少年猟師が口を開いた。

 

「すっげえ……それがあの歌にある『月明りの小剣』?いいなあ……」

「そうともよ。欲しけりゃおめえもドラゴンと遊んでくるか?」

 

店主はかっはっは、と笑う。彼も見込んだ冒険者が伝説となって誇らしいのだろう。

 

「うっ……今は無理かもだけど、いつかは!」

「そこはいつでもいけますだろ。どれ、小僧。お前の武器を見てやる」

「あっはい……」

 

店主は鉈を木と毛皮の鞘から抜いて見る。

 

「片刃の剣鉈。長さは1(キュビット)。鉄はいいのを使ってるな。強化は大熊の爪とヘラジカの角で計二回。頑強だな。モノが良い」

 

裏返したり目を近づけたりしてよく見る。おおむね肘から先くらいの長さの剣鉈だ。

 

「手入れは……まあ、ガキにしちゃやってる方だな。だがもっとまめにやれ」

「うっ、まあ……最近ちょっとサボってたかな」

「おめえこれ親父さんから貰ったもんだろ。お前の親父さんはいいもんをくれてるぜ」

「そんなに?」

 

店主は先ほど少年が見ていた棚を指さして笑う。

 

「そこらの棚のやつよかずっといい。感謝するこったな」

「父さん……」

 

少年剣士は神妙な顔になってしまう。そして魔法剣士の番だ。

 

「私のなのだが」

「ナイフか。柄は鹿皮、長さは1(パーム)、鉄はよくねえが、強化は大魔熊の心臓!?それから荒鷹の羽に、火の貴石による変質一回、か……」

「どうだ?」

「ものはいい。手入れもされてる。だが、極低温と使いすぎで少々ガタがきてるな。まあ打ち直すほどじゃねえ。さ、どれも手入れしてやるから道具でも見てろ」

「任せる」

 

そこで店主は少年猟師の方を向いて言った。

 

「それよりも小僧、盾とポーションを買っておきな。お前が前衛なんだろうが。なきゃ困るぞ、良い剣を買う前に安物でいいから盾を買っとけ。選択肢があるのとないのとじゃ大違いだ」

「うーん、確かに……じゃあこの辺のやつを買っておこうかな」

「おお、買っとけ買っとけ」

 

少年猟師は中凧盾(カイトシールド)を手に慣れぬ様子で扱っている。

一方の少女術士とテイマーたちはわりと賑やかに買い物をしていた。

 

「でもこれはいるでしょう!?」

「いりません。普通のフォークとナイフで十分です」

「じゃ、じゃあ鍋は!」

「鍋はいります。でもこっちのでいいです」

「これはいらないわよね!?小さな金槌!」

「実は要ります。軍幕(テント)を張るときとか使いますね」

「むむ、難しいわ……」

「キャンプの心得なら私の方があるのだが?手伝うぞ」

「うう、お願い」

 

かくして、賑やかながらも準備ができた。あとは出立前の宴だけだ。

 

◎新人歓迎会

 

ギルドの酒場は信じられないほど混んでいた。

新人達に、さらに他の街に遠征に行っていた長期遠征組も帰ってくるからだ。

 

「今日はあんまりにも忙しいから普段とはやり方を変えちゃうよ!飲み放題パーティーだ!参加費を払ったら好きなだけ食べて飲んでいいよ!その代わり料理と酒は置いてあるのを、勝手にもっていくんだ!」

 

エルフの女将さんは大忙しだ。

だが、懐は潤うだろう。

 

「一人銀貨5枚かぁ……」

「何よ!大丈夫よあるわよ!」

「私もそのくらいの持ち合わせはあるんだが?」

 

新人達が困惑するが、テイマーはさっさと全員分の金を支払った。

 

「大丈夫です、出します!今回は大きい仕事ですからね。それに新人歓迎会でお金を出すのは慣例なので」

「やった!さすがテイマーさんだ!」

「調子いいんだからもう……」

「これは好きに食べていいのか?」

 

魔法剣士のエレナはすでに串焼き肉を手に取っている。食い意地が張っているのだろう。

 

「ではまああのへんの席を取りつつ、好きに飲みましょう!」

「ありがとうございます!」

 

テイマーが指さしたのは中庭の練兵場だ。今夜はギルド全体が酒場のようになっているのだ。

あらかじめ用意されていたのだろう。ベンチやテーブルがそこかしこに置いてある。

もちろん、沢山の料理も。

 

「ふむ……いつもとは趣向が違うというわけだな。これもまた、よいものだ」

「うむ、北方(ヴァイキング)方式だ!我が故郷ではこういう宴はよくあるものだ。我が友よ」

「おお、我が友重装騎士!なるほど、貴公の故郷の宴か……賑やかなものだな」

 

その賑わいにこのゴブリンの身が入れる、ということにゴブリン騎士は感謝した。

 

「うむ、良い物だろう?ところで貴公、そちらの新人が貴公の知り合いのようだぞ」

「おお、そのようだ。かたじけない我が友よ」

「よい酒をな!我が友よ!」

 

重装騎士の指の先には口いっぱいに肉をほおばる金髪の青年がいた。

笑顔でゴブリン騎士に手を上げて挨拶している。

 

「よォ先生!俺も冒険者になったぜ!これからは後輩だな」

「トニーか。うむ、トニーの剣の腕であれば冒険者としてもやっていけるであろうな。だが、何事も油断は禁物だぞ。冒険者は無事が第一だ」

 

声をかけてくる新人の一人は、ゴブリン騎士の拠点(ホーム)であるアッシュピーク村出身の青年だ。

 

「おゥ!わかってらァ!ちぇっ、先生のパーティーと一緒がよかったなァー」

「うむ、そう言ってくれるのはうれしいが、貴公ならば上手くやれる。この機に交友を広めるといい」

「わァってますって!」

「ところで、貴公のパーティーを教えるのはどなただ?」

「えーっとォ?ああ!烏羽の騎士って人っす」

「なるほど、烏羽殿はこのギルド最強だ。それだけ、見込まれていると言うことだろう。がんばれよ」

 

思えば、ずいぶん遠くまできたものだ。

主に拾われ、ギルドに所属し、こうして弟子までできた。

思えばギルドで最初に世話になったのが烏羽の騎士だった。

彼が決闘という形で助け船をだしてくれなかったらどうなっていたことか。

 

「はァーい」

「私も、貴公の活躍に期待している。ではな」

「うっす!」

 

ソーセージに漬け物(ザワークラウト)、野菜の天ぷら(フライ)、あとはミートパイ。

色とりどりの料理と冷えたエール。それらを鉄皿に取って自分たちのテーブルまで戻る。

 

「だから……私たちは冒険者として成功して、ちゃんとした暮らしをしてやるんだから!」

「飲みすぎだぞリズ……すいません、こいつ酒癖悪くって」

 

さっそく少女術士がワインを飲んで顔を赤くしていた。

 

「あはは、まあまあ夢があるのは何よりですよ」

「飯がうまいんだが?おっ、来たなゴブリン騎士」

「もう始めちゃってるよー」

「ああ、すまない遅くなった」

 

ああ、仲間がいる。こんなにも楽しそうに。それが何よりいい事だ……

 

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