「ぬうっ、悪魔術士か……」
「大丈夫です。よく戦ってくれましたね、ゴブリン騎士さん。今は下がっていてください。『従魔の癒やし』!」
「しかし……」
テイマーが一歩前に出てゴブリン騎士を制止した。その横にいるのはオーク詩人。
そしてカナリアンテの上に乗るコボルト術士だった。
「安心しな、こっからはあたしらの出番だ。お姫様は守り通すよ」
「そうそう、王と騎士の戦いが終わったなら、後は魔法使い同士の戦いがしたいんだよねー。僕も楽しみだよ」
「……わかった、一時たのむ。すぐに復帰する故」
「任せな!」
そう言っている間にも悪魔術士とコボルト術士の間で魔法が飛び交い、打ち消しあい、コボルト術士は悪魔術士を逃がさぬ策を次から次に打っている。
「おいおい、俺らも忘れてもらっちゃ困るぜ、なあ?」
黒皮の斥候が襲い来るゴブリン暗殺者に牽制の投げナイフを。
「ああ。友の窮地に駆けつけるは騎士の誉れよな!」
重装騎士がシールドバッシュで押し寄せる死兵共をなぎ倒す。
「そうだとも、水くさいじゃないか。我々にも見せ場をいただくぞ」
烏羽の騎士が暗殺者の包囲を抜けて悪魔術士と対峙する。
「先生ェ! 今のうちにポーションどうぞォ!」
「私たちだってもう一人前よ!」
「ああ、あんな戦いを見せられてじっとなんてしてられねえ!」
若手達がゴブリン騎士に近づきその休息を助ける。少女術士が的確にゴブリン暗殺者たちの頭を爆ぜさせ、さらには悪魔術士にも的確なダメージを与えつつある。
「冒険者にばかり任せているな! 退路を確保しろ命知らず共ォ! 今こそ騎士の誇りを見せろ!」
「了解!」
それはまるで祭りのように。
それぞれが全力を尽くして悪魔術士と戦った。いや、この人数で囲まれてなお戦いを成立させている悪魔術士の力がとてつもないのだが。
だが、それもやがて終わる。
「ハハ……ハハハ。見事です、
「うん、楽しい戦いだったねえ。じゃあ最後は派手に行くよー『破滅の光』!」
「ぜーはー……いいかげん、倒れなさいよ! 『
悪魔術士のぼろぼろの身体をコボルト術士のわけのわからない高度な術と、少女術士の
「お、終わった……のかァ?」
「ああ、終わりだ。トニー。勝ったのだ」
トニーとゴブリン騎士は互いに肩を貸しながら辺りを見回した。
そこにはもう敵はすべて屍になっていた。
「終わったね、兄弟の仇は取れた」
「ええ、帰りましょう。家に!」
テイマーとオーク詩人が笑顔でうなずいた。
「よし! 冒険者たちはいったん後方に撤退! 家に帰るまでが戦争だ! 気を抜くな!」
◎ことのなりゆき
かくして、一つの戦いが終わった。
それはこの後、10年近くになる長い長い『ゴブリン紛争』の始まりでもあった。
その戦いの中でゴブリン騎士とその息子達はそれは戦功を上げ、またゴブリン軍が人里近くにも前線を押し上げる事もあり。
アッシュピーク村は要塞として拡張され、引退した村長に代わりテイマーがそこの城伯として貴族に列せられた。
もちろん、その騎士として任じられたのは他でもないゴブリン騎士だ。
彼は正式に初のゴブリンの騎士となったのだ。
その祝いは仲間達が集まりそれは賑やかなものであったり、テイマーがなんとか結婚したり。
まあ、色々とあった。
だが結局は落ち着くところに落ち着いた。
ゴブリン王国は廃坑都市ギギルとその周辺のわずかな土地を残し一時的停戦。
その後長い不可侵条約が双方に結ばれることとなる。
戦争は終わったのだ。
それを期にアーサー達が冒険の旅に出かけたり。その過程でコボルトなどのいくつもの亜人の集団をまとめ上げ、アッシュピーク城塞に帰還。
これが後のゴブリン騎士団の前身となる。
ともあれ、栄光と共に平和がやってきたのだ。