かしまし幽姫   作:凰太郎

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うちら陽気なかしまし幽姫 其ノ三

 

【挿絵表示】

 

「おおぉぉぉ~~!」

 思わず感嘆に見入るわたし。

 テーブルの上に置かれた大皿は、それはもう見事な逸品なのでした。

 数日後、友香(ゆか)ちゃんは約束通りお皿を持って来てくれた。

 わたしのバイト先〈和風喫茶ヨシダ〉に。

「菊花ちゃん、ナポリタン出来たよ」と、キッチンから店長の声。

 でも、カンケーない。

 オーダー入ってるけどカンケーない。

 いまはお皿タイム。

「ごめんなさい。私、価値とかよく分からないんですけど……」

 申し訳なさそうに言う友香(ゆか)ちゃんに、わたしは「いいの★ いいの★」と笑顔で手を振った。お皿から目を逸らさずに。

「でも、古いけど〈骨董品〉じゃないと思う……」

「いいかな? 友香(ゆか)ちゃん? 価値なんてね? 結局は、その人次第……誰かに決められて左右されるなんて、ホントの価値じゃないんだから★」と、お皿ジィィー……。

「菊花ちゃん、ミックスサンド出来たよ」と、キッチンから。

 でも、カンケーない。

 いまは、お皿ジィィィーー……。

「それは、そうですけど……」

「例えばね? 外れ馬券を後生大事に取ってる眼帯女や、元カレの(ピー)を未練がましく持っているビッチもいるんだから」と、お皿ジィィィィィーーーー……よだれツゥゥーー……。

 そんでもって、ギシィ!

「いい度胸してるじゃねぇか? 皿バカ?」

()きます? 脛椎(けいつい)から()っちゃいます?」

「イダダダ! ギブ! ギブギブギブ!」

 背後からキャメルクラッチ喰らわされた……。

 疫病神×2だ。

 チッ! 来やがった!

 この至福のお皿タイムに!

 

 

 

 店長が半ベソでピラフを運んでいた。

 でも、カンケーない。

 店長もバイトもカンケーない。

 お皿の前には万人平等。

 お皿様は差別しない。

「ふぅん? コイツが例の皿か?」と、正面相席の眼帯女が関心薄く品定め。

「何か……こう……思っていたのと違いますわね?」と、その隣席のビッチがお皿様に失礼な感想。

「だよな? もっと高そうな物だと思ってたぜ?」

「正直、フリマで百円の叩き売り値でも買い手がいなさそうですわね」

 とか無礼極まりない発言連携後、二人(ふたり)はジーッとわたしの顔に見入り……「「いた」」

 どういう意味かしら?

「もう! 分からないかな! このお皿の素晴らしさが!」

「いえ、その中央にデカデカと描かれた『ミッ●ィーのパチモン』が総てを物語っていますわよね?」

「ガキの落書きみてぇだな? アタシでも描けそうだ」

「コレは個性! この子の個性!」

「個性、デッサンガタガタですわよ?」

「左手で描いたのか?」

「失礼ね! もうプイッだもん!」

 ほっぺ膨らまして明後日(あさって)にプン!

「ま、少なくとも〝骨董品〟ではありませんわね」

「何かの景品か? 春のパン祭りとか?」

「ごめんなさい……おじいちゃんの形見だから、てっきり〝古い物だし価値があるかも〟って思い込んでいたんですけれど……事前に物置から出して見ておけば良かった……」

 また、友香(ゆか)ちゃんが申し訳なさそうに(しお)る。

 可憐で儚げな女子中学生の涙声……。

 これには、さすがに〝ゲスの極みオバケ×2〟もバツが悪くなったようだ。

「ま……まぁ、貴重な事には違いないんじゃねぇのか? アタシも見た事無いキャラクターだしよ? ハハ……ハハハ……」

「い……一応〝骨董品〟には違いありませんわよ! 古い! そう! 古い(・・)んですから!」

「で……でも!」

「「大丈夫、いざとなったら〈鑑定団〉に金握らせるから」」

 何を言い出したのかしら?

「問題無いよ? 友香(ゆか)ちゃん♪ 」と、わたしは穏やかな笑顔で頭を撫でてあげる。

「お菊さん?」

 しばらくぶりの懐かしい呼び方だわね。

「ねぇ? 友香(ゆか)ちゃんは、何故〝お皿〟が存在するか……考えた事ある?」

「え?」

誰か(・・)を〝笑顔〟にするためだよ♪ 」

「いや、飯食うためだろ?」

「盛るためですわよね?」

 うるさいわね! ゲスの極みオバケ×2!

「わたしの笑顔を見て分かるでしょ? わたし、いま、こーんなに〝幸せ〟なの★」

「……お菊さん」

「おーい? ヨダレ拭けー?」

「鼻血もですわー?」

「どんなお皿も、お母さんの料理を子供に届けて……空腹でさもしくなった心には温もりを届けて……元気と愛情で満たしてあげて……スゴいよね?」

「お菊さん……」

「うふふ♪ 」

「スゴいなぁ、お菊さん……私、そんな風に考えた事なんて無かった……スゴいなぁ……」

「ふふ……ふふふ……ふふふふふふふふふふふふふふ♪ 」

「え? あの? お菊さん?」

「お皿萌えぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーッ♡ 」

「おーい? お菊ー? 帰って来ーい?」

「警察沙汰にはならないようにー?」

 

 

 

 

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