番外編 TMA Prince City ~あの島の住人達~   作:ふゆきんぐ☆

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このお話は作者ふゆきんぐによるNFTシリーズ、『物語NFT』をご購入下さったルーツさんhttps://twitter.com/roots27player?s=20のご依頼で書かせていただいた作品です。
ルーツさんのご好意で、「TMA Prince City」のスピンオフ作品として掲載させていただきます。
仕事人ルーツのちょっとした一日を覗き見て頂ければ幸いです。


仕事人の流儀

薄暗い部屋にスタンドライトの灯りだけが煌々と輝いている。

その下でルーツは黙々と作業を進めていた。

 

手元には一丁の銃。愛用のベレッタM92だ。古めかしいはずなのに、手元のそれは黒光りしていて美しい。

ガンオイルを垂らして、こびりついた火薬を拭きとっていく。

更にウエスや綿棒で細かく細かく掃除をしてから、慣れた手つきで再度組み立て始めた。

 

静まり返る部屋にカチャカチャと作業の音だけが響く。

音楽も何もない。

だが、これがルーツの最も落ち着く時間であった。

 

全ての点検・整備を終えて、銃をホルダーへ。そして、ベッドの脇に置いて眠りにつく。

ベッドだと熟睡してしまうから、と言って、あえて立って寝たり、身を潜ませることのできる場所で寝る者も多いようだが、ルーツはしっかりとベッドで眠るタイプだった。

 

ただし、この住処が絶対にバレる事がない、という自信があってこそではあるのだが。

 

5時間程、しっかり睡眠をとった辺りで目が覚める。窓ひとつないこの部屋は時間の感覚を失いやすいが、そこは訓練で時間感覚を身に着けた。目を覚まして実際の時間と体感に大きなずれがないことを確認したところで、電話が鳴る。

 

「はい。」

『ルーツ、今からうちに来れるか?』

「行けます。急ぎですか?」

『まぁまぁ急ぎだな。』

「了解、5分で行きます。」

 

ベッド脇のホルダーを掴んで体に巻き付け、その上から服を着る。素肌に直接ホルダーつけるのが気持ち悪くないのか、と以前ムカイに言われたことがあったが、今は特になにも感じない。

上からシャツを着て、お気に入りのコートを羽織り、ハットを被るとアジトを出た。

 

ルーツのアジトは地下になる。偶然見つけた空間をそのまま住居として利用しているだけだが、地上に出ると目的地のカフェ『DearDeer』はすぐそこ。結構な好立地だ。人目につかないよう路地を疾走し、カフェの裏口からサッと店内に入った。

 

ほとんど物音は立てていないはずなのに、こちらを見ることもなくマスターのカノコが口を開く。

 

「やぁ、ルーツ。相変わらず早いね。」

「……なんでわかったんです?」

「ま、そりゃ経験ってやつだよ。」

 

ふふっ、と意味深に笑ってから、カノコは一杯のコーヒーをルーツに差し出した。

少し酸味の効いた、ライトテイストなコーヒーはルーツの好みそのものだ。

店に来るタイミングを予想して、完璧なタイミングで出してくるこの男は何者なのだろう。

 

今回のように呼び出しの電話や依頼の取り継ぎをしてもらったことはあり、情報屋だという話も聞いてはいるものの、未だ正体が掴めないのであった。

 

「ほら、早く座りなよ。コーヒーが冷めるだろ?」

「……いただきます。」

 

ルーツは素直にカウンターに座ると、コーヒーを一口飲んだ。文句なし、ド好みのコーヒーである。

 

「ルーツ、早速なんだけど、仕事を頼めるかい?」

「はい。」

「内容聞かなくてもいいの?」

「俺に来る仕事なんて狙撃とか護衛でしょう?内容わかってるんだから、断りませんよ。それが生業だ。」

「そうか、頼もしいよ。今回は遠距離からの狙撃だ。うちの社長たちを守って欲しくてね。」

 

そう言った時、カランとドアベルが鳴り、男たちが入ってきた。ルーツをチラリと一瞥すると、テーブル席にドカドカと座り出す。

 

「カノコ、ルーツが居るとは聞いてへんぞ。」

「スナイパー、必要でしょ?ムカイさん。」

「ちっ、アンダーの仕業か。」

「感づくのが早いなぁ、つまんないのーーー。」

 

バックヤードからひょこっと白髪に赤い目をした男が顔を出す。表の世界ではソロアイドルアンダーとして人気を博している男だ。

裏の世界では天才ハッカーとしてその名を轟かせているが、その素顔を知るものは殆どいない。

 

カノコとアンダーがどういう関係なのかは知らないが、ここ『DearDeer』を根城の一つにしているということはなんとなく知っていた。まぁ依頼人にさほど興味はないのだが。

 

「リッカルドさん、どうします?奴ら。」

「はぁ、あんなもん島から一掃するしかねぇだろ。」

「なんだ、追い出すだけかぁ?どうせやるなら徹底的にやろうぜ!」

「ハイアットさん、今時ド派手なドンぱちするわけにゃいかへんのですよ。」

「なんだよ、ムカイは頭固いなぁ。」

 

白髪の老齢の男がニヤリと笑う。どうやら随分と血気盛んなようだ。

 

「で、結局俺は何すれば良いんです?」

「ルーツは後方支援ってやつだな。今からヒーローごっこしにいく彼らを後ろから援護してやってくれ。」

「了解。」

 

前金を受け取ってコーヒーを飲み干し、コーヒー代をカウンターに置く。そのままルーツは店を出た。

 

指定されたビルの屋上から、埠頭を眺める。

 

カノコからの指示にあった到着予想時刻ぴったりに、一台の車が侵入してきた。防弾ガラスがしっかりはめ込まれた高級車は、見る者が見れば一発で普通の車でないことが分かる。

狙撃用の遠距離ライフルを構えて見てみると、運転席、助手席に1人ずつ、後部座席に2人の人影を捉えた。

 

その後ろから、数台の車が急に姿を現し、発砲し始める。

 

今回のルーツの仕事は、負われている車の逃走補助だ。しばらく様子を見ていると、どうやら追われている車に乗っている4人の中で、運転手以外はなかなかの狙撃手であることが分かる。

 

しかし、弾がないのか一人一発ずつの発砲でタイヤに被弾し、そのまま倉庫へ突っ込んでいった。

アレでは逃走は無理だろう。

 

ルーツは狙いを定めると、追ってきている車全ての前輪に弾を撃ち込んだ。

 

スリップし、車と車がぶつかり合っては爆発する。あえてそうなるように、どのタイヤをどのようにパンクさせるか計算した。読みが当たり、今回の狙撃はまぁ及第点と言っていいだろう。

これ以上追っ手が居ないことを確認すると、無線機を取り出した。

 

「……終わりました。」

「ご苦労さん。あとはこっちで処理する。報酬はいつものところに。」

「了解。」

 

短い会話を交わし、そのまま現場を離れた。

 

向かった先は駅だ。できるだけ人目につかず、かつ島に無数に仕掛けられた監視カメラの影を縫うようにして移動していく。

そして、駅のコインロッカーを開けると、先程通りかかった人物に近いような服を取り出し、また鍵を閉めた。

 

トイレで着替えを済ませ、今まで着ていた服をゴミ箱に放り込む。

 

このトイレのごみ箱は()()()かなりの頻度で回収され、即焼却炉行きになるので便利だ。

 

仕事着から私服に着替えたルーツはふぅ、と息を吐くと最近気に入っているカフェへ向かう。

 

『DearDeer』で飲む全てを見透かされているような好みのコーヒーも緊張感が出て良いのだが、チェーン店の程よく美味しいコーヒーは『日常』を感じられてそれもそれで良い。

たっぷりのローストビーフが挟まれた新商品のサンドイッチをバクつきながら、駅の方をボーっと眺める。

 

行き交う人波。進んでいく時間。

 

雑踏は心地よく、ルーツの耳を通り過ぎていく。

 

物欲があるわけでも、やりがいを感じているわけでも、人生に煌めきを感じているわけでもない。

 

ただ、こうして過ぎていく穏やかな時間が、たまらなく好きだ。

 

食べ終わってコーヒーも飲み干し、ちょっと一服して。

 

そしてルーツは席を立ち、雑踏へと踏み出した。

 

『TMA Prince City』一見煌びやかなこの島には、知る人ぞ知る『本当の顔』がある。

 

その、闇に蠢く人々の中で最近その名を知らしめる、一人の男。

 

『仕事人ルーツ』

 

己の二つ名など知る由もない彼は、素肌にリボルバーの存在をしっかりと感じたまま、流れる人波に身を任せるように街へと消えていったのだった。

 

 

~fin.~




お読みいただきありがとうございました!連載とも絡んだ内容となっておりますが、いかがでしたでしょうか??
これから本編は徐々に核心へと迫って参ります。引き続きよろしくお願いいたします!
最後に、ルーツさん、この度は本当にありがとうございました!!
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