ギーツエクストラ 仮面ライダーチークヘッズ from:ぼっち・ざ・ろっく 作:きゅー。
今回のお話にちょっと繋がるかもしれません。
私の吐いた、深い深い溜め息が、傾きはじめた陽の中に消えていく。
ため息は透明だから目には見えないけれど、それでも外の空気に溶けていったのは確かで…なんて、柄にもない事をぼーっと考えながら、私…後藤ひとりはSTARRYの店先…その隅っこで黄昏ていた。
そうでもしないと、また色々とネガティブな妄想に拍車がかかって、みんなのお世話になってしまうかもしれないから。
そう、私はさっき、おそらく聞いてはいけないものを聞いてしまったのだ。
きっかけは今日、STARRYで開かれたライブだった。
当然ながら、私たち結束バンドだけでなく、他のバンドの皆さんもしょっちゅうここを訪れて演奏し、お客さんを沸かせている。
結束バンドも参加して、何組か演奏を行ったが、その中で、不人気なのか、知名度がないのか…ほぼお客さんの入らなかったバンドがあった。『ウェザーハーツ』という名前だ。
メンバーはみな男の人。私たちより年上で、きっと人生経験も豊富なんだろうなぁ、と思った。
何より私は、このバンドのプレイやサウンドは好みで。
それに私たちとは楽器の編成が似ているし、なんだったら今後、新曲を出す時に影響を受けてもおかしくないかな…なんて感想を持っていた。
そんな矢先の事だった。あのやりとりを聞いてしまったのは。
その時私たちは、出番が終わったという事もあり、各々休憩時間を過ごしていた。
偶然、楽屋の前を通りがかった私の耳に、閉まった扉の中から話し声が聞こえてくる。
普段は楽器の音でよく聞こえないけど、今日はほぼ全てのバンドは出番を終えたら出払っていたみたいで、余計に聞こえてしまった。
「おい待てよ、本気で言ってんのか、それ…ここでのライブは今日で最後にするって…」
「お前らも見ただろ?…結束バンド。すげえよ…俺らより年下だってのに…ああいうのを、才能の塊っていうんだろうな」
間違いない。ボーカルの人の声だ。いま楽屋の中にいるのは、ウェザーハーツのメンバーさんたちだ。
嬉しい。結束バンドの事を褒めてくれてる…なんて思ったのは最初だけ。
えっ、これが最後のライブ…って、事は。
「やっぱどうあがいても、あの演奏には敵わねえ…それに固定のファンもどんどん増えてきてる…このハコの顔になるのも時間の問題だろ」
ボーカルの人の声は、ステージで見せたあの熱唱が嘘だったかのようにどんどん冷めていくのがわかった。
「まあ、遅かれ早かれ、もう
ため息と共に漏れ出したその言葉に、私は息が詰まりそうになる。
STARRYに居場所がないなんて…どうしてそんな事を。
あとで店長さんやPAさんに聞いた話によると、もともとウェザーハーツは大っぴらに人気のあるバンドとは言い難かった、ようだった。
その為に路上ライブや、あちこちのライブハウスを転々としながら曲を披露し、周囲への知名度を少しでも上げようという、極めて地道な活動をしていたそうだ。
噂によればメンバーが卒業した大学にも、わざわざOBとして顔を出し、突貫ゲリラライブまで行った程らしい。
けれども。その頑張りが、全て実を結んだか…といえば、現実はそうはならなかった。
どうしても人気が、どうやっても集まらなかった。売れなかったのだ。
「あいつらを僻んでるわけじゃない…ただ、今日のパフォーマンスで思い知らされたんだよ、俺らとはハナから立ってる次元が違うんだってな」
「何弱気なこと言ってんだよウィン!俺らはまだやれるだろ!?」
口を突いて出た完膚なきまでの敗北宣言。ボーカルの人…ウィンさんの弱音に耐えられなかったのだろう。
先程まで話していた別の男の人が食ってかかったようだ。
その声は、心なしか震えていた…ように聞こえた。
しかし、その答えは。
「あのなヒロキ…はっきり言ってやるけど…俺らは負けたんだよ、今日もな」
冷静に、そして冷徹に突きつけられたリアルな事実。
次の瞬間、楽屋の中はしんと静まり返るのが分かった。
私はなるたけ足音を立てずに、その場から逃げ出した。
───なんだか怖くなった。無性に。そして哀しくなった。
自分ではこの感情をどうしたらいいかわからなかった。
こんな所に出くわしたくなかった。
見たくなかった。聞かなきゃ良かった。
私の好きになったバンドが、今まさに"終わろうとしてる"ところなんて。