<あかね視点>
私は今、あの歩道橋にいる。
私が自殺しかけて、アクア君に助けられた場所。
カミキヒカルは今日、ここに現れる。
私はアクア君が抱えているものを一緒に背負いたかった。
アクア君はまだお母さんの死に囚われている。
でもいつかきっと解き放たれる日が来る。
誰にも邪魔はさせない。
きっともうすぐだよ。
何もかも解決したら、またパフェを食べに行こう。美味しいものを食べて旅行に行って。
そう、いつまでも一緒に。
そしてひーくんも。
過去を思い出して、執着してしまって。
その間違った道から引き戻して。全部元通りにして。
私が全部終わらせる。
終わらせて、前に進んでもらって、
彼にはまた、目も眩むような絵を見せてもらうんだ。
私の身体が宙に舞う。何が起こった?突き飛ばされた?誰に?カミキヒカルに?私の計画が悟られていた?
目の前に階段が迫る。当たり所が悪ければ死んでしまうかもしれない。
交通事故に会う時は時間が止まって感じると言うが、今この瞬間がそうなのだろうか。
私自身の身に起きていることを、まるで他人事の様に感じながら、せめてもの抵抗に身体を強ばらせた。
「……?」
しかし、覚悟していた身体への痛みは無い。誰かに抱き止められた様だった。
アクア君だった。
彼はいつも危ないときに助けてくれる。
「もう危ないことはするな。」
でも何故?
私が何をするかアクア君は知っていたの?
どうしてここにアクア君はいるの?
彼から以前貰ったプレゼントに思い至る。壊すとそこには小型の発信機が入っていた。
「アクア君……これは駄目だよ。これはやって良いことじゃない。」
私は対等な関係を築けると思っていた。
それは私の勘違いだった。幻想だった。
彼は対等に付き合うつもり何て無かった。
信頼なんてされていなかった。
ずっと私と付き合うふりをして。
私を人間ではなくモノ扱いして。
言ってくれれば、こんなの何百個でも付けてあげてたのに。
でも私の言葉を彼は否定した。
発信機を仕込んでいたのを知っていたら、今日必ず偽装すると。
自分だけで全部片づけようとすると。
彼は私が持っていた白い薔薇を踏みつける。
私が隠し持っていたナイフを見つけ出す。
彼はこの花の花言葉を知っているだろうか?
『相思相愛』
彼は無意識なのかもしれない。
でも私には彼のその行動が、私への気持ちの否定に感じてしまった。
「あかね。もう関わるな。俺も、二度とお前に関わらない。」
私がどんなに頑張っても、役に立とうとしても、彼は本当には振り向いてくれてはいなかった。
みんなが歩いている当たり前の、普通に生きるっていう道には戻ってくれていなかった。
「付いて来てって言ってくれたら、地獄だって一緒に行くのに。」
「俺は、お前を連れて行く気なんて毛頭ない。」
アクア君は、私がついて行くって言っても、連れていってはくれないんだね。
私の前から、大切な人はみんな居なくなっちゃうんだ。
「そっか、そうなんだね。一つだけ言える事があるよ。」
「アクア君は道を間違えた。」
「分かってる。」
私は君を救えなかったんだ……エゴでもなんでも良い。救ってあげたかった。
私の大切な人はみんな、道を間違えて。
嫌だなぁ。
後日、星野アイに隠し子がいると報道された。
彼はもう、止まらない。