第一話「はいみんな!マーリンお兄さんだよ~!」
やぁ、なんでかわからないけど寝て起きたら異世界に転生しました名無しです。なんで名無しなのかって? 簡単なことさ。なんでかはわからないけど仕事終わって風呂入って疲れてたから寝たら、洋風と和風を混ぜたよなうな建築の家にいたからさ。
おそらく寝たタイミングで何らかの力が働き俺は転生したのだろう。もしくは転生させられた、かもしれないね。その際にかつての俺の記憶をほぼ失ってしまったようでね。名前もわからなくなってしまったんだ。全く困ったものだよ。
仕方ないと思って取り敢えず顔を洗おうと洗面台に向かったら
「これ、マーリンやん」
見た目も声も……全て俺の知ってるマーリンそのものになっていた。声なんて櫻井孝宏さんだし。何この豪華すぎるプレゼント。嬉しすぎる。
って違うだろ!? そうじゃないだろ!? なんでマーリンになってんの!? どうなってんだよ説明しろよ!!
「はぁ……考えても仕方ないか」
俺は考えるのを諦めた。だって仕方ないじゃないか。こんなのいくら考えたって時間の無駄でしかないよ。時間というのね、無限にあるように思えて有限なんだよ。なら、有効的に時間を過ごさなければいけない。
今の俺はマーリンだ。マーリンになったんだ。なら、グダグダ考えてないで行動起こすのみだよ! いざ、我参るぞ! そうだなぁ、まずはこの家の周辺を探索してみるかな。
なんて考えてた時期が私にもありました。
あぁ、そうさ。何もなかったんだ。だけどね? まさか家の周りに何もないなんて思わないじゃないか! 流石に驚いたよ。
扉を開けた先が森いっぱいだったことに違和感がなかったわけじゃないんだ。でももしかしたら少しぐらい他にも家があるかなって思った程度なんだ。何だよ一つもないじゃないか。
もう知らないもんね。俺ふて寝するからね!
そうしてふて寝してから三百年が経ってしまった。寝過ぎだって? 知らないな。寝て起きたらそれぐらい経ってたんだ俺が悪いわけじゃない!!
そういや、嬉しいことにさ! 知らないうちに村ができてたんだよね!! 文明の始まりを見る機会を逃したのは非常に残念だけど……まぁ、そんなこと言ってられないよね!
「まぁ、ご挨拶をするのは別に今じゃなくてもいいかな。本当は今すぐ行きたいけど……」
そうやって自分の中で葛藤していた俺は、家の近くにある神聖なる泉にやってきた。ここにはいつ造られたかわからないと言われている聖剣が眠っている……え、誰が作ったのかって? ふふふ、俺だよ。
――来たのですね。剣の主よ
泉に漬かる台座に刺さった一振りの聖剣から、俺の頭に声が響いた。紫色の柄に少しばかり青く光る刃……おそらくみんなも知っているであろうあの有名な聖剣さ。その名も
「そりゃあね、今の君の持ち主は私だから。ちゃんと様子を見に来たりはするさ」
――そう言わず、毎日来てくれてもいいのに
随分と乙女のようなことを言うねこの聖剣は。本来ならハイラル王国の剣士リンクが抜くべき聖剣であるにも関わらず、それがなぜここにあるのか……? それは先程も言った通り俺が造ったのだ。
俺に鍛冶技術は全くない。だが、何年も練習してようやく成功させた始まりの聖剣。それがこの退魔の剣だ。最初は物凄く感動したよ。でもその後に疑問に思ったけどね。
なんで造れたの? ってね!
まぁ、そんなことは気にしても仕方ないか。だって造れたんだもん。別にずっとふて寝ばかりしてたわけじゃないんだよ!
――マスター。もう時期貴方は運命に出会う
「運命……私の予想通りであるならば、後のアーサー王……つまりアルトリア・ペンドラゴンだと嬉しいのだがねぇ」
――それはその時にならなければわからない
「ふふ、それもそうだね」
聖剣から送られた未来への言葉。それに心を踊らせながら、俺は聖剣の手入れを始めた。
朝になった。今日は昨日言った通り……村に行ってみようと思う! 新しい出会いが欲しい! 流石にずっと一人ぼっちはなんか寂しいからね!
「というわけで見てみたわけだけど……至って普通の村、のようだね」
村の中央では数人の子供が遊んでおり、店のあるところでは行商人が買い物をしている。中には首に鎖をつけている子もいる……いやはや驚いたね。この時代からもう奴隷は存在していたのか。
「なんとも……生きづらそうな時代だよ」
ここから俺はアルトリア・ペンドラゴンを見つけて無事にアーサー王になるように育てなければいけないのか。そのためにも旅をするべきか? それもそれで面白い気もするな。
「おや?」
中央の外れ、そこに子供達と一緒にいない金髪の美少女がいた。遊んでいる子供達のことを羨ましそうに見ているね。もしかして遊びに混ざりたいのだろうか?
いや、なになら様子がおかしい。少し見てみよう。
あ、金髪の美少女の所にボールが飛んでいった。咄嗟に拾ったみたいだが……他の子供に奪うように取られたな。
金髪の美少女はなにやら周りから睨まれている。なにやら事情がありそうだ。
「ちょっといいかな?」
子供達が去ったのを見て俺は金髪の美少女に話しかけた。少女は話しかけられたことに驚いたのか肩をビクッとさせながら俯かせていた顔を上げた。
「っ!!」
その顔を見た瞬間、俺は驚いた。なぜなら彼女の顔はアルトリア・ペンドラゴンを少し幼くさせたような顔だったからだ。強いて言うならアルトリア・キャスターかセイバー・リリィの顔というのが正しいかもしれないね。
「な、なにか……わたしに用、ですか?」
酷く怯えたように問う少女に、俺はどうしたらいいのかわからなかった。
「いやいや、別に用というほどではないよ。ただ、君はなぜ、一人でいるのか知りたくてね」
そういう俺に少女は警戒するようにまた俯いた。しまったな。軽率すぎたかな?
「……わたしが、人の子じゃ、ないから」
「なに?」
「わたし、人の子では、ないんです……だから、誰も遊んでくれない」
ふむ……人の子ではない。確かに彼女はそう言った。俺の耳に間違いはないはずだが……それにしては見た目は人なんだよなぁ。ちょっと他よりも魔力が多いだけで。
「安心したまえ。君は他の人と少しばかり違うだけさ」
「安心できる要素、ないです」
「ふふ、今はそうかも知れない。でもキミはツイている! なにせ、君の持つ力を制御できる人間が目の前にいるのだからね!」
分かりづらかったのか、少女は首を傾げた。
「つまり、私が君の師匠となり君の力を制御できるようにしてあげようってことさ」
「…………できるの?」
「できるとも! なにせ、私は天才だからね」
闇の深かった、希望の見えなかった少女の瞳に光が灯る。俺について来ればうまくいく、そう思ってくれただろう。というかそう思ってくれないと俺がキツい。
「わたし、ついていきます……そうすれば、なにかわかる気がするから」
「そうかい? それはなんとも嬉しい答えだね。おっとぉ、忘れるところだったよ。君の名前はなにかな? 私はマーリンというのだが」
「…………あ、アルトリア……です」
マジでアルトリアかよお前!
こうして、花の魔術師マーリンとブリテンの少女アルトリアは出会った。これから先、彼女たちに待ち受けているのがなにか、それは……続きをご覧ください