奸臣に反逆凌辱されたい内政チート転生姫様vs奸臣のフリをする善良ハゲデブ宰相 作:RKC
それと、作者の身体が闘争を求めて新作ゲームをやっていたのでこの金土日で話のストックが無くなりました。
明日から毎日更新ではなくなります。申し訳ありません。
またせて悪いが、これも趣味なんでな。
作者のペースに付き合ってもらおう。
貴族連合が戦争を仕掛けてきてから、ただでさえ忙しかった王宮はバケツをひっくり返したように忙しさを増した。
陛下も戦争中のためか、私ともある程度協力的にしてくれている。それでも、蛆虫を見るような目線は向けられたままだが。
宰相として戦争に必要な資金や食料、武器を調達、配備をしながら、僅かな時間の隙間を縫ってルーカスとも話をする。最近のルーカスは王宮の仕事に加えて貴族連合やクラウディン家の問題にも当たっており、非常に忙しくしていた。久しぶりの再会となる。
とはいえルーカスが問題に当たった甲斐もなく、こうして良くない時期での戦争という事態に陥った訳だが。
2か月ぶりに出会ったルーカスは少しやつれていた。自分の努力は実らず、クラウディン家の当主には今までと変わらず軽んじられたのだろう。それも当然か。
「お久しぶりです宰相殿。この度はこのような事態となってしまい、大変申し訳ありません」
「いえいえ、ルーカス殿は自分に出来る事を可能な限りやったのでしょう。悪いのは貴族連合やクラウディン家の当主です」
深く頭を下げるルーカスに慰めの言葉をかけながら顔を上げさせる。
「ルーカス殿の言葉に彼らは耳を傾けたのですかな?」
ルーカスは目を伏せ、歯を食いしばった。
「……“卑しい妾のガキが賢しらに指図するな”と……」
「賢しらなどと……何と横柄な。ルーカス殿は真に賢い者であるというのに」
ルーカスの肩を掴みながら同情する。
「……宰相殿にそう言っていただけるだけで、私は満足です」
するとルーカスは諦観の混ざった笑みを浮かべる。恐らく、私に認められたことによる喜びと、もう両親に認められる事は無いのだろうなという諦め。
この2か月で私の思った以上にルーカスは弱っているらしい。ここが仕掛けどころか。
「一つ提案があります、ルーカス殿」
「なんでしょうか?」
少しだけ言うのを躊躇う。一度失敗してしまえば二度目は無い。本当に今が仕掛け所なのか? しかし、これ以上遅らせると取り返しがつかない可能性も……。
一度深呼吸をしてから私は口を開いた。
「クラウディン家を裏切り、私の側へ付きませぬか?」
ルーカスはそんな事を言われるとは思っていなかったのだろう、目を丸くしている。
「私に、親を裏切れと……?」
「えぇ。とはいえ、裏切る相手は親と呼べるかも怪しい男ですがな」
私の言葉にルーカスは少しだけ怒りの色を見せる。
「ち、父はれっきとした私の親で……血のつながりも…!」
「母方の血だけを槍玉にあげ、自分の血を継いでいることに言及しない男との血のつながりがそれほど大事だと申されるのですかな?」
「っ……!」
「大事なのは血の繋がりではなく心の繋がり。そこまで冷遇されて置きながらまだ気づけないのですか!?」
ルーカスが怯んだ瞬間に私が声を荒げると、彼は更に身をすくませる。一転、彼に寄り添うように声を和らげる。
「少なくとも私はルーカス殿の事をこんなにも思っていると言うのに。貴殿であれば必ずや陛下の隣に並び立てる器となるでしょう」
「……なぜ、私の様な者をそこまで。いや、そもそも陛下の隣に並び立てるとはどういう……?」
ルーカスの疑問ももっともだろう。彼からすれば私はクラウディン家に寝返った奸臣というイメージしかないはず。
この説得が失敗すれば、二度目は無いのだ。全てを話して全力投球するしか無い。
「話して信じて貰えるかは分かりませぬが、一応私は陛下の事をお慕いしているのですよ。ただ、昔にすれ違いがありましてな。それ以来、私は陛下の信用を失ってしまったのです。
それでも陛下の様に民を第一に思う方の手伝いがしたく、こうして泥を
「そんな事は!」
今度は逆に、ルーカスの方から食ってかかって来た。
「……忠義が認められない辛さは私も良くわかっているつもりです」
同情され、不覚にも涙が零れてしまいそうだった。ルーカスを篭絡しようというのに、思わず私が篭絡されそうになっている。
私が堪えている間に、ルーカスは続けて言う。
「それにしてもそういう事情だったとは……。私が宰相を引きこもうとしたのは全くの間違いだったわけですね。これじゃあ、両親に認めてもらう事などとても……」
ルーカスは縋るような表情を向けてくる。
「こんな私でも受け入れてくださると……?」
私は思わずルーカスを抱きしめていた。
「ルーカス殿でなければいけないのです! 貴殿でなければ今の陛下を支える事は出来ない!」
自分でも感情的になっている事は理解していた。しかし、理性では止められない。今なら少しだけ陛下の気持ちを理解できる。
今、私がルーカスに向けている感情の数十倍の想いを陛下はルーカスに向けているのだろうと。
ルーカスは突如抱き着かれた事に驚きながらも、私を抱き返してくる。
「……今より私はクラウディン家を裏切り、宰相殿の下につかせていただきます」
「良く言ってくれましたな……!」
過程で色々あったが、とにかく私はルーカスを篭絡することに成功した。これで陛下の心は守る事が出来る。
「それで私は何をすればよいのですか?」
熱く交わした抱擁を解き、お互い椅子に座り直した後にルーカスが聞いてくる。
「ルーカス殿は今まで通り陛下を支えてくれれば問題ありませぬ。陛下は随分と貴殿の事を信頼しておられる」
「承知しました、これまで通り陛下にお仕えさせていただきます。また、宰相殿の汚名も返上してみせましょう。私が言えば陛下も聞いてくれるはずです」
それが出来ればどれだけ素晴らしい事か。しかし、時すでに遅しだろう。ルーカスの不正の証拠を盾に脅すような真似をしたのだ。誤解と言うには余りにもやりすぎてしまっている。
「私の汚名はもう返上できませぬよ。放っておいてくだされ」
「しかし……!」
「それよりも今はこの戦争にどう対処するかを話し合うべきです。戦いは武官の仕事ですが、物資の用意や輸送の手伝いは出来るでしょう。
心配なのは今回の戦争で民心が離れていかないかですが……。陛下のあの演説のおかげで民の意気は高い様子」
ルーカスは話題の転換に納得できないようだったが、話の流れについてくる。
「兵士達も同様でした。政治だけでなく演説もあのように得意とは。陛下の様な人を天才と呼ぶのでしょうね。
一方で貴族連合の方は酷いものです。兵士の士気はともかく、農民や徴兵された民兵の士気は非常に低そうに思えました。そして連合軍なので統率にも難がありそうです。コーヴァス将軍という絶対的な指揮官のおかげで何とかまとまっているようですが」
「対してこちらは徴兵を最低限に抑えている。兵の数では負けているが、統率と士気、それから兵糧に関しては勝っているでしょうな」
「すると、我々の出来る事で一番重要なのは兵士の士気を鈍らせないように、物資を滞りなく届ける事でしょうか。とはいえ陛下が領内の道の整備や、荷車や馬車の改良をされているのであまり心配する事も無い……楽な仕事です」
あぁ、こうして誰かと政治の事、陛下の事について語り合う事のできる日が来るとは。喜びで滲みそうになる涙を堪えながら、会話を続ける。
「しかり。陛下の功績の数々は後世まで語り継がれる事でしょうな。しかし、この戦争に負けてしまえばその功績も奴らに奪われてしまう。絶対に負けるわけには行きませぬぞ」
「えぇ。私もクラウディン家と通じたままにしておき、逐次情報を仕入れるようにいたします」
宰相としてはルーカスにそうしてもらうべきなのだろうが、ノッパラとしてはスパイがバレた時にクラウディン家に何をされるか分からない事を思うと、素直に首を縦に振りにくかった。
完全に感情移入してしまっている。とはいえ、今はこの国の分水嶺ともいえる重大な時期。理性を持って正しい判断をしなければいけない。
「頼みましたぞ」
「それから私が握っている宰相の不正の証拠を処分し、横領した資金もそのまま残っているので返却いたしましょう。正式な手順は踏めないので、帳簿のどこかで帳尻を合わせる必要があるでしょうが」
「私もルーカス殿の不正の証拠は処分し、資金も返却しなければいけませんな」
ルーカスは私の発言に驚いた表情を浮かべる。
「私はすでに一度クラウディン家を裏切った身。もう一度裏切る可能性を考え、抑止力として不正の証拠を控えておかないのですか?」
言われてからその可能性に気づいた。どうにも今の私はルーカスに肩入れしすぎている。
「……そう、ですな。ルーカス殿には申し訳ないが、証拠を控えさせてもらいましょう」
「当然の判断です」
“ルーカス殿の事を信用しているから処分しても問題無い”、と言っておき、信頼を稼ぎながら、本当は隠し持っておく事も出来た。しかし、ルーカスに嘘をつく事が今や心苦しいと思うようになっている。
僅かな間でよくもこれだけ情を覚えるようになったものだ。ただ、嫌な感じはしない。
その日は胸に痛みを覚えることも無く、久しぶりに熟睡することができた。
それから日付も進み、ついに出陣の時が来た。実戦となれば武官と兵士の領域。私が口を出すことは余りない。しかし、1つだけ文句を言いたいことがあった。それは陛下の出陣だ。
確かに王族が出陣する事で士気が上昇するのは理解できる。先日、あれだけ見事な演説をしたばかり、加えて1人しかいない王族が戦場に赴くのだ。愛国心のある兵士は背水の陣ならぬ背王の陣と化すことは想像に難くない。
しかし、それを考慮しても国のトップが最前線に向かい、万が一の事態が起こる事を防ぐべきでは無いのか。
しかし、将軍は“陛下も出陣を望まれていた”と言う。一体何の意図があって……。私が聞いてもまともな話にならないと思われるため、代わりにルーカスに聞いてもらった。
曰く、「大勢の人間が死ぬのだ。この目に焼き付けておきたい」と。
戦争はある種、外交の手段だ。国を守るためには戦争をする必要も出てくる。しかし、手段の一つだからと気軽に実行しないために、現場でどれほど凄惨な事が行われているのかを目に焼き付けておきたいとお思いなのだろう。
しかし、危険は危険だ。思いとどまるようルーカスに説得してもらったが、結局陛下は戦場に赴かれてしまった。
こうなってしまってはもう祈る他ない。どうか無事で帰ってきますように。あわよくば初戦にも勝利して欲しいが……。
数週間後、王宮に伝令が届く。ナリヤト湖の北にて我が軍1万5000、敵軍3万がぶつかりこちらが圧勝したと。こちらの損傷は千名に対して、敵の損傷は推定2万らしい。
一般的に戦争の被害というのは多くても部隊の3割程度しか損耗しない。どれだけ多くても5割程度。なにがどうなれば6~7割の被害を与えられるのだろうか。しかも敵に比べて半分の兵士で。
もしや陛下がなにか策を……? あの方を見ていると何でも出来てしまうように思える。
蹂躙とも呼ぶべき大勝。その凄惨な現場を目の前に、陛下が心を痛めていないかが気にかかる。しかし、遠く離れた私に陛下の心を知る術はない。
とにかく、勝利の知らせに私は喜んだ。ルーカスと一緒に喜んだ。そして次の知らせに唖然とした。
陛下は引き続き前線に残るらしい。
初戦で大きく相手の戦力を削ったため、無理に士気を上げる必要もない。一度戦争を目にし、その凄惨さも体験した。どうして前線に残る必要があるのか。
皆目見当もつかなかったが、私の声は物理的にも精神的にも陛下には届かない。代わりに陛下が信頼を置くルーカスに陛下を連れ戻すように説得する役目を託した。
翌日、準備を終えたルーカスが護衛と一緒に前線へと向かうのを見送りに行く。
「頼みますぞ、ルーカス殿」
「……」
昨日はやる気に満ち溢れていたルーカスだったが、今はどこか上の空。
「ルーカス殿?」
「あ、いえ、申し訳ありません。本当にあの陛下を連れ戻せるかどうか、少し心配になってしまいまして……」
「確かに陛下は一度こうと決めたら頑固なお方ですからな。しかし、ルーカス殿であればきっと成し遂げられるはずです。仮に失敗したとしても仕方のない事。
その時は……陛下の護衛を厚くするよう将軍に伝えておいてくだされ」
「承知しました。それでは行ってまいります」
ルーカスと彼の護衛は馬を走らせて行ってしまった。私は送り出した彼の分まで内政に励まねばならない。
しかし、不思議と胸の内が騒ぐ。何か懸念点があっただろうか。その胸騒ぎが現実のものとなり、私の前に現れるのは数日後の事だった。
数日後、何故か前線に向かったルーカスの護衛が引き返してきた。何でもルーカスが私に手紙を送りたいとの事。何か不測の事態でも起きたのかと、気を引き締めて護衛から渡された手紙を見る。
“宰相殿、あなたは血の繋がりではなく心の繋がりが一番大事だとおっしゃっていました。私も血の繋がりは捨てたつもりです。しかし、血の繋がりは呪いの様に残っていました”
いつもは端的に事を伝えてくるルーカスだが、この手紙の出だしはやけに詩的だ。
“私が王宮を
その文面を見た途端、ひどく嫌な予感がした。
“成功するにせよ失敗するにせよ、そんな事をすれば私が処刑されるのは確実。父は相変わらず私の事を道具のようにしか思っていません。
しかし、手紙には「今はお前だけが頼りだ」と書かれていました。一文、たったその一文で私は金縛りにあったようでした“
“結局、私は真に親を裏切る事はできなかったのです。スパイで潜り込んだとはいえ、私を重用してくれた陛下を害する事に抵抗を覚えなかったわけではありません。
ただ、少し前に陛下が宰相殿に抱いている誤解を解きに行きましたが、陛下は宰相殿の事を一切信用しませんでした。宰相殿は陛下の事を一途に思っていられるにも関わらず。
その時に抱いてしまったのです。陛下への怒りを“
“ただ、私は宰相殿を裏切ることも出来ない。だからこそ、私は陛下を暗殺ではなく拉致することにしました。宰相殿に手紙を送ったのと同時に、護衛の目を盗んで父にも手紙を送っております。
身柄の引き渡し場所は前線近くにあるラナウス森南部の別荘。父がよく鷹狩りに
“万が一私が陛下の拉致を成功させたとしても、宰相殿が陛下をお助けすれば誤解も解ける事でしょう。
……自分でも分かります、今の私は支離滅裂で狂っている。宰相殿は私を賢いと認めてくれましたが、そんな事は無かったのです。ただ、感情に振り回されるどうしようもない愚か者でした。父の言が正しかったのです。
早馬を飛ばしてください。私を終わらせるために”
私は手紙を放り捨て、急いで王宮を発った。