奸臣に反逆凌辱されたい内政チート転生姫様vs奸臣のフリをする善良ハゲデブ宰相 作:RKC
エッチな奴
それで燃え尽きてしまい、こちらの投稿が遅くなりました。
しかし、投稿が遅くなったことについては謝りません。投稿頻度についてだけは意地でも謝りません。趣味で締切に追われたくは無いからです。
私はつくづく弱い人間だ。信念など無く、ただ誰かに認めてほしいという浅ましい動機で非合理な行動を取り続けてきた。
その結果、私の事を道具としか思っていない親を無意味に信じ、私を信頼してくれた宰相と陛下を裏切ってしまった。
宰相と陛下はどちらも無事だったようだが、そんな事実は気休めにしかならない。私にはもう何もない。唯一私の事を受け入れてくれる2人の事も、自分から捨ててしまった。
この期に及んで自分の事を考えている事に嫌気が差す。さりとて宰相や陛下のように、国のためをなどと崇高な理由を掲げる気力は一切ない。
私が頑張るモチベーションはやはり誰かに認めてほしいという不純な物だけ。
あの夜、宰相に見逃されてから考える時間はいくらでもあった。手持ちの金で宿泊施設に泊まり、最低限の飲み食いと睡眠以外にはベッドの上でたまに流れる涙を拭うだけだったから。
“そうやって死ぬ事が責任を取る事なのか!? 少なくとも私を裏切った分についてはまったくの見当違いだ! ……私に殺させるな”
宰相が私を見逃してくれた時の言葉を思い出す。
責任。
……今更、私が責任を取れるのだろうか。信頼を裏切った責任をどう取れば良い? 責任を取れば2人が私を再び認めてくれるのだろうか。
気づけば私は、死んだ父と同じく悪徳貴族の連合を率いるザラミス家、レントール家の当主に連絡を取っていた。
当主二人は父から私の事を聞いていたらしい。“騙されやすいバカだ”、とでも聞いていたのか、取り入る事は簡単だった。自分が騙されるとは思ってもいないらしい。
適当な嘘で二人をおびき出し、お互いがお互いを裏切ったように思わせる状況を作り出した。そうすると面白いように二人は同士討ちを始め、お互いの護衛が損耗した所で私が二人の首を取った。
私の計画は驚くほど上手くいった。別に失敗して死んでも、それはそれで良かった。その気負いのなさが成功を呼び込んだのだろうか。
その後私は自分の顔を焼き、灰を吸い込んで喉を枯らした。顔と声が違えば、追手も王宮の役人たちも私が誰か分からなくなる。
そうして追手から逃れつつ、私は再び王宮へと戻って来た。貴族連合の統率者二人の首を土産に仕官したいと言うと、かなりの好待遇で迎えられた。
しかし私が迎えられたのは文官ではなく武官。たった一人で敵の首を取って来た事から、腕っぷしや戦略性に期待されたのだろうが、文官の仕事に比べるとあまり得意では無い。
だが文句を言うつもりはない。出来る事を毎日積み重ねていた。そうしていると必然訪れる再会の時。
「貴殿が最近噂になっている武官ですかな?」
宰相。文官と武官で部署が違うとはいえ、同じ場所で働いているのだ、顔を合わせる事もあるだろう。
そう覚悟していたはずなのに、心臓がやけにうるさい。
「確か名前はスカール殿でしたかな? 仮面が特徴的なのですぐに分かりましたぞ」
「は、はい、仮面越しに失礼します……」
「なんでもザラミス家とレントール家の当主二人の首を持って仕官に来たとか。……どういう動機で王宮に仕えようと思ったかまでは聞きませぬが、その手腕には期待しておりますぞ」
期待。宰相は一度裏切った私に期待していると言う。いや、顔も声も焼けてしまい、私の正体を知らないのだからそれは普通だ。
そうだとしても嬉しかった。誰かに認めてもらう事にしか喜びを見いだせない醜い私が期待されて嬉しくない訳がない。それもあの優秀な宰相に。
しかし私がルーカスだと宰相が知れば、一体どんな反応をするのか。……考えたくもない。
正直な所、宰相か陛下と会えば、自分の正体を晒そうと思っていた。ただでさえ裏切ったのにも関わらず、二人を騙したままでいたくない。
正体をバラして“罰として死ね”と言われれば死ぬつもりでいた。
だが、そんな覚悟は今の一瞬で吹き飛んだ。承認という垂涎の餌を前に、私は再び浅ましい畜生へと成り下がってしまった。
相変わらずの自分に失望しながらも、宰相と適当に言葉を交わしてその場は解散となった。
私が士官してから2、3週間ほどが経った。するともう一人の相手、陛下と廊下で偶然すれ違う。陛下は療養がてら隣国に行っていたと聞くが、帰って来たのだろう。
私のせいであんな目に遭ったのだ、長い休みを取ったとしても不思議ではない。自分のしでかした事の重大さにじくじくと胸が痛む。許される事ではないだろうが、すぐにでも面と向かって謝罪したかった。
とはいえ、自らの浅ましさが陛下に正体をバラす事を躊躇させる。短い間だが私は結果を残し、役人たち……特に宰相には一目置かれるようになった。
そのように私が欲して止まなかった承認を受けている状況で、一番恨まれているであろう陛下に正体を明かすようなリスクの高い行為はとても出来なかった。
私は陛下に対して失礼の無いよう礼だけをしてその場をやり過ごそうとしたが、陛下は私を呼び止める。
「そこの仮面男。私がレア王国に行く前にお前の様な奴は見かけなかったが……何者だ?」
陛下が私と正対する。
“~~~~……ッ! ルーカス! お前えええぇぇぇッッッ!!!”
瞬間、私が裏切っていることを知った陛下の叫びがフラッシュバックした。金縛りにあった様に動けなくなり、嫌な汗を仮面の下でかいていると、これまた偶然宰相が近くを通りかかった。
罪悪感に支配される私の代わりに、宰相が私について説明をしてくれた。陛下はそれをいたって普通に聞いている。
以前であれば、陛下は宰相の事を
自分の行いを正当化するわけではないが、私の裏切りで窮地に陥った陛下を宰相が救ったため、誤解が解けたのだろう。そのことを思うと、ほんの少しだけ気休めになった。
「仮面はなぜ付けている?」
陛下に突然そう問われた。私は“お目汚ししますが”、と前置きをして仮面を取る。
仮面を剥げば焼けた醜い顔面が露出する。私はもともと整った顔立ちだった。だからこそ気づかなかったが、顔というのは人の魅力を表す上で大事な要因だったらしい。
火傷を負ってからは私を見る目が前より否定的になった。それこそ、顔が醜いというだけで私の存在が否定されているような気になる。
追手を撒くためと王宮に入り込むために必要だったとはいえ、惨めな気持ちになる。だからこそ仮面を付け始めた。
陛下はそんな私の醜い顔をジロジロと見回して一言。
「火傷か、私は人の顔を覚えるのが苦手でな。分かりやすくて良い」
「……き、恐縮です」
建前では無いと思う。陛下が私を見る目は嬉しそうだ。
火傷跡があるから覚えやすい。そう言われて少しだけ救われた気がした。同時に陛下を裏切ったことの罪悪感が増した。
「……ふむ、スカールだったか。ちょっとこっちに来い」
言われるままに陛下に近寄る。その距離は50cmほど。
「違うもっと近くに……まどろっこしい、しゃがめ」
陛下はそう言うや否や、私と鼻が触れそうな距離にまで近づいてくる。陛下の顔は可愛い系の顔立ちに反した釣り目が特徴的な絶世の美少女。しかし、その顔が近付いて来ても私の胸に湧くのは罪悪感ばかり。
陛下と私の身長差は40cm程もあるだろうか。私が中腰で陛下が背伸びをして、ようやく鼻が近付く程。これほど未成熟な陛下を私は裏切り、その心に深い傷を残してしまった。
中腰の体勢からそのまま膝を付きそうになる。
「喋ってみろ」
「え……こ、こうでしょうか」
なぜそのような命令をするのだろうか。私がそう疑問に思ったその時、陛下は体を身震いさせる。
そして離れ際に私の腰から剣を抜き、私の喉元に突き付けて来た。
「へ、陛下! 一体何を……!」
宰相が驚きの声をあげる。私も突然の事に混乱していた。
陛下はさっきまでの穏やかな雰囲気を一変させ、氷の様な無表情を浮かべている。喉元の剣も、私の皮膚を切り裂くほどにまで押し進められている。
陛下からすれば初対面の人間にここまで敵意を向ける合理的な理由は一つだけ。私が裏切り者のルーカスだという事に気づいたのだろう。
陛下は私の顔を近くで観察し、耳元で声を聞いていた。顔や声は変わっているはずだが、ルーカスの時の特徴を何か感じ取ったのかもしれない。
思えば名前もルーカスを反転しただけの“スカール”。勘が良ければ気づくようなアナグラムだ。
この名前を名乗った時は、別に正体がバレてもそれはそれで良い、処刑という罰を受けるだけだと達観していたが、今となっては後悔しかない。
……いや、後悔などと思ったがそれは違う。これで良かったのだ。私の正体はバレるべきだ。
「どうする?」
陛下は相変わらず無表情でそう聞いてくる。
「……陛下のお心のままに」
宰相は私を見逃してくれたが、陛下はそうでないと言うのならば、甘んじて受け入れよう。それが責任を取るという事だ。陛下の気も晴れるだろう。
私は目をつぶるが、想像していた時がいつまでも訪れない。気づけば陛下は私の喉元から剣を離し、鞘に納めている。そして一言。
「仕事に励め、それがお前の責任の取り方だ」
陛下も宰相と同じように、私に死ねとは言わなかった。
“仕事に励め“
私の裏切りによって生じた不利益以上の利益を仕事で出せ、と言いたいのだろう。確かに私が死んだところで国にとって何の利益にもならない。
ただ、一瞬で全てを終わらせたかった私としては苦しい宣告だった。私が責任を取り切るにはいつの事になるのだろうか。それまで私はこの罪悪感を抱えたまま生きなければいけない。
ただ、陛下が私に裏切り以上の成果を出せると期待してくれている事は、素直に嬉しかった。
この時に私は覚悟を決めた。今後何があろうと宰相と陛下の二人だけは裏切るまいと。そうでも決めておかないと、またフラフラと尻を軽くしてしまいそうだ。
「ところで宰相、あれからどうだ? 私で勃起したか?」
そんな私の覚悟を他所に、陛下がとんでもない事を宰相に向かって口走る。
「へ、陛下! こんな所でそのような……!」
「尻はデカい方だと思うから、問題は胸だろう。寄せてあげて……どうだ?」
あろうことか陛下は小さな胸を放り出し、自分の手で何とか大きく見せようとしている。宰相は慌てて止めさせていた。
「陛下! 本当にそういう事は止めてくだされ!」
宰相が涙を滲ませながら強く言うと、渋々といった感じで胸を収める陛下。
「む、昔の傷を掘り返して悪かった。だから泣くな……」
陛下は宰相の背中を何度か擦って、バツの悪そうな顔でこの場を去っていった。目の前で起きた事が一片も理解できなかった私は、気まずいが宰相に説明を求めた。
曰く、陛下は凌辱されそうになって以降、気がふれたのか変態的な行動を取るようになってしまったらしい。
それを聞いた瞬間、愕然とした。私のせいで陛下があのような痴女に……。本人に気がふれているという自覚が無いのが酷くいじらしい。
私の裏切りは取り返しのつかない被害を生み出していたのだと、目の前に突き付けられた。私が責任を取り切れる日は来るのだろうか。
それを思うと胃の中に重石を詰められたような気持ち悪さが襲ってきた。
しかし、立ち止まっている暇は無い。今できるのはこの国に可能な限り尽くす事だけ。
「宰相殿、一つ打ち明けたいことが。今はスカールと名乗っていますが、私の正体はアナタを裏切ったルーカスです」
まずは私の正体を宰相に明かす。不安要素は先に潰しておきたい。後で私の正体がバレて、ゴタゴタするのは避けなければ。
私の発言に宰相は言葉を失い、目を丸くしていた。陛下の奇行と合わさり、少し衝撃が強すぎたかもしれない。信じられないというのもあるだろうが。
「私の不正の証拠はまだ持っているのですか?」
ルーカスと宰相しか知りえない情報を私が言うと、相変わらず目を丸くしたままだが、私がルーカスであることを信じてくれたようだ。
宰相はえも言えぬ表情で私を睨みつけてくる。私を一度見逃したとはいえ、その後で陛下があのようになってしまったのだ。このような目を向けられるのもしょうがない。
「宰相殿が私を気に入らなければ好きにしてください。貴方の立場なら私を排除することも不可能ではないでしょう。
ただ、私は武官としてこの国を守ります。それが私の責任の取り方ですから」
そう宣言して宰相に背を向ける。
「……頼みましたぞ」
背中から掛けられた声に、泣きそうになってしまった。