奸臣に反逆凌辱されたい内政チート転生姫様vs奸臣のフリをする善良ハゲデブ宰相   作:RKC

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21話 エリュシオンの天使陛下

 さて、バカンスも終わった事だし本格的に王国喪失計画を考えよう。現代人の叡智で農業、工業共にこれからどんどん発達していくこのエリュシオン王国を滅ぼすのは容易ではない。

 

 周りにこの国と同等の規模を持つ国は2つほどあるが、その二つの国は仲が悪い。勝手に手を組んで同時に襲い掛かって来る可能性はほとんどないだろう。

 

 仮にその二つの国が同時に戦争を吹っ掛けて来たとしても、下手したらこの国勝ちかねないんだよなぁ……。

 

 国同士の戦争ともなれば長期化するだろうし、長期化すれば土地当たりの食料生産量や一人当たり食料生産量で勝るこの国が有利。

 

 加えて、新しく仕官してきたスカール君が優秀な将軍の戦術や思考を聞き出して体系化し、武官に広める活動をしているみたいだし。何なら本とかも書いて複製させているから、優秀な指揮官の長期供給という点でも我が国が優れ始めている。

 

 困った、ちょっと負けられない。

 

 もっと広範囲の国に喧嘩売る方法ねぇかな……。それもこう、いっぺんに喧嘩を売れる

効率的な神の一手が。

 

 あれ、伝令君。何の用? ……領内で疫病が流行り出したって? それに周辺国でも?

 

 まぁ中世レベルの衛生環境、衛生観念じゃあ疫病も流行るわな。それにワクチンがあるわけでもなし。

 しかも医者ですら“瀉血(しゃけつ)しろ”だの、“火の近くで瘴気を清めろ”だの、バカみてぇな事言ってるし。

 

 さてどうするか。適当に疫病を広げて国力ダウンさせるか? そうすれば負けやすくなる。しかし、それは妥協だろう。

 

 高いところから落ちた方が喪失感は大きい。そのために積み上げているのに、それを崩すというのは自らの性癖に対してあまりに失礼だ。

 

 やはりきちんと疫病対策をするべきか……いや、待て。

 多くの国に喧嘩を売る。疫病の蔓延を防ぐ。二つを同時に成す神の一手が降ってきた。

 

 この大陸には広く信仰されている宗教が一つある。エッセ教。

 私の国でも広く信仰されており、それは周辺国においても同様だろう。そして、宗教と言うのは民衆の知識や常識にも深く関係している。

 

 医者が“火の近くで瘴気を清めろ”とかほざいているのも、病気は穢れた空気に触れる事でかかるものだという瘴気説を教会が唱えているせいだ。実際には細菌やウイルスが引き起こしているにも関わらず。

 

 それに教会は診療所も兼ねており、間違った知識を広めるだけでなく、自らも実施しているという状態。

 

 無知ってのはそれだけで罪だね。

 

 ともかく、その状況で私が画期的な治療方法を編み出したらどうなるだろうか? 間違った治療方法を広めているエッセ教の面子は丸つぶれ。

 

 人の信仰心で成り立っている宗教が面子を失ったらおしまいだ。怒ったエッセ教の偉い方は私を敵視するに違いない。そこで神敵と定められようものなら、エッセ教を信仰する他国も私を敵視する。そうなれば包囲網が完成する事だろう。

 

 自国の戦力は減らしたくないから、国内のエッセ教信者は私の演説で黙らせる。そうすれば積み上げた物を崩さず、他国に全部ぶっ壊して貰えるわけだ。

 

 なんという冷静で的確な判断力なんだ!! 我ながら恐ろしい。

 

 異世界だから前世とは異なる病気が広まってるかもしれないけど、もしかしたら私の知ってる病気かもしれないからヒアリング。

 

 じゃあ私が今流行ってる病気の病名考えたるから。ちょっとどんな症状があるか教えてよ~。

 

 伝令が言うにはな、病人の皮膚が所々黒くなってるらしいねん。

 

 ……ペストやん。その特徴は完全にペストやないかい! 皮膚が黒くなって死ぬことから、黒死病と言われていたほどやねんから。ペストで決まりやん。

 

 けど伝令が言うにはな、症状としては発熱や不快感、下痢に悩まされて米のとぎ汁みたいな便が出るらしいねん。

 

 んー……ほなペストちゃうか~。ペストはそんな可愛いもんじゃないよ? 私の前世でも未だにワクチンが開発されておらず、初期症状の内に抗生物質を投与して治すしかないねんから。中世に感染したらほぼ100%死ぬよ!?

 どちらかというと、それはコレラの症状なんよ。皮膚が黒くなってるのはメラニン色素の過剰分泌とかで、実際はコレラじゃないん? え~、もっと特徴教えてくれる? 

 

 伝令が言うにはな、今の所病人が多いのは“港”と“伐採拠点の近く”と“比較的貧しい地域”らしいねん。

 

 ペストやないかい! 港は外国から病気が入って来る一番のスポットやからどんな病気でも病人が多いけど、“伐採拠点の近く“と”比較的貧しい地域“はペストやがな!

 ペストは肺ペスト患者の飛沫もあるけど、基本的にはネズミとかのげっ歯類やノミを媒介に広まっていくねん!

 

 “伐採拠点の近く”は木を切りすぎて自然破壊しちゃったから、ネズミが街にまで下りてきてる!

 ”比較的貧しい地域“は寝床の藁や衣服をこまめに取り換えてないからノミが繁殖してもうてんねん!

 もうペストに決まりやがな~!

 

 という訳で、異世界の未知の病気に振り回されながらも疫病対策を考える。こんな時に役立つのは疫学。

 

 疫学とは統計学を医学に応用したもの。簡単に言うと、“あそこの井戸の水飲んでる奴、だいたい病気になってね? 飲むの止めとこうぜ”、ってなもんだ。

 

 かのナイチンゲールも統計学を駆使して衛生管理の大切さに気付いたと言われている。クリミアの天使と言われている彼女だが、ゴリゴリの統計学者でもあるのだ。

 

 感染経路については多少知識があるから、適当に当たりを付けてそれについて調べてもらう。

 

 水、排泄物、蚊、ネズミ、鳥、人間。そこらへんに注意しながら病気の人が多い地域の共通点を調査して来てね。

 

 調査が完了するまではとりあえず3密を避ける。

 

 そこ! 密です、密です! 話す時はマスクをして距離は2m以上離れる! 火薬作成の副産物で石鹸が大量にできてるからちゃんと手洗いする! 

 酒を蒸留してアルコール濃度の高い蒸留酒を作成! 良く触る所は蒸留酒でこまめなアルコール消毒!

 

 え、何でそんな事をするのかって? 病気は細菌っていう微生物が引き起こすんだよ。ほら顕微鏡作ってやるからこれで……いや、ちょっと倍率低くて見えねぇわ。

 

 ……うるせぇ! 我陛下ぞ? 文句言ってんじゃねぇ!!

 

 久しぶりに強権を用いて周りに感染症対策を強制する。そして私は感染を避けるために自室にこもった。

 

 こ、こんな病原菌が存在する所にいられるか! 私は部屋に戻らせてもらう!

 

 しばらく引きこもっていると、感染経路特定に必要な情報が集まった。病人が多いところの特徴として、“人が密集している地域”が挙げられた。

 

 症状に下痢もある事だし、そういう病気のよくある特徴として感染者の排泄物、飛沫が感染経路かな? 無症状時期の感染者が共用井戸を使って、そこからも感染したと考えられる。

 ネズミとノミは全然関係無かったわ。伐採拠点は港から人材が流入してただけ。比較的貧しい農村地域では大きな平屋を仕切りで区切って複数世帯が住むとかいう、10世帯住宅みたいなのが流行ってたからパンデミックが起きてただけらしい。

 

 とりあえず、皆が使う場所は一回使うごとに諸々をアルコール消毒! 水を飲む時は煮沸消毒しろ! それが嫌ならビール以外飲むな! 感染者は隔離して一か所に集めろ!

 

 各地域に兵士を派遣して、上記の命令を守らせる。破った奴は見せしめに鞭打ちにする。それぐらいやらないと防疫の大切さを理解していない馬鹿共はルールを守らん。

 

 それと感染者を集める場所だけど……あ、教会さん! たしか教会は診療所も兼ねてましたよね! すいませんが感染者を預かって頂けません?

 

 いや、まさか神の御使いである司祭様が病人を突き放すような惨い真似をされるとはとても……。あ、預かって頂ける? あざッス!

 

 はいパンデミック。司祭、シスター、聖職者! 全員お腹ピーピーでワロタァ! 見ろ! 教会の教えは嘘っぱちだ! 本当に神のご加護があるなら司祭は病気になどかからないはず!

 

 ここらで軽く宗教にジャブを打っておこうか。司祭には瀉血とか火であぶったりするバカみたいな治療ではなく、適切な治療をしてあげる。

 

 司祭は“瀉血してくれ、こんな治療で治るはずがない”、と喚いている。

 

 そうはいかぬ。神に仕えるお前の体自身で、将来“神敵”予定であるこの私の正しさが証明されるのだ!

 しかし、お前がそこまで懇願するなら他のシスターや聖職者にはお前の望む治療を受けさせようでは無いか。

 

 他の聖職者が瀉血する一方、司祭は経口補水液をガボガボと飲まされながら下痢を垂れ流しにしている。“止めろ、こんな辱めを受けるぐらいならいっそ殺せ”と泣き始めた。

 

 そうは言うが体は正直だぞ? 峠を越えて肌には艶が増し、声にも生気が戻っておるわ。一方でシスターや聖職者はどうだ? 全員死んでしまったぞ?

 

 はい、司祭完全復活。現代人の叡智に神が勝てるかよぉ!

 

 人に劣る知性の神ならば、神の存在などフヨウだ!

 

 じゃあ司祭君、今の問題発言をちゃんと法王に伝えてね。なんなら教皇庁までの交通費出そうか?

 

 これで私が神敵に選ばれる可能性は極大。仕込みは上々、後は仕上げを御覧じろ状態だね。

 

 防疫方法がきちんと実施されてるおかげか、私の国では他の国と比べて疫病の拡大が抑えられている。隣国の女王様であるクレアにも教えてあげたから、向こうでも疫病の拡大は抑えられてるみたい。

 

 お、噂をすればクレアちゃん。友好のために我が国に来てくれたんだ。……うん、でも今は緊急事態宣言出てる最中だからさ? ちょっと帰ってくんない?

 

 というかクレアちゃんがこっちに来るって私知らないんだけど。部屋に籠るか司祭を正しい治療法で辱めるかのどっちかしかしてなかった。そのせいで(まつりごと)は宰相に任せてたから、私に連絡が来てなかったようだ。

 

「……うぅ……っ」

 

 あ、クレアちゃんがウンコ漏らしちゃった。しかも米のとぎ汁みたいな奴。

 

 クレア殿! それは……コレラにございます!

 

 ちなみに病気の名前は私が付けた。変な名前つけられるより私が知ってる似たような病気名で管理した方がやりやすいと思ったからだ。

 

 今流行ってる病気、前世のコレラと違う点は強い発熱があるのと体に黒い斑点ができるぐらいだしね。黒い斑点も内出血の痣じゃなくてメラニン色素の異常生成による皮膚の変質みたいだし。コレラから復活した人には黒子(ほくろ)が余計にできてたりするらしい。

 

 一応クレアちゃんは現状唯一の私のファンだから大事にしてあげたい。という事で私が直々に看病してやろう! 

 

 ブラック○ャック

 ドク○ーK

 J○N―仁―

 脳外○医竹田くん

 

 古今東西の医療漫画を読んだ私に任せとけって。それに医者っていうと基本的に男だよ? クレアちゃん女性だし、異性に下痢ピーな所見られるの恥ずかしくない?

 

 という訳で私が看護することになりました。とはいえ、クレアちゃんの容態はかなり悪い。特に熱が酷く、体温計があるわけではないが(作れるが精度が悪くて使い物にならない)体感で39℃ぐらいはあると思う。

 

 氷穴から取り寄せた氷をタオルでくるんで額に当てる。首、脇の下にも当てて体温の過剰上昇を防ぐ。

 

 ケツからは本人の意志とは反して便が垂れ流し。クレアちゃんは恥ずかしそうにしていたが、すぐにそんな元気もなくなってしまったようだ。

 下痢で失った水分は口から補給。水に塩と砂糖を混ぜた経口補水液を飲ませる。

 

「ソフィア殿……私は……このまま死んでしまうのでしょうか……?」

 

 高熱が数日続き、そんな弱気な事を呟き始めた。病気の作用でクレアちゃんの目元に泣き黒子(ぼくろ)出来ててちょっとエッチだ……。

 

 ともかく病気は医療も大事だが、それ以上に大事なのは本人の気力。私の前世のように満足な治療を受けられない今なら尚更だ。

 

 私が付いてるんだから死ぬ方が難しいって。

 

 そんな根拠のない言葉でもクレアちゃんには気休めになったようだ。とはいえ、その甲斐もなく熱は酷くなるばかり。遂には昏睡状態で口から水を補給できなくなってしまった。

 

 ケツから水を入れて大腸から水を吸収させようにも、下痢中なので難しい。こうなれば注射で血液中に生理食塩水を流し込んで誤魔化すほかない。

 

 とはいえ注射するの初めてなんだけど私。血管なんか取ったこと無いよ。しかも注射の針が太いからそれなりに太い太ももの静脈に刺さなきゃいけないし。

 

 鍛冶師に作らせておいた注射針に生理食塩水を入れたまでは良いが、途方に暮れる。

 

 ……ええい、何もしなくてもどうせクレアちゃんは死ぬんだ。何とかなれー!

 

 ブス

 

 

 

 

 

 何とかなった。クレアちゃんは峠を越えたようで、熱も下がり始めている。良かった良かった。

 

 ……本当に良かったのかな? 何か忘れているような……あれ?

 

 何か違和感を感じる。とはいえ、看護で疲れていた私はその原因を追究することも無く、全身をアルコール消毒して眠りについた。

 

 

 

 

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