奸臣に反逆凌辱されたい内政チート転生姫様vs奸臣のフリをする善良ハゲデブ宰相 作:RKC
「その……スカールさん、えっと……非常に言いにくいのですが……。
ソフィア殿は別に気がふれているわけではなく、元からそのような性癖だと思うのですが……」
この国で疫病に罹り、陛下に看病され無事完治した隣国の女王であるクレア陛下。彼女はとんでもない事をその口から発する。
しかし考え無しの発言というわけでもなく、証拠も存在するらしい。陛下が凌辱を題材にした小説を執筆しており、それがクレアの手元にあると。そしてその執筆日時が4年前であり、内乱よりも過去に書かれていると。
確かにそれが本当であれば、陛下は元からそういう性癖だったと考えるしかない。内乱で気がふれたわけではなく、それをキッカケに隠していた性癖を開示する様になっただけ。
しかし、本当にその小説は陛下が書いたものなのか。気がふれた陛下が執筆日時を過去に偽装したのではないか。
そう反論したが、クレアは“陛下に小説を貸してくれと頼めば分かる事です”と言うだけ。
それ以上話すことも無くその場は一旦解散となった。クレアの声の調子は嘘をついている様子はない。ただ、言いにくい事実をどう伝えるべきか戸惑っている感じはあったが。
その様子がまた、話の信憑性を増していた。しかし、色々と湧き上がる気持ちを押さえて一旦冷静になる。
今は疫病対策の観点から、陛下から物を受け取る事は難しい。1週間後に陛下が疫病に感染していなければ、事実を確認する。考えるのはそれからにしよう。
……それにしてもあの陛下が感染の危険を冒してまでクレアの看病を行うとは思わなかった。確かに陛下が危険を冒したことは今までに少なくない。
しかし、陛下は面倒な事を嫌う傾向にある。指示をするばかりで自分が体を動かすことはまずない。
そんな陛下が寝る間を惜しむような看病を行ったというのには、何か特別な意味があるように思えた。
陛下は私に拉致された後、隣国のレア王国へ慰安旅行がてら向かったと聞いている。その時にクレアと交流があったとも。
クレアの看病は自分以外に任せられないと思う程、親睦を深めたのだろうか。現に陛下は自作の小説を彼女にだけ送っていたという。
それほどの友人が陛下にできた事は素直に嬉しいと思った。
あれから1週間が経った。幸いにも陛下は疫病に感染しておらず、元気に活動している。私は一も二もなく陛下の元に伺った。
「陛下。大変恐縮ですが、1つお願いがございます」
「何だ? 言ってみろ」
「陛下が創作されている小説を私にも読ませていただきたいのですが」
私がそう告げると、珍しく陛下は話者から視線を逸らした。
「ク、クレア殿から聞いたのか? いや、まいったな……」
いつも堂々としている陛下。戸惑っている姿は本当に珍しい。
「……まぁ、読みたいなら貸すが。後で感想を聞かせろ」
躊躇いながらも陛下は自室から3冊の本を私に渡してきた。感謝の言葉を述べて、私はクレアの発言が本当か確かめる為に本を開く。すると陛下が分かりやすく狼狽する。
「私の目の前で読むな! 何か……恥ずかしいから!」
「そ、そうですか。本を読んだ感想を聞くのは問題無いのにですか?」
「それとこれとは話が違う! いいからどっかいけ!」
そう言われてしまったので、私は陛下の目につかないところで借りた本を読む。
……確かに借りた3冊の内、1冊は凌辱モノの官能小説だ。そして執筆日時は6年前となっている。
紙やインクの具合から、少なくともここ1~2年で書かれたものではない。内乱より前に書かれたのは確かだろう。そして文字の筆跡も陛下の物。
※日本語の癖が文字ににじみ出ており、この世界からするとソフィアの文字は特徴的。
間違いない。クレアの発言は全て本当だった。陛下は気がふれたわけではなく、元から凌辱が好きな性癖だったのだ。最終確認のために陛下に直接伺う。
「へ、陛下は本当に凌辱が好きなお方だったのですね。こうして小説を書かれる程に」
「今は凌辱よりも喪失の方が好みだが、それは置いておこう。前にそう言ったはずだが…… まさか信じてなかったのか?」
「その、やはりすぐには信じられず……。陛下は拉致された後、部屋に引きこもられていたとも聞きますし……」
「あれは拉致からの凌辱を宰相に阻止されて泣いていただけだ。まぁ、そのおかげで喪失に目覚めたわけでもあるから、今では感謝しているが」
「そ、それでは拉致されたと分かった時に取り乱していたのは?」
「演技だ。当時の私は客観的に見て善良な陛下だっただろう? 相手が善良で高潔な女王を犯そうと盛り上がっているのに、実は凌辱好きな変態と知られれば萎えさせてしまう恐れがある」
(というか何でこいつ私が拉致された時の状況を知ってるんだ? あの場に居たのは敵の兵士とレイスターとルーカスだけで……って、あれ? ルーカス?
こいつはスカールで……反対にするとルーカス。なんやこのクソガバアナグラム!? 偽名にしてももうちょっと他の無かったんか!?)
「そ、そうなのですか……。それでは、私が陛下を拉致した事はどう思われているのですか?」
(私が拉致したって、こいつ本当にルーカスじゃん……。生きとったんかいワレ! え、じゃあ何? 埋葬したのって別人?
というかナチュラルに私がルーカスの正体に気づいてる体で話してるのは何で? どっかでそういうイベントあったっけ? 私が忘れてるだけ? 怖、とりあえず話合わせとこ……)
「まぁ……良くやってくれたな、と思っているが」
「そ、そうですか……し、失礼します」
99%本当だと分かっていた。本人の口から確定情報を聞いた。しかしやはり信じがたい。私は頭を掻きながら陛下と別れた。
しかし時間が経てば次第に事実を受け入れる。そうすると色々とこみあげてくるものがあった。私は混乱する頭を整理するため一人になる。
陛下が素で凌辱が好きな性癖であったならば、私がした事は陛下にとっては嬉しい事だったと。本人もそう言っている。
そうであれば、私の葛藤や苦悩は一体何だったのだろうか……。顔や声まで焼いた意味とは……。
しかし、そんな葛藤は意外にも長続きしなかった。陛下が実は凌辱が好きだったというのは結果論に過ぎない。私がそれを知らない内に陛下を裏切ったのは紛れもない事実。
陛下に対して裏切りの責任は果たす必要がある。しかし状況が変わった今、何をするのが陛下に対しての責任を果たす事になるのか。
陛下から借りた小説には、つい最近書かれた新作もあった。一国の女王が根腐れしかけていた国を立て直し富国強兵を成功させるが、別の強国に滅ぼされ、女王は無体な仕打ちを受けるという内容。
物語の途中までの展開は陛下の人生そのもの。その先はあられもない展開が繰り広げられているが。陛下がこれを望んでいるとしたら……。
しかし、小説通りの展開を再現すると国が滅んでしまう。そうなれば国を大切に思う宰相は悲しむに違いない。宰相に対しても責任を果たさなければならない私にとって、それは望むところでは無い。
ひとまず、私は宰相へ相談しに行く事にした。
♢
「宰相殿、お時間よろしいでしょうか?」
陛下が疫病に罹った隣国の女王クレアを看病していたが、疫病を移されること無く彼女を助ける事ができた。その事に私が胸を撫で下ろしていると、スカール――もとい、ルーカスが私の元を訪れた。
陛下を裏切った彼に対して未だに思う所はあるが、裏切りの責任を果たすべく顔と声を焼いてまで戻って来た覚悟を鑑みて様子を見ている。
再び陛下を害そうと潜入しに来た可能性も否定できないが、ルーカスという男には野心が無い。彼は誰かに必要とされる事を行動原理として動いている。
特に認めてほしい父が死んだ今、無意味に私や陛下を裏切るとは考えにくかった。事実、私が彼を褒めるたびに、申し訳なさそうな表情の中に喜色を覗かせる。
「ひとまずこちらの小説を読んでいただけますか」
“小説を読め“という意図の分からない指示。ひとまずルーカスの言葉に従い、ざっくりと内容に目を通す。
「これは陛下の字……」
真っ先に気づいたのはこの小説は陛下が書かれた物という事。
「この内容は……? …………???」
そして次に気づいたのは、これが官能小説だという事。しかもプラトニックな内容ではなく、ゴリゴリの凌辱物。
「これは……!」
陛下がこんなものを書くまでになっているとは。そのおいたわしさに……。
「宰相殿、執筆日時をご覧ください」
私が胸を痛める寸前、ルーカスの忠告が割り込んだ。彼の言う通り執筆日時を見ると、6年前と書いてある。
「……6年前?」
6年前というと、痛ましい事件のあった内乱よりも過去。なんなら陛下が戴冠してすらないほど昔だ。
それほど幼い時期からこんなものを書いていた事実に驚愕する暇すらない。肝心なのは凌辱物の小説を陛下が内乱よりも過去に書いているという事実。
「お気づきになられましたか」
「これを……本当に陛下が……?」
「陛下の字は特徴的な上、この本は陛下から直接受け取りました。書いたのは陛下本人でしょう。
そして紙やインクの状態から推測するに、執筆からかなり年数が経っています。少なくとも内乱より前に書かれているのは確かです」
「つ、つまり……」
余りの事実に頭が働かない。ルーカスが代わりに結論を述べる。
「陛下が“凌辱だ、喪失だ”とおっしゃっているのは気がふれたからではなく、演技を止めて本心から話しているだけでは無いかと……」
頭を金槌で殴られたようなショックに襲われた。まさか陛下が素で変態的な趣味を持っているはずが……。にわかには信じ難い。
「へ、陛下は凌辱を目前にして涙を流されるほど動揺しておられた。そのような陛下がまさか……」
「恐らくですが、凌辱を目前に邪魔されて悲しかっただけなのでは。我々の感性に置き換えると、絶世の美女と最高の状況で行為を迎える刹那に中断させられてしまったのと同じ心境でしょうから。
……でしょうか?」
私に同意を求められても困る。
「とにかく陛下は戦場に出たりと、自らを危険に晒す事を厭わない傾向にありました。それも凌辱や喪失などに類似する破滅的な願望があったからとも考えられます」
ここまで情報が揃うと、陛下は素で変態疑惑が確固たるものになり始めて来た。しかしそれでも私は認めたくなくて、直接陛下にお伺いを立てる事に。
「何度も言っているだろう、私は凌辱も好きだし喪失はもっと好きと。……お前も信じてなかったのか?」
「今までの態度は? 演技に決まってるだろう。10秒待て……ほら涙」
「それよりちゃんと勃起するようになったか? 山芋、レバー、チーズを食べろ。効くぞ」
私の一縷の望みは陛下自身の手によって絶たれた。
「陛下は……陛下はそんなお方では無い!」
余りに認めたくなさ過ぎたため、自分に言い聞かせるようにして陛下から逃げる。とはいえ、そんな現実逃避も長くは続かない。時間が経てばどんどん冷静になり、事実を認めざるを得なくなってくる。
陛下は変態だ。それは確実。……私の今までの葛藤は一体何だったのだろうか。陛下はおいたわしいどころかノリノリだったわけだ。
ただ、私が陛下に失望することは無かった。怒りも全く湧いてこない。陛下の人間性がどうあれ国を豊かにし、多くの民を笑顔にした事実に変わりはない。
私はその手腕にこそ惚れ込んでいたのだ。陛下の人間性に揺るがされるほど私は尻軽では無い。……無い、はず。
そう、天才と変態は紙一重と言うが、陛下は紙1枚すら挟んでいなかったというだけだ。
そう考えていると、次に襲ってくるのは後悔の念。良かれと思って陛下をお救いしたが、陛下にとっては水を差されただけだった。その事実にどうしようもなく悲しくなる。
とはいえ、間違ったことをしたとは思っていない。あのまま陛下が殺されてしまう可能性は高かったうえに陛下が襲われたともなれば、内情が不安定になる事は間違いなかっただろう。私の行為は間違いなく国を守ったと言える。
そこまで考えて、何とかようやく自分の心に折り合いをつけた。次に思うのは未来の事。
陛下は拉致される前とは打って変わって自分の変態性を隠すことなくさらけ出している。
その奔放な姿は、拉致された時に自分の性癖を満たせなかった不満を解消するかのようだ。今の陛下を見ていると自分の性癖を満たすために過激な行動に走るのではないか。それこそ陛下が日頃口にしてるように国を滅ぼしてまでも。
ただでさえ、陛下はこうと決めたら何が何でも達成するお方だ。
かといって陛下を無理やり止める事も心情的には
いったいどうすれば良いものか。国を守りつつ、陛下の事も満たしてあげる良い方法は……。
ひとまず事情を知っているルーカスに相談しようと彼の元に向かう。すると、ルーカスは少しやせてはいるが元気になった隣国の女王クレアと話していた。
クレアは私に気づき、話に巻き込んでくる。
「ノッパラさんにも聞いてもらいましょう。
――あなた達で王家から実権を簒奪しませんか? ソフィア殿にはお飾りの女王になってもらうのです」
クレア殿は疫病に罹っていたとは思えないほど生気に溢れる顔で語った。