奸臣に反逆凌辱されたい内政チート転生姫様vs奸臣のフリをする善良ハゲデブ宰相   作:RKC

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4話にて王女と女王の誤用をしていました。申しわけありません。

王女→王様の娘
女王→女の王様

追記:3話でも間違っていました。誤字修正ありがとうございます。

追追記:1話でも間違っていました。誤字修正ありがとうございます。進歩しねぇな、この作者。いっその事、1話に1つ王女を入れて、それを読者に探させてやろうか(しません) 


5話 宰相

 私が姫様の性格の悪さと聡明さを認識してから数年が経った。あれから変わった事といえば、王様や王妃様の体調が優れない事ぐらいか。

 2人共肌の色が黒ずみ、下痢や声の掠れに悩まされている。半年ほど前から椅子に座ることも出来ず、寝たきりの生活を送っていた。

 

 そしてついに病魔が体を(むしば)み切ったのか、現在は血を吐きながらベッドの上でのたうち回っている。王宮医師が手を尽くしているが、その甲斐は全くない。

 

 そんな時、姫様がしがみつくようにベッドへと駆け寄った。

 

「父様! 母様!」

 

 ボロボロと涙を流しながら叫ぶ姫様。しかし、姫様の叫びも空しく2人は血を吐く事すらしなくなる。

 

「……ご臨終です」

 

 医師が脈を測り、2人の死を告げる。

 

「う、ぐ……ぅッ……!」

 

 姫様は唇を噛みしめ、ベッドに顔を伏せる。シーツを掴む手は布を引きちぎらんばかりに力が込められている。

 姫様にとってたった二人の肉親が病気で弱っていく姿を眺める事しか出来なかった。今、姫様はどれだけの悲しみを抱えているのだろうか。姫様の性根がいくら悪性であろうと、胸が締め付けられるような光景だ。

 

 しばらく泣き続ける姫様が落ち着いた頃に、医師たちが王様と王妃様の亡骸を運ぶ。その場に残った他の臣下たちがひそひそと話をしていた。

 

「まだ姫様が幼い内に亡くなられてしまうとは……」

 

「しかし王家の血を継ぐ者は姫様一人。次期女王はソフィア姫様という事になるだろう」

 

「我々がしっかりと支えてあげねばなりませんな」

 

 そう言う臣下の口元は嬉しそうに歪んでいる。大方、まだ子供で道理の分からない姫様を傀儡に出来るかもしれないと勘定しているのだろう。

 

「お二人共、なんとも酷い病気でしたな」

 

「えぇ、しかし最後は安らかに行けて幸せだったやも……」

 

「姫様の配膳なさった料理が最後の晩餐というのも、あのお二人にとって大きな慰めとなったのでしょう」

 

 “他に発明したのは……銀に反応しない毒とか”

 

 臣下たちの会話に触発されて、いつぞやの姫様の言葉を思い出す。背筋が凍った。

 

 もしや、姫様は両親に毒を盛っていた……?

 

 どうしてこの可能性に今までたどり着かなかった。親の死に目に幼い子供が立ち会うという悲劇を目の前にして、(まなこ)が曇っていたというのか。

 

 タイミングよく2人同時に亡くなったことなど、自然死にしては不自然な点がいくつもある。そう考えるとやはり姫様が毒殺を……。

 

 しかし周りは毒殺を一切疑っていない。それもそのはず、王様と王妃様が使っていたのは銀食器。毒が盛られれば気づかないはずはない。

 

 ただ、姫様ならば銀食器をかいくぐっての毒殺が可能……かもしれない。実際に例の毒物を見たわけでは無いからあくまで可能性だ。

 

 しかし、王様と王妃様が亡くなった際の姫様の涙。私にはあれが演技だとは到底思えない。そもそも姫様は聡明だが、褒められれば簡単に笑みを深め、ことあるごとに自分の発明を自慢してくるような単純なお方だ。

 

 2人が亡くなった際の涙も悲しくて泣いたと考える方が理に適う。姫様が毒を盛ったというのは考え過ぎだろうか。

 

 部屋の隅でぼんやりと立っている姫様を見る。涙で下瞼が腫れているが、それ以外に表情の変化が読み取れない。泣き疲れて呆然としているのか、それとも……。

 

 結局、私はこの時に姫様を理解しきる事は出来なかった。ただ、遠くない未来に毒と涙の矛盾を解決することになる。

 

 

 

             ♢

 

 

 

 王様と王妃様が無くなってからは激動の日々が続いた。

 まずは2人の葬式。貴族諸侯を全員集めての国葬を行った。

 次は姫様の戴冠式。国葬で集めた貴族諸侯の前で新たな女王となる事を宣言する。

 

「我が名はエリュシオン・クロノス・ソフィア。今からエリュシオン王国の女王となる」

 

 そうして姫様の頭に冠が乗った。姫様は宝石がふんだんに彩られた冠に負けない美貌の持ち主。良く似合っていた。

 

「私は女王となったが、まだまだ若輩の身。誰を信じ、何を行えば良いのかも分からぬ。だからこそ、まずは諸君らの忠誠を見せて欲しい。それもわかりやすい形でな」

 

 戴冠式を終えた後、姫様……いや、女王様は貴族諸侯や文官、武官の前でそう発言する。この発言には部屋中の全員が驚いた。

 

「忠誠を見せて欲しい……と言いますと?」

 

 私が代表して意図を問えば、女王様は案の定な答えを返してきた。

 

「その方法は各々に任せる。ただ、分かりやすく見える形で頼むぞ。私は少し鈍いものでな」

 

 “私に賄賂を持って来い”。そう言っているのとほとんど同義だった。

 女王様が退席した後、部屋の中はざわざわと騒がしくなる。大方“子供ながらにしっかりしている、傀儡(かいらい)にはならなさそうだ”、とか“しかし、前王と同じで政治という物を分かっていらっしゃる”とか、そんな下衆の勘繰りをしているのだろう。

 

 王国法で賄賂は禁止されているが、今となってはもう形骸化している。聡明だが悪性で苛烈な女王様であればこれぐらいの宣言はして当然か。両親の死で女王様の性格が変わらないかとほんの少し期待もしたが、そう都合よくはいかないらしい。

 

 こうなったら女王様に気に入られ、裏で民のために政治を調整する必要がある。決して一線を踏み越えさせてはならない。

 私は私財をかき集め、姫様の元へ向かった。

 

「ご機嫌麗しゅう、女王様」

 

「宰相か。お前も相変わらずのチリハゲだな」

 

 女王様は姫様の時代から変わらず、私の頭をバカにしてくる。とはいえもう慣れた。そもそも口は悪いが、女王様の目線にハゲデブの私に対する嫌悪感は無い事に気づいた。ただ、思ったことを口にしているだけなのだろう。

 

「何の用だ? 早速私に忠誠を見せに来たのか?」

 

「それはもちろん。まずはこちらを先付けに」

 

 ルビー、サファイア、真珠の入った宝石箱を女王様に差し出す。女王様の好みは未だに掴めていないが、基本的に宝石が嫌いな人はいない。美しさもさることながら、資金としても扱える。

 

「ひい、ふう、みい……これだけか?」

 

 煌びやかな宝石に惑わせられることなく、姫様は値段だけを勘定しているようだった。なんとも現実的な方だ。

 

「いえいえ、もちろん他にも用意していますとも。この老骨では運ぶのが難しい量でしてな。後で運び込ませようと思っておりました」

 

「やはりか。お前は期待を裏切らんな」

 

 女王様は笑みを深めて上機嫌に笑う。昔から女王様の無茶振りを出来るだけ聞いており、信用は得ていただろうし、今回の忠誠も気に入ってくれたようだ。

 

 問題無く女王様に取り入る事ができて一安心。しかし、これからも姫様に疑われないようにブレーキ役となる必要がある。私と女王様の年齢を考えると、私の後継も探さなくては。やる事はまだまだ沢山ある。

 

 しかし数か月後、私のこの心配は全くの杞憂に終わる事となる。

 

 

 

          ♢

 

 

 

 私が賄賂を渡した後にも、文官・武官を問わず女王様に賄賂を渡しに行くものが多数見られた。王宮内部だけならず、貴族諸侯たちも自分に便宜を図ってもらえるように賄賂を渡しに来ていた。

 

 きっと、賄賂を渡した者を重用し、賄賂を渡さなかった僅かな真面目な者は地位を追いやられる事になるのだろう。

 

 しかし、そんな私の考えとは裏腹に、ある時賄賂を渡していた者たちが一斉に検挙された。検挙された者にとっても、私にとってもまさに寝耳に水。電光石火の逮捕劇だった。

 

 とはいえ私は検挙されていない。証拠を手に入れられなかったのだろう。私は賄賂を贈る際に証拠を残すようなヘマはしない。

 

 加えて現在の政治を維持するのに私は必要不可欠というのもあるのだろう。私の他に検挙されていない者はいずれも政治を維持するのに必要不可欠な者や、王家と言えど迂闊に手を出せない大貴族たちだけ。

 

 それ以外の奸臣、悪徳貴族は一人残らず検挙され、現在女王様の前に罪人として拘束されている。

 

「お前たちは王国法に反する行いをした。罪に応じて財産を没収の上で国外追放および処刑だ。親族は土地から追放、二度と元の地を踏むことは許さん」

 

 毅然と言い放つ女王様に、捉えられた者達は声を荒げる。

 

「お待ちください! こんな事、横暴ですぞ!」

 

「ウリヤス・ギゼ」

 

 女王様は隣に控えている文官から書類を渡して貰い、その内容を読み上げる。

 

「裁判において賄賂を受け取り、裁判官に有効な証拠を握りつぶさせた。

 賊と内通して略奪を見逃し、その見返りとして略奪品を賊から貰っていた。

 ……他にも43件の余罪がお前にはある」

 

「う、ぐ……ッ!」

 

 ギゼと呼ばれた貴族は歯噛みをしていた。女王様が言っている事は本当の事なのだろう。調べは済んでいるらしい。

 

「他にも自分の罪を読み上げて欲しい奴がいれば言え」

 

 その場の全員が黙りこくった。露見しなかった事前調査といい、対策の隙を与えない(はやぶさ)のごとき検挙といい、完全に女王様の方が上手(うわて)

 

「連れていけ」

 

 兵士たちが検挙されたものを部屋の外に連れていく中、騒ぐ文官が1人いた。

 

「じょ、女王様も賄賂を受け取ったではありませんか! 私からの賄賂を!」

 

 それを聞いた女王様に一切動揺はない。目を細めて文官を睨みつける。

 

「賄賂? この私が、か? もちろん証拠あっての発言だろうな?」

 

 女王様の言葉に自分のしでかした事を認識した文官が顔を青ざめさせる。

 

「い、いや……」

 

「王家の私を告発しようというのだ。それはもう、誰の目から見ても確定的で絶対的な証拠あっての発言なのだろう。見せてもらおうか?」

 

「う、ぐ……」

 

「まさか、証拠も無しに私を糾弾したと?」

 

「それは……っ」

 

 姫様は椅子から立ち上がり、たじろぐ文官の元に近寄った。兵士に命じて文官に膝をつかせる。そして手刀を文官の首に当てた。

 

「不敬罪の追加。お前は追放の予定だったがそれに留まらず、処刑だ」

 

 文官は青を通り越した白い顔で姫様に懇願する。

 

「も、申し訳ありません! お許しください! 先ほどの発言は、その……」

 

「黙れ愚図が」

 

 言い訳をする文官に女王様が口調を荒げる。

 

「不正で民を苦しめるだけでなく、証拠もなく私に盾突く愚かさ。そんな愚図のせいで国の血液とも呼べる国民が憂き目にあっていただと? ……ふざけるな!」

 

 女王様は検挙された貴族・文官・武官を見回しながら続ける。

 

「お前らもだ! そろいもそろって愚図ぐずグズッ! 追放で足りるものか! 国をコケにしやがって! 不敬罪で全員処刑にしてやるッ!!」

 

 振舞いは年相応の癇癪(かんしゃく)に見える。ただ、その内容は至極正論で正しく為政者の言葉だ。今まで溜め込んだ鬱憤(うっぷん)を吐き散らす様に女王様は暴れていた。

 

 賄賂を贈ってきた貴族や奸臣を捕まえた事といい、現在話している内容といい、女王様の本当の姿は民の事を思う優れた為政者なのだろうか。ただ、それを信じるには女王様の昔の横暴な振る舞いが引っ掛かる。

 いや、今はとにかく女王様の暴走を止めねば。

 

「落ち着いてください女王様! 処罰はきちんと王国法通りに行わなければ国民に対しても示しが付きませぬぞ。いくら不正をしているからといけません」

 

 私が声をかけた瞬間、女王は憤怒の瞳をこちらに向けてくる。海千山千の私も、思わず怯んでしまう程。

 

「お前が! それを言うのか!!」

 

 女王様の表情には私を憎む感情しか含まれていない。奸臣だが証拠が無いのと政治的な理由で私を処罰できなかったのを悔しく思っているのだろう。

 このお方はやはり、悪しきを挫き、民を助ける真の為政者。今までの振る舞いは奸臣たちに警戒心を抱かれないための演技だったのだ。

 

 そんなお方が女王の立場に就いてくれた事を嬉しく思いながらも、同時に深い絶望にも襲われていた。女王様は私の事を、国を食い物にする寄生虫としか見てくれないのだから。

 

 頭を金槌で殴られたようだった。女王様の様な苛烈だが聡明で民の事を思う高潔な人物の手伝いを出来たら、それはきっと私の生涯の誇りとなるに違いない。

 

 だが、女王様は幼い頃から私が王様に媚びへつらい、賄賂を渡す姿を見て来た。民のためにしょうがなくやっていた事だったが、女王様の目には国の政治を(つかさど)る宰相が不正を行い、私腹を肥やしているようにしか見えなかっただろう。

 

 私の事情も察して欲しい……とは口が裂けても言えない。私とて、女王様の真意を悟れなかったのだから。とにかく、女王様は私の事を完全に敵だと思っている。自分の身を顧みず女王様に注意をしていれば、もっと違った未来もあったのだろうか。

 

 過ぎたことを言っても仕方ない。これは私への罰なのだろう。やむを得なかったとはいえ、宰相ともあろう者が不正に手を染めた罰。

 

「~~~ッ……! はぁ……はぁ……」

 

 女王様は何とか落ち着きを取り戻したようだ。肩で息をしながら、先ほど女王様自身が処刑を宣告した文官に言い放つ。

 

「お前は私の手で公開処刑してやる。私の国で不正をするとどうなるかの見せしめと、民を安心させるためにな」

 

 女王様の癇癪に皆驚いており、誰も動こうとしない。

 

「……何を突っ立ってる。早く連れていけ!」

 

 兵士は大急ぎで検挙された者達を連れていった。

 

「お前も何を突っ立ってる! 早く出ていけ!!」

 

 女王様は先ほどより数倍語気を強めて、私に牙を剥いて来た。私は黙ってその場を後にする他無かった。

 

 その日は、腹がはちきれるほど過食した。それでも気は紛れない。食べた物を吐いて、また食べた。

 女王様に見られれば、“食べ物を無駄にしているクズ”と思われる事だろう。どうしようもなく悲しくなって、その日は食べては吐いてを繰り返した。

 

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