奸臣に反逆凌辱されたい内政チート転生姫様vs奸臣のフリをする善良ハゲデブ宰相   作:RKC

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6話ではルビの振り方をミスしており、読者の方々にご迷惑をおかけした事、大変申しわけありませんでした。

私は元々なろうのR18サイト出身なので、「天(アマツ)」という感じに入力してシステムの「小説家になろう方式でルビ変換」ボタンを押してルビを振っております。そのボタンを押すのを忘れてしまいました。(超早口+自己の正当化)

わざわざルビの振り方を誤字報告してくれた人、ありがとね。
今後はルビの振り方をミスしてる場合は変換忘れを指摘してくれるだけで大丈夫です。

それとこの話から女王様→陛下に修正しました。国王に対する敬称として様ではなく陛下が正しいのと、女王様と書いているとたまに王女様が混ざってしまうためです。ご理解のほどよろしくお願いいたします。





7話 宰相

 宰相である私は陛下との定期報告のために、玉座に向かっていた。やたら長い手続きを終えて玉座に失礼する。すると、そこには最近陛下に気に入られている文官、ルーカスがいた。

 

 奴の正体は悪徳貴族の身内で、恐らく陛下に取り入るために送り込まれてきた刺客。だが、陛下から奸臣だと思われている私がその疑いを話しても一蹴される事だろう。何か決定的な証拠をつかむまでは動けない。

 

 そのことに歯噛みしながらも、ルーカスと私の二人で陛下に謁見する。通常であれば宰相と一文官が並ぶことなど立場の差を考えるとあり得ない。そもそも陛下に謁見する事もだ。

 この男はそれほどに陛下に信用されているという事なのだろう。

 

「御機嫌麗しゅう、陛下。日に日にお美しくなられますな」

 

 ルーカスは相も変わらず歯の浮くような台詞で陛下を褒める。それを受けて陛下はまんざらでもない笑みを浮かべていた。この二人の間にはどこか信頼関係を感じてしまう。

 仮に私が陛下を褒めたとしても、親の仇の様な目を向けられるだけ。その格差に胸が痛くなる。

 

 こんな奴に引っ掛かるなど陛下らしくない……とは口が裂けても言えなかった。正しい為政者であるために両親を殺し、受け取りたくも無い賄賂を受け取り、その手で罪人を手にかけた陛下は傷心のはず。

 

 そこにつけ込まれれば篭絡されてしまうのも仕方ない。むしろ、篭絡が進んでいない方とまで言えるだろう。

 

 私の考えを他所に、ルーカスは陛下に奏上を行う。

 

「農業改革も進み、民の暮らしも必ずや良くなりましょう。しかし、私達には今すぐに救わねばならぬ民がおります。

 スラムの住人達です。彼ら、彼女らはろくな仕事にもありつけず、他の民や店から盗みを働くことでしかその命を繋げない……。

 そんな者達を放ってはおけません! すぐに食料の援助を行うべきです!」

 

 ルーカスはスラムの住人を助けたいなどと思っていない。恐らく、スラムへの援助費の一部を横領して自分のものにしようと言う算段では無いのだろうか。

 援助に使う資金は王家の資金。それを減らしつつ、資金の一部を外の大貴族の人間が奪う形になるわけだ。

 

 まさに一挙両得。ルーカスは信用されており、私の様に監視の目も付かないだろうから、バレずに成功する確率は高い。スラムへの援助自体も中抜きした後に最低限は行うのだろう。

 

 加えて、陛下が好みそうな施策で奏上したのも上手い。民のためと言えば、陛下は納得してしまいかねない。ここは陛下に更に敵視される事になろうとも、いちゃもんを付けるべきだ。

 私が口を開こうとしたその時、陛下が発言する。

 

「お前は優しいな。だが、同時に愚かだ。

 援助をすればスラムの住民は助かるだろう。だが、それも一時の事。支援物資が無くなれば元の生活に逆戻りだ。スラムの住民に真に必要なのは食糧援助では無い、雇用だ。

 働き口があれば人の物を盗む必要も無い。十分な食料があれば、食料品の値段も下がり、飢える事も無くなる。

 

 今、私達がすべきなのは目先の同情ではなく、その先の経済成長だ。そのために今は我慢して農業改革を進める必要がある」

 

 陛下の発言にルーカスは動揺していた。まさかこのように返されるとは思ってもいなかったのだろう。陛下はスラムの根絶を目指しておられる。その先見の明に感服してしまった。

 

 そして目論見(もくろみ)が外れたルーカスは僅かに歯噛みしていた。ひとまず安心か。しかし、事はそれだけでは済まない。

 

「……分かってくれるか?」

 

 陛下が語気を弱めてルーカスにそう聞いた。その時の陛下の表情はいつもと違い、頼りないような情けないような表情だ。

 

「もちろんでございますとも。目先の感情に囚われてしまった私をお許しください、陛下」

 

 ルーカスは間髪入れずにそう答える。

 

「良い。分かってくれれば良いんだ」

 

 陛下表情を一転。心底安心したように眉を落ち着けた。

 さっきのやり取りからも分かる。陛下は理解者を求めているのだ。国のために感情を殺す自分の事を理解してほしい。その一心が先ほどの問答に表れている。

 

 あのような不埒者ではなく私がその理解者になれればどれ程良かったことか。胸を掻きむしりたい欲求を我慢しながら続きを聞く。

 

「とにかく今は改革を行う事が最優先だ」

 

「承りました。今の改革に力を入れたいと思います」

 

「頼むぞ。……それから宰相」

 

 ルーカスと話している時とは一転。心臓を鷲掴みにされたと錯覚するほどの厳しい目線を私に向けてくる陛下。その視線に苦しさを覚えながらも陛下のお言葉を聞く。

 

「火薬や堆肥の生産で人間の糞尿は価値を持つようになった。これからは売買も行われる事だろう。その流通体系をお前が作れ。当然監視付きでな」

 

「承りました」

 

 簡潔な命令に簡潔な答えを返す。余計に喋れば陛下の心を乱すだけ。私は馬車馬のように働くことでしか陛下に貢献できない。

 

 その事実に涙が流れるのを必死で我慢している時、ルーカスが声を上げる。

 

「宰相殿の監視、私に任せていただけないでしょうか。宰相殿の手練手管をぜひ自分の物にしたいと思いまして」

 

「……構わん。好きにしろ」

 

 陛下からすれば、私を追い出したいのはやまやまだが、私の持つ人脈やノウハウは欠かせない。だから使わざるを得ないという状況。そこでルーカスが私のノウハウを吸収すれば、私の必要性が薄れる。陛下としてはルーカスの提案は断る理由が無いのだろう。

 

「はっ! このルーカス、必ずや!」

 

 元気よく答えるルーカスに、陛下はとんでもない発言をする。

 

「うむ、期待しているぞルーカス」

 

 あの陛下が。幼い頃から付き合いの長い者でさえ役職か“お前”としか呼ばないあの陛下が。ルーカスの事を名前で呼んだ。

 それほどまでに陛下はルーカスの事を信頼しているという事なのだろう。

 

「はっ! お任せください!」

 

 内心焦る私とは対照的に、ルーカスは大きな声で返事をする。内心しめしめと思っている事だろう。

 このままでは不味いかもしれない。思った以上に陛下はルーカスを信頼している。早くルーカスの不正の証拠を集めなくては。

 

「しかし、監視とはいえ宰相の隣に付くものがただの一文官というのも体裁が悪いか。こうして私に奏上をしに来るのもな。

 ……新たに宰相補佐として丞相という地位を作る。ルーカスはそこにつけ」

 

「お、お待ちください陛下!!」

 

 思わず声を上げていた。

 

「一文官がいきなり宰相補佐に昇格などと……! それでは他の役人に示しが付きませんぞ!」

 

「肩書だけだ、実権はそう無い。文句を言う者もいないだろう」

 

「肩書だけとはいえです! 今は戴冠直後の改革で人心が揺れ動きやすい時! 誰か一人を特別扱いすることは……!」

 

「だったらお前の事も特別扱いする必要はないよな!?」

 

 陛下は私の言葉を遮り、身震いするほどの怒気をぶつけてくる。

 

 言葉の真意は“政治が出来るからと特別扱いせず、宰相のお前も不正の罪で処罰してやるぞ”、という事なのだろう。

 

 私が不正を行った証拠はなく、陛下の記憶の中だけだが、陛下が強権を発動すれば私を追い落とすことも不可能ではない。

 

 ギリギリとこちらまで聞こえてきそうなほど歯ぎしりをする陛下。こう答えざるを得なかった。

 

「……申し訳ありません。出過ぎた真似をしました」

 

 今私が追い落とされれば、陛下を守る者はいなくなってしまう。ここで宰相を辞めるわけには行かなかった。加えて陛下が私を無理やり辞めさせたとなれば、(ひずみ)も残る。ただでさえ世代交代や改革で人心が揺れる時期にそれは危ない。

 

「気分が悪い。さっさと出ていけ!」

 

 私だけでなくルーカスも同様に追い出される。玉座の間の外で、今の状態に焦燥を隠せなかった。

 陛下は相当にルーカスを信頼している。そうでなければあのような特別な地位を作る事は無かっただろう。事は一刻を争うかもしれない。

 

 そう考えている時、ルーカスが私に話しかけてきた。

 

「宰相殿。糞尿の流通を任された事ですし、これから話し合いでもどうでしょうか?」

 

 その時のルーカスは陛下の前で浮かべる爽やかな笑みではなく、人間の闇を感じさせる薄暗い笑みだった。

 

 

 

            ♢

 

 

 

 ルーカスと二人きりで私の部屋に入る。ここなら盗み聞きの心配も無い。

 

「それでルーカス殿、お話とは?」

 

 ルーカスは無駄話をする様子はなく、本題に素早く入る。

 

「それはもちろん糞尿の流通についてでございます。

 宰相殿の事です。私の出自については既に調べ上げていることでしょう」

 

 向こうからその話題を振って来るとは。予想外の事態に少しだけたじろぐ。

 

「う、うむ。ルーカス殿はクラウディン家の次男であったが、卑しい妾の子だからと家を追放。表向きにはそうなっているが、未だにクラウディン家と連絡を取り合っている事を鑑みるに、裏では繋がりがあるのだろう?」

 

「そこまでお見通しですか。さすがの調査力でございます。

 それでは私がこうして密談をしに来た理由もお分かりでしょう」

 

 密談をしに来た理由……いや、見当が付かない。私が黙っていると、ルーカスの方から切り出してくる。

 

「……だんまりですか。私の事を信用できないお気持ちも分かります。それではこちらから腹の内を晒しましょう。

 単刀直入に言います。王家を見限り、クラウディン家に仕えませんか?」

 

 この提案には一瞬驚いたものの、良く考えてみれば至極納得のいく提案。自分は世間的に奸臣、悪徳貴族から誘いを受けるのは変では無い。自意識だけは忠実な家臣のため、この可能性にたどり着けなかったのだろう。

 

 その事実に涙腺が緩むが、何とか我慢してルーカスの言葉を聞く。

 

「前王の時代、宰相殿は王に賄賂を贈り随分甘い汁を吸っていたとお聞きします。しかし、今代の女王はあのように潔癖なお方。随分と宰相殿を嫌っている様子、干されているといっても過言ではありません。

 

 宰相殿の事です。不正の証拠は残していないため陛下は検挙出来ない。加えて宰相殿のノウハウや人脈は政治に必要。そんな危ういバランスの上で今の膠着状態は成り立っているのでしょう。

 

 そんな状態では宰相殿も美味しい思いをする事が出来ない。そこでどうでしょうか、宰相の地位を辞職し、我々クラウディン家に仕えるというのは」

 

 初めて自分が奸臣だと思われていることに感謝した。これほど大きな反逆の動きを掴めたのだから。ルーカスは言葉を選んでいるが本意はこうだろう。

 

 私をクラウディン家に引き入れ、王家の政治を(とどこお)らせる。その上で陛下の信頼を得たルーカスがスパイ活動を行う。最終的にはクラウディン家が王家を乗っ取る事も視野に入れているはず。

 

 しかし、王家に反旗を翻すにはクラウディン家の戦力だけでは足りないはず。流石に思考が飛躍しすぎか……いや、陛下の公開処刑で危機感を持った悪徳貴族たちが徒党を組んだとすればあるいは。

 

 真っ先に名前が挙がるような勢力の大きい悪徳貴族たちは利権を争って仲が悪いため、手を組むことは無いと考えていたが、危機感の方が勝ってしまったのか。

 

 とはいえ、これはあくまで推測。確証は何一つない。これ以上の情報を引き出すためには相手の懐に潜り込む必要がある。

 

「なるほど、クラウディン家に……。それはぜひとも首を縦に振りたい提案ですな」

 

「そうでしょう! 宰相殿の手腕を我々は高く買っております。宰相と同等の地位とまではいきませんが、現状よりは好待遇で迎える事を約束させていただきますよ?」

 

「それはありがたい。しかし……私としては心配事もありましてな。そちらは私を受け入れてくれると言うが、その確証はない。宰相を辞職した後に知らんぷり、という可能性も十分ありうるわけです」

 

「決してそんな不義理は致しません……といっても信用してくださらないでしょうね。遠回りは止めてください。どんな保証がお望みですか?」

 

「グッフフ、長い宰相生活で単刀直入というのがどうも苦手でしてな。申しわけない。

 簡単な事です。私とルーカス殿でお互いに不正の証拠を握りあう。そうすればお互いに裏切れない状況を作れるでしょう?」

 

「なるほど、一種の連判状の様なものですね。私は不正がバレれば陛下の信頼を失い、処刑台に立たされる。宰相殿も不正の証拠がバレればいくら手腕が優れていようと、恐らく処刑台に立たされる。お互い裏切る事は出来ません」

 

「仮に私の気が狂ってルーカス殿の不正を私が告発したとしても、ルーカス殿個人の罪であり、クラウディン家に直接責が及ぶことも無い。大局的に見れば、私が変な気を起こしたとしてもそれほど影響がないという訳ですよ」

 

「私個人としては勘弁願いたいものですが……確かにその通りです。私はダメで元々、陛下を篭絡出来れば儲けものぐらいの認識で送り込まれた人材ですしね。私が失敗する分にはクラウディン家は何も思わないでしょう」

 

「ふむ、卑しい妾の子として勘当された表向きの理由もあながち間違いでは無いのですな。いや、もったいない。このように聡明で芸達者な息子がいれば、正妻や妾の垣根など関係なく私なら可愛がったでしょうになぁ」

 

 私が褒めると、ルーカスは僅かに頬を緩めた。

 

「貴方ほどのお方にそう言って貰えるのなら光栄です」

 

 今までのやり取りから分かる。このルーカスという男、恐らく実家では不当に虐げられていた可能性が高い。それでも親に何とか認めてほしく、こうして勘当されてまで陛下の篭絡に来た。ここで手柄を上げれば両親は自分の事を見直してくれるだろうと信じて。

 

 その隙を利用させてもらう。奴も陛下にしている事だ、文句はあるまい。

 

「私の引き抜きも成功させた事ですし、両親もルーカス殿の事を見直すでしょうな」

 

「……そうですかね」

 

「えぇ、それはもちろん」

 

 いくらかルーカスの緊張感が和らいだ。代わりに何としてでもこの任務を成功させるというやる気が見て取れる。

 

「とにかく、私達が手を組む証として糞尿の流通に関して不正を一枚噛ませる。その証拠をお互いに握り合うという事でよろしいですかな?」

 

「私は問題ありません」

 

 これでルーカスの不正の証拠を握れる。代わりに私の不正の証拠も握られるが、関係無い。どうせ私が陛下に認められる事は無い。クラウディン家の暗躍と心中出来るなら本望だ。

 

 しかし、まだルーカスを告発するのは早い。奴の信用を得て、この暗躍に関わっている人物を調べ上げる必要がある。どうせ心中するなら盛大にやってやろう。

 

 覚悟を決めた私は胃を痛めながら、不正に関する打ち合わせをルーカスと行った。

 

 

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