奸臣に反逆凌辱されたい内政チート転生姫様vs奸臣のフリをする善良ハゲデブ宰相   作:RKC

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9話 宰相→陛下

 私がクラウディン家の間者であるルーカスと表向き懇意にしている一方、どの勢力が陛下に弓を引こうとしているのかを調べていると色々な事が分かった。

 

 良くない事にクラウディンだけでなく他の大貴族、ザラミス家やレントール家なども反逆のメンバーに加わっていた。これだけでも王家の戦力を上回る連合なのだが、他にも小さな貴族家がいくつか協力している。

 陛下の苛烈なパフォーマンスが悪徳貴族たちに危機感を与え、こうまで結束させてしまったのだろうか。

 

 しかし、沢山の貴族が集まった連合だからこそ、統率がとれていないという弱点もある。私が調査を終える頃には連合軍が王家に戦争を仕掛けていてもおかしくは無かったが、戦争による略奪品、領地などの分配の協議がひどく長引いているらしい。

 

 なんなら、放っておいても空中分解しそうな雰囲気だ。特にクラウディン家の当主が業突(ごうつ)く張りで譲らないらしい。

 

 それともう一つ。貴族連合たちの間で不作になる貴族家が出たようだ。何でも陛下が進めている農業改革の結果が(かんば)しいことから、それを真似した貴族達が失敗したらしい。

 ルーカスも農業改革の方法を調査し、それをまとめた報告書をクラウディン家の方に渡していたはずだがいったいどうして……。

 

 原因としては陛下の企みと、クラウディン家当主の失策。

 

 まず陛下はクラウディン家などの悪徳貴族の近くにある飛び地で、間違った農業改革を行っていたらしい。悪徳貴族が横着して近くの王家領で農業改革の内容を調査すれば、間違った農法が広がるようにだろう。

 

 飛び地は小さいので、不作の影響も少ない。加えて中央のほうから作物の輸送もしているので飛び地の住民が困る事は無い。

 

 それだけではルーカスの報告によって農業改革の内容に齟齬が生まれてしまい、クラウディン家で間違った農法が広まる事は無かっただろう。しかし、クラウディン家の当主はルーカスの報告の方が間違った農法だと決めつけ、精査する事も無かったという。

 

 恐らく、ルーカスに手柄を立てさせたくなかったからだろうか。ルーカスは優秀な男だが、卑しい妾の子供として実家を追放された。当主からすればそんな男が手柄を立てたとなれば面白くないはず。

 

 加えてクラウディン家の当主は実行力だけはあるのか、早々に農業改革の内容を飛び地で調査しており、間違った内容を悪徳貴族連合の間に広めてしまったとか。手柄を立てて連合内での立場を強くしたかったのだろう。

 

 しかし、クラウディン家当主のルーカスへの嫉妬と歪んだ虚栄心が、悪徳貴族連合内での不作という事態を生んでしまった。

 

 今回の騒動で連合内でのクラウディン家の立場は危ういものになっているらしい。ただでさえ足並みの揃わない連合に亀裂が入りかけているそうだ。

 

 そんな状態のせいで、ルーカスは文官としての本業だけでなくクラウディン家のフォローや連合のフォローに今は手一杯の状態。

 

 私はルーカスに頼まれ、王宮内の奸臣たちをまとめ上げていた。こうする事で奸臣たちが個別に暴走する可能性を減らせる。ルーカスには“いざという時に事を起こせるように”と(うそぶ)いておけば、怪しまれることも無い。

 

 しかし不思議な事に以前よりも奸臣たちが随分減っている。いったいどうした事か。元奸臣にそれとなく事情を聞いてみた。

 

「へ、陛下に褒めて頂けたんですよ…! “お前の様なクズでも仕事だけは出来るんだな”って……。う、うひ、うヒヒヒ……ッ! 褒めて貰えた! 褒めて貰えた!!」

 

 明らかに正気では無い。最近は陛下の改革が佳境に差し掛かっており、貴重なロウソクを使い、寝る間も惜しんでの仕事になる日が多い。それで疲れているにしても様子がおかしい。

 

 別の元奸臣に事情を聞いてみた。

 

「く、クズの私を置いてくれるような陛下に盾突くことなんて…! もう、私にはここ以外に居場所なんかないんです……。”あれだけの期間でこの程度の成果か。お前の様なクズ、ここ以外の領地では雇ってくれんだろうな”って……!

 わ、私が辞めさせられてしまったら妻や子供が困ってしまう……! そ、それに最悪処刑をされてしまう可能性も……!」

 

 やはり正気とは思えない。もう一人に聞いてみた。

 

「もっと、もっと成果を上げないと……! お互いの悪いところを言い合うのはもう嫌だ……嫌だぁぁァァあああ!!!」

 

 同じく正気とは思えない。まるで洗脳されているようだ。極限の疲労で思考が鈍っている所に陛下から言葉を浴びせかけられたのが今の現状なのだろうか。これも陛下の仕業……? それとも偶然の産物か。

 

 過去にこれほど多忙だった時期が無いため分からない。分からないが、とにかく都合だけは良い。様子のおかしい元奸臣たちは現状悪事を働く気力もなく、言動を聞く限り陛下に従順になっている。

 

 残っている奸臣もすり減ってしまっている。仕事が忙しすぎて悪事を働く暇が無いのだ。徒党を組もうにもやはり忙しすぎて、そんな時間が無い。仕事でミスをすれば厳しい叱責をされるらしく、手は抜けない。

 

 こんな状態では奸臣たちも反旗を翻せない事だろう。私としても都合が良い。仕事を効率よく終わらせ、隙間の時間を使って奸臣たちに“来たるべき時に私が声をかける。今は雌伏の時、出来るだけ陛下に従い油断させておくのだ”、と言っておく。

 

 こうして時間を稼いでおけば正気を失い、元奸臣になる者も出てくるだろうし、何より反乱の可能性を抑えられる。王宮内の役人に対してはこれが最善の手だろう。

 

 話が少し戻るが、悪徳貴族連合に亀裂が入っている今、大きな兵力を動員される可能性は低い。しかも陛下の農業改革は順調に進行しており、新たな専業兵士も増えている。加えて陛下が幼い頃から熱を上げていた“銃”という新しい兵器も実用化された様だ。

 

 私には有用性があまり分からないが、武官の間ではその使い道が議論されているという。とにかく戦争の事態に陥っても早々負ける事は無いだろう。

 

 こうなれば気を付けるべきは内部からの崩壊。陛下はルーカスを完全に信頼している。その隙をついてルーカスが陛下を何らの手段で害する事があれば、現状の陛下をワントップに置いている今の王家は容易く崩壊しかねない。

 

 だからこそここで私はルーカスを告発する必要がある。しかし、私がルーカスを告発すれば、不正の証拠をお互いに握り合っているため、私も告発される事になるだろう。そうなれば二人揃って処刑される事は想像に難くない。

 

 しかし、私はやらねばならない。陛下が正しい為政者として両親を殺したように。私も正しい宰相として自分を殺し、国を守らねばならない。

 

 苦節50年。必死に勉強に励み宰相になったものの、暴君の前王様に悩まされた事もあった。しかし、今の陛下は正しく為政者の鑑。陛下――ソフィア陛下を救うためであればこの命も惜しくない。

 

 ただ、惜しむらくは彼女の治める国の行く末をこの目で見届けられない事か。

 

 私はルーカスの不正の証拠を手に、ソフィア陛下にお目通り願った。

 

 

 

            ♢

 

 

 

 何か宰相が私に用があるってさ。一応善良な陛下を演じないといけないから、宰相に対して厳しい態度を取らないといけないから、対面するの面倒くさいんだよね。

 

 本音としては“あ、宰相さん! 反逆凌辱の準備でお疲れでしょう? どうです、肩でも揉んで差し上げましょうか?”、と三下ムーブをするぐらいには心の中で応援している。

 

 まぁ、この謁見も反逆凌辱のための一手かもしれないからちゃんと対応しますけどね。

 

 それで何の用? ……え? ルーカスが不正してる?

 

 何をおっしゃる宰相さん。あのクソ真面目そうなルーカスが不正してるなんてねぇ。そこまで言うからには誰もが納得する証拠を見せろよ、証拠を。

 

 証拠ある~。まぁ、宰相の事だしちゃんと準備してるとは思ってたよ。

 

 この報告には虚を突かれた思いだった。ルーカス、お前奸臣だったのか……。私に似て演技派だね。表向き善良を装っていながら裏では反逆の計画を立てていたのかな? 宰相に次いで私の無茶振りに応えてくれる優秀な人材だし、反逆の方に関しても期待して良いだろう。

 

 いいよ~、そういうサプライズ。女の子はそういうサプライズに弱いんだから。それに引きかえ宰相ときたら……。仕事は出来るかもしれないけど、気配りがちょっと駄目だね。せっかくルーカス君がサプライズを計画してくれたのにそれをバラすなんて。

 

 内心でテンションを下げつつ、宰相の話を聞く。ルーカスは危険だから処罰した方が良い。そのための証拠もある。それはそうだけど……。

 

 う~ん、どうするべきか。宰相がルーカスを告発した以上、宰相とルーカスは同じ奸臣とはいえ敵対している様子。何してんだ、お前らが手を組めよ。

 

ルーカス「輝く裏金の花! キュアルーカス!」

ノッパラ宰相「煌めく袖の下! キュアノッパラ!」

 

 みたいに日曜朝の女児向け番組に出るようなコンビを組めよ。そうしたらもう、鬼に金棒、ノッパラにルーカスだろうが!

 

 まぁ、過ぎたことを言ってもしょうがない。私としては反逆凌辱の火種を潰したくは無いからルーカスも許すし、宰相も許す方針で行こう。

 

 お気に入りのルーカスの不正が信じられないといった演技をする。そして証拠を持っている宰相を罰すると証拠を公開されてルーカスも罰せられるから、宰相にも手を出せない風を装うと。

 

 護衛の兵士にもこの騒ぎは聞かれていたけど、“ルーカスは不正をしていませんでした(大本営発表)”と伝えておけば大丈夫だろう。

 

 ……公開処刑といい、今回の不正見逃しといい、どんどん高潔な陛下から遠ざかっている気がする。

 ……まぁ細かい事は良いでしょう! 結局私の性根が悪性な限りはどこまで行っても高潔なフリ。この際、凌辱をされる可能性を高めるためなら何でもヨシ! 

 

 それにしても上手くいかない。もう少しこう……スルッと凌辱されるものだと思っていたのに。具体的には今ぐらいにはもうズコバコされてるとばかり。

 

 しかし、苦労すればするほど凌辱が叶った時の喜びはひとしおのはず。ここが踏ん張りどころだ。

 

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