マミゾウの妹分が幻想入りしたそうです   作:札幌9/8番

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 マミゾウが釣ったウワサ子ちゃん。

 どうやら、彼女はマミゾウのと同じ釜の飯を食った仲だそうです。


姉と妹と星空

 

 「初めまして、わっちは二ツ岩ラウと申します」

 

 ペコリと先ほどのウワサ子ーラウはお辞儀をする。

 

 町娘がよく着る浅黄色の着物に目に映ったモノを反射しそうな銀色の瞳。肩まであろう茶髪はくくっており、生活感を漂わせる。

 

 「驚いた。まさか本当に妹がいたなんて…聞いてなかったぞ」

 

 「少なくとも、萃香には言ってなかったからの。しかし、儂も記憶では外の世界に居たはずの妹を紹介することになるとは思わなんだよ。ラウよ、どうして今になって幻想郷に?」

 

 「その話は後で、先に自己紹介から」

 

 こほんと咳ばらいをし、ラウは口を開く。

 

 「わっちは正しくはマミゾウ姉さんの妹ではありません。血も、何なら種族すら違う存在です。その証拠に、わっちの耳は狸耳ではございません。姉さんが外の世界を牛耳っている時に、拾われ、姉さんの元で育ち、二ツ岩の姓を頂いた次第です。先日まで外の組合で書類仕事をしておりました。そして、こちらの神。摩多羅神のスカウトでこちらに足を踏み入れた次第でございます」

 

 「摩多羅神って…摩多羅隠岐奈!?大物じゃないですか」

 

 「ええ、ええ―本当はもう少し早くこちらへ向かいう予定でしたが、どこかの狸大将が引継ぎ資料も作らずに何処かへ消えたおかげで、神様に頭を下げて、今までかかりましたよ。あぁ、神様には本当に申し訳ないです……まぁ、その狸大将が油断してくれたおかげで楽につけれて、バレた時も、こんな楽しそうな会に誘ってくれたので気にすることではないですが」

 

 驚く文に返答するついでに、ラウはマミゾウを睨み、冷たく笑っている。そんなマミゾウは冷や汗をかきながら、そっぽを向く。そんなピリピリ感を感じ、美宵は慌ててトンとカウンターに手をつけ身を乗り出す。

 

 「そ、そういえば!ラウさんはどんな能力で溶け込んだのですか!?」

 

 「ふむ、そうですね…簡単に言えば、『内面と外面を一致させる』その程度の能力でございます」

 

 外面―自身、他人から見た姿、外見。内面ーそのものの性質、能力、想い。

 

 内面と外面は必ずしも常に一致しているとは限らない。例えば、変装すれば、外面は変わる。変装しなくとも、意識を変質することができれば、外面との乖離が生じる。

 ラウの能力はその乖離をなくす。すなわち、外面と同じ性質を得る。または内面の性質と同じ姿を得る。外見を変化している他人を、外見を内面―本質に戻したり、外見同様の性能に変えることもできる。例えば、獣に変化した者の変化を解いたり、獣同様の性質へ改善、もしくは枷を与えたりすることができる。そんな能力だそうだ。

 

 「―で、今回は、町娘の外見に化けて、喧騒にまぎれた……と」

 

 「それで違いありません。喧騒にいる見知らぬ町娘―どこにでもいる、取るに足らない者という性質でフラフラと姉さんや行きつけの場所を見ていました。しかし、わっちの身勝手のせいでお店にご迷惑をかけて申し訳ありません。今までのお代はこちらでお支払いいたしますし、今度から、そのような幽霊のようなことは致しません」

 

 「え…ええ、それは構いませんが、なぜそんなことをしていたのですか?」

 

 「簡単なことです。先んじて幻想郷に入った姉さんがどんなことをしているのか見ていたら、面白そうなお店を見つけた。どんなお店かと姉さんを見るついでに眺めていたのですよ。まぁ、そこの鬼のお方には潜み始めたころからバレてはいましたが」

 

 「え!?なんで早く言ってくれなかったのですか!?萃香さん!?」

 

 「カッカッカッ―面白そうな手品をしていたしな。いつ気づくかと眺めていたわ」

 

 「もー!」

 

 美宵の問い詰めに萃香はふらりと笑っていなす。

 

 「しかし、こんな早く―しかも自分がこうでございというとは。隠岐奈の依頼はここが本質ってことはないってことか?」

 

 一転、スンと目を細める萃香。その姿にラウ以外は固唾を呑む。この目をする時の萃香は何かを真剣に探る時だ。そして、ラウはフフンと口を開く。

 

 「ええ、ここではありません。そして、追加の差し金でもない限りはしばらくはお仕事はいたしませんのでご安心ください」 

 

 「ふーん……ま!ならいいか!隠岐奈にここの店を潰されるとかはなさそうだしな!」

 

 暫しの沈黙の後、萃香はガハハと笑った。一方、店の危機を一瞬でも聞かされた美宵は深い安堵の息をついた。

 

 「で、この後はどうするのですか?マミゾウさんは命蓮寺に居候していたはずですが、そちらに?」

 

 今まで沈黙を貫いていた文が口を開く。

 

 「いえ、隠岐奈様から拠点をあてがわれています。しばらくはそこで暮らそうかと思っています」

 

 「……ちなみに、場所は?」

 

 「人里に潜んでいた時に地理を覚えましたが、いわゆる、迷いの竹林の入口近くだと思います」

 

 「……竹林かぁー……」

 

 「おや?妖怪の山ならまだしも、迷いの竹林でも溜息をつくんだ」

 

  ラウの返答に大きなため息をつく文に、萃香はきょとんとする。

 

 「まぁ、確かに、妖怪の山は山で、こちらの管理の調整が面倒ですが、迷いの竹林は迷いの竹林で面倒ごとが起こりそうだなーと……妹紅さんとか永遠亭メンバーとか」

 

 「おや!妹紅ちゃんもいるのかい?そいつは良いことを聞いた!」

 

 「どうやら妹紅とは知り合いのようじゃな。儂も知らない情報だったが、上々上々」

 

 「はぁ……まぁ、あの人は顔が広いですし、あの人と顔なじみなら、面倒なことには……ならない……かも?」

 

 膝を打って懐かしむラウの返答に、文はしぶしぶだが、納得する。

 

 「さ、今日は姉さんに夕方に取り抑えられて、ここに居残っただけですし、もうそろそろおいとまします。今度は隠れずにのんびりとお酒を呑みに来ますよ。ほーら、姉さんも早く帰りますよー」

 

 「おい!儂はまだ呑むぞ!―ラウゥ!放せぇい!」

 

 ラウはお代と今までの慰謝料をテーブルの上に置き、マミゾウの首根っこをつかみ、引きずりながら去る。

 

 「……なんというか、掴みどころのない方でしたね……」

 

 「ま、じきに慣れて化けの皮が剝がれるさ。隠岐奈が招いた客だ―大方、騒いでここか博麗神社で宴にでもなるさ」

 

 「なら、そうなる前に記事にでもして、部数を稼ぎますかねぇ」

 

 姉妹が去った蚕食鯢吞亭。そこには不安な看板座敷童とどうでもよさそうな鬼とおこぼれが欲しい天狗が紫煙の残り香を肴に呑みあっていた。

 

 

◆◆◆

 

 

 「うへへー」

 

 「さ、姉さん。帰りますよ。って、呑みすぎじゃないんですか?」

 

 帰路につく二ツ岩姉妹。ラウは千鳥足のマミゾウに肩を貸し、人里から抜けていた。

 

 「酔ってないわぁい!久々の妹の介助を楽しんでいるだけじゃ!」

 

 「それはそれで問題があるけど……まぁ、いいか」

 

 月が陰り薄暗いあぜ道。少し湿った土と草の匂い。久々の再開にはいささかロマンに欠けるものではあったが、ラウにとっては、マミゾウにとっては、それが一層懐かしみ、喜びを噛みしめる匂いとなっていた。

 

 「……外の世界の狸たちはどうじゃ?」

 

 「ええ、姉さんがいた頃より数は少ないですが、粒ぞろいが育って、なんとかやれるとは思いますよ。知ってますか?あの屋島の狸。今じゃうちの頭ですからね」

 

 「あの泣き虫、頭でっかちが!?……はぁー狸も数年会わずば刮目せんとなぁ」

 

 「ふふ――姉さんが去った後、猛勉強していましたよ。あれでも野心家でしたし」

 

 「そうかぁ…なあ、ラウよ」

 

 鳴き虫の音がやけにうるさい中。マミゾウはポツンとつぶやく。

 

 「はい、姉さん」

 

 「あの摩多羅神の誘いじゃ。分かっているとは思うが、ここは儂らの桃源郷じゃ」

 

 「はい」

 

 マミゾウは空を見上げる。ラウも釣られて見上げる。晴天の星空。瞬く星々が何かを祝福しているように見え、月はすべてを包み込む。

 

 「人と妖怪が共生する、しかして恐怖する。そして人は妖怪を否定せず、ただ在るものとして暮らす世界」

 

 パッとマミゾウは片手を空に上げ、星を掴む動作をする。星はつかめないが、ラウからは何かをつかんだように見えるほど、マミゾウは掴んだ手を優しく胸へ寄せる。

 

 「なあ、ラウよ。かわいい妹よ」

 

 「はい、マミゾウ姉さん。美しい姉さん」

 

 「お前さんは、一体何をするつもりじゃ?」

 

 マミゾウは片眼を閉じ、微笑みながら見つめる。ラウは悟られないよう。微笑みを返し、呟く。

 

 「ふふっ……面白いことですよ。今すぐ、ではありませんが」

 

 「そうか……楽しみにしておるよ」

 

 虫が鳴く夜。2人の妖が並んで歩いていた。

 





 簡単に、ラウの能力、『内面と外面を一致させる程度の能力』は、変装したらそのものになれたり、逆に変装もどきをできたりできる能力です。

 化けの皮をはがしたり、着たりできるかんじですかね?
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