マミゾウの妹分が幻想入りしたそうです   作:札幌9/8番

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 妹紅との竹林散歩。

 目的地は永遠亭。

 観光には不向きな立地ではありますが、何があるのでしょうか?


案内人と開戦ともみくちゃ

 

 「ここを曲がって、しばらく行くと永遠亭だ」

 

 久々の再会を記した夜会の翌日。一回別れ、準備してから再開し、妹紅とラウの2人で永遠亭へ向かっていた。

 

 「案内人がいると段違いだねぇ、しかしまぁ、よくこんな変わり映えのない景色でわかるねぇ」

 

 「死ぬほど頑張って覚えたからな。というより、よく1人で私を探してたね……ま、今なら迷っても探すけどさ」

 

 「おや、心強い――っと、見えてきたねぇ……あれが永遠亭かい?」

 

 進んでいくと目の前の竹が開かれる。その先には、大きな屋敷があった。

 

 木造の豪華な屋敷。新築の様に真新しい、傷一つない建物の様相。しかして、長年住み続けたかの様な独特の慣れ親しんだ、古めかしい雰囲気という、矛盾した時の流れを醸し出している。

 

 「失礼するぞー」

 

 妹紅はその矛盾を気にせず、正門から声を掛ける。

 

 しばしの静寂の後、ドタバタとうさ耳ブレザーの少女が玄関から現れる。

 

 灰がかった紫のロングヘアー、緋色に瞳は別次元の自分をも見通しそうな不気味さを感じる。

 

 「はいはい、妹紅さんお疲れ様です。っと、その方は?波長的に健康そうですが」

 

 「こっちはラウ姉ぇ。病気やケガとかではないけど、永遠亭の見学がしたいってさ」

 

 「ここは観光地じゃないですけど……はぁ――分かりました。師匠に聞いてみるので、少しお待ちください」

 

 不気味な瞳とは打って変わり、表情がコロコロ変わる親しみやすそうなうさ耳の少女は玄関の奥へと消えていき、再び妹紅とラウの二人っきりとなる。

 

 「……あのうさ耳の吾人は誰なんだい?」

 

 「あの子は鈴仙ちゃん本名は――」

 

 「鈴仙・優曇華院・イナバ。ここ、永遠亭の助手よ。でも、一体どういう風の吹き回し?見た感じ彼女、妖怪だけど、こんなへんぴな所に観光なんて、変わった妖怪さんね」

 

 「ゲ。今日は一段と登場が速いな輝夜」

 

 妹紅と会話していると、どこからともなく、新しい少女が現れる。

 

 太陽の光を吸収し、その熱量すらも我がものとして輝いているような美しい漆黒の髪。着用者に従っているかのような謙虚かつ、持ち主の美を引き出す古風な色合いの十二単を身に纏う彼女は、絵に描いたような大和撫子の立ち居振る舞いだった。

 

 「ふふ、妹紅が珍しいお客さんを連れてきてるって中は大騒ぎよ?来ないのが不自然ってものでしょ?――で?大騒ぎの元凶は彼女かしら?」

 

 ――どうやら、外面大和撫子な少女――輝夜は、その姫様のような立ち居振る舞いとは異なり、アグレッシブな性格なようだ。

 

 ラウは大げさに襟を正した後に、頭を垂れる。輝夜はその行為を見て、どこからか取り出した扇子を広げ、細めた目でラウを見下げる。

 

 「これはこれは、噂はかねがね伺っております。蓬莱山輝夜殿で相違ないでしょうかね?」

 

 「ええ、違いないわ。私がこの永遠亭の主。蓬莱山輝夜よ。で?そういう貴方は誰かしら?」

 

 「これはこれは、失礼しました。わっちの名は、二ツ岩ラウと申します。つい先日、幻想郷へ参った、かの山の総大将。二ツ岩マミゾウの妹分でございます」

 

 「なるほどね。化け狸の妹分……ね。まったく、あの狸も見かけによらずね。で?用件は?ただの観光じゃないでしょ?」

 

 輝夜の言葉を聞き、妹紅は慌てる。輝夜が殺気も発したからだ。

 

 しかし、ラウはそれをものともせず、顔を上げ、肩を竦める。

 

 「おやおや。音に聞くなよ竹の吾人ですなぁ。わたくしめの考えなどまる分かりでしたか」

 

 「ええ、まる分かり。もう少しあからさまな殺気を抑えたらどう?」

 

 「はっはっはっ。妹紅ちゃんにバレなかったので安心。と考えておりましたが、力量を見間違えましたね。此度のことを反省し、肝に命じ、精進します」

 

 「ええ、精進しなさい。でも、今ではないわ。今は私と向こうでお話しする時間……さ、場所でも変えましょうか。ここじゃ風情がないし、永琳に怒られちゃう。あ、妹紅はうどんげでもかわいがって」

 

 「あ……あぁ――輝夜。何をするのか分からんが、ラウ姉ぇは私の恩人で、ただの妖怪だ。殺すなよ」

 

 「ええ、ただのお話。心配しないで」

 

 輝夜の言葉を聞き、妹紅は渋々永遠亭の奥へ向かい、ラウと輝夜は竹林の奥へと向かっていった。

 

 

◆◆◆

 

 

 「で?なんで私に殺意を?」

 

 輝夜が案内した開けた竹林の広場。土地の浸食を生きがいかのように好き勝手生える竹が周囲にあるのにもかかわらず、この広場だけは、筍1本もなく、時が止まったかのような静寂さ、秩序さを保っている。

 

 そんな空間で輝夜はラウの方に振り返り、ラウに問いかける。

 

 「簡単な理由でございます。ただの馬鹿な――そう、馬鹿な復讐でございます」

 

 「もう少し砕けていいわよ。昔は姫だったけど、今は貴方と同じ、幻想郷の住人だし。で……復讐?」

 

 「なら失礼して。妹紅ちゃんと仲が良いのは嬉しいがぁ、あんたさんは妹紅ちゃんの命を奪った。それも何度も、ね――亡き者を弔うための復讐。馬鹿な話だけど、自然な話だろ?」

 

 「ふふ……確かに自然ね。そして、馬鹿な話ね――いいわ、受けて立つわ」

 

 輝夜は微笑みながら、余裕綽々でラウから離れる。ラウはそんな輝夜の背を見て立ち尽くす。

 

 「うん。距離はこんなものね――それじゃあ、始めましょうか。ちなみに、弾幕ごっこの経験は?」

 

 「ごっこ?なんぞそれは?初耳だねぇ」

 

 聞きなれない言葉にラウは首をかしげる。この世界にはごっこで済ませるお遊びの復讐譚があるのだろうか?

 

 「ならいいわ。後で教えてあげる。でも今は」

 

 輝夜は色とりどりの宝石のような実をつけた枝を取り出す。昼なのにそれの周りは星々が煌めいているがごとく強い輝きを放っている。

 

 輝夜がそれを軽く振るうと、彼女の周りに煌めきを結晶化させたような光弾が現れる。

 

 「楽しい復讐譚を彩りましょう!」

 

 「えぇ。胸を借りるよ」

 

 こうして、ラウの無意味で有意義な時間が始まった。

 

 ◆◆◆

 

 「鈴仙ちゃん鈴仙ちゃん!」

 

 輝夜とラウと別れた妹紅は、永遠亭の静寂さをお構いなしに、騒がしく廊下を走り、可愛がり相手を探していた。

 

 「え!?妹紅さんどうしたのですかぁ!?師匠にはまだ許可を得ていませんよぉ!?えぇ!?」

 

 困惑している鈴仙の頭を撫で繰り回す妹紅のおかげで鈴仙はさらに困惑を極める。

 

 「許可はもういい!なんか輝夜とラウ姉ぇが戦い始めようとしている!」

 

 「えぇ!姫様がですか!?一体なにが!?」

 

 「説明は後!輝夜を連れ戻すの手伝って!下手したら妖怪死にが起こる!」

 

 「えぇ!?ちょっと待ってください!あぁ!首根っこやめてください!服が伸びますぅ!」

 

 「はぁ……貴方はもう少しおとなしくできないの?うどんげ」

 

 妹紅と鈴仙のすったもんだを横に、バンと隣の襖が勢いよく開かれる。

 

 星の煌めきのみを抽出したかのような輝く銀髪。紺と朱色のツートンで占めたドレスは先ほどすったもんだの余波で少したなびく。

 

 そんな彼女を見て、鈴仙は涙目になりながら彼女に訴える。

 

 「し、師匠ぉ……なんか大変なことがぁ……」

 

 「はぁ……みなまで言わなくても大丈夫よ。中まで聞こえていたからね。私が患者の対応をしていたら、姫様がなにかしでかした――妹紅。詳しく聞いてもいいかしら?」

 

 「永琳。すまないがそれは後だ。今すぐラウ姉ぇとの喧嘩を止めないと」

 

 ズンと永琳を無視し、鈴仙片手に玄関の方へ向かう妹紅。しかし、そんな道程はため息交じりに永琳が放った矢によって阻まれた。

 

 「待ちなさい。それはうちの可愛い弟子よ。何も説明を受けずに旅をさせるほど私は馬鹿親じゃないわ」

 

 「でも!――はぁ……わかったよ。ごめん。少し頭に血が上ってた。実は――」

 

 妹紅はことの顛末を話す。

 

 自分が知る二ツ岩ラウのことを。

 

 永遠亭観光へ向かったことを。

 

 輝夜と出会い、殺意のぶつかり合いをしたことを。

 

 妹紅の話を困惑半分、冷や汗半分で聞いている鈴仙を横に、永琳は冷静に思考を巡らせて聞いていた。

 

 「で、鈴仙ちゃんをかわいがってと輝夜に言われたから、かわいがった口実を作るついでに止める人員を確保したってこと。変に止めても止められそうにないしな」

 

 「あ、あの頭ぐしゃぐしゃーってそういうことだったんですね」

 

 「なるほどね……約束を完遂した上で仲裁に入ると」

 

 「なぁ、事情が分かっただろ?もういいか?ラウ姉ぇはただの妖怪なんだ。あの輝夜の意気。最悪殺し合いになる」

 

 「ええ、でも鈴仙は今終わった患者の帰路の案内を頼むわ。そして、姫様は私が対応するわ。そして、私の予想だと、そのラウって娘は死なない(・・・・)わ」

 

 「え…どういうことだ?」

 

 永琳の回答に再起ほどまで焦燥していた妹紅は困惑を示す。

 

 「彼女の能力――妹紅には内面と外面を一致させるって言っていたのよね?あくまで仮定だけど、恐らく儀式上の仮面や化粧、仮装の力を最大限に引き出す力ね。巫女の神卸の儀に近い能力。なら死すらも仮装で何とかできるでしょう」

 

 「えーっと……」

 

 「――はぁ……彼女は姫様に殺意を向けたのでしょ?あなたの旧友がよほどの馬鹿ではない限り、何か対策しているってこと。ゆっくり向かいましょう。疲れるから」

 

 「あっ――ああ……」

 

 永琳の早口の解説に目を回し、圧に負け、妹紅は何もわからずうなずく。

 

 「じゃあ、後は任せたわ、うどんげ。私は席を外すわ」

 

 「は、はい。行ってらっしゃいませ」

 

 こうして、妹紅と輝夜はゆっくりと輝夜の元へと向かっていった。

 

 「……え?もしかして私、髪型を崩されただけ?」

 

 ばっちり決めた髪を崩された鈴仙を残して。

 

 

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