※ハイスクールD×Dではありません。   作:おーり

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ブギーポップの新刊を購入したので初投稿ということにしといてください


敬虔で従順で可愛らしい教会イチ推しの修道女アーシアちゃん

 ぐるり、ぐるりと大気がうねり、卵の腐ったような悪臭が部屋中を漂う。

 クスクスと哂う幼気な少女の声は蠱惑的だが、雰囲気と相俟って怖気の方が先走る。

 少なくとも、イッセーは今までのような気持ちには一切たりとも至れはしなかった。

 

 この昨日今日は女子の花園に紛れられて高揚していたというか、そこはかとなくエッチな期待が鎌首を擡げ、心躍らせて従事していたことは否めない。

 しかし、そんな助平根性が霞むくらいの状況に直面し、それでもなおエロ坊主に傾倒できるような根性は今のイッセーには備えられていなかった。

 令和に産まれた諸星あたるは過言で伊達で張り子の虎でしか無かったのかもしれなかった。

 

 

「…っ、そうか、これが、マジモンのオカルト現象…!」

 

 

 震える身体を自ら抱いて、へたり込んだ天野夕麻に気遣いも出来ない。

 教会から派遣されて本日事態へ赴いてきたアーシア・アルジェントという金髪の美少女の立ち塞がる陰になって、対峙する悪魔崇拝者である同じく金髪の美少女から発せられる怖気に震えていることしかできない。

 なお、相手はミッテルト・モンタニャノルテと名乗っていた。やや、メスガキっぽい。

 

 

「く、くそ…っ、おれは、こんな、あ、あああ…っ!」

 

 

 まず鼠の群れが部屋から溢れた。

 次いで鉄錆の香りが噴き出し、アーシアがそれを光輝くことで壁のように防いだ。

 果てに冒頭のアレ。

 

 イッセーは心が折れていた。

 自己の優越感を満たす為に仲間を騙ろうという気概が折れていた。

 黒いマフラーで口元を隠してオカルト研とは俺自身がオカルトになることだ…!とか云える雰囲気でも無かった。謂う気も無いが。

 

 いつの間にか加わってる新キャラふたりにモーションかける余裕もない。

 対峙する教会からの使徒と悪魔崇拝者との戦いに加われるダークライにもなれやしない。

 小さく縮こまった少年を一瞥して、しかし見捨てることなくアーシアは謂う。

 

 

「――下手に動かないで。あなた達は、わたしが守ります…!」

 

「へぇー?」

 

 

 ミッテルトは嗜虐的に嗤う。

 

 

「足手まとい守りながらぁ? わたしに勝てると思ってんのぉ?」

 

「ええ、――死なずば勝ちですから」

 

「――ナマイキ」

 

 

 瞬間――、幻視したのは火の奔流だった。

 

 

「あ、あああああああああ!!!!?」

「いやああああああああ!!!!!?」

 

 

 全てが炎に包まれた。

 アーシアも、夕麻も、イッセーも。

 逃げ場なく教室中を吹き抜けた、バックドラフトのような爆炎が男女の悲鳴を掻き消そうとする。

 

 

「惑わ――さ、れま、せん!!!」

 

 

 十字を切り、祈るような仕草が、炭となった少女の手元で蠢く。

 

 そしてすべてが平時へと戻る。

 火も消えて、轟音も鎮まり、炭化したはずの自分たちは無事なまま。

 

 

「――っは、ぁ…!」

 

 

 呑まれれば、死んでいたほどの幻覚。

 アーシアはそれを今、祈りで乗り越えていた。

 

 

「「……っ!」」

 

 

 恐慌で言葉も出ない、イッセーと夕麻は酷く疲弊する。

 ミッテルトの笑みは益々深くなり、口の端は歪に吊り上がる。

 もっと莫迦にして高笑いをしてやりたかった。

 しかし、無事な少女が未だ居て、そこまで大口を開ける度胸は彼女には無い。

 

 だから、ミッテルトは言論で戦う。

 魔術師の攻防とは、即ちシェアの奪い合いだ。

 

 

「はぁん、中々に上等な奇蹟をお持ちでー。エクソシスト、じゃあないねぇ。同じく【崇拝】に倚る加護持ちと見たわ」

 

「…そうですね、業腹ですが、わたしたちは奇しくも同類(おなじ)のご様子です」

 

 

 広義で見ればエクソシストと類されるようになった『悪魔祓い師』とは、つまるところ悪魔を退けられてしまえばそう呼ばれるものだ。

 

 

「悪魔祓いとして実力が在れば、今頃は東京のイベントに引っ張られてんでしょ? マモンがちょっと前に現界したし、ベルゼブブのアレコレで人手も無いそうじゃない」

 

「よくご存じで。魔女も関わってますよね、悪魔の側(エキストラ)として」

 

「――アンタは呼ばれなかったんだ?」

 

「貴女こそ――行かなくても良いんですか?」

 

 

 しかしミッテルトは知っている。

 今の教会に正しく『悪魔』を退けられる力は無いことを。

 教会が対峙するのはいつの世も人間であり他教であることを。

 悪魔と呼ばれる者たちの正体を――。

 

 それも踏まえてアーシアの、自身が投げかけた術理を破棄させた、教会が奇蹟と呼ぶ『法則』の仕組みを知っている。

 そのこともアーシアも見抜いている為に、ふたりの間に和解は無い。

 

 

「――天使へ対する信仰と崇拝、其処から漏れた力技。消火活動にバケツをひっくり返してるだけの淑女(ビッチ)が、いっつもいっつもえらっそうに説教咬ましてくれちゃってさぁぁ!?」

 

「――魔女として操を捨てることも出来ない甘えん坊が術理を掠め取っただけで! 物理的な干渉もできないくせに勝てるわけないでしょう!?」

 

 

 再び火が踊る。

 其れを消す。

 

 口論がボルテージとなって拮抗したふたりの戦いは、同じようにシェアの奪い合いをその場へと写す。

 

 巻き込まれたふたりの男女は何度も悲鳴を上げてのたうち回っていた。酷い。

 

 

「父と子と聖霊の聖名に於いて!」

 

「母と娘と悪霊の真名に於いて!」

 

 

「「我は捧ぐ/求む! サタナエルの大天使/堕天使()!!」」

 

 

 …………。

 

 

「「――えっ」」

 

 

 同時に掲げた、お互いの崇拝と探求への聖名を、真名を、神名を。

 互いに耳にして、少女たちは互いを見合う。

 

 

「――そう。こういうことが起こる」

 

 

 そんな中へ響いたのは、何処か聞き覚えのある少年の声。

 ごんごん、と乱雑なノックが教室へ響いて、ふたりはばっとそちらへと振り向いた。

 

 

「今の時代、崇拝を引き起こせるのは正しく【神】だから。だから一神教は他教を認めないし、自分たちの衰退も認められない。コンテンツ終わり欠けの癖してな、縋る為ならなんぼでもリメイクを手掛ける」

 

「分霊の代理人、ですよね、先のマモンも、近しいベルゼブブも」

 

「その通り。【王】ではない【マモン】を七罪に沿えて、競争社会の極東の経済攻勢に歯止めをかけた、教会側の『余計な手』だ。【ベルゼブブ】に関しちゃ既に添えられている【王】であり【君主】の【ベルゼビュート】を差し置いて、わざわざ悪魔として分霊を降霊させて暴走させた。自分たちの教義に与さない端の村落を腐らせるためにな」

 

「巻き込まれた方はたまったもんじゃありませんね」

 

「そうやって『分ける』遣り方を遣ってるから、こうして本来は同じはずの【王】の代理人が両側からお見合いするんだ。今回のは悪魔側のマッチポンプ臭いが」

 

「…そういえば分け身のレヴィアタンも少し前に海辺で遊んでましたよね。アレが少しでも陛下の無窮を埋める礎となっていただければ宜しかったのでしょうけど」

 

「そうだな。今日の此れも、そういうことだ。危険も無い」

 

 

 聞き覚えのある声の少年と、話している少女の方は知りもしない。

 しかし、彼を目にしたふたりの少女は、語られている話よりも少年自身に動揺する。

 

 聞き覚え処か、見覚えもあるし、なんなら身体を重ねたこともあ――、

 

 

 

「――――ぇうぁ」

 

 

 

 ――瞬間、少女たちの脳裡に蘇る、知る筈の無い記憶ゥ――!

 

 火に塗れた黄金の光、

 吹き荒れる絢爛、爛れた夜会、

 

 情欲に満ちた自分の眼差しが少年の肌に覆いかぶさって重なった腿の付け根に熱く迸る――、

 

 

「ぉ、ぁー……」

 

 

 思い出して自覚して、顔を真っ赤にしたアーシアが漏れた声音にババっと振り向いた先には、同じように顔を赤く染めたミッテルトがゴシックなスカートの端を握って生娘のようにおとなしくなっている姿があった。

 あっ…ご同輩…。

 

 

「………………ぇ、と、ぁの、ぅ……」

「ぁー…………はぃ……」

 

 

 なんか、さっきまで戦っていたのが莫迦らしくなるくらいに消沈した、してしまった少女ふたり。

 『そういう経験』も無いはずなのに、『そういう体験』を思い出したのはどういうことなのか、と問い糺すべきは目の前の少年なのだが、

 

 

 …………顔が、見れない。羞恥で。

 

 

「要するに、このふたりは【ベリアル】閣下の『代理人』だ。こちらで崇拝を集めるための、な」

 

「その片方がオカルトを蔓延らせて、もう片方が鎮めに来た、と。サタナエルもそういえば、閣下の変名でしたね、いつかの時代での」

 

 

 答えは出しているのだが、多分、本当に知りたい事情は其処では無い。

 

 

「――で。俺は閣下の手ずからイニシエーションを、多分代理人のイデア通じて施されたわけだから、今、非常に気まずい。年端も往かない少女らとアレでコレな肉体関係抱えちゃってご対面する心境どうよ?」

 

「悦べば良いのでは…?」

 

 

 詳しくは2話目を御覧じろァ!

 しかし駄目だ、このアミィちゃんてば同じく悪魔崇拝者の家系出身だから男女の倫理観に真っ当なご理解が存在しねぇ!

 小首を傾げるサモンズボード・ハウレスたんに雷はうへぁと呻くしかなかったんです(まる!)

 




そして忘れられてるイッセー
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