【本編完結】もしもさりなちゃんがゴローと結婚するとしたら   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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気分が乗ったので本日2本目
ここはそこまで話は変わらないもののさりなちゃん生存ルートでセリフや掛け合いを変えてます


もしもこの世界線の宮崎にアイが原作通りやってきたとしたら-1-

「アイー!!」

 

 アイドルグループB小町、絶対的エース『アイ』。

 不動のセンター、僕の妻曰く『究極美少女』の16歳。

 

「結成から4年、じわじわと人気を上げてきてメディアの露出も増え、ようやく時代に見つかったってカンジ!?」

 

「ここからだ!ここから彼女はスターダムへと――」

 

 その妻と付き合う前趣味を共有した影響で僕もすっかりそのB小町にゾッコンになってしまっていた。

 最推しは妻とお揃いのアイだが、一人一人違った魅力があり語ろうと思えば一人一時間は語れるレベルだ。

 

「先生、そういうのは家で観てもらえます?というかなんで患者の病室でアイドルのDVD流してるんですか?常識的に考えてありえないですよね?」

 

 おっと割と付き合いの長い看護師に怒られてしまったか。

 だが僕にも僕なりの理論があって患者の病室でDVD鑑賞会をしているんだ、何も無計画という事は無い。

 

「美しいものを見ると健康に良い。それが私の医師としての見解だ」

 

「うわっ実際さりなちゃんいるから全くもって否定出来ないのが尚の事タチ悪いですね」

 

「ふふふ、そうだろうそうだろう?」

 

 病は気からというのは割と理にかなっている現象だ。

 ならばこうしたカウンセリングがてらの布教はサボっててもそこまで怒られる案件にはならない。

 実際B小町の布教には成功しているしな、この高千穂でのB小町の知名度は割と高くなってきていると確信している。

 

「はは、自分としてもいつまで保つか分からない病状ですからね。その中で雨宮先生の様な方といると元気を貰えるので助かってますよ」

 

「全く……それでも、サボり過ぎると奥さんに怒られますよー?」

 

「うげっ、それは勘弁」

 

 とはいえそれはそれこれはこれ、さりなに怒られる可能性があるなら一段落付いたところで退散しないとな。

 独り身ならまだしも僕はもう結婚している身なんだから。

 

「ああ、それはさておき先生」

 

「なんだ?」

 

「さっきTwitterのトレンドにこんなものが……」

 

 ピシッと身だしなみを整えて職場に戻る……という時に見せてもらったTwitterトレンド、それによってやはり僕の情緒は破壊されるのだった。

 

 

 

「あ、アイが活動休止……」

 

 茫然自失、正に今の僕にピッタリの言葉だ。

 そこにあったのは『B小町・アイ 体調不良で活動休止』の文字。

 僕がこのレベルでダメージを受けてるとなるとさりなはもっとダメージ受けてるんだろうなあ……心配になる。

 

「あの件のアイドル……本当に信者なんですね……前々からロリコンなのは知ってましたけど」

 

「さりなは別、別だから!唯一特別なだけだから!」

 

 そう、僕はロリコンな訳では無い。

 確かにさりなのあどけない幼さの抜け切ってない笑顔とか可愛いと思うし愛おしいと思うし、今からでもアイドル全然間に合うと思う程ではある。

 でも僕は決してロリコンじゃない、ないったらない。

 

「はいはいそういう事にしといてあげます。あれだけ奥さんがベッタリくっ付いてるの見てると弄る気も起きなくなりますし、ある意味」

 

「含みのある言い方をしないでもらえるかな!?」

 

「ところでそろそろお昼休み終わりますよ先生」

 

「うわっ、本当だ。さっさと仕事に戻らないと……」

 

 そう言えば昼休み終わりに一人予約してある患者がいるんだったな、と思い出しそそくさと戻っていくのだった。

 

 それがとんでもない出会いの始まりになるとも知らずに――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にどうしてこうなった……」

 

「いやほんとだよ……」

 

 準備があると退室した瞬間出てきた連れ添いの男性の嘆きに思わず同意した声が漏れ出す。

 それもそうだ、昼休みが終わって予約していた患者を見たらB小町のアイだったんだぞ!?そりゃ脳みそもバグるだろ!

 どうすんだよこれ!

 

 相手の男も内緒という内容も聞こえたけどそこはもう仕方ない、どちらにせよ僕がやれる仕事は産婦人科医としての仕事だけだしな。

 こうなったら全力で仕事をするまでだ。

 

「検査の結果ですが、双子、20週ですね」

 

 連れ添いの男性……恐らく事務所社長だろう男性は苦虫を噛んだ様な顔になる、所属アイドルに対して妊娠という言葉を現実として突き付けられたのだ当たり前の反応だ。

 バレたら一巻の終わり、それはアイドルの事を大切に想っているから出てくる言葉でもある。

 

 ――中絶。

 

 直接口にしなかったものの、それは事務所としては当然の判断。

 

「…………先生は、どう思う?」

 

「最終的な決定権は君にある。良く考えて決めるんだ……医者としてはそうとしか言えないな」

 

 

 そう、医者としては。

 

「もしもし、さりな?」

 

『あ、ゴローくん。どうしたの?』

 

「いや、今日はちょっと帰るの遅れるから連絡したかった」

 

『そっかぁ。頑張ってね!』

 

「うん。ありがとな」

 

 夜、屋上。

 もうあと一時間くらいしたら帰れるとはいえ、色々考える事があり過ぎて今は少し声に力も入らない。

 ほんと、どうしたもんかな。

 

『……元気無い?』

 

「ん、そうか?」

 

『いつもより静かだからちょっとね』

 

「うーん……なんと言うか、色々考える事があってね」

 

『でもそれだけ患者さんの立場になって考えてる証拠だよね。だからやっぱりゴローくんはカッコイイ』

 

「はは、嬉しいな。……うん、それじゃ先に食べてて。お休み、愛してるよ」

 

 でも、さりなと通話して少しは元気を貰えた気がする。

 アイドルの妊娠……難しい問題だがちゃんと向き合って行かなくちゃな。

 

 

 そんな時に偶然にもアイも屋上に来た。

 彼女はこの宮崎の夜空を大層気に入ってくれたらしく、夜空を見ながら満面の笑みだった。

 ……ここなら腹を割って話せるか、思い切ってアイドルとしての君を知っている事を話した。

 

「昔……患者に君のファンがいてね、その影響で知っていたんだ」

 

 今は僕の妻だけどね……とは言うとまた話が拗れそうだったから言わなかったけれど。

 

 アイドルを辞めるのか、と聞いた。

 彼女の表情は少なくとも中絶をしたい人間の顔には見えなかったから。

 だが彼女はそれを否定した、しかしそれと同時に中絶も否定した。

 子どもは産む、アイドルも続ける、そう豪語した。

 

 ――つまりは公表しない、どちらも手に入れられる代わりにバレたら全てが終わる諸刃の剣。

 

「嘘はとびきりの愛なんだよ?」

 

「嘘に嘘を重ねて、どんなに辛い事があってもステージの上で幸せそうに歌う楽しいお仕事!」

 

 そう語る彼女は、それでいて「幸せでいたいって気持ちだけは本当でいたい」そう呟いた。

 母としての幸せ、アイドルとしての幸せ、本来ならどちらか一方しか取れないだろうそれ。

 

「どっちも欲しい。星野アイは欲張りなんだ」

 

 しかしその言葉を聞けば、僕にやれる事は既に決まっていた。

 

「分かった。全力で君のサポートをする。君の決断の手伝いをしよう」

 

 そうと決まれば気合、入れていかなくちゃな。




雨宮吾郎
「私が変えたんだからゴローくんも私の呼び方変えない?」と言われて一念発起して呼び捨てにした
大好評らしい
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