【本編完結】もしもさりなちゃんがゴローと結婚するとしたら   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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⚠この先多少の閲覧注意表現あり、閲覧の際はお気をつけ下さい
この話の前半部は賛否両論かも知れないけれど、この物語をやる上でどうしても外せない話だった


もしもアイとさりなちゃんが邂逅したら

 元不審者――というかアイのファンだった男を担ぎこみ寝ていた当直を叩き起して預かってもらい仮眠を取り数時間、携帯のベルがけたたましくなった。

 寝れるかどうかと言っていたのにすっかり体力を使ったせいか寝ていたがどうやら遂に陣痛が来たらしい、息を一つ整えあのファンと交わした約束と、子どもの為に気合いを入れる。

 

 しかしこの世の中、全てが全て、上手く行く訳じゃない。

 分かっていたはずだった。

 

 だが、僕は夢を見てしまったのかも知れない。

 全てが全て上手く行って、何もかもが幸せになるのだと。

 

 

 

「クソ、なんでだ……!?なんで泣いてくれないんだ……!?」

 

「せん……せ、私のあか、ちゃんは……」

 

「大丈夫だ、きっと、きっと何とかなるっ!だから今君は休んでいるんだ……」

 

 赤ん坊は二人とも生まれてきた瞬間に息をしていなかった、それも『元から空っぽだったかの様に』抜け殻の様に。

 必死に必死に、やれる事全てを行った。

 試せる蘇生方法は古典的な物から最新の方法まで何もかも試した。

 

「頼む頼む頼む……」

 

 それでも双子が息を吹き返す事は無かった。

 約束したのに……全力でサポートすると、あの日誓ったのに。

 未来を夢見る少女の助けになると言ったのに。

 

 自分の不甲斐なさに歯を食いしばりながら、それでも母体の安定だけは怠らなかったのは医者としての意地か。

 失意の中出産は終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……済まない、本当に……済まない」

 

 もう朝日も昇った頃、僕は手術を終わらせた足でアイと付き添いの社長に深々と頭を下げていた。

 大口を叩いておいて何も救えなかった、こんな自分の事が嫌いになってしまう。

 

「君の事を全力でサポートするなんていう大口叩いておいて、君の大切な子どもを救えなかった僕を、どうか……嫌って、憎んでくれ」

 

「……何でセンセがそんな悲しそうな顔するの?センセが必死に私の赤ちゃん救おうとしてたの知ってるよ?それにいつだって親身に寄り添ってサポートしてくれたじゃん」

 

「そうだ、先生は悪くねえんだ。この子の親である俺がもっと早く気付いてやれていれば……もしかしたらもっと違う未来があったかも知れねえのに……!」

 

 そんな僕に、アイは頭を撫でてくれた。

 社長さんは……泣いていた。

 最初は妊娠に少し否定的な言葉を出していた人が、今や一番その子どもを想って泣いていた。

 

「しゃちょ……『おとーさん』、良いんだよ。そりゃ確かにショックではあるし、流石にちょっと泣いたけど。この妊娠を通して私も誰かに愛されてる事、知れたし」

 

「アイ……」

 

「ね、今度から『おとーさん』って呼んで良い?やっと……少しだけ家族が分かった気がするんだ」

 

「ああ、ああ……!」

 

 ……もしかしたら、アイは僕が思ってる何倍も強い人間だったのかも知れない、と感じた。

 さりな相手にも感じたが、子どもというものは案外大人が思ってる以上に強く歩んでいける生き物なのだと実感する。

 少しだけ、自分自身への嫌悪感が晴れた気がした。

 

「センセもありがとね。この妊娠を通して命の重たさ、感じる事出来た。とっても大切な事知れたよ」

 

「……ありがとう、ほんの少しだけ僕も救われた気がするよ」

 

 あの日妊娠の重みを何も知らずにやってきた少女はもういなかった。

 今いるのはもう、少女から大人になろうとしている一人の人間の顔に他ならなかった。

 

「そっかぁ、それなら嬉しいな」

 

「……スマン、俺はちょっと休んでくる」

 

「あ、はーい行ってらっしゃいおとーさん」

 

 ひとしきり話したからか一気に静かになってしまう。

 しかも二人きり、夜には実質的にフッてしまった女の子とそういうのは流石にちょっと気まずいな。

 

「あ、先生」

 

「ん、どうかしたか?」

 

 さてどうするか、というところでもうお馴染みの看護師がひょっこりやってきた。

 なんだろう……少し胸がザワつく様な、この後何か大きな事が起こりそうな予感がする。

 

「奥さん、お見えですよ」

 

「さりなが?」

 

「ええ、何でも登校前に顔だけ見せたいって事で」

 

「そうか、通してあげて」

 

 っと、さりなは心配性だな。

 まさかわざわざ登校前に顔見せに来るなんて。

 

「せんせ、お疲れ様〜」

 

「おう、ありがとなわざわざ」

 

「ううん、良いよ大丈夫……!?え!?アイちゃん!?」

 

 あ、アイいるの忘れてた。

 まずいなどうしよう、どうしようも無いぞこの空間。

 

「せ、センセの奥さん高校生なの!?」

 

 こっちもこっちでまずいなあ、非常に説明しにくいなあこれ。

 

「も、もしかして担当してた私と同い歳の子ってアイちゃんなの!?」

 

「あー……まあ、うん。秘密にしといてな?」

 

「もっちろん!……あ、私せんせの妻の雨宮さりなって言います!よろしくお願いします!」

 

「あ、ご丁寧にどうも……」

 

 まあ幸いな事にさりなちゃんは僕の隣で育ってきたお陰で悪い癖は直ったし良い子になったしアイの事が漏れるなんて事は無いだろうけど……問題はアイだなあ。

 

「……!もしかしてセンセ、私に話してた『昔いた患者の影響で私のファンになった』っての、この子の事!?」

 

「そう……なるなあ」

 

「私の事アイちゃんに話してくれてたの?」

 

「まあ、ちょっとだけな。今話した事と、妻がいるって事をね」

 

「そっか……ちょっと照れちゃう」

 

 アイ相手にデレデレしてるさりなも可愛いなあ。

 というか今妻と最推しに挟まれてる状態?なにここ天国?

 

「なるほどぉ……これは私も敵わない訳だねえ」

 

「ほぇ?」

 

「やー二人の間には挟まれないな〜とね」

 

「そ、そんな事言わずにもっと挟まってきて〜!」

 

 うーん、でもさりなはアイの真意を理解はしてないんだなあ。

 まさかアイが僕に告白してきたなんて思いもしないだろうし、そりゃ当然なんだろうけどさ。

 

 ……まあでも、それならそれでアイの助けになってあげる事もあるかも知れないな。

 

「なあさりな、学校終わったらアイと話さないか?本当なら私的な雑談はあんまりしちゃいけないんだが……所謂カウンセリング込みみたいなもんだ。アイはちょっと辛い事があったから、同年代の同性と話す事が出来れば癒しになるかも知れない」

 

「え!?良いの!?」

 

「というかさりなにしか頼めない」

 

「分かった!任せて!」

 

「えーっと、これからよろしくお願いします?さ……さちこちゃん?」

 

「さりなだよぅ!!でもそんなところも可愛い!」

 

「えへへ〜それはそれはもう、私は完璧で究極のアイドル様ですから☆」

 

 うん、これなら心配要らなさそう。

 アイも勢いにちょくちょく押されてはいるけれど基本的にはさりなと波長が合うだろうしな。

 

 これで僕も少しホッと一息付けるかもな。




雨宮さりなの顔見せ事情
病院では折角だからゴローの事を『せんせ』呼びしている
制服来たまま登下校のついでに顔見せに来たりするので最初はゴローに対してロリコンか?と周りが思っていたがラブラブなのでロリコンでもまあ良いか…と思われている
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